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ia19200102
【ショートショート】拾いもの
会社からの帰り道。
信号が赤になったので歩みを止めた。
だが、私の右足はズボンを引きちぎり、そのままぴょんぴょん跳ねて横断歩道を渡ってしまった。
「おい、待て」
と叫ぶが、聞く耳をもたない。
片足では追いかけるどころか、立っているのもやっとだ。
まいったなあ。
私が立ち往生していると、すぐ横をジーパンを穿いた右足が通り過ぎようとした。私は倒れかかり、がっちりと足を抱き止めた。
バタバタする足を自分の右足の付け根に押し付けるとカチッと音がしてはまった。私はヨロヨロと立ち上がる。
ともすれば違う方向に行こうとする右足をなだめながらなんとか帰宅した。
ズボンと靴下と靴はダメになってしまったが、すぐ新しい足が見つかってよかった。
翌日、出社すると、部下の席に知らない顔が座っていた。
「誰?」
「ゴトウですよ」
「嘘だろ。顔も声も違うぞ」
「昨日、首を落としまして。拾ったのがこの首なんです」
「首のほうが出勤してこいよ」
「社員カードは財布に入ってますから。社内に入れませんよ」
と、体だけになったゴトウが答えた。
仕事をさせてみると、ゴトウよりもよほど要領がいい。拾いものかもしれなかった。
(了)
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