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小説-「拾った小石」①
(515文字)
私は、小さい頃からよく色んな物を拾って帰る。
小石、貝殻、誰かが落としたビー玉、セミの抜け殻。生きているセミは羽をちぎって、ブローチのように胸に付けて帰った。家の前の池では、夏になると網でカエル捕りをする。夕方になるとそのカエルを放置して、私は家の中に入ってしまう。次の日、あるカエルは干からびて死んでいたり、その又違うカエルは瓶の中で開けた口を上を向け、泡でも吹いたのかいなかったのか定かではないが、少ない水の中にだらしなく体を垂らし死んでいた。子猫は二度、拾って帰った。母親に叱られ、泣く泣く一度目は近くのお寺の境内に捨てに行った。その子猫は二度捨てられたのだ。二度目は、隣の家の倉庫に放した。隣のおばさんが優しい人で、その子猫はその家で生涯を全うした。
子供はとても残酷な生き物で、いや、私がとても残酷な生き物で、情の薄い人間なのだろうっということが、子供の頃からうすうすわかっていた。母親に、あんたは薄情な人間だと言われる度に、悲しみを通り越し、いつも怒りが湧いてきた。でも、母親の言う通りだ。私は、薄情で軽薄な人間だ。
そして今夜、若い男を拾ってしまった。
続く。
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