雨奈川ひるる | 短編小説

毎日1200字程度の短編小説を投稿しています。ちょっとした時間に、さっと読める物語をお届けします。X触ってませんごめんなさい。

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マガジン

  • 短編小説 「昼下がりの君へ〜」

    滅びた国で楽しく暮らすダンとジュンのお話し。

  • 短編小説「夢の中のウサギ」シリーズ

    夢の中で喋るウサギとの不思議な出会いの物語です。

  • 短編小説|タコとイカの大冒険

    タコのタンクとイカのインクが主役の驚きと感動溢れる冒険小説をご紹介します。海底世界の絢爛とした背景に描かれた彼らの挑戦と友情は、読む者を深海の魔法に引き込みます。絆を深めながら未知の領域を切り開いていく二人のストーリーは、あなたの心を確実に掴むでしょう。

  • 短編小説「BEAST NOON」シリーズ

  • 小説 「少年シリーズ」

    書いた小説の頑張る少年の話をまとめました。

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短編小説 「この香りはキンモクセイですか?」

街路樹の葉が色づき始め、道端には小さな赤い実が転がっている。友達の美咲が「キンモクセイの香りがするね」と手で扇ぎながら笑顔でつぶやいた。  「そうかな?」と私は首をかしげる。美咲は私に顔を向けてじっと目を見た。  「え、感じないの?外に出ればすぐに香るじゃない」 美咲は深く息を吸い込み、「ほら、この甘い香り」と目を閉じた。私も同じように息を吸ってみる。でも、風に乗って届くのは街の雑踏や車の排気ガスの匂いばかりだ。どれがそう?鼻にツンとくるやつ?それともこの甘い香りがそう

    • 短編小説 「エルフと悪魔の夢」

      森の朝は静かだ。木々の間から差し込む陽の光が、葉の露を煌めかせている。鳥たちのさえずりが遠くから聞こえ、柔らかな風が頬を撫でた。 僕はいつものように大きなキノコ樹の下で背伸びをした。エルフの里は平和で、今日も特に変わったことはなさそうだ。  「アルフォ」 聞き覚えのある元気な声が背後から僕を呼んだ。振り向くと、友達の悪魔のファーシーが笑顔で駆け寄ってきた。彼の瞳はルビーのように輝き、黒い体に藍色の尻尾がいつもメラメラと燃えている。  「訓練に行くんだ。一緒に来ないか」

      • 短編小説 「私はサンタクロース」

        周りを見渡せば果てしなく広がる雪原と、遠くに見える雪山。遠くにはシロクマが流氷に寝そべっている。 氷河の上にぽつんと立つ小さな小屋、そこには私、サンタクロースが暮らしている。黒かった口髭はいつのまにか雪のように真っ白に変わり、腹も大きく飛び出している。静寂が支配するこの地で、私は長年子供たちにプレゼントを届けてきた。  「今日も雪か」 外は雪が舞い、視界が白く染まりはじめている。赤い上下の服を身にまとい、帽子をかぶって、厚手のブーツを履き、扉を開けると冷たい風が頬を刺し

        • 短編小説 「エルフの通貨」

          東の腎臓の窓から日が差しこんで来た。待ちに待ちに待った日が来た!ネズミ毛布を蹴り上げ、尻尾枕を頭上に放り投げた。ベットから飛び出してパジャマを破り脱いで、旅の歌を歌った。 「さ〜あ出かけよう、トロールのく〜にへ。ト〜カゲの皮に着替え、ネ〜ズミの頭のキャリーバッグを引いて僕は旅に行くよ。心臓のドアを蹴り開け出かけよう。留守番はコバエのジュンに任せて、エルフの僕は行くよ。エールは空港の外貨両替所でドュールに、ボ〜ブはげ〜ん〜き〜か〜な〜あ〜」 「はいボブ!元気!」ボブはいつも

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        短編小説 「この香りはキンモクセイですか?」

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        • 短編小説 「昼下がりの君へ〜」
          4本
        • 短編小説「夢の中のウサギ」シリーズ
          3本
        • 短編小説|タコとイカの大冒険
          3本
        • 短編小説「BEAST NOON」シリーズ
          2本
        • 小説 「少年シリーズ」
          5本
        • 小説「この世界にごきげんよう」
          3本

        記事

          短編小説 「花の蜜を思い出して」

          窓際の書類棚の上に置かれたユリの花が、ふと目に留まった。白く大きな花弁が優雅に広がり、ツンとした香りがオフィスに漂っている。同僚の美咲が「部長からの差し入れだって」と笑顔で教えてくれた。 その香りを吸い込んだ瞬間、遠い記憶がよみがえった。小学校の帰り道、友達と一緒に道端の花を摘んで、蜜を吸っていたあの頃。花の名前も形も色も、はっきりとは思い出せない。ただ、甘い蜜の味と、その友達と蜜を吸ったことだけが記憶に残っている。  「懐かしいなあ」 独り言をつぶやきながら、窓の外を

          短編小説 「花の蜜を思い出して」

          短編小説 「フリック入力だけど、書くのって大変」

          スマホの画面を見つめて、ため息をついた。今日も小説を書こうとしているけれど、ストーリーが全然進まない。登場人物は何人する?一人?二人?百人?めんどうだから一人かな。  「書くのって大変だなあ」 指でフリック入力を繰り返す。文字を打っては消し、また打っては消す。その繰り返しに、指先が少し痛くなってきた。打ち間違いがほとんどだけど。  「フリック入力は一日何回してるんだろう?数えたことなんかないからわからない」 窓の外を見ると、夕日がビルの間に沈んでいく。雲がピンク色に輝

          短編小説 「フリック入力だけど、書くのって大変」

          短編小説 「めんどう」

          朝、目覚ましの音が部屋中に響き渡る。薄暗い部屋の中で、私は布団にくるまりながらその音を無視した。  「起きるの、めんどうだな」 天井を見上げると、小さなクモがゆっくりと糸を伝って降りてきている。カーテンの隙間から差し込む淡い光が、その姿をぼんやりと浮かび上がらせていた。 再び目を閉じると、遠くから鳥のさえずりが聞こえてくる。新しい一日の始まりを告げているのだろう。でも、私には関係ない。  「何もしたくないな」 そう呟いて、布団の中で丸くなる。スマートフォンに手を伸ば

          短編小説 「めんどう」

          短編小説 「武装上等」

          エルフ界弍本国防衛会議二〇〇人のエルフが会議場のど真ん中に一人ぽつりと座る、青い肌のエルフ、ヤマモトに視線を集めた。そのまわりには円を描くように座る、首相と財務省を除く各省庁の大臣たち。 そんなか、ヤマモトは手のひらに「馬」と書いて生唾と共に飲み込んだ。 極強力破壊兵器、保有・使用について 極強力破壊兵器賛成派ヤマモトの発言。  「えー結論から言います。我が国、弍本国はマツタケを保有するべきです」 ヤマモトの第一声の後にエルフ達がお互いに顔を見合わせ、ヤマモトに罵声

          短編小説 「武装上等」

          短編小説 「はぁ〜い僕アルフォ」

          薄い霧が立ち込める天国の門をくぐったのは、いつのことだっただろう。雲の上の世界は静かで穏やかだが、どうにも退屈だった。はぁ〜い僕アルフォ。青い肌を掻きながら、ため息をついた。  「現世に戻りたいなあ」 かすれた声が空気に溶けていく。そんなとき、天使のファーシーがふわりと現れた。純白の羽を広げ、優雅に微笑む彼を見て、ある考えが浮かんだんだ。 夜が訪れ、天使たちが眠りについた頃、そっとファーシーの羽を根元からごっそり盗んだ。それを手に、出入局へと向かう。巨大な雲の門の前で、

          短編小説 「はぁ〜い僕アルフォ」

          短編小説 「バッドエンドはダメでしょう」

          友達の美咲から「絶対泣けるから観てみて!」と勧められた映画があった。そのタイトルは『ダンサー・イン・ザ・ダーク』名前は聞いたことがあるけれど、観たことはなかった。 土曜日の午後、リビングのソファに腰を下ろし、テレビのリモコンを手に取る。窓から差し込む柔らかな陽光が部屋を包み、心地よい空気が流れている。お気に入りのピンクのハート型のクッションを抱きしめながら、ストリーミングサービスで映画を再生した。 最初のシーンから、主人公セルマの厳しい生活が描かれた。工場での単調な作業、

          短編小説 「バッドエンドはダメでしょう」

          短編小説 「嫌な客良い客」

          昼下がりのコンビニは、いつものように穏やかな静けさに包まれていた。店内にはポップミュージックが流れ、コーヒーマシンの香りがほのかに漂っている。私はレジカウンターの後ろで、商品の整理をしながらお客様を待っていた。 ガラス越しに見える通りを眺めていると、一人の男性が入ってきた。四十代くらいのグレーのスーツ姿で、細い黒縁の眼鏡をかけている。彼はスマートフォンを片手に、無表情でレジの列に並んだ。他のお客様が会計を終えると、彼の番がやってきた。  「いらっしゃいませ」 声をかける

          短編小説 「嫌な客良い客」

          短編小説 「給料上がりますか?」

          朝の光がオフィスの窓から差し込み、デスクに並ぶ書類を照らしている。パソコンのキーボードを叩く音が周囲から響き、静かな活気を感じる。コーヒーを一口飲みながら、上司の田中課長の背中を見つめた。 最近の物価上昇で生活費が厳しくなり、給料アップの相談をしようと、意を決して席を立ち、課長のデスクへ向かう。  「課長、少しお時間よろしいでしょうか?」 田中課長は眼鏡の奥からこちらを見上げ、穏やかな笑みを浮かべた。  「ああ、工藤くん。どうしたんだい?」  「少しご相談がありまし

          短編小説 「給料上がりますか?」

          短編小説 「二日酔い×2」

          頭がズキズキと痛む。まぶたを開けると、薄暗い部屋の天井が目に入った。天井の隅には小さなシミがあり、それがじっとこちらを見つめているように感じる。  「あぁ、飲み過ぎた……」 額に手を当てて深いため息をつく。昨夜の記憶はところどころ途切れていて、何をどれだけ飲んだのかさえ思い出せない。ただ、一人楽しかったことだけは覚えている。 いっぱい踊ったな一人で……。 体を起こそうと試みる。全身が鉛のように重い。もう一度ベッドに倒れ込み、枕に顔を埋めた。  「もうやだ………ダルダ

          短編小説 「二日酔い×2」

          短編小説 「私の赤い傘」

          赤い傘を買ったのは、駅前の雑貨店でのことだった。店先に並ぶ色とりどりの傘の中で、一際鮮やかな赤が目に留まった。手に取ってみると、軽くて持ちやすい。取っ手の部分には小さなリボンの飾りがついていて、可愛らしかった。  「これ、ください!」 気づけばレジでそう言っていた。普段は雨が嫌い。傘にも特にこだわりはなかったのに。この赤い傘は私の心を惹きつけた。きっと、私が女の子だから。きっと、そう。 家に帰る途中、早くこの傘を差して歩きたいと思った。でも、空は雲ひとつない青空。天気予

          短編小説 「私の赤い傘」

          昼間ですが休みなので小説読みながらはじめます。

          昼間ですが休みなので小説読みながらはじめます。

          短編小説 「私の脳内メモリー」

          私の脳内メモリーはたぶん1MBくらい。スマホの容量と比べたら米粒みたいなもの。でも、それが私。 朝の光がカーテンの隙間から差し込み、目を覚ます。枕元の目覚まし時計は、いつもの時間を指していた。「あれ、今日は何か大事なことがあったような……」頭をひねるけれど、思い出せない。 急いで身支度を整え、駅へと向かう。電車に乗り込み、揺れに身を任せていると、スマホのカレンダーに通知が表示された。 「9時から全体会議!」と思わず声が出ちゃった。 急いで会社に連絡を入れ、「少し遅れま

          短編小説 「私の脳内メモリー」