『走馬灯のセトリは考えておいて』読みました。 初!柴田勝家さん読了! いや、SFの味付けもこんなに今時になるんだとびっくりしました。 面白かったです。 コロナ禍がきっかけとなって福男選びがオンラインになった『オンライン福男』は熾烈になっていく福男選びが淡々と語られているのが印象的でした。 項目分けがちょっとネットにありそうなまとめ方なのが最高ですね! 人が生前のライフログの分身を残せるようになった未来、”この世”を卒業するバーチャルアイドルのラストライブまでの足跡を描く表
皆さんは、元気なおばあちゃんが出てくる作品というと、何を思い出しますか? 有名なのは『サマー・ウォーズ』でしょうか。 栄おばあちゃん、肝の座った格好いいおばあちゃんでしたよね。 本日は、栄おばあちゃんとはまた違ったベクトルで、強かなおばあちゃんが出てくる作品、『大誘拐』を紹介します。 柳川とし。 『大誘拐』に出てくるおばあちゃんの名です。 彼女は紀州一の大富豪。 県内はおろか、全国に聞こえる資産家。 持山およそ四万ヘクタールという、凄まじいほどの土地を所有しています。 作中
皆さんは、猫、好きでしょうか。 猫、可愛いですよね。 作家にも、猫を愛好していた人は数知れず。 今日ご紹介する本は、その中の1人であるポール・ギャリコの一冊。 『猫語のノート』です。 『猫語のノート』は猫の気持ちが描かれた詩。 猫らしく気まぐれな猫、さながら神のごとく尊大な猫もいますし、ちょっとお間抜けな猫もいます。 猫によって変わる一人称がまた、彼らの個性を際立たせていて、愛おしくなること間違いなし。 可愛すぎる詩のひとつ、『朝のおていれ』をご紹介しましょう。 詩とと
大河で平安時代の文学に興味が出てきたけれど、何を読めばいいかわからない……という方もいるのではないでしょうか。 そんな貴方に、平安時代最古の日記文学を取り扱った一冊、『姫様と紀貫之のおしゃべりしながら土佐日記』大伴茫人著をおすすめします。 本書は姫様と、その家庭教師に任命された紀貫之の語りで物語が進行していきます。 この姫様が可愛い。 ちょっとおませさんで、結構ずけずけものを言います。 まあ、紀貫之もこんな歳の姫様に言うんじゃないよそういう下品なことを……という言葉をいうの
東京国立博物館でのはにわ展、始まりましたね。 ちょうどよく、はにわが出てくる『ぽっぺん先生とどろの王子』を読み返しました。 今回のぽっぺん先生は探鳥会のリーダーとして山中を歩いている最中、皆とはぐれて片足が壊れたはにわ人形を見つけます。 立ち去ろうとしたぽっぺん先生は、何かに呼びかけられますが、背後には誰もいません。 まさか……と思ううちにどしゃ崩れに巻き込まれ……気がつくと、あのはにわになっているではありませんか。 他にもいる処遇なさげなはにわ達と共に、ぽっぺん先生はどう
皆さんは、中国文芸書、読んでいますか? 私は中国SFはいくつか読んでいるのですが、中国文芸書はなかなか…… そんな私が唯一読んでいる作家、莫言の『白檀の刑』をご紹介します。 舞台は清朝末期の一九〇〇年。 山東省の膠州湾一帯を清朝から租借したドイツは、膠州から済南に通じる膠済鉄道の敷設に手をつけました。 その線路で真っ二つにされることになる高密県一帯は騒然。 ドイツに対する民衆の抵抗を組織した孫丙という男が捕えられ、娘の眉娘が高密県知事の銭丁に命乞いにいくのですが……実は眉娘
石垣りんさんのエッセイ集『朝のあかり』を読みました。 働きながら書くということは、己の軸足をどこに置くかということなのかな、なんて思ってしまいましたね…… 『目下工事中』というエッセイが心に残っています。 十五の年から五十三まで働き通した女性が、「とてもがまんがならない」と思って辞めることに。 その人の別れの茶会が開かれるので、「私」は近郊にある会社のグラウンドの隅に建てられた茶室へと出向きます。 “戦前から戦後にかけて働いた者には、会社がこうして、会社の施設を女性に使用さ
ぽっぺん先生シリーズ、第三作『ぽっぺん先生と笑うカモメ号』まで読みました。 感想を書きます。 ホテルに泊まったぽっぺん先生。 突然、激しい揺れがぽっぺん先生の部屋を襲い、潮水が窓から入ってきました。 なんとぽっぺん先生の部屋が船になってしまったのです。 どういうことでしょう。 私もこの始まり方には度肝を抜かれました。 「それはいきなり始まります」という章タイトルがここまでぴったりな始まり方があるでしょうか。 そしてそのままぽっぺん先生はアルカナイカといういう島を目指して漂流
彬子女王『赤と青のガウン』読みました。 SNS上で話題で、皇族の方々の書く留学記?!どんなものなんだろう……と思っていましたが大変に興味深かったです。 笑ったのが、学習院の学生は学習院に入ることを”入院”という……なんてところ。 そんな呼び名があるんだ!?という驚きと、皇族の方もそんな下々の呼び名を使われるのですか!?という驚きと…… 皇族ならではのあるあるを披露されているのも、めちゃくちゃ面白かったです。 留学当初、いちばんつらかったのがいつも一緒だった側衛がいなくなっ
話題になっていた本、『何故働いていると本が読めなくなるのか』を読みました。 これから、「読書」という趣味を掲げたい人、かつて「読書」が趣味だった人、「読書」に抵抗がある人、様々な人におすすめの本だと私は感じました。 作中によく出てくるのが、『花束みたいな恋をした』。 この映画、私が初めて見た時、登場するカップルの麦と絹のすれ違いがあまりにも生々しく、観ているうちに段々とやめてくれ……!!という気持ちになったものでしたが、本書では彼らについて考察を丁寧にされており、改めて『花
ぽっぺん先生シリーズ第二作、『ぽっぺん先生と帰らずの沼』読み返しました。 ぽっぺん先生、また変なことに巻き込まれてますね…… まず始まりが面白い。 ”本日のランチ”の書き出しから始まるって…… ここの食堂のおばちゃんとのやりとりも面白い。 うだつが上がらない中年教師と威勢のいいおばちゃんの会話が目にうかぶようです。 先生がご飯を食べる場所というのがまたいい。 食堂の前庭!? 前庭にご飯、持って行っていいんですか!? いいなあ…… そうやって食べてみたいものだなあ。 それ
『自由研究には向かない殺人』からの三作。 最後の一冊、『卒業生には向かない真実』を読み終わりました。 どうぞ感想文にお付き合いください。 ※ネタバレ注意 大学入学直前のピップ。 彼女の身の回りに、ストーカーの仕業と思われる出来事が起こります。 匿名のメールや、自分の家の前に置かれた首を切られたハト…… それらが6年前の連続殺人の被害者に起きたことに似ていると気づいたピップは、調査に乗り出しますが…… 『卒業生には向かない真実』のピップは、もう『自由研究には向かない殺人』
ドラマ化をきっかけに、『自由研究には向かない殺人』から続く三部作を読んでいっています。 今回読むのは『優等生は探偵に向かない』。 どうぞ感想文をお読みください。 ※ネタバレ注意 前回の事件解決で一躍有名人になったピップ。 その人気はポッドキャストで彼女の捜査が公開されると、再生数がとても上がるぐらい。 でも、ピップは足を洗うと宣言したのに、友人から失踪した兄を探してくれという依頼が…… ポッドキャストシーズン2が始まってしまう…… 今回使われるのはポッドキャスト。 捜査
『自由研究には向かない殺人』ドラマ化するらしいですね。 話題になっていた本作、以前読んで面白かったので、ドラマを見る前に再読するぞ!と思いました。 ついでに、そこから続くピップの捜査二作品も読もう……と思ったのでこれを機に全部再読です。 本記事では第一作目、『自由研究には向かない殺人』の感想をあげます。 ※ネタバレ注意 高校生のピップは、自由研究で、自分の住む町で起こった少女失踪事件を調べます。 何故彼女がこのテーマに取り組んだかというと、事件に関わったとされる少年と親し
ディストピア小説にも、色々ありますね…… 今日私がご紹介する二冊、『侍女の物語』と『誓願』は女性の尊厳が極端に失われたディストピア社会での物語です。 『侍女の物語』の語り手はオブフレッドと呼ばれる女性。 彼女の住むギレアデ国では、女性に四つの階級があります。 〈小母〉〈妻〉〈マーサ(※誓願での訳を使わせてもらいます)〉そして、〈侍女〉。 オブフレッドは、〈侍女〉と呼ばれる階級です。 〈侍女〉にはおよそ人間としての尊厳というものがありません。 出生率が下がったギレアデ国で、子
皆さんは、ミステリーは読んでいますか? 私は最近離れ気味で…… そんな私が最近読んだミステリーを紹介します。 『図書館の魔女』です。 物語は、山育ちの少年キリヒトが、史上最古の図書館「高い塔」の番人、「高い塔の魔女」マツリカに仕えに行くところから始まります。 このマツリカ様が格好いい…… 若くして何十という言語に明るく、東西の万巻をやすやすと繙くと言われるという英知。 はあ……こんな人に仕えられるなんて……と私なんかは思ってしまいますが、キリヒトくんはめちゃくちゃに心酔はし