潮田クロ

ポンコツ小説、他に本や映画、歌や漫画の感想文などを書いてます。投稿にはフォトギャラリー…

潮田クロ

ポンコツ小説、他に本や映画、歌や漫画の感想文などを書いてます。投稿にはフォトギャラリーを使わせて頂いてます。クリエーターの皆さま、いつも有難うございます。 趣味で書いてますので、厳しいご批評はご容赦ください。オヤジをいじめないでください。仲良く、楽しくがモットーです。

マガジン

  • 小説1回目

    完結した中編小説の1回目が置いてあります。

  • 憂しと見し世ぞ

    連載小説 サリンジャー「ナイン・ストーリーズ」のネタバレがあります。

  • 【短編連作】ことシリーズ

    短編連作集です。連載小説ではありません。

  • 中編小説

    200枚くらいの小説です

  • あの頃

    遠い昔。大学時代の思い出

最近の記事

【短編小説】和馬の母親のこと・その2 連作13

「江田さん。ちゃんとお酒抜けちょる?」 「抜けちょる抜けちょる。ええか」 はあーと津矢子に吐きかける。 「いや、やめて。ニンニク食うた? 違う意味で臭いわ」 顔を背けて、手で払う。 「な。抜けちょろう」 と、おどけ顔。 津矢子はキーと今日の集配票を渡す。 「枕崎かい」 ちらと見て呟いてから、事務所の机で受け取りのサインをする。下を向いて書きながら、言う。 「辞めるんだって?」 「あ、うん」 「勝の野郎、まだウロウロしてんのかい」 「いんや。もうたぶん、この町にはおらんけえ」

    • 日本近代文学館に行ってきました。

      特集は「編集者、かく戦へり」。作家と編集者の手紙のやり取りが展示してありました。 吉本隆明が定年退職する懇意の編集者に宛てたあたたかい手紙。 原稿があがらなくて、「助けてください」「助けてください」「助けてください」と三度書く水上勉。 編集者とゲラのやり取りを9回もやって(どれも真っ黒!)芥川賞を取った中上健次の受賞の言葉。泣いたそうです。 原稿できなくて待ってもらう側なのに、やたら偉そうな丹羽文雄。 文庫の裏の内容紹介文を「ちょっと直しました」と書く丸谷才一。(この人"ちょ

      • 小説を書いていて気をつけてること

         えー、絶賛(いうても30人くらいしか読者いてませんが)小説粗製濫造中の、クロです。今日は、小説を書いてる上で、私が気をつけてることなど書きたいと思います。 私個人のモットーみたいなもんですから、興味ない方は、ここでスルーしちゃってくださいませ。  さて、それは何か、と言いますとですね。え? 視点の固定かって? 畳語がないように? 主述のねじれ? 舞台設定をきちんとする? 登場人物の年齢? 性格設定? 配置? 季節? 起承転結のバランス? つかみの冒頭? 事件の起こし方? 家

        • 【短編小説】団子平田屋が経営不振に陥ること 連作12

           団子屋も、もちろん飲食業である。そして団子屋は、人気商売である。  団子屋が団子屋として成り立つ為には、まず団子が旨くなくてはならない。次にお手頃価格でなくてはならない。最後に店の対応が気持ち良いものでなくてはならない。 以上三点は、団子屋に限らず、飲食業の基本である。  が、団子平田屋の売り上げ不振の原因はそこには、ない。  平田屋の団子は旨いのだ。団子屋の団子が旨いのは当たり前で、団子屋で団子が旨くなければ、いったい何が旨いと言うのか。どうしろと言うのか。だから団子屋の

        【短編小説】和馬の母親のこと・その2 連作13

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        • 小説1回目
          9本
        • 憂しと見し世ぞ
          17本
        • 【短編連作】ことシリーズ
          13本
        • 中編小説
          122本
        • あの頃
          26本
        • 短編小説
          29本

        記事

          【短編小説】和馬の母親のこと・その1 連作11

           津矢子が就職したのは、運送会社の事務だった。長距離トラックのシフトを組むのが、その主な仕事だった。集荷場から小売りの配送所へ。部品工場から組み立て工場へ。地方から大量消費地へ。配送センターから配送センターへ。荷を積んで送り届け、そこでまた荷を積んで送り届ける。長い距離の方が儲かるのでドライバーはその方を喜んだ。殆ど休みなし、車中泊でトラックを走らせるのが当たり前の時代だった。荷下ろし荷積みは、本来ドライバーの仕事ではないが、当たり前のようにやらされた。やらなければ、仕事は回

          【短編小説】和馬の母親のこと・その1 連作11

          【短編小説】金曜日のこと 連作10

           異常な可愛がり方だと思った。  金曜日の放課後、学校で親を呼んでの、アタシと和馬の和解の会が開かれた。教室で揉めて、アタシが怪我をしたのだ。  その席で、アタシの両親やアタシ自身に、和馬のお母さんは度が過ぎるくらいに頭を下げて、涙を流して、でも和馬に頭は下げさせなかった。一度も和馬に反省を促す言葉もかけなかったし、まるでこっちが怪我の話題を出す前に、謝って全て終わりにしようという作戦のようにさえ見えた。  元より私の両親は和馬に謝ってもらおうなんて、露ほども思ってない。父は

          【短編小説】金曜日のこと 連作10

          【短編小説】そもそもの始まりのこと 連作9

           11月になって三者面談が始まった。高校3年になって、文系クラスに行きたいのか、理系クラスにしたいのか、卒業後の進路選択も踏まえて、決める時期が迫っていた。 「なまじ理系とか選んじゃって研究職とか目指されたら、嫁に行かんとか言い出すかもしれん。文系文系。花乃は頭がええから、英文科やらええじゃろ」  金を出してもらう手前、平吉にも相談する。すると、私の話半分で、勝手に私の将来を決めようとする。 「でも、お爺ちゃんは理系じゃろ」  そう反発してみると、 「当たり前じゃ。日本が今発

          【短編小説】そもそもの始まりのこと 連作9

          小説が言うこときかない

           ども。小説粗製濫造してるクロです。最近やたら書いてます。お目汚しで申し訳ない。なんでよく考えて書かないんだ!て良心に叱られてる今日この頃です。まあ、なんていうか、ちょっと自分を試してるっていうか、そんな感じでやってます。  その昔、サザンがデビューした時、6ヶ月連続新曲発表するとかやってました。覚えてますか。昔過ぎますか。すいません。あの時、とにかく新しい曲を出し続けることに意味がある、みたいなこと桑田さんが言うてたと思います。違うかも知れませんけど。  で、まあ、才能の質

          小説が言うこときかない

          【短編小説】田んぼに二人ライダーが参上すること 連作8

          「変シィーン! とぉー!」  気が狂ったのか広之進。驚いて、みんなが注目する中、仮面ライダーのテーマソングを歌いながら、広之進は教室を駆け巡る。 「あぶない!」 「走らんで!」 「何じゃい」 「頭、おかしいんか」 クラス中から、非難轟轟の声が上がる。その中を、 「ぶる、ぶる、ぶるーん! スピード全開、ザ・サイクロン!」 と叫び回る。案の定、賢治の前で捕まえられて、すっ転ばされる。 「いてーの。賢治!」 「アホが。走りたいんなら、校庭で走れい。迷惑じゃ」  尻をさすりさすり広

          【短編小説】田んぼに二人ライダーが参上すること 連作8

          ゲゲゲの鬼太郎

          私の兄が好きだった。私の長男も異様に好きだった。好きすぎて、婆ちゃんにねだって"ちゃんちゃんこ"を編んでもらい、誕生日のプレゼントに、私に下駄をねだった。紙切れをセロテープで片目に貼り付け、"ちゃんちゃんこ"を着て、意気揚々と下駄を履いて遊びにでた。気味悪がって、他の子は近づいてこなかった。妖怪の絵も何枚も何枚も何枚も描き、描き続け、コマ割りで漫画を描くことを覚え、インクとGペンで描くようになり、やがて絵画に目覚め、今、美大に通っている。美大! もうまともな人生は歩めないかも

          ゲゲゲの鬼太郎

          【短編小説】アパートメントがアールデコ調であること 連作7

          「どこが小料理な屋じゃ」 「どこかって、ここがじゃ」 「唐揚げ出すよな小料理屋がどこにあるんじゃ。ハムエッグとか焼きそばとか、大概にせえよ」 「立派な料理じゃないの。料理出すんじゃから料理屋じゃ」 「小は? 小はどこ行ったんじゃ」 「なんじゃ、しろうしいな。小なんぞ、どうでもええ」 「小が大事じゃぞ。小粋の小じゃ。焼きそばに小粋もクソもあるか!」  別に喧嘩しているのではない。小料理屋とはワシも納得し難いので、そうだな、居酒屋とでも言っておこうか、本当は単なる飲み屋なのだが、

          【短編小説】アパートメントがアールデコ調であること 連作7

          【短編小説】体育でドッチボールをやったこと 連作6

          「アタシは謝らんなけえの」 月曜の朝、教室に入って、教科書を机に入れていると、由里子が前の席の和馬のところに来て、喧嘩腰でそう言う。先週の金曜のことかと思う。由里子が勘違いで和馬に殴りかかって、和馬にやり返された。まあ、和馬は防御したまでで、由里子が勝手に怪我をしたまでであるが。放課後、親が呼ばれたようで、それの流れの話らしい。 「ええよ。構わん」 と和馬は由里子の顔も見ずに答えた。5秒くらい由里子は、立っていたが、そのあと和馬は何も言わないので、ぷいっとした顔で離れていった

          【短編小説】体育でドッチボールをやったこと 連作6

          【短編小説】天ぷらの種が全部サツマイモであること 連作5

           その人が来れば、欲しいものは何でも買ってもらえた。サッカーボールでもグローブでもバットでもスパイクでも。野球版でも人生ゲームでも電子ブロックでも。本でもノートでも色鉛筆でも。書道セットでも勉強机でも図鑑でも漫画でも本立てでも。デコデコの自転車でもライダースナックダンボール一箱でも。 「そろそろ音楽に興味が出てくるじゃろ。したら、次はラジカセかの。それとも本格的にステレオか。それを越えればギターかドラムか。ジイジは金がなんぼあっても足らんのう」  平吉はわざと顔をしかめて困っ

          【短編小説】天ぷらの種が全部サツマイモであること 連作5

          天才バカボン

          アニメは楽しめた。凄いギャグマンガであると噂は聞いていて、でもうちは小学校までマンガ禁止だったので読めなかった。アニメは見てよかった。だから、 🎵西から上ったお日様が東へ沈ーむ で、もう大爆笑だった。期待値爆上がりの笑う気マンマンなんで、なんでもみんな笑ってた。"こにゃにゃちは"で大笑い。"バカ田大学"で大笑い。"レレレのおじさん"で大笑い。今見たらどうなんだろう。当時ほどではないにしても、アニメはそこそこ楽しめると思う。  中学校で漫画解禁となり、私は衝撃の体験をする。小学

          天才バカボン

          【短編小説】狐かコウモリであること 連作4

           和馬がライダースナックを箱買いしていることを言いふらしたのは広之進であった。  いくらライダーカードを持ってても、ライダーアルバムを持っていても、未使用のラッキーカードを持ってても、 「インチキじゃね」 と広之進は言った。子供のルールに反するという理由らしい。何が出るのかわからない、既に持ってるカードが出てがっかりしたり、人気のない変な怪人のカードが出てがっかりしたり、誰も知らないカードが出て喜んだり、そういう子供ルールから、和馬は逸脱している。要は、 「金がありゃなんでも

          【短編小説】狐かコウモリであること 連作4

          山ねずみロッキーチャック

          日曜の朝、再放送されていて、毎週楽しみに見ていた。しかし、筋は全く覚えてない。今でも覚えているのは、その獣(ケモノ)感である。獣の身体的動きが実に忠実に再現されていて、それを見ているだけで至福であった。 獣と言えば、ラスカルが有名だが、あれに釣られて、馬鹿者たちがアライグマを山ほど飼い、面倒見切れなくて、みんな野に捨て、いま大問題である。 だがロッキーチャックにそのようなことはなかった。だいたい山ねずみとはなにか。けっこうデカそうだが、実物は知らない。みんな現物を知らないので

          山ねずみロッキーチャック