お題

#おすすめ名作映画

映画は、人生の厳しさからすばらしさまで、さまざまな感情を私たちに教えてくれます。自分にとって“名作” だと感じる映画作品をぜひ教えてください。

人気の記事一覧

人生の日食に触れる -名作映画『太陽はひとりぼっち』の美しさ

   【木曜日は映画の日】     イタリアのミケランジェロ・アントニオーニの映画は、「愛の不毛」という惹句をよく使われ、憂鬱な表情をした女性たちが、盛り上がらないひたすら憂鬱で不毛な会話を繰り広げる、と言われがちです。   それはまあ、間違ってはいない。しかし、私は彼の映画が大好きで、観る度に元気を貰えます。そこには、決して不毛ではない、落ち着いて、時にはリリカルである、モノクロの澄んだ空気感があるからです。   彼のミューズであったモニカ・ヴィッティと、先日亡くなった美男

西田敏行『時の旅人』✖︎『ドラえもん のび太の日本誕生』

♪誰かが座ってた 一万年前も おまえと同じように 白い浜辺に... ♪雨が降っていた 二千年前も 誰かが濡れていた わたしのように... (抜粋) 唄: 西田敏行 作詞: 武田鉄矢 作曲: 堀内孝雄 1989年3月1日リリース 1985年春公開の『ドラえもん のび太の宇宙小戦争(リトルスターウォーズ)』と主題歌・武田鉄矢の『少年期』も、こども心の宇宙に深く響き渡って、今なお心の片隅で煌めいているし、1984年春公開の『魔界大冒険』も、藤子不二雄ランドの魔界に、どっぷり引き摺

都市を迷宮に塗りかえる -フイヤードの映画の魅力

    【木曜日は映画の日】     どんなジャンルでも、その出来初めの頃の作品には、爛熟期にはない、勢いと初々しい魅力があるものです。   1895年にリュミエール兄弟がカフェで上映して始まった映画において、1910年代とは、まだ草創期。撮影所や、人気のあるスターはいたものの、後年の規模や洗練とは比べ物にならない素朴な規模のものでした。   フランスの映画監督フイヤードは『ファントマ』、『ヴァンピール(吸血ギャング団)』等、その後廃れてしまった「連続映画」シリーズの代表作で

神秘に浸る -タルコフスキーの映画を巡る随想

    【木曜日は映画の日】   私が好きな映画の中でも、タルコフスキーは、様々な意味で、今日もアクチュアルな映画監督です。今日は彼の映画と生涯について少し語ってみたいと思います。 アンドレイ・タルコフスキーは、1932年生まれ。父親のアルセニーは高名な詩人で、アンドレイの作品にも彼の詩が出てきます。   1954年に国立映画大学に入学。スターリン死去の翌年であり、検閲も緩和され、アメリカ文化をはじめとする西側の芸術や映画を吸収しています。   1962年、初の長編映画

じたばたせずに浮いてればいい ― Netflix映画『ちひろさん』

最近ふわふわと自分が浮いてしまっている感覚があった。でもまあそんな時期もあるよなあ、とそれを受け入れて浮いていた。 そんなぼんやりした日々のなかで、ふと思い出した。なんかこういう感じの台詞があった気がする、リリーフランキーさんが渋い声で「じっとしてれば浮くから大丈夫」的なことを言ってる映画があった気がする! と急に思い出して、ひさしぶりにNetflix映画の『ちひろさん』を観返した。 なんかこの作品って、本当に好きだなあ、としみじみ思った。なにも起こらないのに胸がしめつけ

夢の川を超えて -映画『近松物語』の魅力

    ※木曜日の映画の投稿の代替です。     芸術的とは何か、というと色々定義はあると思いますが、作品に描かれている以上の何かを感じられるか、という点もあると思っています。   溝口健二の1954年の映画『近松物語』は、優れたドラマであり、そんないい意味での芸術的な香気に溢れた名作です。 ※2024年11月現在アマプラ会員無料 京都経師屋(障子やふすまを作る職人)の手代、茂兵衛は、主人の妻の「おさん」から、兄がお金に困っていることを相談されます。ふとした行き違いや欲望

洗練された微笑みで -映画『レディ・イヴ』の楽しさ

  【木曜日は映画の日】     コメディにおいて、ギャグと洗練のバランスはなかなか難しいものです。大笑いできるものは下品になりがちではあるし、すました態度のままだと、笑えるかどうか微妙になったりします。   プレストン・スタージェスが1941年に監督したハリウッド映画『レディ・イヴ』はそんなギャグと豪奢な上品さが同居した名作です。 エール・ビールを扱う大会社の御曹子、チャールズ・パイクは、蛇や探検を愛する初心な変わり者。一年に渡るアマゾンでの調査を終え、豪華客船で帰国する

異界の森で出会う他者 -映画『ポーラX』の美しさ

    【木曜日は映画の日】     人は、自分にとっての他者、異物に一体どうやって出会うでしょうか。多様性という言葉が叫ばれる時代で、自分の違う価値観と出会うとは、どういうことなのでしょうか。   レオス・カラックスの1999年のフランス映画『ポーラX』は、他者との苛烈な出会い、そしてその意味を見事に描いた傑作です。   冒頭、上記のハムレットの台詞を咳き込みながら呟く老人の声の後、異形の歌手スコット・ウォーカーの疾走するロックの旋律、空爆する飛行機と破壊される田舎の村の

【心に響く映画】「パーフェクト・ワールド」父が劇場で涙した亡き祖父への想い。〜心に響く映画特集Vol.1

あの頃、ケビン・コスナーはとてつもなく渋く、かっこよかった。 これから寒くなってくるにあたり、心が温まるような作品をお送りしていきたいと思います。題して心に響く映画特集1作品目 今回の作品は映画「パーフェクト•ワールド」です。 Voicyでも是非お聴きください♪ 「パーフェクト・ワールド」映画レビュー 父が劇場で涙した亡き祖父への想い。 あの頃、ケビン・コスナーはとてつもなく渋く、かっこよかった。 アンタッチャブル、ボディガード、JFK、ダンスウィズウルヴズ、フィー

情熱が夢を描く -名作映画『白い足』の魅力

【木曜日は映画の日】 情熱は、ある種自分の常識や人生を超えている面があります。 いや、自分の人生を超えるぐらいでなければ情熱と呼べないのかもしれない。それは滅多に出会えるものではありません。 フランスの映画作家ジャン・グレミヨンが1948年に監督した名作映画『白い足』は、そんな狂気にも似た情熱の様相が刻まれた、見事なドラマです。 (2024年9月現在アマプラ無料) 舞台はブルターニュ地方の漁村。魚商人で酒場も経営するやり手の中年男性ジョックが、若い愛人オデットをパリ

記憶の森を彷徨う ―ヒッチコック『めまい』の美しさ

    【木曜日は映画の日】     アルフレッド・ヒッチコックの1958年の映画『めまい』は、2000年代以降、多くの映画のベストテンで上位、しかも1位か2位を争う程の高い評価を受けています。   公開時も高い評価は受けていたものの、年を経るごとにどんどん評価は上がり、映画の古典とも言える作品になりました。   しかも、他の「上位作品」と違い、多くの作家に換骨奪胎され、思考を誘発する傑作となっています。 刑事のスコティは、犯人を追っている際、高所恐怖症によるめまいによって

『大人は判ってくれない』~中二病にすらなれない少年

先週はシャルロットという少女が登場するフランス映画について書きました。 今回は同じ年頃の少年が主人公のフランス映画を紹介します。 映画のタイトルは、『大人は判ってくれない』(Les Quatre Cents Coups) 1959年に公開されたこの映画は、フランソワ・トリュフォー監督の長編映画第一作です。 私が「名作」と言うまでもなく、フランスでも英語圏でも、もちろん日本でも、ヌーヴェルヴァーグを代表する作品として知られており、仕事として映画に携わる人たちの「研究の対

映画『ジョーカー フォリ・ア・ドゥ』はジョーカーといという概念によって誕生した3人のヴィランの物語

2024年10月11日公開。映画『ジョーカー フォリ・ア・ドゥ』 前作の映画『ジョーカー』は第76回ベネチア国際映画祭で金獅子賞、第92回アカデミー賞で主演男優賞を受賞し快挙を成し遂げた。 しかし、続編となる本作品はアメリカの批評家や観客から酷評を受けた。 筆者も本作品に対する酷評の数々や、公開から2週目にも関わらず映画館ではガラガラの客席のなかで鑑賞し、観た直後は前作のジョーカーに対しての期待を裏切られたような感覚に陥った。 だが、ホアキン・フェニックス演じるジョー

最近観た映画 #3 ~不思議惑星キン・ザ・ザ/ファンタスティック・プラネット~

心の中にたくさんの箱があります。 その中には、私が持っている「顔」や「気持ち」や「好き」が入っています。 今は、私の中の「母の顔」や、しばらくハマっているK-POPの箱の蓋が開きっぱなしになってている状態。 先日、ずっと観たかった作品がAmazon Prime Videoで公開されていることを知りました。 そのとき、私の中の「映画が好きだったときの気持ち」の箱が開きました。 姉が購読していて、今では廃刊した映画雑誌『PREMIERE』を、姉の目を盗んでこっそりと読んで

時の流れに手で触れる -映画『コッポラの胡蝶の夢』の美しさ

    【木曜日は映画の日】     映画の魅力の一つに、「時」を自由に切り貼りできることがあります。勿論、文学や音楽でもその「時」は感じられるけど、目の前でイメージが変化していくことは、何よりも「時」を強く感じさせます。   フランシス・フォード・コッポラの2007年の映画『コッポラの胡蝶の夢』は、そんな時の感触を見事に捉えた傑作です。 1938年ルーマニアの首都、ブカレスト。年老いた言語学者ドミニクは、自分の言語学体系を完成させられず、昔愛した恋人も忘れられない、後悔と

『なまいきシャルロット』~子どもが主人公のフランス映画

私が好きなフランス映画の中から、思春期の女の子が主人公の作品を1本紹介します。 タイトルは、なまいきシャルロット (L'Effrontée) 。公開は1985年です。 日本のスラングで『中二病』という言葉があります。 これは、「思春期特有の自己中心的で奇抜な行動や発言、または現実離れした妄想にふけるような態度」だと、Cくんが教えてくれましたが、まさしくそういう態度の女の子が出てくる作品です。 しかし、舞台がフランスなので、たとえ中二病だとしても、日本人の私には、「フラ

甘美な青春を踊る -ベルトルッチの映画『革命前夜』の魅力

  【木曜日は映画の日】     青春とは、取り戻せない故に甘い時間です。   イタリアの監督ベルナルド・ベルトルッチの初期の映画『革命前夜』は、そんな甘美な時間を閉じ込められた稀有な映画です。 舞台は1962年のイタリア、パルマ。裕福な青年ファブリツィオは、マルクス主義に傾倒し、ブルジョワの婚約者との婚約解消を考えます。そんな彼は、貧しい労働者階級の友人アゴスティーノの葬儀の際、久しぶりに会った叔母のジーナと話し、恋仲になります。。 監督のベルナルド・ベルトルッチは、1

光の速さで駆ける -ラオール・ウォルシュの映画の面白さ

    【木曜日は映画の日】     物語の大事な要素の一つに、スピード感というものがあります。   小説で、短い文ばかり繋げれば、(多少は読みやすくなるけれど)スピード感が上がるわけでもない。映画の場合、短いカットを繋げれば、(刺激的だけど)体感速くなるというわけでもない。   「速さ」というのは、進行が全てスムーズに繋がって、尚且つ、物語にちゃんと深みを感じられるような味わいが必要に思えます。つまり、あくまで体感であり、受け手側の意識が作るものなのだと感じます。   映画

映画『キングダム 大将軍の帰還』王騎将軍と龐煖の一騎打ちシーン撮影裏に注目

2024年7月12日公開。映画『キングダム 大将軍の帰還』を鑑賞した。 今回でシリーズ最終章と聞いていたが、最終章にふさわしい最高傑作だった。 鑑賞した後の興奮が冷めないうちに、映画を観た感想をネタバレなしで紹介しようと思う。 作品情報スタッフ・キャスト あらすじ 観た感想今回の作品の主役は、間違いなく王騎将軍だ。 大沢たかおさん演じる王騎将軍が、“大将軍”の名にふさわしい活躍を見せている。 大沢たかおさんは王騎将軍を8年間演じ続けている。王騎将軍という役どころ

「ラスト・オブ・モヒカン」(アメリカ映画)

大航海時代というのは、その華やかなイメージとは裏腹に 実は、大侵略時代であったのは、周知の事実ですね。 特に南米などは、既存の文明が破壊されつくしましたし。 その時代のアメリカ。 大航海時代より数百年後、アメリカはイギリスより独立を果たします。 そして内陸部への開拓という名の侵略が始まるわけです。 文化が違うわけですから、おそらく両者共に とても異質なものを感じたに違いないでしょうし あまりの違いに恐れを抱いたことでしょう。 その恐れから、人々は武器を手にして自衛に走る

【ネタバレだらけ】最後を観客に託す「ラストマイル」で私が見付けた自分なりの答え。

映画「ラストマイル」を観てきたら これはどういう意味なのだろうかと 思う部分がチラホラ出てきた。 2回目を観に行く前に自分なりに 考えを整理したくて噛み砕いてみた 感想を残しておこうと思う。 以下、本当にネタバレしかないので 見ていない人は要注意!そして、 この作品は人によって受け取り方が 違う部分も多いと思うので、これが 正解とかではないし、討論目的の noteではないのでこんな考えの人も いるんだな~くらいに受け取って 貰えたら嬉しいです。 【バカなことをした】病院に

名作エンタメは廃れない

中学生になる子どもたちと、昔のヒット映画をたまに観ています。NetflixやAmazonプライムで。 バック・トゥ・ザ・フューチャー ジュラシックパーク、ワールド インセプション ショーシャンクの空に オーシャンズ11.12.13 ミッション・イン・ポッシブル などなど。やっぱりね、おもしろがって観てますよ。名作と呼ばれるエンタメ映画はやっぱりいつ観てもおもしろい。 バック・トゥ・ザ・フューチャーは未来の世界より今のが進んじゃってるし、時代遅れな部分はあるけれど、そんな

決断をして受け入れること -映画『ワイルド・アパッチ』の教訓

    【木曜日は映画の日】     人は、様々な選択を迫られて生きています。そして、後悔など無意味と分かっても後悔してしまいます。   そんな時に背中を押してくれるのは、後悔なんて無意味だ、という言葉ではなく、その選択に意味があったと誰かに告げてもらうことのように思えます。   ロバート・オルドリッチの1972年の映画『ワイルド・アパッチ』は、優れた西部劇でありつつ、そんな選択を巡る、ある種の大人の作品です。 アパッチ族のウルザナが、ネイティヴ・インディアン居住区から脱走

映画『八犬伝』は3度美味しい

小学生の頃、毎日放課後になると夢中で見ていたNHK『新八犬伝』が映画『八犬伝』として蘇った。 あの人形劇が実写版でどのように描かれているのか、ぜひ見てみたい。 ①子供の頃夢中になった人形劇『新八犬伝』NHKで1973年4月から1975年3月まで全464話放送された『新八犬伝』。 子供の頃この人形劇が毎日の楽しみだった。 小学校5年生から6年生の卒業まで、毎日夕方の18:30〜18:45テレビの前で釘付けだった。 何がそんなに面白かったのか? 話しの内容もさることながら、これ

安寧日記|10/20〜10/23

10/20(Sun.) 調子が悪く、文字が滑るばかりで本が読めない。 うつ状態での読書あるあるだ。 食欲は異様に増し、おやつにカップラーメン(糖質オフ)と納豆を食べる。 それだけじゃ物足りなくて黒胡椒と唐辛子を山盛りかける。 辛さを除けば内容は謎にヘルシーだけど、時間と食べ方がヘルシーじゃない。  10/21(Mon.) この前買ったシャープのホットクックで、豚大根をつくる。 無水調理だからか、大根本来の旨みや苦みが閉じ込められてて、おいしく作れた。 レシピの味つけは、も

波の中の失われた愛 -デュラス『アガタ』の魅惑

    映像と言葉とは、本来別のものです。   私たちは映像に言葉を載せて一致させる、「映画」を何の疑いもなく享受しているけど映像と言葉が切り離されたらそこに何が生まれるのか。   フランスの小説家マルグリット・デュラスが監督した一連の映画は、そうした部分を探究する大変興味深い映画です。   そして、私が好きな1981年の『アガタ』は、原作の戯曲もデュラスが監督した映画も、言葉と映像が、魅惑的な関係を結んでいます。キーワードは「愛が失われること」です。 マルグリット・デュラ

寂しさを借りにいく。長距離恋愛販売中。

離れていてもスマホ一つで 瞬時に繋がれるようになった タップ一つで世界中の 映画や音楽が手のひらに 便利になったはずなのに どこか満たされない私がいる そんなとき 街のDVDショップへと足を運ぶ 5本1000円 寒い中わざわざって思うでしょ 私もすごく思う でも「わざわざ」を楽しみたい 火曜日 不便さと 懐かしさと 寂しさを借りにいく 少し古びて 懐かしい店内 映画のジャケットを 指でそっと撫でると タイムスリップしたような 感覚に包まれる 凄腕の殺し

【シロクマ文芸部】面白いタイムループ映画

 小牧幸助さんのシロクマ文芸部に参加します。  紅葉から 落つる朝露 キラキラと 貴船の1日 今日もはじまる  紅葉から 落つる朝露 キラキラと 貴船の1日 今日もはじまる  紅葉から 落つる朝露 キラキラと  バグでしょうか?  いいえ、タイムループですw  今日は私のおすすめタイムループ映画『リバー、流れないでよ』について書こうと思います。 『リバー、流れないでよ』  Amazonプライムで無料になってたから何となく観た日本映画。  これがめーーっちゃ面白か

せめて銀幕の中では守りたかった ~今、七人の侍を観る~①

「一度は観て、オモシロイから!」と、いきなりプレゼントされたのは黒澤 明 監督の名画「七人の侍」(’54)のブルーレイ。 今年は、公開から70年を迎えたのを記念して、4Kリマスター版が全米でリバイバル公開され、再び話題になっているようです。 戦国末期の寒村を舞台に、盗賊野武士の破壊と略奪に苦しむ農民たちが7人の「浪人侍」を傭兵としてスカウトして、村を守り抜く物語として有名ですね。 このプロットを元にハリウッドでリメイクされた「荒野の七人」は続編を含め何回か観ているのですが、

アダプテーション(2002)

実在の人気脚本家チャーリー・カウフマンが 四苦八苦しながら書き上げた脚本は超一級の奇抜さ 実在の俳優ジョン・マルコヴィッチの脳内に入り込んでしまうという奇想天外なコメディ『マルコヴィッチの穴』(’99年)の脚本を手がけ、一躍脚光を浴びた脚本家チャーリー・カウフマン。 彼の『マルコヴィッチの穴』の次作として注目された本作は、そんな周囲の過度な期待を逆手にとったストーリーです。 原作は女性ライター、スーザン・オーリアンが珍種の幽霊蘭の採取に情熱を燃やす蘭コレクター、ラロシュ

フィールド・オブ・ドリームス(1989)

のどかな野球場が見せてくれる夢 穏やかでファンタジックな野球映画 野球界の最高峰アメリカ・メジャーリーグをめざし、日本の多くのプロ野球選手たちが海を渡りました。心身ともに屈強な外国人選手たちの中で切磋琢磨する日本人選手たちの姿は胸に響くものがあります。 中でも、けた外れの成功を成し遂げた大谷翔平選手は、自分を信じて好きなことにとことん打ち込み、たゆまぬ努力を続けることの素晴らしさに改めて気づかせてくれました。 野球はアメリカンドリームの象徴の一つと言えるでしょう。アメリ

怪盗ルビイ(1988)

昭和のトップアイドル、キョンキョンの輝きは必見 時代を経たからこその楽しみ方ができる 1982年のデビューの翌年、それまでのガーリーな聖子ちゃんカットをバッサリ切って、ボーイッシュなショートカットで現れた小泉今日子は一躍大ブレイク。キョンキョンというポップな愛称で親しまれ、元気でキュートな女の子像を確立しました。 さらに、遊び心いっぱいの楽曲『なんてったってアイドル』を堂々と歌い切る度胸と潔さを備えたキョンキョンは自分らしさ全開で、80年代のトップアイドルとして登り詰めて

「青」の表現に魅せられて ~「ディーバ」(フランス映画)ジャン・ジャック・ベネックス監督

その内容よりも映像の素晴らしさに感心してしまう映画ってありますよね。 これのそんな映画の一つ。 ジャン・ジャック・ベネックス監督作品の描く、映像は、本当にいつまでも頭にやきついて離れない。 この映画のモチーフのようなものでいえば、ジグソーパズル、主人公の淡い恋、バイク・・それらを映し出す洗練されたカメラワーク。 こんなモダンな装いとは相反するように、タイトル『ディーバ』からも分かるように物語の中心にはオペラがある。 モダンとクラシカルの対比が見ていてとても面白い。

『ハムナプトラ/失われた砂漠の都』

#おすすめ名作映画 テンポの良い冒険映画とでもいうのかしら? エキストラミイラさん方、大多数動員(笑) & 素晴らしい演技力の数々 = お笑い要素多数😆の展開です ハムナプトラのシリーズは3まであるのだけども、 やっぱり1番目が一番良きかな〜 主役のリック・オコーネル役の ブレンダン・フレイザーさん、 一発で惚れました💕 お顔の雰囲気と歩き方が、 学生時代に好きだった男の子に似てたんだ その彼は学生の分際で、 ナゼカ携帯靴べらを持ち歩いていた(笑) 居酒屋飲み会でお座敷から

人生を取り戻す歌 -映画『ラブソングができるまで』の幸福

    【木曜日は映画の日】     人生をやり直すということは、復元することではありません。今までの駄目な自分を肯定しつつ、「これだ」と思う新しい自分を創り出すことです。   2007年の映画『ラブソングができるまで』は、ポップソングのソングライターたちのラブコメを楽しみつつ、そんな人生をやり直すことの意義を感じさせてくれる、魅力的な秀作です。 80年代に一世を風靡したアイドルロックバンド「ポップ」の元ボーカル、アレックスは、今やソロで落ちぶれて、遊園地や同窓会の営業で食

「希望を持ち続ける女性の姿」を描いた作品 ~ クリント・イーストウッド監督「チェンジリング」(アメリカ映画)

この映画の主題はタイトル直訳の「取替え子」ではないですね。権力の恐ろしさと、それに立ち向かう力強さでもない。 一番の主題は、「希望を持ち続ける女性の姿」を描いたということでしょう。 時として権力は、ここまで暴力的になるのかと、映画を見ていて、正直うんざりしてしまう。映画「アンタッチャブル」のアルカポネと結びついていた裁判官や、映画「ザ・ファーム 法律事務所」の腐敗した弁護士の姿が思い浮かびます。 これに対して、声を上げて抵抗していく神父。 彼が主人公の女性を後押しする

曲亭馬琴着煮

半分に切った油揚げに詰め物をして煮る巾着煮を作りながら、日本初の本格的ファンタジーと、それを作り上げた日本初の職業作家の日々を描いた映画を妄想した記録。 滝沢馬琴という名前で知られていますが、本來の筆名は曲亭馬琴。その馬琴の実生活と虚構である物語世界が交互に語られる映画。 油揚げ   5枚 蛸足    1本 はんぺん  1枚 木綿豆腐  100g 生姜    1欠け 葱     少々 出汁パック 1枚 片栗粉   大匙2 醤油    大匙3、小匙1 味醂    大匙3

私が変わる冒険 -映画『エム・バタフライ』の美しさ

    【木曜日は映画の日】     変わった、ビザールな作品、という前情報で体験してみると、実際の作品は非常にまっとうだったということは結構あったりします。   グロテスクな映画で有名なデヴィッド・クローネンバーグ監督の1993年の映画『エム・バタフライ』は、何ともけったいなストーリーであると同時に、そのこけおどしのない端正な作りが心に残る秀作です。 フランスの外交官ルネ・ガリマールは、北京の大使館に赴任してきます。ある夜会で、『蝶々夫人』を見事に演じる京劇の女優、ソン・

スイング・ステート(2020)

田舎町の町長選がなぜか大統領選の様相に アメリカ政治の舞台裏を皮肉る痛快コメディ 2024年11月5日のアメリカ大統領選挙投票日まで約3週間となりました。各陣営はどのような動きをしているのでしょうか。。。 アメリカの大統領選で勝つには、いかに多くの州の支持を取り付けるかが重要です。なかでも、「激戦州(スイング・ステート)」と呼ばれる、民主党と共和党の支持率が拮抗し、選挙の度に勝利政党が変動する州を制する候補者が勝利へ大きく近づきます。 2016年、ドナルド・トランプ候補

釣りバカ日誌20 ファイナル(2009)

22年間笑いと感動をありがとう! 平成の国民的喜劇シリーズがついに完結   1988年公開の第1作から足かけ22年で特別編を含めると全22作。2009年、釣り仲間の凸凹コンビ、ハマちゃんとスーさんの活躍を描く国民的喜劇シリーズがついに完結の時を迎えました。 毎作、導入部となる会社シーンは、世知辛い世相を反映しつつもユーモアたっぷり。経営者の鑑のようなスーさんの行動が波紋を呼ぶ本作も、風刺的で大いに笑えます。 会長賞の褒美に「釣り休暇」を希望したハマちゃんは、久々にスーさん

「誰もが正しい」ことの軽やかさ-名作映画『ゲームの規則』についての随想

    【木曜日は映画の日】     物語の面白さというのは、二種類あると思っています。一つは、結末が予測できて、それでも人を満足させるもの。   『アンナ・カレーニナ』も『ハムレット』も、悲劇と知らされていなくても、大体どういう終わりになるかは、物語の半ばで推測できるでしょう。それでも、最後まで引き込まれる名作です。 いや、分かっているがゆえに、最後まで安心して物語に入り込めると言えるかもしれません。   「どんでん返し」とか「意外な結末」と謳われる作品も、この「予想でき

映画感想文 「激突!」

自己紹介の「私の好きなもの・こと」にひとつ書き忘れていた❗️ 私はホラー映画が大・大・大好き。 ホラー映画を分類すると「13日の金曜日」を代表とする連続殺人系、「エクソシスト」等悪魔払い系、人形やいわく付きの家等の祟り系と、まあ、いろいろあるけれど、私は姿が見えないものに追われるストーリーが一番、怖い。 お化けや殺人鬼は出てこない。限りなくホラーに近いサスペンスといったところだろうか。 「激突」は、まさしくそんな作品に分類されるだろう。 大昔、誰かに「これ面白いよ」と勧

♡今日のひと言♡フェデリコ・フェリーニ

フェデリコ・フェリーニ(1920-1993 イタリア~映画監督) ヒューマニズムに根ざした『道』(1954)によって世に出たが、『甘い生活』(1960)で現代ローマの退廃と宗教の無力を描き論争を巻き起こした。その後、『8½』(1963)など一作ごとに独特の映像を創造し、現代のもっとも個性的な監督の一人となった。他に『サテリコン』(1969)、『道化師』(1970)、『フェリーニのローマ』(1972)、『アマルコルド』(1974)など、多くの名作を遺した。

笑った映画が懐かしい思い出となり、好きな映画の一つに

 「グリース」は、生まれて初めて観た恋愛映画。  6歳の頃。  映画と言えば、「スターウォーズ」「未知との遭遇」しか知らなかった。  両親はどんな映画だと思って一緒に連れて行ったのだろう。「サタデー・ナイト・フィーバー」が話題になった直後の映画だったから、どんなものかな程度だったのかもしれない。  可愛いオリビア・ニュートン=ジョンなのに何故恋に悩んでいるのかとか、嫉妬を抱える女性が何故意地悪を言ったりするのかとか、全然わからなかった。  あの頃から私は脇役の男の子が好きで

河瀬直美監督作品「萌の朱雀」

河瀬直美監督の映画を久々に見たらデビュー作、萌の朱雀を思い出す。 昔書いた記事↓ 有料にしちゃってるので、一部抜粋。 強烈に匂いを感じる映画ですね。 この森の匂いって、そこにすんでいなくても 山に親しんだことのある人なら一度はかいだことのある匂いなのかもしれません なんだか懐かしいなあと思ってみていると、 一昔前の日本で起きた核家族が離散していく様を 自然体で描いた映画だったんですね。 朱雀とは古典で言うところの鳥ですね。 萌とはすなわちこの吉野の山々のことでしょうか

シゲクサークルメンバーが160万ビュー達成!(241030)

シゲクです。 私が運営している「シゲクサークル」のメンバーである、BRILLIANT_Sさんが「全体160万ビュー」「贈られたスキ94000回」「noteフォロワー8000人」を達成されました! 深謝✨️【累計】160万ビュー〈note開始約420日〉|#振り返りnote 不思議の国のnote~歩み BRILLIANT_Sさん、おめでとうございます! 「シゲクサークル」は、「創作大賞2024」「今日の注目記事」「note公式マガジン」「カテゴリートップ」「note公

華氏119(2018)

トランプ大統領誕生がアメリカをどう変えるか? 稀代のドキュメンタリー映画監督、マイケル・ムーア渾身の一作 2024年秋、日本で新しいリーダーが誕生する中、アメリカのリーダーを決める大統領選が勝負の1ヶ月を迎えます。 今から4年前、2020年のアメリカ大統領選は、アメリカ国内外を問わず待ち望んでいた人が多かったのではないでしょうか? 2020年のアメリカ大統領選は当時の大統領ドナルド・トランプがアメリカ国民からの審判を迎える日でもありました。大胆な変革を掲げたトランプ大統

幸福の黄色いハンカチ

みなさんこんにちは。 紅里です。 今日は幸福の黄色いハンカチです。 高倉健さん主演の映画、 幸福の黄色いハンカチはご存知でしょうか? 1977年公開とのことなので随時前の映画になりますね。 そのロケが夕張で行われていて幸福の黄色いハンカチ想い出ひろばとして今も残されているのです。 父が高倉健さんの大ファンだったこともあり、おそらく数回ほど見てなんとなく記憶に残っています。 子どもながらに最後のシーンで 「ハンカチそんなに下げとくのかい!」と突っ込んだ記憶があります

心をも 掴む 早ワザ ~今、七人の侍を観る~②

邦画「七人の侍」('54)を観た、お話の続きです。 これは戦国末期の寒村を舞台に、盗賊野武士に苦しむ村人が7人の「浪人侍」をスカウトして、村を守り抜く物語です。 その中で、村人の誘い乗った侍たちが、ようやく村へ入るシーンが印象的でした。 到着した彼らを誰ひとり歓迎に出迎えるわけでもなく、村は息をひそめています。 どうやら村人たちは外敵から守る役目を侍に期待する一方で、 「乱暴狼藉を働くのでは?愛娘を手籠めにされるのでは?」 など、内に害をなす存在として警戒しているようで

見逃しちゃいけない映画をここに残しておこうと思う話。ロボットドリームズ

私の大好きな映画好きな友人や 評論家が話題にしている方が 紹介している作品。 予告で私にドンピシャな 作品だったので ここに記録として残しておこうと。 私は地方に住んでいて 観に行くことができないが 改めて配信された際 楽しもうと。