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【文学フリマ広島7】で買った本の全感想書いた
文学フリマ広島に出店者として出ながら合間を縫って本を手に入れた。お客さんとしても楽しむ。これがマイルール。
という訳で文学フリマ広島7で買った本たち。
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事前に気になった本は全て買えた。
さらに偶然の出会いで何冊かGET。
狙い本×偶然本=最高。
買って満足して賢者タイムに入ってしまう癖があるので今回は早めに読みました!感想ってもらえたら嬉しいもんね。
地方だからと侮るなかれ。魅力的な作品は多い。
全国各地に創作意欲の花が咲く。
東京在住の方と地方で会うのもまたひとつの醍醐味。過去文フリ東京に出ていらっしゃってたけど、見落としてた作品や著者さんがたくさんいた。こうして遠い地でまた巡り会えるのがおもしろい。逢うべき本に出逢えることを人は仕合わせと呼びます。
それでは以下、感想つらつら。
「もっとこうしたら本として良くなるかも…」みたいなことを『福本の独り言』として書く場合があるのでお許しください。あくまで一意見として。
■ クセスゴエッセイ/クセさん
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noteで書き溜めたエッセイから抜粋して生まれた1冊。
おもろい。何回か声出して笑った。
笑える文章が自分の目指すとこなので普通に嫉妬してしまった。㎗おもれえ。
『12本の薔薇』の話が特に好き。場の緊張感と失敗した後の心の叫びがもはやコントのよう。
そしてクセさんにはファニーなお友達が多い。そのお友達のおもしろいエピソードが盛りだくさん。状況を整理しながら淡々と文章にできるのは確かな筆力があるからだよなぁと。
と思ったら最後の章でトドメを刺された。
クセさんは「良いことと悪いことは同じくらい起こると思っている」らしく、運良く好きなバンドを最前列で見れた後、「こんな良いことがあったら私は絶対骨折する、骨折する、骨折する」と思いながら生活していく。居酒屋にいる時にずっとごっちゃごちゃ考え続けてる様がおもしろい。
もういいて!考え過ぎだって!!
結局、あなたが1番クセスゴじゃねぇか!
と言いたくなった。
福本の独り言
副業申請をされてないとのことで、こんなにいい本が無料配布。どうにか値段をつけられないものか…。文フリは現金でのやりとりだから帳簿に残さなくても…ねぇ?(小声)
■ ゆらゆらを抱える/守田樹さん
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生活と空想にまつわるエッセイ集。
守田さんのように静かな文章が書けるのは羨ましい。まるでアンダンテのようなテンポで文字が進む。読んだ本から着想を得た空想の旅にお供できるのが楽しかった。
『ホイミ』の話に共感。もしドラクエの呪文をひとつ使えるようになるとしたらという問い。MPをそんなに消費しない小回復で自分や疲れた後輩に癒しを。なんとも素敵な回答だろう。攻撃呪文ではなく回復呪文を選択できるようなその優しさが眩しい。
守田さんは東京に行くのがお好きとのことで東京話もいくつか登場する。ずっと神奈川在住の僕は東京へのワクワクはもうあんまりないけど、確かに魅力的な部分はたくさんあるよなと気付かされた。
福本の独り言
文字がちょっと小さくて読みづらい…かも。
■ そばぼうろの夫婦/つる・るるるさん
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新婚生活での出来事を詰め込んだエッセイ集。
つるさんは想像力が豊かで思考量が多いタイプなんだろう。行動のひとつひとつに哲学や妄想が注入されているので読んでて飽きない。
ちなみに僕は紙の本でエッセイを読む時は1冊の中で特にお気に入りの章をひとつ選ぶようにしてる。
自分の中の『好き』をくっきりさせるためと、感想は具体的な方がいいのと、一意見として作者の方の参考になるかもしれないから。
『そばぼうろの夫婦』を読んで、最初の章『カスタネット夫妻』が良くて「いきなりこれがマイベストになる可能性あるな」とか思ってたらページを捲るたび次々とベストが更新されていった。
なんじゃこの体験。初めてかもしれない。
結果、お気に入りはかなり終盤の『午前3時のかえるくん』。イベントで遠征した夜行バスでの帰り道、離れたことによって夫への愛が溢れる話。
有名なかえるくんの絵本を引用しながら『大切なものの素晴らしさは離れてるときにこそよくわかる』的な教訓を実体験を持って証明する感じ。ずっしりと強固な愛が伝わってきて素敵。
■ さよならあの日のロッテンマイヤー/とき子さん
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旅路、出費、配慮など細かい6つほどのテーマから成り立つエッセイ集。
全体を通して思ったのはとき子さんは文章における楽器の種類が多いということ。
ドラムでダンツッダンツッって叩くような軽快なテンポの文章もあればピアノだけでしっとりと沁みさせるような文章もある。それゆえに笑えたりじーんときたり様々な感情を味わえる。
1番好きだった章は『優しさの半分は作戦で出来ている』である。電車でお年寄りの方に席を譲るまでの攻防の話。
相手に向けた配慮が見えたり、作戦や葛藤が見えたり、親子の関係性が見えたり。日常の一コマだけど味わいが何層にも重なってておもしろかった。
あとこれは全てに言えるけど終わり方がいつも上手。まとめ力というか着地力というか。
どのエッセイも「えっ?何?素敵…」という余韻が残る。お上手でニクイ。
どの話も根底に優しさが敷き詰められていて、とき子さんの人間味が滲み出てくる。
満足感がたっぷりある1冊でした。
先ほどのつる・るるるさんととき子さんは仲良しでいつも同ブースで出店されてます。全国的に見ても戦えるほどハイクオリティな作品ばかりなので要チェックです。
福本の独り言
ノド(本の内側)が空き過ぎ?もう少し詰めてもいいかも。
■ あの時のバリキャリです/三十路の会
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三十路の仲良し3人組のエッセイ集。
それぞれのエッセイ数編ずつ収録。
まず表紙がめっちゃかわいい。イラストがかわいいし裏表紙には後ろ姿が描かれてて手が込んでる。タイトルのフォントがにゅるにゅるしてて良い。総じて超いい。
お互いの他己紹介から始まる。これによって3人の人柄が浮かび上がってくるし仲の良さも伝わる。とってもいい導入だ。
ゆりこさんの芯の強さ、はるさんのオタクの熱量、まいさんのストイック多趣味など見どころは三者三様でおもしろい。バリキャリという自分とは真逆の場所からの景色を知れてありがたい。
特にまいさんの『三十路湯河原執筆合宿』では3人の空気感がよく伝わってよかった。仲の良さとか年齢をしみじみ味わうとことかダラけちゃう感じとか。
福本の独り言
最初の他己紹介の部分ではるさんが2034年(10年後からの紹介)という体で進めていたのがちょっと分かりづらかった。
他己紹介し合うってのがめっちゃいいコンテンツなのでここで変化球は必要ないかも。まだ3人のことを知らないこちらからすると、どれが本当でどれが未来の話かわからなくなるのが勿体無い。
■ 生活なんて全て誤差の範囲/はるさん
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なんとクレジットカードの明細を公開する本。
企画がおもろ過ぎる。確かにお金の使い方って生活とか趣味趣向とかが全部出るもんなぁ。
家族がいても尚、自分の好きなことに全力投球できるのが素敵。
私では見たことない請求金額で非常に頼もしかった。よく働き、よく遊ぶを実現されてて「大人はこうでなくっちゃ!」と思った。
見てはいけないものを見てるような貴重な経験をさせてもらいました。
■ ゆくあてのない蒲公英/南野やぎざさん
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まずタイトルが好き。「美しいなー」と思ってたら、歌人の木下龍也さんとの短歌教室の中で生まれた歌の一部だと知る。なるほど木下さんに褒められるのもよくわかる。
あと毎日、日記と短歌を書いていてシンプルに尊敬。そりゃ刀も研ぎ澄まされていくわけだ。
あとやっぱ映画「カラオケ行こ!」に対する愛がすごい。さすがに布教されそう。
個人的に気になった歌は11月29日のこちら。
午後八時のコンビニに寄るどんな日もレトルトもおにぎりもぴかぴか
午後八時、仕事帰りだろうか。綺麗に整列された食品が安心感とか癒しになる。
…と捉えることもできるし、
どんな日も補充されて陳列されてまた新しいものが常に並んでるっていう状況が同じ日々の量産に思えて怖くもあるというか。「ぴかぴか」が無機質で人工的な面を際立たせてるようにも思えてくる。
色んな捉え方ができる歌はいい歌だ。
やぎざさんとは1年前の文フリ広島でお隣さんになったご縁がある。あの日の一点で人生が交差して、そのままお互いの軌道に戻ってまた生活を続けていくという営みが、当たり前なのだけどとても不思議な感覚になる。やっぱ日記っていいな。生活の証。命の記録。
あと日記の中に自分の名前を出していただいてめちゃくちゃ嬉しかった。
福本の独り言
全体的に文字の行間が詰まりすぎかも。
■ 無名の一次創作文芸個人サークルが1年間で500部頒布する方法。/今田ずんばあらず
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タイトルの通り。今田さんが個人で本を届けるためにしてきた心構えや具体的手法をまとめた1冊。
ボリュームがすごい。何周も読み込むことになりそう。
創作者としての心構えから始まり、告知の方法、ブースでの設営についてなどこれさえあれば一通りは網羅できる。
初心者はもちろんのこと僕のような中級者(何度か文フリとかに出て多少の経験値がある人間)でも十分ためになる。
今田さんの経験から掴み取った具体的な手法が詰まっていて大変参考になった。
車での遠征や車中泊などは、自分は今後もおそらくしないので体験記として普通に楽しめる。
『読者の立場になって作品に身を捧げる』や『地方イベントは、そこでしか出会えない読者がいる』という言葉にたいへん共感。
今田さんの読者をひとりひとり大切にする姿勢は見習っていきたい。(僕も今でも意識はしてるけど)
■ 急な「売れ」に備える作家のためのサバイバル読本/朱野帰子さん
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内容はタイトルの通り。作家・朱野帰子さんによる自身の体験や知見をまとめた1冊。
『わたし、定時で帰ります。』がヒットし、連続ドラマ化、小説累計発行部数26万部、4カ国で翻訳…など華やかな実績を持つ朱野さん。
しかしその裏で起こる作家の苦悩の数々。地味な事務的な作業の話や、売れたことにより現れた嫌な人たちの言葉、疲弊して小説が書けなくなった話など貴重すぎる当事者の話のオンパレードで終始、興味深く読めた。
光が大きく当たるとその分、影も大きくなるという事実を痛感。
一応、本書は技術系同人誌と括られるらしい。でも血が通っていて温かくて実用的でもあるエッセイみたいに感じた。
正直なところ、僕は「急売れ」する予定はないがシンプルに読み物としておもしろかった。当然、作家の方、作家を目指す方にとってはお守りのように輝く必読書になると言える。
労働について考える本という側面も持つので、本書が持つ意義というかエネルギーは大きい。是非、多くの人におすすめしたい1冊。
■ たての糸とよこの糸 〜お口雑談〜/古荘みち子さん
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歯科衛生士の知見を活かした歯のエッセイ集。
すごい、歯とお口の話だけの本だ。
あとがきに『歯に関する資料や絵本はあるけど身近な本はあんまりないので作成しました』的なことが書かれていた。
確かに。歯エッセイってありそうでなかった。
ためになるしおもしろい。
中島みゆきを彷彿とさせるタイトルもGOOD。
福本の独り言
中綴じ製本(ホッチキスで留めるタイプのやつ)だとどうしてもページがめくりづらかったりするので個人的にはくるみ製本(背表紙があるやつ)がおすすめです。
■ STOP LOOK BOTH WAYS/ミズモトセイジさん
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写真家のミズモトさんが撮った写真と3人の女性のエッセイが掲載されたZINE。
英語が弱い僕はタイトルの意味をGoogle翻訳で調べた。
『止まって左右をよく見てね』的な意味合いっぽい。綺麗な写真だなーと思ってただけの写真をよく見たら空の青、いちょうの黄、シャツの赤で信号になってる!
内容も新しいチャレンジの背中を押してくれる青、悩んだときに立ち止まる黄色、物事を辞める決断をした赤の3つのエッセイになっている。
短い文章ながら3つの想いが浮かび上がってきてそのどれもに共感できる。進む、迷う、止まる。どれも人生の中で必ず経験することだ。自分の現状によって響く色が変わってくるかもしれない。
ちなみに僕が1番響いたのは青。ちょうど新しいチャレンジの途中だからだろう。
オシャレな見た目だけどそれだけに留まらないコンセプトの整った1冊。
■ 孤独なよるを脱して/Mihoさん
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社会人5年目の悩みや葛藤が詰まった1冊。
力強く前に進むクリエイターの方へのインタビューも載っていてエッセイというよりは雑誌っぽい感じ。頑張ってる人の姿は刺激になる。
『悩みや問題はとにかく分解せよ』という発想にはなるほどと思った。すぐ使えるテクニックだ。
表紙が夜の街で、裏表紙が朝の街。
葛藤の夜が明けたような表現だろうか。
それとも「悩んでたってどうせ朝はやってくるんだよ」というメッセージだろうか。
どちらにせよオシャレな演出だ。
福本の独り言
エッセイ部分が少なく感じたのでもっとMihoさんの文章が読んでみたかったなと思った。
まとめ
よし、書いた。
今回もいい本にたくさん出会えた。
読ませていただいたからには、感謝とリスペクトを込めて感想を。愛を込めて花束を。
【文学フリマの来場者の皆様へ】
ここからは文学フリマに来場して本を買ったあなたに業務連絡です。
いい本には出会えましたか?
わざわざ会場に足を運び、自らの意思で本を選び手にするあなたは素敵です。
そんな素敵なあなたにひとつお願いがあります。
それは是非、読んだら感想を作者に伝えてあげてください。
いつになってもいい。
作者の方々はあなたの感想を待ってます。
ちょっと億劫かもしれないけど是非あなたの言葉で感想を伝えてあげてください。
びっくりするほどモチベーションになります。
まだまだ感想を上げる方は少数派です。
完璧じゃなくていい。乱文でもいい。
どうか正直な気持ちを言葉にしてみてください。
温かい気持ちの連鎖を起こしましょう。
どうかよろしくお願いします。
#文学フリマで買った本 のタグをつけてTwitterにサクッと投稿してもよし。
noteにずっしりと長文で書くもよし。
DMやメールなどでこっそり送るもよし。
きっとどちらでも嬉しいはずです!
ちなみにですが、もちろん福本も感想待ってます!冗談抜きで生きる糧になりますので何卒!
(実は今回、XのDMで感想いただきまして。泣く寸前くらい嬉しかったんですよ。短い文だったけどストレートで褒め上手ですぐスクショしました。お守り。)
という訳で感想大歓迎。
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