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【詩】優しい足音

『ありのままの君でいていいよ』
そんな言葉の意味は実はこうで
『昔のように否定はされない、
けれど見向きもされない世の中』

優しい毛並みの家猫じゃなきゃ
友達なんて できっこないさ
闘わないと生きられなかった
山猫育ちは今日もひとり

あの子とだったら仲良くなれそう
遠くから見つめる哀しい目には
ガラスの向こうで声など届かぬ
同じ目の色した猫が

町ゆき 山ゆき 川辺を歩く
どんな草でもけ方を知る
そんな山猫はよく見てる
町人 村の子 岸辺の小鳥

みなみなそれぞれ自分を生きて
日々少しでも幸せ求む
ああ、良かったね、みんなが生きてる
山猫はただ 彼らを見てる

意味ない遊びに興じる子スズメ
明日あしたの糧なく眠れぬ子ヤギ
ああ、それでも、みんなが生きてる
山猫はただ 彼らを見てる

薄く伸びるは差し込む光か
はたまた たなびく雲の名残か
どちらだろうなと空を見上げて
山猫の今日は暮れてゆく


僕のしごとはなんなんだろな
観ること 聴くこと
喋ること
わからないままとにかく歩く
歌いながら歩くしかない

曲がり角の先が花畑だと
信じられるその理由はね、
それまでの道を一生懸命
走って来たから 
そうでしょ?神様

だからとことこ 山猫は
優しい足音たてながら
通り道で出会った景色を
そのまま受け入れながら

たどり着くのはあたたかな場所
誰もいないかもしれないそこは
それでも歩みを止めて息つき
雨露しのいで ゆったり眠れる

ああ、やっと来た
ようやく着いた
ねえ、きみもここまで来るかな
僕が待っててあげたら きみが
着いた時には 僕がいる

僕も きみも
ひとりじゃないよと
たったひとりのきみに言いたい
だからここで待っててみるよ
いつか会えると信じてるきみを




ああ、聞こえてきた、
優しい足音
はじめまして、
僕みたいな きみ



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紫葉梢《Shiba-Kozue》
より良い日々の路銀にさせていただきます。いつかあなたにお還しします😌