雨奈川ひるる | 短編小説

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雨奈川ひるる | 短編小説

毎日1200字程度の短編小説を投稿しています。ちょっとした時間に、さっと読める物語をお届けします。

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  • 短編小説 「昼下がりの君へ〜」

    滅びた国で楽しく暮らすダンとジュンのお話し。

  • 短編小説「夢の中のウサギ」シリーズ

    夢の中で喋るウサギとの不思議な出会いの物語です。

  • 短編小説|タコとイカの大冒険

    タコのタンクとイカのインクが主役の驚きと感動溢れる冒険小説をご紹介します。海底世界の絢爛とした背景に描かれた彼らの挑戦と友情は、読む者を深海の魔法に引き込みます。絆を深めながら未知の領域を切り開いていく二人のストーリーは、あなたの心を確実に掴むでしょう。

  • 短編小説「BEAST NOON」シリーズ

  • 小説 「少年シリーズ」

    書いた小説の頑張る少年の話をまとめました。

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短編小説 「ジャガなしカレー」

空がオレンジ色に染まる頃、僕は台所に立った。今日は久しぶりにカレーを作ろう。野菜室を開けて、人参と玉ねぎ、そして冷蔵庫から牛バラ肉を取り出し、まな板の上に並べる。 まずは玉ねぎを大きなくし切り。包丁を入れるたびに、目から溢れる涙はいつものこと。次に人参を乱切りにする。人参は好きじゃないけどカレーだと話は別だ。カレー入った人参は人参じゃない。それはカレーなんだ。次は牛バラ肉は一口大に切り分け、脂の部分が美味しさを引き立ててくれるだろう。そして、牛バラ肉にはしっかり塩コショウ。

    • 短編小説 「給料上がりますか?」

      朝の光がオフィスの窓から差し込み、デスクに並ぶ書類を照らしている。パソコンのキーボードを叩く音が周囲から響き、静かな活気を感じる。コーヒーを一口飲みながら、上司の田中課長の背中を見つめた。 最近の物価上昇で生活費が厳しくなり、給料アップの相談をしようと、意を決して席を立ち、課長のデスクへ向かう。  「課長、少しお時間よろしいでしょうか?」 田中課長は眼鏡の奥からこちらを見上げ、穏やかな笑みを浮かべた。  「ああ、工藤くん。どうしたんだい?」  「少しご相談がありまし

      • 短編小説 「二日酔い×2」

        頭がズキズキと痛む。まぶたを開けると、薄暗い部屋の天井が目に入った。天井の隅には小さなシミがあり、それがじっとこちらを見つめているように感じる。  「あぁ、飲み過ぎた……」 額に手を当てて深いため息をつく。昨夜の記憶はところどころ途切れていて、何をどれだけ飲んだのかさえ思い出せない。ただ、一人楽しかったことだけは覚えている。 いっぱい踊ったな一人で……。 体を起こそうと試みる。全身が鉛のように重い。もう一度ベッドに倒れ込み、枕に顔を埋めた。  「もうやだ………ダルダ

        • 短編小説 「私の赤い傘」

          赤い傘を買ったのは、駅前の雑貨店でのことだった。店先に並ぶ色とりどりの傘の中で、一際鮮やかな赤が目に留まった。手に取ってみると、軽くて持ちやすい。取っ手の部分には小さなリボンの飾りがついていて、可愛らしかった。  「これ、ください!」 気づけばレジでそう言っていた。普段は雨が嫌い。傘にも特にこだわりはなかったのに。この赤い傘は私の心を惹きつけた。きっと、私が女の子だから。きっと、そう。 家に帰る途中、早くこの傘を差して歩きたいと思った。でも、空は雲ひとつない青空。天気予

        • 固定された記事

        短編小説 「ジャガなしカレー」

        マガジン

        • 短編小説 「昼下がりの君へ〜」
          4本
        • 短編小説「夢の中のウサギ」シリーズ
          3本
        • 短編小説|タコとイカの大冒険
          3本
        • 短編小説「BEAST NOON」シリーズ
          2本
        • 小説 「少年シリーズ」
          5本
        • 小説「この世界にごきげんよう」
          3本

        記事

          短編小説 「私の脳内メモリー」

          私の脳内メモリーはたぶん1MBくらい。スマホの容量と比べたら米粒みたいなもの。でも、それが私。 朝の光がカーテンの隙間から差し込み、目を覚ます。枕元の目覚まし時計は、いつもの時間を指していた。「あれ、今日は何か大事なことがあったような……」頭をひねるけれど、思い出せない。 急いで身支度を整え、駅へと向かう。電車に乗り込み、揺れに身を任せていると、スマホのカレンダーに通知が表示された。 「9時から全体会議!」と思わず声が出ちゃった。 急いで会社に連絡を入れ、「少し遅れま

          短編小説 「私の脳内メモリー」

          短編小説 「セルフレジ」

          午前中の会議を終え、喉の渇きを覚えた。オフィスの近くにあるコンビニに向かった。自動ドアが開くと、冷房の涼しい風が体を包み、店内の明るい照明が目に入った。ジュースの棚に向かい、お気に入りのオレンジジュースを手に取る。 レジへと歩くと、セルフレジが数台並んでいる。明るいディスプレイが「ご利用ください」と誘っているが、誰も使っていない。隣には有人レジが二つあり、客が列を作っていた。僕は迷わず、その列の最後尾に並んだ。 前の客たちが順番に会計を済ませていく間、店員の動きを何気なく

          短編小説 「セルフレジ」

          短編小説 「終わりのエルフ」

          深い森の奥に、木々に囲まれた小さな家がぽつんと立っている。その家には、長い耳を持つエルフのアルフォが住んでいた。かつて、豚と恋をし、豚になり、そしてエルフに戻るという不思議な経験をしてきた。 静かな朝、窓から差し込む柔らかな陽光が部屋を照らし、鳥たちのさえずりが遠くから聞こえてくる。アルフォはゆっくりとベッドから起き上がり、深呼吸をした。  「今日はいい天気だな」 彼は微笑みながら、日課である庭の花に水をやるため、杖を手にしおぼつかない足取りで外へ出た。色とりどりの花々

          短編小説 「終わりのエルフ」

          短編小説 「ブタになったエルフ」

          目を覚ますと、周りには見慣れない草むらが広がっていた。体が重く、立ち上がろうとすると四本の足が地面を踏みしめる。何かがおかしい。慌てて近くの池に駆け寄り、水面に映る自分の姿を見た。  「これは……ブタだ!」 僕、アルフォはエルフのはずなのに、今や丸々としたブタの姿になっている。昨日までの記憶がぼんやりと蘇る。ポルカという可愛いブタの少女を食べてしまったこと。そして、その瞬間に体に奇妙な力が走ったのだ。  「呪い?」 森の風が冷たく肌を撫で、木々の葉がざわめいている。遠

          短編小説 「ブタになったエルフ」

          短編小説 「恋恋エルフ」

          ある日、森の小道を歩いていると、可愛らしい豚の女の子と出会った。ピンク色の肌にくるんと巻いた尻尾、大きな瞳が印象的だった。  「こんにちは、エルフ様!」 彼女は僕を見つけると、嬉しそうに声をかけてきた。どうやらエルフを神様のように崇めているらしい。その純粋な笑顔に、胸がときめいた。  「やあ、僕の名前はアルフォ。君は?」  「私はポルカです!」 それから僕たちは森で何度も会うようになった。花畑で一緒に遊んだり、小川のせせらぎを聞きながらお話をしたり。ポルカと過ごす時

          短編小説 「恋恋エルフ」

          短編小説 「酒場のエルフ」

          深い森の奥にある小さな酒場「星降る角」夜になると、さまざまな種族が集まり、賑やかな笑い声が響く。その隅の牛の丸テーブルで、エルフのアルフォが頬杖をつきながら、ぼんやりとグラスを見つめていた。  「またアルフォが飲んでるよ」と、小鬼たちがひそひそ話す。酒場の主人、悪魔のクルーはカウンターの奥からその様子を横目で見て、尻尾をゆらりと揺らした。「まったく、懲りないやつだ」 カウンターには妖精やドワーフ、魔法使いたちが集まり、アルフォが次に何杯飲むのか賭けをしている。  「次は

          短編小説 「酒場のエルフ」

          短編小説 「居酒屋の柿の種」

          仕事を終えた夕暮れ時、佐藤は駅前の細い路地を抜け、いつもの居酒屋へと足を運んだ。暖簾が風に揺れ、提灯の明かりがほのかに店先を照らしている。木の看板には「居酒屋 こはる」と手書きの文字が温かみを感じさせた。 店内に入ると、木の温もりが伝わるカウンター席が目に入る。常連客たちの笑い声や、女将の元気な声が心地よい。佐藤は空いている席に腰を下ろし、ネクタイを緩めた。  「いらっしゃいませ、生ビールでよろしいですか?」 女将が笑顔で声をかけてくる。  「はい、お願いします」

          短編小説 「居酒屋の柿の種」

          短編小説 「エルフの枕」

          深い森の中にある小さなエルフの村。その一角に、尖った耳を持つエルフの青年アルフォが暮らしていました。彼は柔らかな月明かりが差し込む部屋で、新しく買ったばかりの枕に頭を乗せてみました。しかし、どうにも耳が痛くて眠れません。  「この枕、僕の耳に合わないなあ」 アルフォはふわふわの枕を見つめて小さくため息をつきました。森の仲間たちは人間用の物をそのまま使っていますが、彼にはそれがしっくりこなかったようです。 翌朝、窓から差し込む朝日が彼の頬を照らしました。アルフォは眠れなか

          短編小説 「エルフの枕」

          短編小説 「顔なしの仮面」

          鏡に映る自分の顔をじっと見つめた。 そこに、僕の顔はなかった……。 整った鼻筋、鋭い目元、彫刻のような顎のライン。高校時代の自分とはまるで別人だ。32歳になった今、大手飲料メーカーで働き、出世コースを歩んでいる。外見も仕事も、順風満帆だと言える。 ただ、心の奥底には、あの頃の記憶が鮮明に残っている。高校時代、好きだった女の子に「ブス」と言われたあの日。教室のざわめき、彼女の冷たい視線、クラスメートたちの嘲笑。それ以来、僕は自分の外見に深いコンプレックスを抱くようになった

          短編小説 「顔なしの仮面」

          短編小説 「この先」

          カエルの合唱が遠くに聞こえる。 時計の針が夜十一時を指し、ようやく家事と明日の洗濯の準備を終えた。リビングの灯りを消し、静かな廊下を足音を立てないように歩く。寝室のドアを開けると、薄暗い部屋の中で夫の寝息が聞こえた。隣で寝る彼からは、かすかに酒の匂いが漂ってくる。 ベッドに腰を下ろし、深く息を吐いた。夫はすやすやと枕を抱きながら眠っている。二十代の頃、こんな未来を想像しただろうか。あの頃は自由で、夢に満ちていた。友人たちと遅くまで、デザイナーとしての未来を語り合い、恋愛も

          短編小説 「この先」

          短編小説 「ひとりのエルフ」

          朝露が葉先から滴り落ちる音で目を覚ました。薄明かりの森は静寂に包まれ、鳥たちのさえずりが遠くから聞こえてくる。僕の名前はアルフォ。エルフだ。 いつも通り、森の中を散策しながら、朝の空気を胸いっぱいに吸い込む。この広大な森には、僕以外のエルフの姿は見当たらない。けれど、それが普通だと思っていた。もしかしたら、他のエルフたちは別の場所で暮らしているのかもしれない。 木々の間を軽やかに歩き、小川のせせらぎに耳を傾ける。澄んだ水面に映る自分の姿を見つめ、長いトンガリ耳に手を触れた

          短編小説 「ひとりのエルフ」

          短編小説 「ゼリーの海」

          ゼラチン王国と寒天王国が、ゼリーの食感を巡って二年間も争っている世界。戦場から遠く離れた場所に、「ゼリー海」と呼ばれる美しい海が広がっている。そこでは、戦争に参加しない人々がバカンスを楽しんでいた。 ゼリー海は、ゼラチンの弾力性と粘性、寒天の硬さとなめらかさが絶妙に混ざり合った、不思議な海。その波はぷるぷると揺れ、人々はその上を浮かんだり、泳いだり、時には沈んだりして遊んでいる。 ある晴れた日、ゼラチン王国から訪れた家族がゼリー海の砂浜にやってきた。子どもたちは歓声を上げ

          短編小説 「ゼリーの海」