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【読書記録】ドナルド・キーンさんの『日本人の質問』を読んで考えたこと
ほんっとうに今さらなんですが、ドナルド・キーンさんの本を初めて読みました。『日本人の質問』です。
1983年の本の文庫版なので、少々古さを感じるところもあります。
あの頃の日本はああだったよね、今とはちょっと違うかな、というのも垣間見えて、戦時中から70年代くらいまでの日本人ってこうだったんだ~、というのも伺えます。
ただ「日本古典文学の特質」は、思わずメモを取ってしまうほど濃い内容でした。
「日本古典文学の特質」は重要
日本古典文学の特質として、
・韻を踏まない。
・詩歌は奇数(五七五)を好む。
・余情の文学。
・物語は主観的。出来事より内面的なものを書く。
・物語の構造が弱い。初め、真ん中、終わりではなく、最初から主人公が死者として語っている(能)。
などなどが、記されています。
言われてみると、なるほどとなる部分が多く、興味深いです。
私自身が文学を学んできていないので、ところどころ理解できない箇所もあり、「パラグラフの概念がない」と言われてもなんのこっちゃ? なんですが。
文学にもっと本気で向き合っていたら、そういうのもわかるのかなあ……と思うと、ちょっと悔しい。でも仕方ない。
キーンさんは、日本古典文学の特徴を挙げられた上で、西洋の文学との相違を認めつつも、日本文学のなかの普遍性も仰っています。
日本人が「日本文化は特別」として、ともすれば孤高を気どりたくなることへの警鐘……とも読めますが、人間だから普遍的なところがあって当然だし、だから外国文学を楽しむことができるんですもんね。
我々は一喜一憂すべきではない
以下、この本を読んで考えたことになってしまうんですが。
結局、日本人って、外国の方からいろいろ論評されると、一喜一憂しがちですよね。
「だから日本人はダメなんだ」から「やっぱり日本人スゲーじゃん」まで、両幅に全振りしてしまう人も多数いたりするし、昨今では、耳に痛いことを言ってくれる人を拒絶してしまう場合もある。
まさしく主観的な文学の国ですな。
日本古典文学には、やっぱり島国としての特徴があって、それは島の外に出られないことと、島の外から攻められる危険性が低いことからくるもので、だから同調圧力が強かったり殻にこもりがちだったり、そういうのは避けて通れないと思うんですが。
でもそれらが全部悪いわけではなく、殻にこもる性質が主観的な内面性に目を向けさせることで、源氏物語などの物語文学に結び付いたわけですし、物事には表裏があって当たり前なんですよね。
だから、日本人の特徴として指摘されたことに、感情的受け止めた方をして慌てるのではなく、構造的な特徴の表裏を理解して、そういうものとして認識する方がいいんじゃないかな、と思いました。
つまり、他国との違いに優劣をつけたりせず、それぞれ違って当たり前と認識することで、自国の文化も他国の文化も尊重できるし、それによって個人としても社会や国家としても、豊かになれる道が開けるのではないかと。
外国語って言文一致じゃないんですか?
私は英語が非常に苦手なので、全く知らなかったんですが、英語などの外国語って言文一致じゃないんですか?
キーンさんが、
日本語の長所は、スペルの問題がなく、話している言葉がそのまま文字に置き換えられることである。そして、日本語は話し言葉と読み書き言葉が一致する数少ない言語なのである。
と書かれていて、ちょっとショックを受けているんですが。
そんなの義務教育で教えてくれよ~。
そりゃ「This is a hat」から習った世代なので、「これは帽子です(見りゃわかるだろ)」ではありましたけどね。
ああ、文化って本当にちゃうねんな、違うから意思の疎通が図れないこともあるけど、違うからこそ文明がここまで発展できたんだもんな。
違うから、ひとりひとりに存在価値があって、どの文化も興味深く面白くて、違うから、生きてる楽しみもあるんだよな。
でも、人生半ば過ぎまで知らんかったって、阿呆やんか。くそっ。
世の中は知らんことばっかりで、面白いぞ!
読書感想文は今を映す鏡
この本には日本人論だけでなく、アメリカの芸術論なども書かれていて、ドナルド・キーンさんの自伝だと、ご本人があとがきで書かれています。
なんですけどね。
芸術に対して手厳しいことを書かれていたりすると、読んでてちょっと「ひえっ」となっちゃうんですよ。
批評が苦手というか、いえ、私自身も若い頃は無知ゆえの愚かな批評を書き散らしていたりしたんですが(恥ずかしくて穴があったら入りたい)、だから手厳しい意見を読むと、そんなに書いちゃって大丈夫ですか? とハラハラしてしまう(学生と先生を同次元で語るなよ、ハイ)。
てか、それ以上に、なるべく人様を不快にさせないようにしようという、忖度が働いていたりして。
自分でも気づかぬうちに自己規制してるかも……。
つまり、多分そういう社会なんだよなあ今は、ということですね。
感想文一つを取ってみても、今を映す鏡になってる。
ちょっと、ドナルド・キーンさんご本人の話から大幅に逸脱してしまいましたが、記事ひとつひとつもタイムカプセルみたいなもんなんだなと思いつつ、この辺でお開きにしたいと思います。
ありがとうございました。
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