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【デザイナーだから文学作品を読む】私のための世界的名著100冊リスト
デザインを学んでいる。
デザイナーはセンス勝負だと思われがちだけど、実は色々学んでいる。それこそ、色やフォント、レイアウト、心理学的なアプローチ…だけじゃなくて、ビジネスにデザインをどう活かすかということまで。
そして、いま私が知りたいのは「人間」について。
デザインってつまり、人間が見て人間が使うもの。だったら、人間のことをもっと知らなきゃいけないと思った。
そこでたどり着いたのが文学。世界的名著といわれる本を100冊、2000年前~30年前くらいまでの作品を今年1年をかけて読むことに決めた。
なぜ文学?と思うかもしれない。
でも、時代を超えて読まれてる本にはそれなりの理由がある。長く広く残ってるのは、きっと人間の本質を描いているから。デザインにしろ、ビジネスにしろ、人を惹きつけるモノを創るには人間そのものを理解しておきたい。
だから、今年は本気で読んでみることにした。
100冊の名著。読んで、考えて、クリエイティブに活かす。読書って単なる知識のインプットじゃなくて、未来の自分の武器を増やすことに繋がるはず。ただ読むだけじゃなくて、どう活かすかも考えながら読んでいく。
※「100冊の名著」と言っているけどタイトル数は52。シリーズものや上下巻で分かれているものがあるので、冊数としては100冊くらいのはず。細かく数えるのはやめて、とにかく読んでいこうと思う。
※数冊だけ哲学書・学術書みたいなジャンルの本もある。
紀元前8~1世紀
古代ギリシャ/ローマ文学
古代ギリシャ・ローマで発展した文学で、叙事詩、哲学、演劇などが含まれる。神話や英雄譚、倫理・政治・美学についての考察が主要なテーマ。
1『イリアス』(紀元前8世紀, ホメロス)
★ギリシャ最古の文学作品。男の怒りと大戦争(トロイア戦争)を描く。英雄叙事詩の原型であり、5『アエネーイス』をはじめ、多くの文学や映画に影響を与えた。
2『オデュッセイア』(紀元前8世紀, ホメロス)
★イリアスから9年後の世界が舞台。ホメロスと並ぶ、ギリシャ神話の頂点みたいな作品。
3『詩学』(紀元前4世紀, アリストテレス)
★芸術は自然を模倣する。芸術論について悲劇を中心に解説する有名哲学書。脚本やストーリーテリングの基本理論として、映画や演劇業界でも必読書。
4『饗宴』(紀元前4世紀, プラトン)
★酒代わりに愛について語らう宴会のお話。アンドロギュノスの話は、現代のジェンダー論にもつながる。下記では美と愛の関係性について語ってます。
5『アエネーイス』(紀元前1世紀, ヴェルギリウス)
★ラテン文学最高傑作。1『イリアス』のトロイア戦争で敗者になったアエネーイスのローマ建国までの冒険譚。
14~16世紀
ルネサンス文学
ヨーロッパで発展した文学。ギリシャ・ローマ文化の復興を目指し、人間の理性や個人の自由を強調した。
6『神曲』(1321年, ダンテ・アリギエーリ)
★地獄篇・煉獄篇・天国篇から成る。14『失楽園』と並ぶキリスト教文学の最高峰。5『アエネーイス』作者ヴェルギリウスが登場し、古典とキリスト教世界を繋げる。死後の世界を通じて、人間の生き方と倫理観を問い直す。
7『デカメロン』(1353年, ジョヴァンニ・ボッカッチョ)
★デカメロンは「10日」を表す。男女10人が10日間小話を披露していく。疫病が流行する中で物語を語り合う姿は、現代にも通じるところがあるかも。
8『カンタベリー物語』(1387~1400年, ジェフリー・チョーサー)
★巡礼者たちが語る多彩な物語の集成。英文学の出発点とも言える作品。7『デカメロン』の影響を受けており、同じく語りの枠組みを活かした構成。
9『ドン・キホーテ』(1605年, ミゲル・デ・セルバンテス)
★スペイン文学の代表作。現実と幻想が交錯し、メタフィクション的要素を持つ。オチめっちゃ楽しみ。
16~17世紀
近代戯曲
特にシェイクスピアに代表される、近代的な演劇の誕生。心理描写や人間の葛藤が深く描かれるようになった。
10『ロミオとジュリエット』(1595年頃, ウィリアム・シェイクスピア)
★永遠の恋愛悲劇。若き恋人たちの運命が胸を打つ。14『失楽園』と並び、禁断の愛をテーマにした文学の象徴的作品。若者の衝動的な愛と社会の対立を描く。
11『オセロ』(1603年, ウィリアム・シェイクスピア)
★嫉妬と陰謀により破滅していく悲劇。人間心理の深層をえぐる。12『リア王』や13『ハムレット』と並ぶシェイクスピア四大悲劇の一つ。
12『リア王』(1606年, ウィリアム・シェイクスピア)
★老王リアの悲劇を通じて、家族と権力の行く末を描く。権力の移譲とリーダーシップの喪失を描く。
13『ハムレット』(1609年頃, ウィリアム・シェイクスピア)
★「生きるべきか、死ぬべきか」。復讐と哲学が交差する名作。
ピューリタン文学
17世紀イギリスの清教徒(ピューリタン)の思想が反映された文学。宗教的なテーマと道徳的な教訓が多い。
14『失楽園』(1667年, ジョン・ミルトン)
★旧約聖書の『創世記』をテーマにした物語。6『神曲』と並ぶキリスト教文学の最高峰。
18世紀
古典主義文学
理性と秩序を重んじ、バランスのとれた形式美を追求。ギリシャ・ローマ文化の影響を強く受けた。
15『若きウェルテルの悩み』(1774年, ゲーテ)
★恋と絶望に引き裂かれる青年の心情を描いたロマン主義の代表作。
16『ファウスト』(1808年, ゲーテ)
★知を求めた男が悪魔と契約する壮大なドラマ。執筆に60年もかけているらしく、それだけ一人の人間の生涯が詰まっているということにすでに興味がそそられる。
その他
17『ガリヴァー旅行記』(1726年, ジョナサン・スウィフト)
★風刺とユーモア満載の冒険譚。小人国や巨人国の描写が有名。27『オペラ座の怪人』や31『シャーロック・ホームズシリーズ』と並ぶ、19世紀の大衆文学に影響を与えた作品。
18『悪徳の栄え』(1785年, マルキ・ド・サド)
★日本では、翻訳時に「悪徳の栄え事件」が発生した禁断の書。(翻訳された『悪徳の栄え』がわいせつだとして、翻訳者と出版者が刑法175条により起訴・有罪となった。)著者サドもその"サディスティック"な性癖から性犯罪を犯し、バスティーユ牢獄襲撃の数日前まで収監されていた。
19世紀
前半:ロマン主義文学
理性よりも感情を重視し、個人の内面や自然の崇高さを描いた。ファンタジーや歴史文学も多い。
19『高慢と偏見』(1813年, ジェーン・オースティン)
★恋と結婚をめぐるウィットに富んだ名作。名前からは想像しにくいけど、純文学には珍しくすっきりハッピーエンドで終わるらしい。
20『ノートル=ダム・ド・パリ』(1831年, ヴィクトル・ユゴー)
★醜い鐘楼守カジモドと美しい踊り子エスメラルダの悲劇。NHK「100分 de 名著」のゲストコラムを読んで今回リストに入れてみた。
21『モンテ・クリスト伯』(1844~1846年, アレクサンドル・デュマ)
★復讐劇の決定版。完全フィクションというわけではなく、実際にあった事件をもとに書かれているのが人間の怖いところ。
後半:写実主義・自然主義文学
現実をありのままに描写し、人間や社会の問題を客観的に描いた。自然主義は科学的な視点を強調。
22『クリスマス・キャロル』(1843年, チャールズ・ディケンズ)
★冷酷な男がクリスマスの奇跡で改心する感動作。複数のサイトで多読初心者におすすめとされていたので、今回は原著に挑戦してみる。
23『罪と罰』(1866年, フョードル・ドストエフスキー)
★選ばれた人間は人を殺しても許される?貧困と倫理に苦しむ頭脳明晰な青年の心理を描く。
24『カラマーゾフの兄弟』(1880年, フョードル・ドストエフスキー)
★3兄弟が繰り広げる人間の本質を探求する壮大な物語。スターリンやプーチンもこの作品を愛読していた。
ゴシック文学
怪奇的・幻想的な要素を持つ文学。廃墟、幽霊、狂気などをテーマにすることが多い。
25『黒猫』(1843, エドガー・アラン・ポー)
★狂気と罪悪感が生む恐怖。ミステリーの基礎を築いた作品。
26『嵐が丘』(1847年, エミリー・ブロンテ)
★復讐と愛憎が渦巻く、英国ゴシック小説の代表作。世界の三大悲劇のひとつ。
27『オペラ座の怪人』(*1909年, ガストン・ルルー)
★謎の怪人がオペラ座で繰り広げる愛と悲劇。それっぽいシーンが来たら、The Phantom of the Operaを流しながら読みたい。
その他
28『死に至る病』(1849年, セーレン・キェルケゴール)
★絶望を哲学的に論じた名著。実存主義の先駆け。
29『白鯨』(1851年, ハーマン・メルヴィル)
★復讐に取り憑かれた男と巨大な白鯨との壮絶な戦い。Twitterで白鯨大ファンの方の布教投稿を見たので、これを機に読んでみる。
30『種の起源』(1859年, チャールズ・ロバート・ダーウィン)
★進化論を打ち立てた科学史上最重要の書。
31『シャーロック・ホームズシリーズ』(1887年~, アーサー・コナン・ドイル)
★名探偵ホームズの推理が冴え渡るミステリーの原点。
20世紀
前半:新ロマン主義文学
19世紀のロマン主義の影響を受けながら、20世紀初頭に発展した文学運動。ロマン主義と同様に感情や個人の内面を重視しつつも、より現代的なテーマや心理描写を取り入れている。
32『車輪の下』(1906年, ヘルマン・ヘッセ)
★才能ある少年が社会の圧力に押し潰される成長物語。
前半:モダニズム文学
伝統的な文学形式を否定し、実験的な手法を取り入れた。意識の流れや断片的な構成が特徴。
33『ユリシーズ』(1922年, ジェームズ・ジョイス)
★「意識の流れ」を駆使したモダニズム文学の最高峰。2『オデュッセイア』を下敷きにし、アイルランドの少年ブルームの1日を描く壮大な実験小説。
34『グレート・ギャツビー』(1925年, F・スコット・フィッツジェラルド)
★夢と現実、虚構と真実が交錯するアメリカ文学の代表作。モダン・ライブラリーが発表した「英語で書かれた20世紀最高の小説」では2位にランクインしている。
35『城』(1926年, フランツ・カフカ)
★到達できない城を目指す男の不条理な旅。この作品自体未完なので、最悪読みきれなくても自分を許したいほど、色んなサイトで「悪夢」「不条理」「腹立つ」と言われていた。
後半:戦後文学・ポストモダン
戦争の影響を強く受け、現代社会の不条理や権力の抑圧などを描く。メタフィクションの要素もある。
36『異邦人』(1942年, アルベール・カミュ)
★不条理文学の代表作。世界に対する違和感を描く。
37『雪国』(1947年, 川端康成)
★「国境の長いトンネルを抜けると雪国だった」。日本文学を象徴する美しい物語。日本人初のノーベル文学賞受賞作品。
38『一九八四年』(1949年, ジョージ・オーウェル)
★監視社会の恐怖を描いたディストピア小説。
39『老人と海』(1952年, アーネスト・ヘミングウェイ)
★老漁師と巨大なカジキの戦いを通じて人間の誇りを描く。ヨルシカが曲をつくっていたので、読了後は歌詞の考察もしたい。
40『華氏451度』(1953年, レイ・ブラッドベリ)
★本が禁じられた世界で知識を求める男の物語。華氏451度(=約233℃)は紙が自然発火する温度らしい。
41『アルジャーノンに花束を』(1959年, ダニエル・キイス)
★知能向上実験を受けた男のお話。こちらもヨルシカが曲をつくっていた。感動的で泣ける小説だと聞いたけどどうなんだろう。
前衛文学・幻想文学
前衛文学は伝統的な文学の枠を破り、実験的な手法を用いる革新的な文学。幻想文学は超常的・夢幻的な要素を取り入れ、現実を超えた世界を描く。
42『ドグラ・マグラ』(1935年, 夢野久作)
★読むと精神に異常をきたす日本異端文学の代表作。"読むと精神に異常をきたす"というキャッチフレーズが、ブランド的に強すぎる。
43『平行植物』(1976年, レオ・レオニ)
★スイミーで有名な絵本作家レオ・レオニの壮大な空想植物図鑑。デザイナー視点では、虚構を事実として見せるクリエイティブの妙が光る。3『詩学』のアンチテーゼ「自然は芸術を模倣する」ような体験を味わいたい。
ファンタジー・児童文学
想像力豊かな世界観を持ち、寓話や冒険譚が特徴。大人向けのメタファーを含むことも多い。
44『青い鳥』(1908年, メーテルリンク)
★幸福とは何かを問いかける、幻想的な寓話劇。1911年にノーベル文学賞を受賞している。
45『ホビットの冒険』(1937年, J・R・R・トールキン)
★47『指輪物語』の前日譚。著者トールキンは、幼い頃から独自言語を創作していたことで知られるイギリス文献学者。緻密に設計された世界観は「エルフ語」からも味わうことができる。
46『ムーミン・シリーズ』(1945年~, トーベ・ヤンソン)
★ムーミン谷の住人たちが繰り広げる、温かくも哲学的な物語。ムーミンの世界は核戦争後の地球っていう都市伝説あるけど、読んだら共感できるのかな。
47『指輪物語』(1954~1955年, J・R・R・トールキン)
★壮大な冒険と戦いを描いたファンタジー文学の金字塔。45『ホビットの冒険』の続編。他言語への翻訳時には、トールキン自身が作成した厳格なルールのもとに翻訳が行われた。
48『ハリー・ポッターシリーズ』(1997年~, J・K・ローリング)
★魔法と友情、成長を描く21世紀のファンタジーの代表作。児童文学の枠を超えたブランド戦略の成功例。キャラクタービジネスとしても最も成功した例の一つ。
その他
49『吾輩は猫である』(1905年, 夏目漱石)
★猫の視点から人間社会を風刺したユーモラスな小説。昨年途中まで読んでみたけど長たらしく感じて一時中止。実際、読み切りとして掲載されたところを大反響で連載になった作品らしく、冗長さが否めないのはそのせいかも。
50『風と共に去りぬ』(1936年, マーガレット・ミッチェル)
★激動の時代を生き抜く女性の姿を描く大河小説。刊行された翌年にピューリッツァー賞を受賞している。
51『そして誰もいなくなった』(1939年, アガサ・クリスティ)
★孤島で起こる連続殺人ミステリーの傑作。色々ドラマ化などもされているのに、22年生きてきて未だに犯人とかトリックを一切知らないのは奇跡かも。ネタバレ厳禁でお願いします。
52『薔薇の名前』(1980年, ウンベルト・エーコ)
★修道院を舞台にした知的ミステリー。3『詩学』には、悲劇ではなく喜劇を追求した幻のバージョンがある…という設定らしい。
2025年の成長記録
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