短き書評:梅原猛『日本人の「あの世」観』中公文庫。冒頭一章は日文研創立期のイベント基調講演を文字起こししたもので、著者の最高傑作の一つと私は思ふ。同時講演のレヴィ・ストロースやドナルド・キーンに対抗する必要から普段の梅原文にある冗長さや勇み足がなく、スツキリ簡潔にまとまってゐる。
「破滅の予言は楽天主義よりも常に威厳を帯びているが、幸いそれが正しいとは限らない」(ドナルド・キーン)。能の衰退を危ぶむ声があったことについてのコメントだが、この言葉自体に文脈を超えた強い説得力を感じる。優れた文章とは、読者の人生に直接刺激を与えるような煌めきを備えているものだ。
連休は、よい刺激をいただきました。まことにありがとうございました。