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#読書感想文

本を読んで感じた気持ちや考えたことを、言葉にしてnoteに残してみませんか?おもしろかった本の感想や学びを「#読書感想文」で教えてください!

人気の記事一覧

軽やかに、緩やかに -尾崎翠の小説『第七官界彷徨』の美しさ

    【水曜日は文学の日】     小説の喜びの一つに、自分の日常とは違う感覚を味わえるということがあります。   大正・昭和初期の作家、尾崎翠が1931年に発表(単行本は1933年)した『第七官界彷徨』は、そんな感覚の美しさを軽やかに味わえる、名作短編です。   主人公の小野町子は、詩人志望で「人間の第七官にひびくような詩」を書くことを目指して、勉強に励んでいます。第七官とは、人間の五感や「第六感」を超えた感覚を、彼女が命名したもの。   精神病院に勤務する長兄の小野一

アナログ派の愉しみ/本◎中原中也 著『子守唄よ』

もうひとつの 「汚れつちまつた悲しみに」 ひっきょう、中原中也はただ『汚れつちまつた悲しみに……』(1930年)のみによって近代文学史上屈指の人気詩人となったのではないか。こうした言い方が乱暴に過ぎるようなら、では、この一篇がもし存在しなかったとすると、他のどの作品の詩人としてわれわれの記憶にとどめられたろう、と問い直してもいい。    汚れつちまつた悲しみに  今日も小雪の降りかかる  汚れつちまつた悲しみに  今日も風さへ吹きすぎる   こうやってはじまる詩が、中也

【読書感想文】人間たちの話

人間たちの話、読みました。 めーっちゃ面白かったです。 SFの定義ってよく分からないんですけど、藤子F不二雄のSF短編とか好きだし、筒井康隆も学生時代読んでたし、多分私はSFの短編とか好きなんだと思う。この本の中で、1番好きなSFの感じのある話は「宇宙ラーメン重油味」です。架空の話なのに、身近な事が描かれていたり、生活が描かれているのがすごく好き。私はファンタジーやSFという現実とは違った空想の世界の日常が好きなのかも。キャラクターたちが大冒険するよりもグッと身近に感じる

休日の過ごし方が人生を変える?世界の一流に学ぶ理想のオフタイム

今日も来てくれてありがとう。 それじゃあ、お話をはじめようか。 「せっかくの休日なのに、なんとなくダラダラ過ごしてしまった…」 そんな後悔をしたことは、あなたにもきっとあるはず。 本当はスッキリとリフレッシュして、次の仕事や生活にエネルギーをチャージしたいのに、気づけばSNSや動画を見ていたら1日が終わっていた……。 なんてこともありますよね。 実は、世界で活躍する一流のビジネスパーソンは、休日の過ごし方にこだわっています。彼らはただ休むのではなく、戦略的にオフの時

【書評】言葉の解像度を上げてスッキリ!理解して行動につなげる

「以下の文章を要約せよ」 国語のテストが嫌いでした。とくに「要約」というやつが。文字数まで指定された日には、試験を作った先生がタンスの角で足の小指をぶつけるように呪いをかけたものです。(ウソ) 中学時代に国語を教わっていたのは、新任のジャッキー。 小柄で可愛い女性だったのですが、ほんの少しだけジャッキーチェン顔というだけで、ジャッキーと呼ばれていました。 ジャッキーのせいで、ますます国語が嫌いになったような気がします。それが彼女の任務、綿密に計画されたプロジェクトだっ

読書記録「わたし、定時で帰ります。」

川口市出身の自称読書家 川口竜也です! 今回読んだのは、朱野帰子さんの「わたし、定時で帰ります。」新潮社 (2018) です! ・あらすじ 私こと東山結衣は、何があろうと絶対に定時で帰ると心に決めている。 馴染みの中華料理屋のハッピーアワーは18時半まで。定時で退社すれば、ぎりぎり間に合う距離である。 しかし、そんな結衣の勤務態度を、快く思わない同僚や上司は多い。 有給を取らない「皆勤賞女」の三谷さん、産休返上で働く気満々の賤ヶ岳さん、すぐ「辞める」と言い出す新入社

【読書感想文】ドストエフスキー「貧しき人々」

こんばんは! 世界最高峰の文豪、爆誕の瞬間!小栗義樹です。 メルカリにて読書感想文に使用した本を出品しています。 本日は、読書感想文を書かせて頂きます。最近読んだ本、好きな本を題材にして、好きなことを書いていく試みです。 本日の題材はコチラ ドストエフスキー「貧しき人々」です。 ロシアの文豪のデビュー作です。貧しい老人と若くて貧しい美女の恋愛物語になっています。過去に読んだドストエフスキーの作品の中では、最も読みやすかったです。進行は手紙のやり取りになっていて、お互

ユリゴコロ/沼田まほかる

積読本の中から沼田まほかるさんのミステリー小説 「ユリゴコロ」を拝読しました📖´- (2025,2,18 読了) 毎度お馴染み(!?)私の読書のための参考書「きっとあの人は眠っているんだよ/穂村弘」の中でご紹介されていた一冊です。 なんだなんだ!?なんとも気になるご紹介でした。 正直言うとそこまで期待せず読み始めたのです。1度読んだら満足しそうだから読了したら手放そうくらいに思っていました。 ……私がバカでした。 婚約者が失踪し、そのタイミングで父はガンで余命宣告され

丸山健二「バス停」感想

1977年3月「文学界」。 ネタバレあり。 講談社文芸文庫「戦後短編小説再発見①」収録。  小檜山博の小説だったと思うが、違うかもしれないが。都会に出る青年が父親と一緒に食堂に入る話があった。父親は田舎を離れる息子に何もしてやれない。それで自分のしていた腕時計を外して、これからいるっぺ、持ってけ、みたいなことを言って渡す。息子は黙ってそれを受け取る。  あー、泣けたあ! 分かりますかね。新幹線じゃなく、息子は鈍行に乗ってくんですよね。親も子も、なんかすまない、みたいな気持ち

日記 0212-0218

2025.2.12 水 書店勤務。引き続きイベント準備。休憩時間に職場の1日喫茶で胡桃のお汁粉とクッキー3種をいただいた。可愛い空間でいただく甘いおやつ、幸せ…。一緒に注文した紅茶も、香りが良くてとても美味しかった。退勤後、買い出し。隣にいた女性の買い物カゴに数種類の板チョコが入っていた。手作りするのかな。 坂元裕二脚本の映画『ファーストキス』、公開をずっと楽しみにしていたし、すごく見たいのだけれど、いまの状態で見たらたぶんめちゃくちゃ落ちてしまうのではないかという懸念があり

【人文学の要諦】 読書#158

みなさん、いつもお世話になっております! 本日は、私の投稿の軸とする一つ「本」「読書」に関して書かせていただきます。 自己紹介に書いたマイルールを守りながら、私の大好きな本について書いていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします! 今回は人文学についてです。 学問の一分野についての本って、なかなか珍しいような。 ヘッダーは、とものりさんの作品を使わせていただきました! ありがとうございます!! 目次 基本情報東北大学教養教育院 (編) 東北大学出版会 出版 2

農業のお話かと思いきや、すてきな家族のお話でした。人が生きる上で、人間関係はとても重要。中でも家族は特に大切だけれど、何よりも煩わしく複雑怪奇な関係だったりもする。家族って大変だと思いつつ、やっぱり家族っていいもんだなと、じわじわ染みる気持ちのよいお話でした( ´ ▽ ` )!

蒲公英草紙  常野物語(著:恩田陸)【読書感想文は光の中に闇を、そのさらに向こう側に祈りを見る】

以前に紹介したかもしれないけど、自分の過去記事で何を書いたか、 もはやよくわからなくなってきたので、その場合は2度目です。 恩田さんの「優しい世界」のお話です。 病気の女の子の祈りが、村を幸せにしていく。 その祈りがみんなに受け継がれて、 世界は光に向かっていく。 命は落ちても、希望は死なない。 しっとりアップライトなお話です。 ただ、ラストがバッドエンドだという説があります。 そうです。皆を幸せにするつもりの祈りが、 あの結末になるんですね。 最後の一行ですべての

愛せない日があることを。岸田奈美さんの『もうあかんわ日記』と公園へ

今日をどうしても愛せない日がある。雨の日ならぜんぶ雨のせいにすればいいけれど、青空の下では自分のせいにしかできなくて落ち込んでしまう。1年に365日もあると、どうしてもご機嫌に愛をもって過ごすことができない日がざらに発生してしまう。 できるだけストレスフリーに働いているはずでも、おいしいものを食べたはずでも、好きな音楽を聴いているはずでも、それでもどうしても、なにしたってダメダメな日がある。それは平凡で和やかな毎日を過ごすなかでの甘えではあるけれど、できるならばそのまま甘え

2025年2月前半の読了本と感想

こんにちは! 執筆に追われ追われ、ほとんど読めていないのですが、三月には公開収録もあるのでここから読書量がまたグインと増えていきそうです! ショートショートトーキョー、下にリンクあるからぜひ読んでください! それでは、二月前半に読んだ本を紹介します! ——2025年2月前半に読んだ本——①『君のクイズ』小川哲 『唯一無二の<クイズ小説>が誕生』との触れ込みだが、まさにその通り! めちゃくちゃ面白い!良いミステリー!面白い! 【あらすじ】 生放送のTV番組『Q-1グラ

Kindle Unlimited 契約を続けるている訳/生物から見た世界:Uexküll (ユクスキュル)

読書(聴読)量は Audible が多くなったが、Kindle Unlimitedの契約はそのまま。Unlimitedで物語を読む頻度は減り、拾い読みで事足りる雑誌の利用が多くなった。 以前、こんな記事を書いた。 今回は、その続編。 「Kindle Unlimited こんな使い方(読み方)もありますよ」的なご紹介。 音楽この界隈のKindleは、多くが「読み放題」対象。 次は、上の本の続きもの。タイトルに惹かれた。 思っていた内容と違ったが、読み放題なので😊 DT

著…大谷佳子『心理学に基づく質問の技術』

 漠然とした質問をしたら、漠然とした答えが返ってくるだけ。  自分が困るだけでなく、相手も「何を聞かれているのか分からないな」と戸惑ってしまいますよね。  これは、何を知りたいのかを明確にした質問をするための本。  ⭐️Kindle版  ⭐️単行本版 心理学に基づく質問の技術www.amazon.co.jp1,848円(2025年02月17日 21:18時点詳しくはこちら)

最近読んでいる本(26) #334

読んだ本のストックがたまってきたので感想を書き残したいと思います。 最近一気にまとめて書いてしまい、見づらいわ読みづらいわで見返すのも大変になっていたので、毎回5、6冊ずつ書き出すことにしようと思います。 焼き肉を食べる前に。 ―絵本作家がお肉の職人たちを訪ねた― 中川 洋典 (著, イラスト) ↑絵本作家である中川さんが「屠畜」について向き合い、市場で働く方々にインタビューした内容が綴られています。働く側からしたら、仕事として「動物を殺している」わけではなく、日々家畜

横山佐紀『中高生からの美術館・博物館入門 ミュージアムを知ろう』ぺりかん社

 2020年刊行。タイトル通り中高生向けの本ですが、中高年が読んでも十分面白いと思います。特にこれから学芸員の勉強をしようという人にとって、良い読み物になってくれるかもしれません。  本書ではミュージアム(ここでは美術館・博物館)の歴史、そして国内・海外の事例を参考にミュージアムの所蔵するコレクションについて、そしてミュージアムの社会的意義についても言及。教育普及に関する記述が駆け足的なのはちょっともったいないですが、ボリュームとしては十分です。  個人的には、「お手ふれ

読書記録:朝イチの「ひとり時間」が人生を変える

タイトル:朝イチの「ひとり時間」が人生を変える 著者:キム・ユジン 苦手な早起きからの克服 コロナ禍から在宅勤務中心の生活になったことで、もともと苦手だった早起きがさらに苦手になった。二度寝を繰り返し仕事が始まるギリギリに起きる。最低限の身だしなみだけ整えて、まだ半分起きていない頭で仕事を開始する。こんなことを続けている自分が嫌になり、Youtubeなどで朝活や意識高い系モーニングルーティンなどを見て、真似をすることから始めた。散歩に行ったり、今までは休日か夜にしか行って

読書を"最強の武器"に変える技術!

せっかく読んだ本の内容を、なかなかアウトプットできていないという経験はありませんか? 先日、『読書を自分の武器にする技術』という本を読みました。 今回は、その本からの学びである「読書からのアウトプットの悩みを解決する3つの視点」をシェアしたいと思います。 最初の3行で勝負を決める!「最初が肝心」とよく言いますが、これは記事を書くときも同じ。 ぼくが本書から学んだ重要なポイントは、冒頭の3行で読者の心をつかむということです。 具体的には以下の3つを意識する必要がありま

ロイヤルホストで夜まで語りたい

「今日どこでやる?」 ぼくにとっては退屈な大学の授業終わり。 友達とぼくの間では、この言葉が遊ぶ合図となっていた。 "やる"というのは、スマホゲームのことで、 "どこ"というのは、そのゲームをする場所のことを指している。 当時のぼくはこのスマホゲームをするために大学へ行っていたといっても過言ではなかった。(過言であれ) ぼくたちの大学は横浜駅に比較的近くて、 授業後に遊ぶとなると、横浜駅周辺で遊ぶことが多かった。 なので、 "どこ"といっても、行く場所は大体

Vol.396 【発達障害】歯が抜ける

メルカリでこんな絵本を買った。 「はぬけのはなし」  福音館かがくのとも2001年6月号 息子(6才)の前歯が1本グラグラしてきたからだ。かなり遅めの歯抜けデビューである。 本来ならば〝あら抜けそうね♪〟で済む話であり、こんな絵本を買う必要は無い。しかし私は息子の様子を見「これは準備が必要だ」と感じた。 何故なら彼は自閉っ子だからだ。 自閉スペクトラム症の息子は「いつもと違う」が苦手だ。変化を嫌いルーティーンを好む。 突発的な事態への対応が難しくストレスを抱く。また

【創作大賞2025 エッセイ部門】【女子高生エッセイ】【要約】㊴『胎内記憶はありますか?🪼』"Do you have any memories from your mommy's tummy?🪼" Koro&Arumi #イラスト #AIart #JKエッセイ

【NEW】 女子高生エッセイの作者のあるみちゃんが LARME 2024 オーディションに参加中📣 雑誌「LARME」にモデル掲載されるため、 SHOWROOM配信で1位を目指しています🥇💃 フォロー&応援(視聴👀🎥やギフト🎁🌟)お願いします💓 👇 ある プロフィール https://www.showroom-live.com/room/profile?room_id=540293 ライブ配信🎵 https://www.showroom-live.com/r/ayu0

ヒオカ『人生は生い立ちが8割』感想

ヒオカ 著『人生は生い立ちが8割 見えない貧困は連鎖する』を読みました。 本著は「見えない貧困」というものを掘り下げ、貧困への解像度を上げることを狙いとした本です。 『人生は生い立ちが8割』というタイトルだけ見ると勘違いしそうになるのですが、本書は「8割は育ちや環境によって決まり、自分で動かせる部分は残りの2割しかない」といった後ろ向きなメッセージを伝える本ではありません。 現状は生い立ちによって8割近くが決まってしまうこの不条理な世の中を、政治によって、社会を変えること

揺れるものたち|『ケナは韓国が嫌いで』より

映画「ケナは韓国が嫌いで」を観る機会があったので、心に残ったことを余韻とともに綴ってみます。 方位磁針の矢印は、絶えずわずかに震えている。 グラスの中のワインも、目を凝らせば波打っている。 見上げると、ペンダントライトもかすかに揺らめいている。 止まっているようで、全てが静かに動いている。 わたしたちもまた、ゆらゆらと揺れながら息をしている。 目線や指先、口元。ほら、今も。 止まることなく揺れ動いているでしょう? 作品の中では「揺れ」が象徴的に描かれていました。 物理

【最近読んだ本】16冊の感想を一気に書いてみた

毎月読んだ本を備忘録的に記録していこうと思っているのだが、なんやかんやで日々が過ぎ、ある程度たまったものを一気に書き出すことになってしまう。 前回は11月半ばだった。その時も「9月から記録していなかった」と書いている。なかなか学習しないものだな。 今日はこれ以上たまらないように、この約3ヶ月間で読んだ本16冊をざっくりと記録しておこうと思う。読んだ順番はバラバラ。感想は短めに。 ⚫︎青山美智子『人魚が逃げた』 「王子」とは現実の人なのか。「人魚」とは誰のことなのか、会える

センセイの鞄(全2巻|谷口ジロー,川上弘美 著)KindleUnlimited傑作選レビュー

KindleUnlimited(キンドル読み放題)で読んで面白かった本を紹介・レビューしています。 ・センセイの鞄(全2巻)谷口ジロー,川上弘美 著 川上弘美の谷崎潤一郎賞受賞作を谷口ジローがコミカライズ。 マンガ読んで原作小説を読みたくなったのは久方ぶり! とにかく谷口ジローの仕事が繊細で丁寧。(漫画化とかコミカライズと呼ぶのも憚られるほど) 距離感を保ちながらゆっくりゆっくりと進む「二人の時間や関係性」は流れる雲のようです。 忘れた頃にふと読み返したくなる心に

『私的な書店ーたったひとりのための書店ー』チョン・ジヘ著を読んで

こんにちは!寒いですねぇ。 今日は読んだ本の紹介です。 いつもはつぶやきの方でさらっと載せてたんですが、今日の本は書きたいことがたくさんあったのでこちらに! 『私的な書店ーたったひとりのための書店ー』は、韓国で独立系書店「私的な書店」を営むジヘさんが、本屋さんになるまでと本屋さんになってからの試行錯誤の日々を綴った本です。 タイトルも表紙の絵もとっても可愛くて気になったんですが、「好きな仕事を私らしく楽しみながら継続可能にするために」という帯の文章に、最初は少し緊張しなが

読書記録57 頑張りすぎる人のための疲れない習慣: 朝・昼・晩のケアと眠り方

タイトル 頑張りすぎる人のための疲れない習慣: 朝・昼・晩のケアと眠り方 発行者 河地尚之 第一刷 2022年1月20日 この本からの気づきや学び 疲れには「DHEA」というホルモンが深く関わっていて、このホルモンは副腎から分泌されるそうです。 現代人の副腎は、疲れきって元気がないため、DHEAを含むホルモンの分泌量が減っているのだそうです。 しかし、睡眠や生活習慣、食事のとり方に留意することで、このDHEAを増やすことができるとのことでした。 この本では、就寝

歳時記を旅する59〔梅〕中*梅早し家紋打ちぬく鉄扉かな 

佐野  聰 (平成七年作、『春日』) 明治二十一年、陸軍少将だった乃木希典は、赤坂の自宅に「乃木の馬屋敷」と言われるほどの煉瓦造りの立派な厩を造った。当時、明治維新の武人の心構えが失われていると嘆いていた乃木の「馬を大切にするのは軍人のたしなみである」という考えからだという。この厩の通用門の鉄扉に乃木家の家紋「持ち合い四つ井筒」が打ち抜かれている。  明治四十四年一月二十一日、学習院の院長となっていた乃木大将は、寒中の梅を詠んでいる。 「有明の月影さゆる雪の上にひとりこほらぬ

40代からの新章!「読書」で人生をアップデートしませんか?

40代。仕事や家庭で責任が増え、忙しい日々を送る中で、「いつものルーティンを続けるな毎日でいいのだろうか?」「もっと自分らしく生きたい」「新しいことに挑戦したい」そう感じている方もいるのではないでしょうか? でも、「今から何かを始めるなんて…」 と思っていませんか? 大丈夫です! 40代は、人生の折り返し地点。 まさに、新たな章を始める のに最適なタイミングです。 そして、その新たな章を彩る のに、「読書」 は最高のツールとなります。 読書は、年齢に関係なく、いつでも

推薦図書『みんな、水の中』を読んで。

この本は、発達障害と文学を織り交ぜた情緒豊かな書き連ねた本です。 少数派という立場から、発達障害当事者達が普段感じてきた違和感について、当事者目線で述べています。 発達障害は、兎に角、嫌われるか、才能に恵まれたかの極端なイメージとして紹介されがちですが、筆者はごく普通な当事者の目線に立って、日常生活からくる、健常側の人から見た当事者像の違和感について、語っています。 私も、発達障害当事者としての少数派故の感覚の違和感について悩まされてきました。 自分の見た世界が異常だ

【読書感想文】名前探しの放課後

こんにちは、歯並びです。 辻村深月さんの作品が好きなのですが、 「初期作品で唯一未読の話があるな…」 と、最近気がつきました。 それが『名前探しの放課後』です。 実は以前、図書館で借りたことがあったのですが、かなりボリュームがあって読み切れず…笑 今回は余裕のある期間に、一気読みさせていただきました。 色々と言いたいことはあるのですが、 辻村深月作品は刊行順に読むのがオススメ!!! とにかく今日はこれだけ覚えて帰っていただけると嬉しいです。 ※以下、ネタバレを含み

【檀一雄全集を読む】第二巻「リツ子・その死」

 「リツ子・その死」は意外にも、「リツ子・その愛」の結末で黒田医師がリツ子の死期があと一月と告げたことは事実では無かったという告白から始まる。  なぜそんなことになるかといえば、この「リツ子・その愛」「リツ子・その死」という作品は短篇の形で掲載誌も順番もバラバラに発表したものを編集して一本の長篇にしたものだからだ。「リツ子・その愛」の最後の章は昭和二十三年七月号の『改造』に「泛ぶ雪」という題で発表され、「リツ子・その死」の始まりの章は昭和二十三年九月号の『群像』に「日月夢

【文学フリマ広島7】で買った本の全感想書いた

文学フリマ広島に出店者として出ながら合間を縫って本を手に入れた。お客さんとしても楽しむ。これがマイルール。 という訳で文学フリマ広島7で買った本たち。 事前に気になった本は全て買えた。 さらに偶然の出会いで何冊かGET。 狙い本×偶然本=最高。 買って満足して賢者タイムに入ってしまう癖があるので今回は早めに読みました!感想ってもらえたら嬉しいもんね。 地方だからと侮るなかれ。魅力的な作品は多い。 全国各地に創作意欲の花が咲く。 東京在住の方と地方で会うのもまたひとつ

【読書】2024年に読んだ本

以前はSF小説の感想文を書きました。 今回はSF以外で2024年に思い出深い小説の感想を書きたいと思います。 ① 『飛族』村田喜代子 村田喜代子の『飛族』は、美しく幻想的な描写が印象的な一作です。物語は、数名の老婆たちが孤島で暮らしているところから始まります。彼女たちは日々、魚をとったり、浜辺で踊ったりしながら生きています。外部からは嵐や密輸業者がやって来ても、島の生活は力強く続いていくのです。特に心に残ったのは、老婆たちが「みんな死んだら鳥になった」と信じているシーン。

【読書コラム】中学生コンビが青色の歴史を学ぶ物語形式の科学ガイドブック! - 『なんで人は青を作ったの?―青色の歴史を探る旅』谷口陽子, 髙橋香里(著)

 話題の児童書『なんで人は青を作ったの?―青色の歴史を探る旅』を読んだ。  2003年、村上龍の『13歳のハローワーク』がヒットして以来、13歳でなにかを学ぶスタイルの本はいくつも出版されてきた。正直、二番煎じというか、惹句に過ぎないというか、そんな本気で作っているわけじゃないんだろうと個人的には敬遠してきた。  だから、『なんで人は青を作ったの?―青色の歴史を探る旅』のサブタイトルに(13歳からの考古学)というサブタイトルが入っているのを見つけて、一瞬、どうなんだろうと

読書の過程日記

2/12 水 最近かじりつくように読んでいた塩田武士さんの「存在のすべてを」を読み終わった。 この本、手に取る前まで知らなかったのだけどとっても分厚くて、しかも前半は普段読まないようなサスペンスというか刑事物って感じで「む、むずい……」とか「合わないかも」とか思いながら読んでた。3分の1くらい読み進めてからは少しずつ物語の雰囲気が変わって、倍くらいのスピードで読めたので初め苦戦した人もどうか諦めないでほしい(謎の訴え)。特に最後の方のページは、どうかこの幸せが一生続いてくれ…

【書評・感想】「好き」を言語化する技術/三宅香帆

「感動した!」「面白かった!」… 素晴らしい体験をした時、あなたはどんな言葉でその感動を表現していますか? 言葉に詰まってしまったり、「すごい」「やばい」を連呼してしまったりする経験はありませんか? 近年、様々な分野で「推し」という言葉が聞かれるようになりました。「推し」とは、アイドルやアニメキャラクターといった趣味の対象だけでなく、仕事で携わる商品やサービス、あるいは広めたい習慣など、自分が他者に薦めたいものを指します。 そして、この「推し」を他者に伝える際に重要となる

俺は奴隷で奴隷には詩が必要だ。~「サボる哲学」!詩とアナーキズム~

どうも残業が増えると不満が募る。生きた心地を忘れて、叫びだしたくなる。「この、ブルシットジョブが!!」と。資本主義と世間体の鎖が肉に食い込む感触を思い出す。あぁ、俺は、自由ではない。現代の奴隷だ。戦争と植民支配が生み出した、支配者と奴隷の関係。時を超え、俺は、まだ鎖につながれている。 そんな時、俺は図書館や本屋へ行く。俺にとって、本は自由の象徴だ。本の中には、鎖がない。あるのは物語と知識だ。物語と知識は、ともに支配者に抵抗する古来からの手段である。そんなわけで俺は、鎖を感じ

【読書記録】世界は経営でできている

今回は、【世界は経営でできている】についての要約と紹介を行いたいと思います。 忙しくて本が読めない貴方へ ・本の概要本書は、経営という概念を企業の金儲けに限定せず、日常生活のあらゆる場面に適用できるという視点で話が進まれています。 家庭、恋愛、勉強、人間関係など、一見経営とは無関係に見える事柄も、経営の視点を通してより良くできると著者は説きます。 読者は、ユーモラスなエピソードや文学作品の引用を交えたエッセイとして楽しみながら、経営の本質を学び、人生の様々な問題を解決

【デザイナーだから文学作品を読む】私のための世界的名著100冊リスト

デザインを学んでいる。 デザイナーはセンス勝負だと思われがちだけど、実は色々学んでいる。それこそ、色やフォント、レイアウト、心理学的なアプローチ…だけじゃなくて、ビジネスにデザインをどう活かすかということまで。 そして、いま私が知りたいのは「人間」について。 デザインってつまり、人間が見て人間が使うもの。だったら、人間のことをもっと知らなきゃいけないと思った。 そこでたどり着いたのが文学。世界的名著といわれる本を100冊、2000年前~30年前くらいまでの作品を今年1年を

読書感想文【ギリシア人の物語】〜を読み始めるまで〜

『ローマ人の物語』を読んでいるとき、その作品ができるきっかけは元々、ルネサンスに興味を持った塩野七生さんが執筆する上でローマ時代のことを調べ出したことにあるという箇所を発見したとき、それまでローマ人の物語を読みながら感じていた「かなりギリシア時代のことを調べていらっしゃる…」ということと繋がって、「…じゃぁ、きっとギリシア人の物語もいつか出てくるんじゃないか」と頭をよぎったことがあった。ほどなくて、ギリシア人の物語が始まっていた。ローマ人の物語、文庫本全43巻を時には長く積読

ことばが育む心の器と、重ねていく歳月を思うこと。

書きたい、という気持ちが芽生え、noteの下書きの画面を開きました。 真っ白な画面に、ひとつずつ文字が現れ、文章になっていくのを目で追っていると、不思議な気持ちになったのです。 そのときわたしは、美術館の展示室で、日本画と向き合っていたときのことを、書き綴ろうとしていました。 岩絵具の粒子が放つ眩さに魅せられて、その微細な煌めきを脳裏に焼き付けようとして、しばらくの間、絵の前から動けなかったこと。 それは今を生きる画家の眼に映った光景であるはずなのに、この世の外の色を帯びて

著…スティーヴ・ライト+リチャード・ジョーンズ『Banksy’s Bristol HOME SWEET HOME Fourth Edition』

 初期から2016年頃にかけてのバンクシーの作品の数々をカラー写真付きで紹介している本です。  ⭐️単行本版  どんなアーティストにも「初期」は存在するもの。  シンプル且つ強いメッセージ性を感じさせる最近の作品と、初期の作品とでは、印象が非常に異なります。  初期は、今に通ずる面影はあるものの、よく街角の壁で見かける落書きに近い印象。  それがだんだん今のスタイルへと変わっていくさまを眺めるのが非常に興味深いです。  ということをサラッと言ってのけるところも好き

何度も読み込みたい『俺の文章修行』

著名な作家が書く文章論とは、どんなものだろう。 これは、町田康『俺の文章修行』を人から勧められたときに思ったことだ。文章のプロが書く文章論は、巷にあふれている。しかし、作家の文章論はあまり聞かないから、読んでみようと手に取った。 結論から言うと、『俺の文章修行』はこれまでの文章術本とはずいぶん違う。著者が文章力を会得するまでの道のりと、文章を書くときに考えていることをつまびらかに書いてくれた本、だと私は受け取った。文章本でありながらエッセイでもある、不思議な一冊。 私は

書くことで今日もわたしは息をする¦「書きたい生活」

「常識のない喫茶店」があまりにも良くて、僕のマリさんに魅了されて、その興奮を抑えられぬまま、早速次の日には、この作品を手に取っていた。 僕のマリさん「書きたい生活」を読んだ。 前作では、お客様を出禁にしてしまったり、嫌なことは嫌だとはっきり言える強い女性なイメージだったけれど、今作ではその裏にある、繊細さを垣間見れたような気がして、読みながら、気づいたら泣いていた。 カフェで読んでいたのに、人目も憚らず泣きそうになるくらい、身に覚えのある感情がたくさんあって、その苦しさ

ムーミンの作者が描く孤独 ー 【誠実な詐欺師 / トーベ・ヤンソン】

 「誠実な詐欺師」。  このなんとも不思議なタイトルの物語は、こんなふうに始まる。  うっとりするような出だしだ。  過不足なく清潔、それでいて詩情に満ちている。たったこれだけの描写で、わたしはすっかりその世界に連れていかれてしまう。  そこに立ち、あたりを見まわしてみる。  静かで、恐ろしく寒い。朝日の恵みはまだ届かず、室内だというのに吐く息がうっすらと白い。冷たい雪のにおい、獣の毛の匂い。  ポットからは湯気がたちのぼり、やがてコーヒーの香りが部屋に満ち始める。ゆらゆ

魂を揺さぶる、一流の「三流」哲学 - 三國清三『三流シェフ』

「え、あの三國が三流…?」 誰もが目を疑うだろう。世界に名を轟かせるフレンチの巨匠、三國清三。彼が自身の半生を綴った自伝的エッセイ、そのタイトルが『三流シェフ』だ。この衝撃的な一言に、一体どんな意味が込められているのか? ページを開く前から、好奇心と一抹の疑念が渦巻く。 しかし、読み進めるうちに、その疑念は確信へと変わる。これは、単なる成功譚ではない。華やかな世界の裏に隠された、想像を絶する苦悩、挫折、そして再生の物語なのだ。 荒波が育てた「野生」の勘:少年時代の原風景