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生理で上手に働けない

私は高校生くらいからだろうか、
なぜか、月の10日間くらい、引きこもりたくなる時期がある。

起きた瞬間から絶望していて、身体が鉛の様に重く、起き上がれない。
景色は全部グレーに見える。人と関わりたくなくて、音を耳に入れたくなくて、話しかけられると貝の様に縮こまる。誰とも目が合わない様に下を向いて歩く。

学生の頃は単位ギリギリで休んだり、適度に遅刻したりしてやり過ごしたが、大人になると仕事は休めない。その10日間と仕事が重なる時期は、
歯を食いしばって、手をグーに強く握って、下を向きながら出社した。

出社しても頭が働かない。的を得ていないメールの返信をして業務をややこしくしてしまったり、企画書が全然書けなくて上司に詰められたりした。

「あの企画書さ、まだなの?」と、イラつかれる度に、なんでこんなに仕事が遅いんだ、と悩んだ。
この10日間はとにかく出勤するのが精一杯で、全然上手に働けない。

会議は特に最悪だった。
なんとか汚い議事録をとってみるけど、
後で見返しても会議中の記憶はほぼない。

クライアントさんが一生懸命質問してくれている時も「はあーまあーそんな感じですー」みたいな
超適当な返答を繰り返していた。

そんな私の様子を見た先輩に
「今日のきみ、態度最悪だったよ。社会人としてどうかと思う。」
と言われてしまったこともあった。

自分でもそうだと思った。
泣きながらすごく小さい声で「すみません。」と謝る。
先輩はバツが悪そうに猫撫で声で、
「まあ、今後気をつけてね」とだけ言って、
注意したことを後悔したかのように、そそくさと逃げた。

先輩と私の精神的な距離が離れていくのがわかった。注意されても泣きたくなかったのに
涙を止められなかった自分に嫌気がさして、
またぐちゃぐちゃに泣いた。
ついでに冷や汗も吹き出して、身体も顔もぐちゃぐちゃになったりした。

それだけじゃない。その10日間は、性格も悪くなった。些細な出来事(机の角に足をぶつけるなど)で涙が止まらなくなったり、恐ろしく攻撃的になったりして自分のことをコントロールできない。前に歩く人の歩く速度が遅いだけでムカつく。恋人ともよく喧嘩した。

その10日間以外の20日間、私はとても明るい。
MBTI診断では外交性を表すEが必ず頭につくし、人と話すのも大好きだし、働くのも、お出かけも全部大好き。家ではふざけてニコニコしているのが20日間の私。自分で言うのもなんだけど、仕事も普通にテキパキできるのが20日間の私。上司には、モチベーションの波が激しい奴、と思われていた。

自分でも、なぜ10日間だけ著しく調子が悪いのか全然わからなかった。

私は、
繊細なタイプのHSPなのかもしれない、
もしくは精神疾患なのかな。
ネットの情報などを調べても症状がピッタリくるものはなかった。
原因がわからないことはモヤモヤするし、余計私を不安定にさせた。

もしくは、
病気でも性質でもなくて、ただ単に頭がおかしいのかもしれない。

なんだかわからないけど、私ってすごくうざいし、生きづらい。

ずっとそう思っていた。

原因を突き止めたのは旦那さんだった。
旦那さんも原因はすぐにはわからなくて、
出会った頃は「気分の波が激しい子」と思っていたらしい。
一緒に住むようになって、
四六時中共に過ごす様になって、
原因がわかったらしかった。

「あやの不調の原因は全部生理だよ」
ある不調の10日間の時、
唐揚げを食べながら泣いていたらそう断言された。
確かに、その10日間は、生理の前であることが多い気がした。

私は10代から20代前半までかなり良くない「ほぼ食べない」ダイエットをしていた。(ダイエットについてはまた別で書きたい。)そのせいで、生理が来る時期が時々安定していなかった。だから10日間がランダムに来ている気がして気づかなかったが、不調に陥るのは、いつも生理の前だった。

自分でも調べてみたらPMDD(月経前不快気分障害)というものがあることを知った。すぐに産婦人科と精神科に通い、漢方薬と抑うつ状態を改善する薬をもらった。ようやくわかってよかった。安心だ。これからはこの不調に対抗できる。

そう思ったのに、なぜか生理の前の10日間、
不調の波が来ると、
明らかにPMDDの症状なのに、
自分自身でPMDDだと気づけない。

「なんだかわからないけど涙が出てくる」と旦那さんに泣きながら訴える。そうすると、PMDDの症状だと気づいた旦那さんが薬を飲むように勧めてきて薬を飲める。

薬を飲み始めたら、不調の10日間は不調の3日間くらいまで減らせるようになってはきた。残りの不調の3日間はPMDDだと自分で気づけなくて、薬を飲めていない期間だ。

なぜ自分自身は、自分の不調になかなか気づけないのか。
その原因は、これまで自分のことを蔑ろにして、
向き合うことを怠ってきて、
大切にしてこなかったからだと思っている。

自分の体調?
そんなことより、生活しないといけない。
一人でも生きていけるように自立しないといけない。
そのために、仕事をしないといけない。
勉強しないといけない。家事もしないといけない。

やらないと「いけない」ことが多すぎて
自分の健康なんて考える余裕がなかった。

だから不調の原因に気づくのも本当に遅くなってしまった。13年近く、生理で毎月10日間、辛く過ごしてきた。1年で、120日不調だと考えると、13年で1560日、つまり4年間まるまる不調の人生だったと思うと悲しい。

今現在もまだ、具合悪い時にPMDDだと気づけないし、自分の体調と向き合ったり、自分のために体を温めたり、心を癒したり、そういうケアをしていくことが苦手だ。

それでもPMDDだとわかってからは、
苦手なりに自分の体調や心と向き合う様になった。

向き合わないと薬も飲めないし、
少しでも体質を改善して、些細な不調に気づき、適切な対処をして、とりのぞきたい。

自分の体調と向き合って、ケアする様になってから、今まで生きるために生きていたけど、
これからは、幸せになるために生きたいと思う様になった。

自分が健康になることで、
幸せになる人がいる。
自分を大切にすることが、
大切な人を大切にすることになる、と気づいた。
(PMDDの症状がなくなれば、大切な旦那さんを振り回さなくてすむし、尊敬する先輩を涙で困らせることもなくなるはずだから。)

自分の健康と向き合うために、仕事も辞めることにした。今の仕事は、働く時間も不規則で残業も多く、とにかく忙しい。
PMDDの他にも、偏頭痛や冷え性、貧血、などさまざまな不調を抱える私とは相性が悪すぎる。

給料がまあまあ良くて、社会的地位もそこそこあって安心なので、無理して働いていたけれど、
無理して毎日12時間くらい働くのは不幸すぎる。

これからは、生きるために生きるのではなく、
自分も大切な人も幸せになるために生きていきたい。その基準に合わない。だから仕事は今までとは全然別のものに変える。シンプルな結論だった。

「健康を優先したいので仕事を変えます。」
そう言うと、悲しいことに
今の時代(というか日本だと)
なんかめちゃくちゃ舐めた奴みたいに聞こえる気がする。

でも私はそのくらいでいいんだと思い始めた。
そのくらい自分を保護していいんだと。

自分のことを一番に考えて、
自分のことを大切にしていく。

そうすることは、きっと
大切な人のことも幸せにすることに繋がると思う。

それってたぶんぐるぐる循環して
自分と大切な人以外も幸せにできて、
世も和になるんじゃないか?などと考える。

かなり主語が大きい気もするけど、
大筋は間違っていない気がする。





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