お題

#眠れない夜に

夢のような話、目を閉じるのが怖くなる怖い話……。夜に読んでほしい物語を投稿ください!

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自分から離れる夜|モモコグミカンパニー(作家)

8月の半ば、夏の思い出を作ろうと京都へ一人旅に向かった。昼は、天橋立を観光、その後はそこから電車で一時間ほどの海の近くのホテルに足を運んだ。 17時頃ホテルに到着して、ディナーを楽しみ、少しお酒も入っていい気分になって部屋に戻った後、ホテルの温泉に入ろうと準備をした。 温泉は、広い庭を数分歩いたところにある別館まで行く必要があった。 外に出ると、もう随分日が暮れて空は真っ暗。誘導灯に草木が照らされて、とても幻想的に淡く輝いていた。庭には、所々にリクライニングチェアや、テ

【創作】早朝のカフェで【スナップショット】

    こちら、隣いいですか   ええ、どうぞ おおっと、大丈夫?   すみません ちょっと足元が   今までクラブに?   ええ   一晩中踊っていた顔ですね   はい 初めて行ったんです 頭がふわふわして 何だか変なことを言いそうだ   楽しかった?   はい 友達と一緒に ずっと喋って飲んで踊っていた 凄くお洒落ですね もしかしてデザイナーさんですか   目指していたこともありましたよ   あなたはここで?   始発を待っているの   夜通しお仕事でしたか?   そんな

1,287文字でお伝えする、3つの自己紹介

一言自己紹介:メインの障害ではなく不眠が出る点は弱いけど、完全リモートなら英語圏で障害者枠で無くても競争できるおじさんです。 半生自己紹介:🌱幼稚園時代に心臓病で運動制限(小学校で完治) 🥼小学一年の冬。理系の研究者で教育者の父が鬱病を発症 🪦同六年冬。治りがけの時期の危なさに対処できず、父が自死 🏫中一は優等生で快適 💀中二・中三は大人に本気で狙われる 🏫内申点捨てて通信制高校へ 🏫進学し、バイトや創作 ✉️児童文学者の木暮正夫先生に童話は定年しても書けるからと引導を渡

不都合との向き合い方

友人との会話から生まれた疑問。 でも、どうしたって 世の中には不都合なことの方が多い。 自分にとって都合の良いことは、誰かにとっては都合の悪いことかもしれない。 自分の 誠 は  誰かの 嘘 かもしれない。 自分にとっての愉悦が、 誰かの懊悩だったりもする。 不都合とどう向き合うか。 その答えは、 そこから目を逸らしても、不都合はまた形を変えてやってくる。 不都合があって 都合の良いことがある。 光と影のように、太陽と月のように、2つは常に背中合わせ。 見

写真と民俗【白雲山・鳥居観音】

※この記事は約4分で読めます どうもメダカです初めましての方は初めまして。 今回は白雲山・鳥居観音に行ってきました。 白雲山・鳥居観音埼玉県にある白雲山・鳥居観音を知っていますか? 割と有名なので知ってる人も多いかもしれません。 埼玉県飯能市にある寺で、広さは約30ヘクタール(東京ドーム約6.5個分)。 埼玉百選に選ばれている観光名所で、開祖である平沼彌太郎が30年以上かけて作られた、山がまるまる一つ巨大な寺院となっています。 鳥居観音とは神社なのか寺なのよくわからな

【創作】寂れた映画館で【スナップショット】

好きなところに座って   ありがとうございます いいんですか 一人だけなのに   いいさ 今日が最後の日だからね 観たいものは?   お任せします でも、どうせなら 絶対他で観られないような 本当に古い映画がいいですね   いいね ではサイレントの 古い外国のメロドラマにしよう   サイレント、ということは 音がないんですね   そうさ、モノクロで、 音楽はない 大変美しく撮られた 真珠のように輝く作品だ   白黒の映画って 観たことがないんです ちょっと緊張する   そんな

#子どもに教えられたこと

① 教科書には線を引かないこと。 (理由) 教科書に書いてあることは、ぜんぶ大切だから。 ② バレーボールは「排球」ということ。 ③ 「ジョシテ」とは、「女子テニス部」だということ。 ④ ◯◯ちゃんという(同級生の中学生)女の子は、少なくても今までに5人の男の子と付き合ったことがあり、現在は高校生とお付き合いしているということ。 ⑤ ✕✕ちゃんという中3の女の子が、指に絆創膏をはっているのは、その下にピアスをしているからだということ。 ⑥ △△ちゃんという女の子は

【創作】城の地下通路で【スナップショット】

  すごい埃だ   本当に   この先に倉庫などあるのだろうか   この古地図ではそうなっている   何か魔物でも出そうではないか   見たことがないから分からない   あるいは宝箱でも   それはあるかもしれない これだけ古い城なのだから   だが我らが探しにいくのも ある種の宝と言えるかもしれない この国の地形、鉱脈、気候といった 古代の先人が国を治めた知恵がつまった 文書だ これがあれば 多くの問題は解決する 大臣閣下に多くの策を上申できるし 戦争にはやる騎士団連中を

【ショートショート】宝の地図 (2,568文字)

 じいちゃんが倒れた。脳梗塞だった。俺はすぐに搬送先の病院へ向かい、不安そうなばあちゃんと合流した。いま、あそこで緊急手術をしているところなんだとか。 「悪いね、卓郎くん。来てもらっちゃってね。受験勉強で忙しいだろうに」  ばあちゃんは申し訳なさそうに言った。俺はなにも答えなかった。罪悪感で胸が痛かった。  浪人のまま二十歳を迎え、この夏の模試もE判定だった。国立の医学部は東大よりも難しいから仕方ないと自分を納得させるのも難しくなってきて、最近では勉強らしい勉強を一切や

【ショートショート】イントネーション! (123文字)

「ちょっと。どうして、そんなに軽装なわけ?」 「あんたこそ、その荷物はなによ。これから旅行でも行くつもり?」 「いや、旅行でしょ。秋田と青森に」 「秋田? 青森? ……誰が?」 「わたしたち!」 「……うそ。今日って、シラカミさんの家に行くんじゃないの?」 (了) マシュマロやっています。 匿名のメッセージを大募集! 質問、感想、お悩み、 読んでほしい本、 見てほしい映画、 社会に対する憤り、エトセトラ。 ぜひぜひ気楽にお寄せください!!  ブルースカイ始めま

【ショートショート】金の切れ目が (2,827文字)

 自殺するつもりだった。  両親は死んだし、仕事はクビになるし、恋人には振られるし、貯金もないし、カーテンもないし。不動産管理会社からは年内にこの家を出ていけと言われている。リフォームするらしい。築六十年を超えるボロアパートだから然もありなんとは思うけれど、突然の話にどうしていいかわからなくなってしまった。相談どころか愚痴をこぼせる友だちもいないのが原因なのだろう。精神的に追い詰められて、行政に頼るという発想は一ミリも湧いてこなかった。自殺するしかない。そう考えるようになっ

山口はなぜ首相が多いのかを考察する3選

 山口は最も首相が多い県とされる。実際には出身地で言えば東京が一番多いのだが、何人かが選挙区を別の都道府県に移した結果、山口が最も多いことになっている。  それは山口県が最多って言えるのかと疑問に思うのだが、では何をもって首相の数をカウントすればいいのだろうか。例えば42代目の首相である鈴木寛太郎は出生地が大阪の堺市であるが、3歳頃に千葉の野田市に移住している。  もし、首相の条件となる何かしらの規則性が分かれば、それを元に再集計する材料にはなるのではないかと考えた。先に

【ショートショート】公開に失敗しました。 (-298文字)

 ヤバい。今日、投稿する予定のショートショートがまだ書けていない。このままでは毎日投稿の記録が途絶えてしまう。もうすぐ365日連続が達成できるというのに。そう簡単には諦められない。だから、わたしはMacBook Airをカバンに入れて、駅前のスタバでこうして執筆に勤しんでいるわけなのだけど、さて、なにを書いたものか? さっぱりアイディアが湧いてこない。結果、焼き芋フラペチーノがあとちょっとでなくなりそうだ。これはまずい。なんでもいいから書かなくては。迫り来るタイムリミットに焦

1000万と結婚

昨日突発的に「1000万ってデカいと思う?」と聞いた もちろん、金額としての話 「デカいな」 「1000万もらうのと、1000万分の価値のあるもの、手に入れるならどっち?」 「20代なら経験かな」 経験だと言ってくれる人で良かった。 でも、「30代では」違うんだな とも思った。 20代のまとめ本(仮)に、1000万について書いてある項がある わたしはなぜか、その項が一番引っかかっている 1000万を手に入れるなら、 ・1000万を稼ぐ男と結婚する ・投資を

最愛の母へ

心から大好きでたまらないかたとおわかれをした。 最愛の彼のお母さん。世界でいちばん大好きな最愛のお母さん。 心から尊敬し、憧れであり、 言葉では言い表せないほどに大好きな最愛のお母さん。 自分の身体を失ったようだ。 寂しくて、何も考えられなくて、眠れなくて。 悲しくて、ひたすら寂しくて、涙が止まらない。 このやるせない気持ちを、どこへ持って行ったら良いのだろう。 ずっと涙が溢れて止まらない、 キーボードを打ちながらも涙が溢れ続けている。 何も言葉が出てこない。 こ

コンテスト「なぜ、私は書くのか」に応募したら書くのが怖くなった話

そんなコンテストに応募したこと、ありますか? 私は、あります。 おととい、その中間発表がありました。 誰を本審査に進め、誰を落としたのかの発表。 通常、こういうコンテストって という一文が掲載され と、その落ちた理由が知らされることはありません。 テストのように点数をつけられるわけでもなく、スポーツのようにわかりやすく勝敗が決まるわけでもなく、何が良くて、何が悪かったのかを自問自答する日々の始まり。 そしていつの間にか、もういいやと諦めて、いつも通りの自分に戻

【ショートショート】わたしは性格が悪い (2,282文字)

 わたしは性格が悪い。尋常じゃなく悪い。バレたら人類から迫害されてしまうぐらいに悪い。そして、そのことを知っているからこそ、まわりには性格が悪いと思われないように気をつけている。なんなら、身近な人たちからは優しくて、温和で、社交性があると認識されている。例えば、悪口は言わない。油断をすると他人のコンプレックスを掘り起こし、致命的な攻撃をしてしまいそうなので。また、いつもニコニコ笑顔でなにを頼まれても断らないのもうっかりモラハラしてしまわないための工夫である。無意識だと、頭の中

自由に、あなたらしく

ここ数日の朝は、少しだけひんやりとする。 爽やかで気持ちの良い空気。 また、大好きな季節との再会の日も近いのだろう。 今朝、いつものようにお散歩をしていたら、自転車のかたがいた。年齢は70代以上と思われる。ゆっくりゆっくりと気持ちよさそうに自転車に乗られていた。 今朝の風は、さぞ気持ちが良かっただろう。 爽やかな後ろ姿だった。 すると、右側から、もうひとり自転車のかたが現れた。年齢は20代と思われる。スピードから推測するに、凄く急いでいるようだった。 そんなお二人の

課題の分離 とは

【課題の分離】 心理を学んだ方なら必ず触れるアドラーの言葉。 もう1つ 出てくるのが【他者貢献】。 2つの言葉について、いつか記事を書きたいと思っていましたがなかなか考えがまとまらず‥。 私自身、これらの言葉を自分の中に落とし込むのにずいぶん時間がかかりました。 今回の記事ではまず、 【課題の分離】について書いてみたいと思います。 「課題の分離」とは、他者の課題(その人が抱えている問題)に踏み込まない ということ。 「他者」とは、家族・恋人・親戚・友人など 関

【物語】洞窟の人魚

歌が聞こえたから、目を覚ました。 目の前はごつごつした岩だった。 痛む頭をさすりながら、周囲を見渡す。 足元を照らす光があった。 体を起こして上を見る。 手が届かないほど遠くに、空を切り取ったような穴が開いていた。 あそこから落ちてきたのか。 私は、落ちる寸前のことを思い出した。 夏休み。暑くて仕方がなかった。 それなのに、クーラーが壊れた。 「修理している間、遊びに行っておいで。」 お母さんにそう言われて、海に遊びに来た。 そして私は、こっそり立ち入り禁止区域の洞

おとな子供な私【日記みたいな】

こんばんは Blue handです 先日、山に行くかとお誘いがありお出かけしてきました 山道をくねくねくねくね車を走らせ、あ、私が運転ではないのですが笑 気持ち悪くなり生欠伸を数秒置きにしながら辿り着いたら、まー綺麗な景色 もう秋ですね せっかくだから頂上まで登るかと言われ、なん分くらい?と聞いたら30分って 最近ジムも週一になったり運動してないから、登っちゃう?って歩いてきました てくてく、はぁはぁ息を切らして登った先にあった景色は雲の上みたいだった あまりにも綺麗

今日はなんだかイレギュラー 気づけばバタバタ 疲れたなぁ くかぁ~と のどごし一杯 帰って飲みたい

【創作】スイーツビュッフェで【スナップショット】

    このシフォンケーキ、おいしい   ほんとうだ   ここのケーキバイキング 凄く人気なんだって   頷けるね 窓から見える景色もいいし   ごめんね あの子が行きたくないって言うから 裁判所の取り決めなのに   いいんだ あの子の意思が一番大切だから   ちょっと早めの思春期というか 難しい年頃になった気がする あなたのことを敵視するように なっちゃって   当然だよ あの子にとっては 自分や母親を捨てて 別の女性を選んだ親だからね 私はもう何とも思わないけど あの子

小さな宝物を

自分の心が動いたとき、 それを伝えられる存在がいてくれるということ。 美しい空だった、とか 美味しいチョコレートを食べた、とか 優しいやりとりがあった、とか それは、なんでもない日常の、 なんでもない小さな出来事かもしれない。 でも、自分にとっては小さな宝物のようなこと。 小さな宝物を伝えられる存在が この世界にいてくれるということ。 それは、どんなに幸せなことなのだろうか。 小さな宝物を、 そっと大切に受け取ってくれる存在。 小さな宝物を、 そっと大切に届けて

【創作】赤い部屋で【スナップショット】

      綺麗な部屋ね   凄い赤だ   家具も椅子も全部真っ赤 なんて美しいんでしょう   少し恐ろしい感じがするな   そう? 私はとても気に入った 赤は夜に映える色 漆黒の影をまとって 夜の闇から浮かび上がる   君は赤い色が好きだね   ええ だってそこには 毒があるから 私たちが健康に まっとうに生きることを 横道にそらす 甘い毒 それは私たちの命と 真逆のイメージ   命の色ではないのかい? 赤は血の色だ   ええ でもそれは 私たちが闇をまとって 生きている証

神話物語 | 霧の女(最終話)

前話はこちら(↓) 私の体には、いったい何人の霧の女が宿ったことだろう。 最初の3人の霧の女の記憶は今も私の心臓に深く刻まれている。 20人の霧の女が宿った頃までは、数を数えていたが、そのあとに宿った霧の女の人数さえ、今は曖昧である。 おそらく既に50人以上の霧の女が私の心臓にとどまっている。 「なんかさぁ、今も『霧の女』って神出鬼没してるけど、どこまで本当なんだろうね」 図書館の郷土史料室で、未唯奈が尋ねた。 「みぃちゃんはどう思う?最後に『霧の女』が出没してか

メダカ旅行記【可睡斎】~トイレの神様に会いに行く~

※この記事は約3分で読めます どうもメダカです 初めましての方は初めまして 今回は静岡県袋井市・可睡斎に行って来ました。 可睡斎可睡斎(かすいさい)とは、静岡県袋井市久能にある曹洞宗(そうとうしゅう)の寺です。 室町時代初期、応永8年(1401年)に恕仲天誾禅師によって開山されました。 可睡斎の第11代住職 仙隣等膳(せんりんとうぜん)は小僧時代に臨済寺で、 今川義元の人質となっていた徳川家康(当時の名前は松平竹千代)の教育係でもありました。 家康はその時の恩を忘れず

【創作】ミケランジェロの最後の素描【幻影堂書店にて】

  ※これまでの『幻影堂書店にて』      光一は、呆然と男を見つめていた。男は光一に向き直って微笑んだ。   「申し遅れましたね。私は、ディーター・カストルプと申します。以後お見知りおきを」   「あなたも。。。ここのお店の人なのですか?」   光一は、からからに乾いた喉から、声を振り絞る。   「いいえ、私は仕入れ商でしてね。様々な時空の「作品」を手に入れて、お店に売るだけ。この『幻影堂書店』も、お得意様の一つですよ」   「それで、今日は何を持って来てくれましたか、

【ショートショート】知らない裏垢 (2,365文字)

 名誉毀損で訴えると連絡があった。新進気鋭のクリエイターからだった。なんでも、わたしがその人の悪口をXでつぶやいていて、再三の削除要請にもかかわらず、対応しなかったことが原因と書いてあった。まったく身に覚えがなかったので戸惑った。  たしかにわたしはXアカウントを持っている。ただ、他の人の投稿を見るのが目的で、自分ではほとんどポストしていない。遊びに行ったとき、ご飯や景色の写真を載せることがあるぐらい。あとは映画や本の感想やちょっと。その際、つまらなかったとか、こうだったら

【創作】クレオパトラの恋文【幻影堂書店にて】

※これまでの『幻影堂書店にて』   「リスが喋った!?」   「リスではない。君が驚かないように分かりやすい姿で出てきただけ。私はマルス。覚えておくといいよ」   マルスはそう言ってあくびする。リスの全身が光に包まれ、うにゅっと形が変わり、角の生えた、人の半身くらいの大きさの、白い竜が現れた。   「安心していいよ。彼女は僕が出て来たから、一時的に別の世界に行っただけ。違う電波の周波数ごとに聞こえてくる音が違うようなもの。彼女と僕では周波数帯が違うのさ。僕が出て来たから、彼

misekake【詩】

見せかけの優しさ 見せかけの同調 見せかけの言葉 見せかけの‥ みえてるあなたのこころのおく いらない 見せかけの‥

詩 | 蝶が舞う幻夜に

あれはいつから はじまったのだろう? 気がつけば ひとりっきりで 蝶といっしょに 歩いていた 辺りには まるで光などないのに 妙に明るくて 華やかな蝶が 私のまわりを 飛び交っていた 赤い蝶 青い蝶 ピンクの蝶 こんなに美しい蝶を 私はかつて見たことがなかった てふてふ… てふてふ… 蝶々 蝶々 私にとまれ! なぜ私に止まらないの? 私のこと そんなにこわいの? そうか 私 ついさっき ビルの屋上から 飛びおりたんだった… #蝶が舞う幻夜 #キャンバ #イラス

【創作】霧の港で【スナップショット】

    君はもう行ってしまうんだ   僕は君を忘れないよ   僕はそれが嘘だと分かっている 明日の朝になれば 君は船の上で 僕を忘れて 新天地の夢を見るんだろう 太古の遺跡 悠久の大河を   美しい森の中の僧院 活気に満ちたエキゾチックな市 こういったものが 僕を待っている それは確かだ   僕はこの薄汚い都市に ひとり取り残されるんだ   僕は画家だ 自分の作品の糧になるものなら そこを目指すのさ   分かっている 分かっているのに苦しい 自分の半身を引き裂かれる気分だ 君

【創作】列車のコンパートメントで【スナップショット】

    きれいな海ですね   ええ、輝いているみたい 風が心地よい 思い出す 夫と海に出かけた日を   昔のことですか   ええ あなたに話してもいいかしら 不思議ね あなたには何でも話せる気がするの   ええ勿論ですよ   少し変な話 今まで夫以外 誰にも 話したことがない   旅先で会った 見ず知らずの他人だからこそ 話せることはあるでしょう   そうかもしれない 私は夫と大学の時に知り合って 平凡な結婚をした 娘が一人生まれて パートをしつつ育てた 夫はごく普通の銀行員

神話物語 | 霧の女⑧

前話はこちら(↓) 目覚めたとき、私の心臓は微かに青く光っていた。かなり弱々しい光だった。 「もう『霧の女』は私の体内にいる」と思うと、次の街へ行って霧の女について調べることは何もないように感じられた。 私はチェックアウトを済ませると、もう家に帰る気持ちになりかけていた。 「次の街へ行きなさい。本当の『霧の女』に出会えるはずだから」 私の気持ちを翻すかのように、再び私の心臓は青く輝き出した。 「だって、君が霧の女だったのだろう?」  我が胸に向かって私は語りかけた。

神話物語 | 霧の女⑨

前話はこちら(↓) いま私は とある町の図書館にいる。 ここで起こったことを 私は繰り返して語る必要を認めない。 最初の『霧の女』との邂逅と まったく同じことが繰り返されたからだ。 霧の女は閉館間際の郷土史料室に現れ、翌朝、私は投函された手紙を受けとる。 そして倒れ、新たな霧の女が私の心臓の一部となって語りかける。 私の心臓にはすでに何人もの「霧の女」が宿っている。 「あなたはどの『霧の女』がいちばんお好きかしら?」 私の心臓に宿る『霧の女』たちは、私こそは本物

美術展に足を運ぶ

私は美術のことは全くわからないけど、 母は現役の工芸家であり弟子もいて 昔は兄ではなく私が跡を継ぐことを期待されていた 親の駒の一つにされているようで 嫌だったけど、 おかげで昔から美術館はよく足を運んだし手伝いもしていた 中でも私が好きなのが絵画 残念ながら賞を取ったから良い作品なのかは わからないほど、私はど素人もど素人だ でも作り手の持っている感性と世界観と 苦悩と自由が凝縮されていて また時空を超えた想いが垣間見えて、 絵画を見ているのがただただ好きだ 推しく

【創作】アングルのヴァイオリン・ソナタ【幻影堂書店にて】

   ※これまでの『幻影堂書店にて』   光一が書店の扉を開けた時、微かに焦げた臭いを感じた。 一瞬火事かと思ったが、奥でノアがエプロンを付けて、「ああもう!」とぶつくさ言いながら、かんかんと音を立てお皿を叩いているのを見て、おおごとでないことを理解した。   「大丈夫?」   「大丈夫。ちょっとだけ失敗しちゃってね」   手元を見ると、皿の上に焦げあがった黒い物体が二つ、鎮座している。   「それは?」   「スコーンだよ」   「かつてスコーンであった物体だね」  

中秋の名月

 二〇二四年。九月一七日。中秋の名月の日。夜も遅い時間にそっとベランダに出る。家族の人が目を覚まさない様に足音と気配を殺して外に出る。ベランダに出れば其処は宵闇の景色。そして宵闇の空にポツリと浮かぶ中秋の名月。圧倒されてたった一つ息を飲みこんだ。宵闇も中秋の名月も何度見ても華美ではないのに秀麗で全てが引き込まれる。現在、想い浮かんた感情も。ずっとコトリと抱え込んだ心の片隅に散らばる不安も。上手い言ノ葉でどうしても紡ぎたいのに紡げない。言ノ葉で紡ぐが稚拙でチグハグでちっぽけな言

光のわっかに いるような こんなにあかるい お月さま やさしい灯りを あびたので 今夜はぐっすり 眠れるかしら どなたさまも よいゆめを

無題 #1

たまたま通った道で、 ダイニングメッセージかと思って一生懸命解読しようとしたら、シャイニングメッセージだった。私は、永遠の助手席担当希望なので真意は判らないけれど。 今までずっと、 「どんな音楽聴くの?」って聞かれたとき、 「半音上がる曲、転調がある曲」としか答えられなくて、会話の?を。で終わらせてしまって、相手を困らせることよくあったんだけど、見事に、こんな曲!という、私の拙い語彙を代弁してくれる一曲に出会った。 自分のプレイリストとか、好きなものとか、食べてるところと

わかりづらい愛の表現

夏、久しぶりに父方の祖母の家を訪ねた。祖母は長男(つまり私の父の兄)と二人で暮らしていて、祖父は五、六年前に他界していた。私の両親と妹、父と一回り歳の離れた叔父とその妻と子どもたちが集まった。 祖母は少し、というかだいぶ変わっている。どう説明すれば伝わるだろうか。祖母の家には時計が五つくらいあってすべてが違う時刻を指しているとか、白い猫を五、六匹飼っていて見分けがつかないというのでそのうちの一匹の額に緑の油性ペンで眉毛を描き足しているとか、そんなことを言えば伝わるだろうか。

落ちていけばいつかはどこかに。

アスファルトに溶けていく雨粒を見ていると 清らかな何かがおぞましい闇に 飲み込まれていくようで 時折、僕も飲み込まれそうになる。 幼少期のトラウマや孤独感、失敗に添えられた嘲笑。 そこにどんな優しさが溶けても 薄まることをしらない。 わかりたくても わからない。伝わらない 伝えたくても 伝わらない。 当事者と周囲の人間のように ひとつひとつの雨粒の間に確実な距離がある。 でももう一つ確実なものがある。 それは、そんな雨にも救いがあるということ。 あめは降り続ければ、

ドイツ語が話せなくとも

私が留学生としてドイツに渡った時、ワーキングホリデー制度はまだなかった。 学生ビザも日本にいる間に申請をし、許可を得てからドイツに渡った。 以下の日付は備忘録。 ワーキングホリデー制度でドイツに住むかたに加え、特に2015年からは多くの難民を受け入れたドイツ。 以前よりずっと外国人比率が高まったように感じていたが、その推移を辿ると、それが気のせいではない事がはっきり分かる。 1990年代から約800万人程度を保っていた移民は、2022年には1200万人を超えた。 人口比では

そう言えばインド行った時、なぜか現地のインド人とどっちのチンコがデカいかという話になったんすけど、そのインド人はシラジットっていうアーユルヴェーダ的な何かを食ってるから俺の方がデカいんだと言ってたっす。 ん? オイラすか? オイラも勿論デカいっすよ!!(怒)

5時まで起きていた。このまま、ずっと夜ならいいなと思ったけれど、いつのまにか朝を迎えていた。正確には昼。眩しいほどに晴れていた。 ご飯をかきこみ、洗濯をして、髪に丁寧にアイロンをかけ、そしてインターン先へ向かった。 心配していたがとくに大事は起きず、20時45分に退勤した。バス停から空を見上げると、高いところに月があった。それをしみじみと眺めた。1時間後には恋人に会える。 それは、私が中秋の名月を理由に彼との約束を取り付けたからであり、風物詩を逢瀬の口実にするのは、四季を

【詩】中秋過ぎて

中秋過ぎて 気がつけば 風も涼しく 葉の色も いつの間にか 少し黄色になって 辺りはもう 日が落ちて 夜も長くなってくる #詩 #自由詩 #詩歌 #創作 #短編 #秋 #スキしてみて #眠れない夜に

【詩】秋待つ日

秋待つ日 あなたと一緒 次のバスまでもう少し 残る夏のぬるい風に 混じる秋の匂い 一足早く落ちる葉と 秋待つ日 夕暮れの時 #詩 #自由詩 #詩歌 #創作 #短編   #秋 #スキしてみて #眠れない夜に

や ゆ よ

 小学校に入ってまもなく、教室に掛けてあった表を授業中によく見ていました。先生の話にあきて、よそ見をしていたわけです。  その表全体を見ていたのではなく、ある部分をよく眺めていました。  や ゆ よ  らりるれろ  わ   を  ん  なんであそこがあいているのだろう? なんであれだけがひとりぼっちなのだろう?  横書きではなく縦書きの表でしたが、特に気になったのは「や ゆ よ」でした。       *  黒板のまん前から聞こえてくる話にはあきる。黒板の横の壁に掛

無題 #2

私が、お芝居習っていた時代に(大根過ぎて向いてなかった)、『喉の使い方上手けぇのうなら、うちさ帰って睡眠とれぇ!』と、いぶし銀先生から言われた言葉を胸に、声が掠れているときや体調を崩したときは、憑き物が取れたように布団の上で一言も喋らず過ごします。これは、9/24のお話し。 【9月24日】 きょうは、朝にレッスンをして、 夜は、久々に何もない日だった。 少し前から、この日は、レッスン以外に何も予定が入らなそうだと踏んでいたので、ずっっっっとタイミングが合わず行けていなか