Imagists

音楽研究者。Imagistsは一人出版社の名前です。 http://www.imagists.net/Japanese/top.html https://imagists.stores.jp

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音楽研究者。Imagistsは一人出版社の名前です。 http://www.imagists.net/Japanese/top.html https://imagists.stores.jp

マガジン

  • 旅記

    媼にとっては過去の旅は夢の中へでかけたようなもの。

  • Play in Noh Play:物語編

    能に登場する妖精たちや人間たちが思いのままに遊ぶ世界。

  • エミリィ・ディキンスンを歌う

    Emily Dickinsonエミリィ・ディキンスン(1830~1886)はアメリカ合衆国アマーストで生まれ、そこで生涯を過ごしたアメリカ最大の詩人。 生前は10編にも満たぬ詩が発表されただけだったが、死後1770有余の詩が発見された。

  • 媼の書庫整理

    本の整理ゆりかごから墓場まで

  • エゴの木

    女子大寮に生息する変人たち。林の道でいつも鳴いている山鳩。エゴの木の咲く頃出没する怪しい男。人生はまだ始まっていない。

最近の記事

インド夢の中へ7

*お別れ  ホテルに帰り着いたのは夜中の12時だった。翌日ガンガとショーバナは鉄道でチェンナイに帰るという。私は翌々日遅い飛行機で日本に帰るので1日余裕があった。一緒に行かないかと誘われたが、バンガロールから朝8時に乗って午後2時にチェンナイに着き、帰りは朝7時で午後1時30分着という。慌ただしいので無理だった。 余裕の1日はコモリン岬に行きたいと私は思っていた。インド亜大陸の先端でアラビア海とインド洋とベンガル湾が見渡せるところ、その日没と日の出を見たいものだと思ったが

    •  インド夢の中へ6

      *遠足    6日目はマイソールに遠足の日で、朝6時半に集合だった。ショーバナとアヌラタとガンガと私は一緒にホテルを出ると、近くの売店で珈琲を飲んだ。アヌラタがみんなの分を払ってくれた。それから前日習ったインドの歌をハマーラ、ハマーラと歌いながらバスを待っていたのだが、1時間以上遅れてバスは来た。どこをどう行ったのか、マイソールのマハラジャの夏の離宮というところに向かっていた。 途中山の上の女神の寺院に寄った。バスを降りるとすぐ裸足にならなくてはならなかった。寺の中で火を

      • インド夢の中へ5

        *Mr.J  この滞在を通じて順調にことが運んだのは、J氏と出会ったことが幸運の鍵だった。彼は日本に住んだことがあり、東京でレコード会社に勤めていたという。 シンジュク?とかアカサカミツケ?とかの地名をポロポロと思い出し、当時はホテルに住んでいて、毎日会社の車が送迎したという。どういう人なのだろう?  日本人の苗字をいくつか口にし、どんな場合も「さん」をつけるのは正しいのかと聞いて、プレゼンのテストをしていたとき、「ノー、ノー、〜さん」「ジャスト·ウエイト、〜さん」と指導され

        • インド夢の中へ4

          *入り組んだ人たち  3日目の朝のティーブレイクの時、校庭を歩いていると、後から「日本の方ですか」と言う声が聞こえた。見ると、日本人でなく、インド人でなく、西洋人の男性である。さらに日本語で、「私は日本から来ました」と言う。 あの人かな、と私は思い当たった。 プログラムに「アジア古典クロスオーバー理論と演奏ー琴と尺八によるインディアンラーガ」と言うタイトルで、肩書きは音楽家で研究者。これを見た時、この人はいったい何人だろうと私は思った。所属の国はUSA&Indiaとなってい

        マガジン

        • 旅記
          7本
        • Play in Noh Play:物語編
          3本
        • エミリィ・ディキンスンを歌う
          6本
        • 媼の書庫整理
          15本
        • エゴの木
          1本
          ¥100
        • 子供の歌
          2本

        記事

          インド夢の中へ3  *夕食なし *ゴビンダ

          *夕食なし  3日目の朝のスクールバスで、隣に座っていたシスターに、ホテルのそばに生えている木がジャカランタに似ていたのでそうかと聞いたら、それはフォレスト·ツリーというのだと教えてくれた。 そして鍵事件を語ると、英語ではなく、カンナダ語かタミル語でみんなに向かって「彼女はトイレの鍵が開かなくて閉じ込められた」と言ったらしく、オー·マイ·ゴッドの声がさざ波のように広がった。 私を贔屓にしてくれているガンガは「そんなときはすぐ私に電話しなさい」と言ったが、電話はバスルームの外

          インド夢の中へ3  *夕食なし *ゴビンダ

           インド夢の中へ2        *変圧器 *思いがけない旅の宿

          *変圧器  インドに来てからまだ一度もビールが飲めていない。乗り継ぎのシンガポールでは飲んだのだろうか。記憶がさだかでない。その日の日記を見ると、食欲もなく水とチョコレートで済ますと書いてある。  わざわざ乗り継いだのは、インドに真夜中に着くのを避けたのだった。 シンガポールでは一刻も早くホテルの部屋に辿り着きたかった。まだ混乱しているプレゼンの諸々を点検しなくてはならなかった。 部屋に着くと早速自分の変圧器を試してみたがダメだった。持ってきたのはマルチタイプで、どん

           インド夢の中へ2        *変圧器 *思いがけない旅の宿

          インド夢の中へ 1

          *到着の日  私はバンガロールの空港に着いた。できたばかりの空港で、閑散としている。 しかし出口にはたくさんの出迎えの人がいて、その中にIndiranagar Sangeetha Sbha という音楽学校の名前と私の名前を書いた紙を持った若者がいた。 来る前に世話役の人とのメールのやり取りで、空港から学校への行き方を教えてくれと言ったところ、「誰か迎えに行く」という返事だった。 学会が始まる日の朝なので、タクシーで行くと言ったのだが、「心配しなくて良い。誰か迎えに行く」と言

          インド夢の中へ 1

          ファンタジア妖精遊能譚第1話

          1.プロローグ 猩々の宿  猩々は朝の光を浴びてむっくり起き上がった。 ……頭が痛い。昨日飲み過ぎた。またやってしまった。昨日は潯陽の江に出張で、孝行息子に大きな酒の甕をやるというイベントをしないといけなかった。ただ酒の甕をやるだけではない。謡ったり舞ったりして大サービスだった。それにその甕ときたら酌んでも酌んでも尽きることがないというんだから。こちらもお付き合いでかなり飲んで千鳥足で海中に帰って行った、と見せかけて、このマンションに帰ってきたという訳なのよ。今からメイク落と

          ファンタジア妖精遊能譚第1話

          ファンタジア妖精遊能譚第3話

          3. インターミッション <春「竹生島」>  竹生島で弁財天が龍神を叱りつけていた。 「どこへ行ってたの! プログラムは神が最初なのに!」 「申し訳ございません。ちょっとこの湖を離れておりまして。」龍神は伏目がちに言った。 「順番は守ってもらわないと。いわゆる神男女狂鬼よ!」弁財天はカンカンになっている。 「あなたがいないから出発できなかったじゃないの」 見ると弁財天は手が4本あり、琵琶ではない変わった弦楽器を弾いている。インドの弦楽器ヴィーナだ。しかも孔雀に乗っている

          ファンタジア妖精遊能譚第3話

          ファンタジア妖精遊能譚第2話

          2.夢見る僧 春夏  春の夕暮れ、心療内科を専門にする医師マヤは午後の診察を終えて、診察室の窓を開けた。 ここ都心のクリニックは川沿いのレトロなビルの3階にあり、地下鉄の駅からも近く、開業して一年になるが、思いの外患者さんが増えて、あまりの忙しさに、新患は当分お断りすることにしようとマヤは思っていた。 窓から見える桜並木を老夫婦らしきカップルが散策している。独身のマヤはふとあのような老後もいいのかもしれないと思った。 帰り支度をしていると、受付の方で何か気配がした。スタッフ

          ファンタジア妖精遊能譚第2話

          白菫忌

           5月15日はアメリカの詩人エミリィ・ディキンスン(1830~1886)の命日です。 Emily Dickinsonエミリィ・ディキンスンはアメリカ合衆国アマーストで生まれ、家のまわりからほとんど出ないで生涯を過ごしました。 生前は10編にも満たぬ詩が発表されただけでしたが、死後1770有余の詩が発見されました。 彼女が白い服を好んだこと、菫の詩があることから、命日を「白菫忌」として、 英文学者武田雅子さん、ソプラノ歌手イエルマー新田淑子さんと共にコンサート活動を1990年

          菫 Within my Reach!

          菫     Emily Dickinson 詩 天野サチ訳 もしかしたら わたしの手がふれていたかもしれない わたしは道をどこまでも 静かにさまよい歩いてた どの道行ったら出会えたのかな ああひとむらのすみれの花 野の下草の中に 指でさがしてももうおそい ひととき前に通り過ぎたよ   Wrthin my reach! I could have touched! I might have chanced that way! Soft saunterd thro' the villageー Sauntered as soft away! So unsuspected Violets Within the meadows goー Too late for striving fingers That passed,an hour ago!

          菫 Within my Reach!

          菫 Within my Reach!

          源氏物語をめぐる本

           源氏物語に関する本が何冊か出てきた。 昭和31 年刊行紫式部の伝記。玉上琢弥著。 源氏物語の本文も知らないのに、小学生はあとがきにより源氏物語は英語で「テイル・オブ・ゲンジ(ママ)」The tale of Genjiというのだと知った。 以下の本は60年くらいの間に折に触れて読んだらしいが、今となっては内容は朧である。 私的解釈の物語(田辺聖子) 二次創作(清水義範) 推理作家による謎シリーズ(藤本泉) 解説的な評論(ドナルド・キーン、大庭みな子訳) 地名を辿る解説(瀬

          源氏物語をめぐる本

          思い出の書店

           その本屋は駒川という小さな流れにかかる上辻橋という橋の袂にあった。 橋を挟んで向かいはガラス屋だった。看板に羽田硝子店と書いてあったが、子供の頃「硝子」が読めなくて、女性がオーナーの店だと思っていた。 駒川に交差して南海平野線が川の上を走るレールだけの部分が数メートルあった。小学校の帰りに寄り道した時は、その危険な線路を通ると近道で、電車が来ないのを見計らって走り抜けると、ガラス屋の際に出てくるのだった。そして正面には本屋が見える。  高坂書店の間口は狭かった。奥ゆき

          思い出の書店

          北杜夫

           わたしが一番夢中になって読み、出るたびに本を買い、考え方にも影響を与えられた作家は北杜夫だった。  初めて読んだのは中学一年の時「どくとるマンボウ航海記」だった。マグロ調査船に乗っての旅行記。 印象に残っているのは、精神科医なのに、船員が盲腸になり、死ぬ思いで手術するところとか、ゆきずりの人に高価なものをあげたりしているのに、お世話になった日本人家庭に有り合わせの風呂敷をお礼に渡したとか。これは後に結婚した夫人の家だと思われるが。 船医という職業にも憧れた。その頃女性の船

          絵の中の美術館

          絵:Kinzo Masuda 音楽: キーボードの音はハープ。 「アルバ」(夜明けの歌)のページは(midi) http://www.imagists.net/Japanese/htdocs/ezra/ezralily.html 

          絵の中の美術館