堀間善憲

気がついてみたら60代のなかば。これまで出会った本や音楽、映画……からピックアップして、自分なりに解読してみたいと思います。めざすはあっと驚くような大発見ですが、果たしてどうなりますやら。みなさまもご一緒に楽しんでいただけますと幸いです。

堀間善憲

気がついてみたら60代のなかば。これまで出会った本や音楽、映画……からピックアップして、自分なりに解読してみたいと思います。めざすはあっと驚くような大発見ですが、果たしてどうなりますやら。みなさまもご一緒に楽しんでいただけますと幸いです。

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  • note クラシック音楽の普遍化を達成する

    • 2,366本

    クラシック音楽の歴史や作曲家、作品について、哲学的な視点から分析し、その普遍性や深さを探求する和田大貴のnoteです。クラシック音楽について語り合えることを楽しみにしています。参加希望の方はマガジンの固定記事でコメントしてください。

最近の記事

アナログ派の愉しみ/本◎中根千枝 著『タテ社会の人間関係』

連続強盗殺傷事件の 集団原理とは? 連日のようにニュースが声高に報じている首都圏連続強盗殺傷事件のうち、一件はわたしが居住する地域のすぐ近くで発生して、この「闇バイト」を利用した物騒な犯罪が身近に迫っていることを思い知らされた。と同時に、こうした事態に対してとめどない恐怖と怒りに駆られる一方で、どこかデジャヴ(既視感)を呼び起こされるような居心地の悪さも覚えてしまったのである。    農村の封鎖性ということはしばしばいわれてきたのであるが、筆者の観点からすれば、都市におけ

    • アナログ派の愉しみ/映画◎ウィリアム・ワイラー監督『ベン・ハー』

      分断と復讐の 果てにあるものは アメリカの建国以来の歴史において南北戦争(1861~65年)が特別重大なできごとだったのは、約62万人という戦死者数がのちの第一次・第二次世界大戦での合計を上まわっていることだけからも明らかだろう。この未曾有の内戦はまた、ハリウッド映画史に屹立するふたつのスペクタクル大作を生みだした。ひとつは『風と共に去りぬ』で、マーガレット・ミッチェルが1936年に発表した小説をもとに、1939年にヴィクター・フレミング監督によって映画化されてアカデミー賞1

      • アナログ派の愉しみ/音楽◎ブリテン作曲『ピーター・グライムズ』

        そこには 島国特有の心理機構が? 東京・東池袋の自動車暴走事故(2019年4月)から5年あまりが経過した。この間、妻と幼い娘の命が奪われた夫の姿をテレビで見るたびにわたしも熱いものが込み上げ、元高級官僚の加害者(当時87歳)には激しい憤りを覚えた。そして、事故は車のブレーキが効かなかったことが原因だと無罪を主張していたかれに対して、世間は「上級国民」のレッテルを張りつけて耳を貸そうともしなかった状況に背中を押されるかのごとく、裁判では禁錮5年の実刑判決が下されて被告も控訴を

        • アナログ派の愉しみ/映画◎清水 宏 監督『按摩と女』

          温泉場には 女性がよく似合う 初夏の陽光に照らしだされた崖沿いの山道を、杖を突いたふたりの若い男がもつれあうようにして歩いてくる。こんな会話を交わしながら。   「ねえ、徳さん、山の温泉場もまたいいね。山は青葉のころにかぎるよ。いい景色じゃないか、まるで見えるようだ。きょうはずいぶん急いだようだけれど、何人ぐらい追い越したかな」 「うーんと、17人だ。前を歩いている目明きをあとから追い越すときは気持ちいい。これはなんだね、めくらじゃなくちゃわからない気持ちだね」 「向こう

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          アナログ派の愉しみ/本◎黄文葦 著『新中国語から中国の「真実」を見る!』

          いまこそ 等身大の隣人を知るために 一読三嘆とは一度読んで何度も感心するという意味だが、黄文葦の『新中国語から中国の「真実」を見る!』を手にして、久しぶりにこの四文字熟語がよみがえった。四半世紀にわたって日本と中国の双方に軸足を置き、両国の言語を自在に操るジャーナリストならではの快著というべきだろう。近年中国のネット社会にはびこる流行語を巧みに読み解く手際に、わたしは思わず膝を打ったり、ニヤリと笑ったり、何やらしみじみとしてしまったり……と、さまざまに心揺さぶられずにはいられ

          アナログ派の愉しみ/本◎黄文葦 著『新中国語から中国の「真実」を見る!』

          アナログ派の愉しみ/本◎マリリン・モンロー談『マリ・クレール』インタヴュー

          もっと優れた人間に、 そしてもっと幸福な人間に マリリン・モンロー(本名:ノーマ・ジーン・ベイカー)は、マスコミの取材に応じることにひときわ慎重だったというから、フランスのファッション誌『マリ・クレール』1960年10月号が掲載したインタヴュー記事には特別は価値があるだろう。クリストファー・シルヴェスター編『インタヴューズ』(1993年)所収。   このなかで、「生きていくために闘っていたというのが最初の記憶ね。生まれたばかりで、まだベビーベッドのなかの赤ん坊だったときか

          アナログ派の愉しみ/本◎マリリン・モンロー談『マリ・クレール』インタヴュー

          アナログ派の愉しみ/映画◎マリリン・モンロー主演『ナイアガラ』

          彼女が13歳のころから 準備したものとは? 「13歳のころから準備が必要なのよ」   映画を観ていてなんの気なしに耳にしたセリフが、いつまでも耳の奥に残ってしまうという経験はだれでも覚えがあるに違いない。ヘンリー・ハサウェイ監督の『ナイアガラ』(1953年)に出てくる上記のセリフは、わたしにとってそのひとつだ。   アメリカとカナダの国境に位置する世界的な観光地、ナイアガラ大瀑布へ新婚旅行でやってきた若夫婦は、宿泊先のロッジに逗留していたもうひと組のジョージ(ジョゼフ・コ

          アナログ派の愉しみ/映画◎マリリン・モンロー主演『ナイアガラ』

          アナログ派の楽しみ/スペシャル◎安岡章太郎の「ひざ」

          そのころ、安岡章太郎には文壇の大御所といった風格があった。「第三の新人」のひとりとされた作風は人懐こい柔らかなものだったが、まだ20代の駆け出し編集者にはどこか近寄りがたい厳しさも感じられた。だから、当時、雑誌の編集部で担当していた「私の書斎」というカラー・グラビア企画への出演を申し込んだとき、あっさりと応諾していただいたのにはかえって戸惑ってしまったほどだ。 取材当日、カメラマンを同行して自宅へ赴くと、安岡はにこやかに迎えてくれて、いかにも落ち着いた風情の和室でスムースに

          アナログ派の楽しみ/スペシャル◎安岡章太郎の「ひざ」

          アナログ派の愉しみ/音楽◎ベートーヴェン作曲『交響曲第8番』

          この曲をつくらせたのは 「楽聖」のふたりの子どもだった!? ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンは、ピアノ独奏曲や室内楽曲からオペラ・宗教曲まで幅広い分野で傑作を残したが、かれを史上最高の作曲家としたのはやはり九つの交響曲であったろう。このうち、八つはおおむね青年期の12年間に作曲されたあと、12年間のブランクを挟んで、初老期に入って最後のひとつがつくられたという経緯を眺めると、その合唱を導入した第9番のみ別格の地位にあり、第1番~第8番はたがいにつらなりあう交響曲の一大山

          アナログ派の愉しみ/音楽◎ベートーヴェン作曲『交響曲第8番』

          アナログ派の愉しみ/本◎ベルクソン著『〈生きている人のまぼろし〉と〈心霊研究〉』

          AIには手の届かない 人類の知能の領域がここに 今年(2024年)のノーベル賞では、物理学賞と化学賞の両部門でともにAI(人工知能)に関する研究が授賞理由になったという、かつてない異例のニュースがAI新時代の幕開けを告げた。と同時に、物理学賞の受賞者のひとり、カナダ・トロント大学のジェフリー・ヒントン名誉教授がオンラインの記者会見で「早ければ5年後にAIが人類の知能を超えるだろう」としたうえで「AIが人類に代わって社会を支配する恐れがある」と述べ、自分の研究対象に対して激し

          アナログ派の愉しみ/本◎ベルクソン著『〈生きている人のまぼろし〉と〈心霊研究〉』

          アナログ派の愉しみ/映画◎ガブリエル・アクセル監督『バベットの晩餐会』

          だれかを食事に招くとは その人の幸せを引き受けることである 「だれかを食事に招くということは、その人が自分の家にいる間じゅうその幸せを引き受けるということである」   これは、ヴェルサイユの裁判所判事をつとめながら、稀代の食通として名を馳せたブリヤ=サヴァランの著作『美味礼賛』(1828年)のなかの格言のひとつである。デンマークのガブリエル・アクセル監督による『バベットの晩餐会』(1987年)は、あたかもこの言葉を実証してみせたかのような映画だ。   ときは19世紀後半

          アナログ派の愉しみ/映画◎ガブリエル・アクセル監督『バベットの晩餐会』

          アナログ派の愉しみ/音楽◎矢代秋雄 作曲『交響曲』

          芸術家のアタマの 仕組みはわからない… わからない……。一体、芸術家のアタマの仕組みはどうなっているのか? と、途方に暮れてしまうことはしばしばだけれど、作曲家・矢代秋雄もそんな疑問を抱かせずにはおかないひとりだ。   1929年、東京で西洋美術史家の父親とピアノを嗜む母親とのあいだに誕生したかれは、恵まれた環境のもとで幼時から音楽に親しみ、小学生のときに早くも作曲の筆をふるいはじめたという。太平洋戦争中に東京音楽学校(現・東京芸術大学音楽学部)に進学して、戦後の1951年

          アナログ派の愉しみ/音楽◎矢代秋雄 作曲『交響曲』

          アナログ派の愉しみ/本◎獅子文六 著『自由学校』

          夫と妻がそれぞれに 自由をめざす冒険へと わたしは自由に生きているのか? 何も大上段に振りかぶった哲学的命題や国家・社会との対峙の仕方といった意味だけではなく、もっと普段着の日常生活を送っていくうえにおいても重大なはずのそうした問いかけを、いつの間にか、われわれはすっかり忘れてしまったのが実情ではないだろうか。   獅子文六の『自由学校』(1950年)は、このテーマに対してちょっと恥ずかしいぐらい真正面から立ち向かった珍しい作品だ。それは太平洋戦争の敗北からまだ5年しか経

          アナログ派の愉しみ/本◎獅子文六 著『自由学校』

          アナログ派の愉しみ/音楽◎ハチャトゥリアン作曲『剣の舞』

          だれをも鼓舞してやまない 小さな名曲はこうして誕生した クラシック音楽の分野において、20世紀の作品で人気ナンバーワンといったらハチャトゥリアンの『剣の舞』だろう。この演奏時間がわずか2分少々のバレエ音楽を、たいていの子どもだって知っているし、たとえ知らなくとも一度耳にすればすぐに覚えてしまうはずだ。あらためて考えてみると不思議な気がする。星の数ほどもある名作・傑作のなかで、どうしてこの小さな曲が特権的な地位を占めることになったのか?   作曲者のアラム・ハチャトゥリアン

          アナログ派の愉しみ/音楽◎ハチャトゥリアン作曲『剣の舞』

          アナログ派の愉しみ/本◎フィリップ・K・ディック著『人間狩り』

          無人兵器の 開発が行き着く先は? ロシアとウクライナの戦争は世界史において、初めて無人兵器が本格的に使用されたエポックメーキングな事例として記録されることになるのだろう。無人航空機(ドローン)にはじまり、長距離ミサイル無人機、無人戦闘車両、さらには、銃器で攻撃したり、地雷を敷設したり、物資の運搬やセキュリティの監視を担ったり……といった無人ロボット兵器も出現しているという。さまざまな無人兵器の開発・導入については、当事国以外でも兵士の死傷を減少できるとして積極的に受け入れら

          アナログ派の愉しみ/本◎フィリップ・K・ディック著『人間狩り』

          アナログ派の愉しみ/ドラマ◎『極悪女王』

          父を殺すために プロレスラーになった Netflixの配信ドラマ『極楽女王』(鈴木おさむ企画/白石和彌監督 2024年)が大反響を呼んでいるという。これは、1980年代のなかばに空前の女子プロレス・ブームを巻き起こしたヒール(悪役)のダンプ松本(ゆりやんレトリィバァ)と、ベビーフェイス(善玉役)の長与千種(唐田えりか)、ライオネス飛鳥(剛力彩芽)らの壮絶な生きざまをドキュメンタリー・タッチで描いた群像劇だ。   主人公のダンプ松本とわたしは同世代にあたる。あのころ、こちら

          アナログ派の愉しみ/ドラマ◎『極悪女王』