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【読書】2024年に読んだ本

以前はSF小説の感想文を書きました。
今回はSF以外で2024年に思い出深い小説の感想を書きたいと思います。

① 『飛族』村田喜代子

村田喜代子の『飛族』は、美しく幻想的な描写が印象的な一作です。物語は、数名の老婆たちが孤島で暮らしているところから始まります。彼女たちは日々、魚をとったり、浜辺で踊ったりしながら生きています。外部からは嵐や密輸業者がやって来ても、島の生活は力強く続いていくのです。特に心に残ったのは、老婆たちが「みんな死んだら鳥になった」と信じているシーン。民間信仰の一部を感じさせるこの信念が、どこか美しく、そして人間の深い部分に触れるようで、心に残ります。

この物語の魅力は、その幻想的な雰囲気にあります。村田が描く景色や島の生活は、ただの風景描写にとどまらず、どこか非現実的で夢の中のような美しさがあります。過酷な状況の中でも前向きに生きる老婆たちに、静かな感動を覚えました。読後に感じる余韻が長く残る作品です。


② 『焼きそばうえだ』さくらももこ

さくらももこのエッセイ『焼きそばうえだ』は、彼女のユニークな視点とセンスが光る一作です。子供の頃、私は『ももこの世界あっちこっちめぐり』に夢中になっていました。あのころは、ももこの世界がすごく遠い存在のように感じていました。でも、この『焼きそばうえだ』では、彼女がぐっと近く感じられます。作品は、ももこが友人と一緒に「焼きそば屋」を海外で始めるという話。しかも、酔っ払って勢いで決めたというから、さらに面白い。

店を立ち上げたものの、最初の客が「くずみたいな人たち」だという展開も、リアルで笑ってしまいます。そんなシュールなところが、さくらももこの魅力の一つ。彼女のセンスがどうしてこんなに鋭く、シュールなのか。もう新作を読めないのが本当に寂しいですが、この本でまた少し、ももこの世界を感じられた気がします。


③ 『ナポリの物語 1~4巻』エレナ・フェッランテ

『ナポリの物語』は、エレナ・フェッランテの名作で、イタリアの小さな町を舞台に繰り広げられる友情物語です。全4巻と非常にボリュームがあり、読み応えたっぷり。最初は「分厚すぎる!」と思っていたのですが、物語が進むごとにその面白さに引き込まれ、あっという間に読み終わってしまいました。

物語の中心は、リラとエレナという二人の女性の友情です。時代背景は、手工業から機械工業への移行期、労働者と資本家の対立、政治不安、そして女性たちの教育と家庭での立場。リラは、女性としての強さや賢さを持ち合わせながらも、どこか不安定な部分を抱え、エレナはそれに惹かれながらも時には疎遠になったり、競い合ったりする。そのたびに、二人の間にさまざまな感情が交錯します。

時に励まし合い、時に嫉妬し、離れてもまた再会する――この複雑な友情が、読んでいて本当に心に残ります。そして、リラがどこへ行ったのかという謎が物語をさらに引き立てます。友情だけでなく、社会や時代背景の影響が強く出ているところも、この作品の深さを感じさせます。政治的な背景や歴史的な変遷が、女性たちの生活や友情にどう影響を与えていくのかが描かれており、考えさせられることが多かったです。


おわりに

どの本も、印象に残る登場人物と深いテーマが絡み合い、それぞれの物語が非常に魅力的でした。読書を通じて、時には感動し、時には笑い、また時には考えさせられることが多かったです。

皆さんはおすすめの小説はありますか?ぜひ教えてね☆

最後まで読んでくださりありがとうございます。よかったらスキも押していただけると嬉しいです☆


以下の読書リストは、自分用に残しておきます。

朝井リョウ

  • 桐島部活止めるってよ

有川浩

  • フリーター家を買う

有馬頼底

  • 臨済禄を読む

我孫子武丸

  • 殺戮にいたる病

伊坂幸太郎

  • 残り全部バケーション

  • 逆ソクラテス

  • フーガはユーガ

  • 死神の浮力

江國香織

  • ひとりでカラカサさしてゆく

  • 犬とハモニカ

エレナ フェッランテ

  • ナポリの物語 1~4巻

貴志雄介

  • ミステリークロック

  • 罪人の選択

  • 我々は、みな孤独である

  • 新世界より

  • 秋雨物語

  • 梅雨物語

川上未映子

  • ウィステリアと3人の女たち

さくらももこ

  • ももこの21世紀日記

  • 焼きそばうえだ

  • ももこタイムス

  • さくらメール

  • ももこの宝石物語

  • ももこのトンデモ大冒険

  • ももこの宝石手帖

香月夕花

  • 昨日壊れはじめた世界で

神津凛子

  • オイサメサン

群ようこ

  • れんげ荘

西加奈子

  • 窓の魚

  • 夜が明ける

瀬尾まいこ

  • 図書館の神様

  • 卵の緒

  • 掬えば手には

  • 春戻る

  • そしてバトンはわたされた

  • あと少し、もう少し

辻村深月

  • 盲目的な恋と友情

  • クローバーナイト

  • 家族シアター

谷 瑞恵

  • 語らいサンドイッチ

  • 巡り遭いサンドイッチ

多和田葉子

  • 献灯使

田丸雅友

  • インスタントジャーニー

滝羽麻子

  • ありえないほどうるさいオルゴール店

中山七里

  • セイレーンの懺悔

  • さよならドビュッシー前奏曲

村田喜代子

  • 耳の叔母

  • 故郷の我が家

  • 姉の島

  • 飛族

村田沙也加

  • 生命式

  • 消滅世界

  • 地球星人

  • 丸の内魔法少女ミラクリーナ

  • となりの脳世界

  • キレイなしわの作り方

  • 変半身

村雲菜月

  • もぬけの考察

宮部みゆき

  • 英雄の書

  • 地下街の雨

  • 取り残されて

  • 荒神

道尾秀介

  • 向日葵の咲かない夏

大江健三郎

  • こだま

東野圭吾

  • 流星の絆

  • 透明な螺旋

  • 白鳥とコウモリ

  • マスカレードゲーム

  • ガリレオの苦悩

  • 新参者

フィリップ K ディック

  • フロリンクス8から来た友人

  • アンドロイドは電気羊の夢を見るのか

羽田圭介

  • 滅私

  • スクラップアンドビルド

ピエール・ルメートル

  • その女アレックス

ブレンディみかこ

  • ぼくはイエローで、ホワイトでちょっとブルー

丸山正樹

  • 龍の耳を君に

山崎ナオコーラ

  • 肉体のジェンダーを笑うな

  • 反人生

  • 長い終わりが始まる

  • 美しい距離

  • りぼんの男

  • 趣味で腹いっぱい

  • 偽姉妹

  • 可愛い世の中

湊かなえ

  • Nのために

  • ブロードウェイ

  • ユートピア

  • カケラ

  • 物語のおわり

  • ドキュメント

  • 贖罪

  • 落日

  • 往復書簡

  • 絶唱

湊ナオ

  • 東京普請日和

歌野晶午

  • 家守

  • 葉桜の季節に君を想うということ

ウィリアム ゴールディング

  • 蠅の王

有馬頼底

  • 臨済禄を読む

パウロ コエーリョ

  • アルケミスト

今村昌弘

  • 屍人荘の殺人

ピエール・ルメートル

  • その女アレックス

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