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【ピヲピヲ文庫連載ミステリー】『7組のクセツヨな招待客』~第7話~

 質疑応答を通じていくぶん雰囲気が和んだためか、招待客たちは打ち解け始め、屋敷の独特な雰囲気について、鳥尾と雑談を交わし始めた。
「ところで、どうしてこんな山の中の洋館に我々をご招待されたのですか?」と、ナオミが尋ねた。
 鳥尾は笑顔でこの質問に答えた。「実は、国内にいくつか似たような館を持っております。当館は、主に研究所を兼ねております。周りを山に囲まれ、都会の喧騒から逃れることができる当館は、研究に集中するに相応しい環境であると感じています」
「調度品も実に素晴らしい!」と、剛が感嘆の声を上げた。
 鳥尾は微笑みながら続けました。「ありがとうございます。この洋館の調度品には、ヨーロッパから取り寄せたアンティークのものが多いです。質の高い調度品は、我々の研究にインスピレーションを与えるものであり、当館を訪れる皆さまにも、その魅力を感じていただければ幸いです」
 今度は明が鳥尾に話し掛ける。「先ほど寝室で休んでいたとき、窓から何種類かの鳥の鳴き声が聞こえました。こちらの館は、自然に囲まれた良い場所で、たまにこういった場所で気分転換するのもいいなと思ってます。ボクは鳥が結構好きなんですが、屋敷に入る前、何だかピンク色した珍しい野鳥を見ました。鳥尾さんも、随分と鳥がお好きだという印象を受けます」
「はい、よくぞ気付きました。鳥は人間の暮らしとは切っても切り離せない存在だと感じており、もちろん私も鳥は大好きです。皆さまはお気付きか分かりませんが、鳥たちをじっくり観察していると、人間社会の縮図と感じるような気付きを得ることもあり、我々のビジネスにもインスピレーションを与えてくれます。また特別な環境で育てられた鳥は、実に高品質を誇るものです。我々のビジネスも高品質、いえ、世界最高水準のサービスを提供することを常に心がけておりますゆえ、親和性を感じてもおります」
 他の招待客たちの発言が一瞬途切れた隙を突いて、梓が声を上げた。「ところで、さっきから気になっていたのですが、その首から下がる素敵な金のペンダント。何かとても高価なもののように見えますが」
 鳥尾が招待客たちとの距離を一段と縮めようとするかのように、ペンダントを手に取り、皆が見えるようにテーブルを軽く一巡した。
 そこには、涙を流す鳥のデザインが刻み込まれていた。
「これは『始祖鳥の涙』と言いまして、我が一族に代々伝わる家宝の1つです」
 美術系の大学院生であるリナは、そのペンダントに目を奪われ、「何だか独特で……そして……とても繊細なデザインですね。こんなデザイン、初めて見ました」と感心した。
 立己は興味津々に、「『始祖鳥の涙』には、何か特別な意味や伝説があるのでしょうか?」と尋ねた。
 鳥尾は一同を見渡しながら、「このペンダントのデザインは、我が一族の守護者である始祖鳥を象徴したものです。言い伝えによれば、『始祖鳥の涙』は、我が一族に繁栄と幸福をもたらすとされています」と説明した。
 招待客たちは、その話に耳を傾けながら、鳥尾の一族と洋館に秘められた歴史に思いを馳せた。
 そんな中、麗子だけは言葉を発さず、その表情は皆の歓談に耳を傾けているようでもあったが、会話の途中で何度か鳥尾のことを鋭い眼差しで一瞥したようにも見えた。

 鳥尾が場を仕切り直すように全員に笑顔で問いかけた。「ほかに、今までのところで、何か質問はございますでしょうか?」
 武が手を上げ、おずおずと尋ねた。「あの、、、報酬の件ですが、、、」 
 そこで鳥尾の顔がパッと明るくなり、「はいはい、インセンティブの件ですね! その話もいたしましょう。ただし、私の一方的な長話が続いてしまい、皆さまもそろそろストレスが溜まって来た頃と思いますので、ここからは、ぜひ皆さまの方から軽く自己紹介いただくというのはどうでしょう? その中で、インセンティブの件について、皆さまのからご質問があるようであれば、私が何なりとお答えいたします」。

(🐦つづく🐦)

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※ 本連載の「あらすじと登場キャラクター紹介」はこちら

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