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#おすすめ名作映画

映画は、人生の厳しさからすばらしさまで、さまざまな感情を私たちに教えてくれます。自分にとって“名作” だと感じる映画作品をぜひ教えてください。

人気の記事一覧

孤独な時を生き延びるために -映画『ビューティフル・デイ』の面白さ

    【木曜日は映画の日】   ある映画が、その作品の文脈を超えて、物語や質感の面で別作品と共鳴することがあります。   イギリスの映画監督リン・ラムジーが2017年に製作した映画『ビューティフル・デイ』は、孤独な男のノワールであり、作品の面白さだけでなく、色々と別作品をも思い出させてくれる、良質な映画です。 ホアキン・フェニックス演じる退役軍人のジョーは、年老いた母と一緒に暮らしつつ、行方不明者を探す裏家業で凌いでいます。   ある日、上院議員の娘ニーナを救出してほし

生を変える力に触れる -傑作映画『風と共に散る』の魅力

    【木曜日は映画の日】     人間が生きる世界には、眼に見えない、人間には及ばない力が偏在していて、それを手に入れることで、人間が生を変えることがある。   何もオカルトの話ではなく、ある時は金銭、ある時は権力という形でほんの少し見える、そうした強大な何かがあることは、否定できないはずです。   以前取り上げた傑作メロドラマ『天が許し給う全て』を監督したダグラス・サークによる1956年の映画『風と共に散る』はそんな力について体感させてくれる名作です。   原題は『W

愛の回想が輝く -映画『恋のエチュード』の美しさ

    【木曜日は映画の日】     愛が大切なものなのは、多分多くの人が同意すると思いますが、その「大切さ」を描くことが難しいというのは、多くの創作者が実感するところでもあるでしょう。     ヌーヴェル・ヴァーグを代表するフランスの映画監督フランソワ・トリュフォーが1971年に製作した『恋のエチュード』は、様々な技法を駆使して、目に見えない愛の、どこか痛い「大切さ」にまで触れたかのような、美しい名作です。 物語は、男のナレーションによって始まります。19世紀末、フランス

秘密は最愛の人に届く -映画『深夜の告白』の魅力

    【木曜日は映画の日】     ナレーションというのは映画であれ動画であれ、私たちが慣れ親しんだ機能でありますが、声がイメージを導く・補完するというのは、改めて興味深いことです。   ビリー・ワイルダーが1941年に監督したフィルム・ノワールの古典映画『深夜の告白』は、そんなナレーションを大変効果的に使った名作です。 深夜の誰もいないオフィスに疲れ切った男が一人入ってきます。デスクの椅子に腰掛けると、ディクタフォン(録音機)をとり、メッセージを吹き込んでいきます。男の

終わらない日常を生き続ける-ジャームッシュの映画の魅力

    【木曜日は映画の日】     見ていて確かに面白いのだけど、いざその魅力を説明しようとすると意外に困る映画というのがあります。   ジム・ジャームッシュの映画は、私にとってそんな映画の一つであり、改めてユニークな在りようの映画作家に思えます。 ジム・ジャームッシュは、1953年、アメリカオハイオ州生まれ。大学でジャーナリズムや文学を学んだ後、ニューヨーク大学で映画を専攻。同大学の教師だった映画監督ニコラス・レイの講義も受けます。   脚本も書いて見せていたものの、

距離感を保つ洗練 -映画『哀しみのトリスターナ』の魅力

    【木曜日は映画の日】      あるジャンルに属さない、分類できないような作品には独自の魅力があります。   ルイス・ブニュエルがカトリーヌ・ドヌーヴ主演で監督した1970年の映画『哀しみのトリスターナ』は、設定や展開だけなら、よくある三角関係のドラマなのに、人物像ややり取りが微妙に典型からずらされ、異様な面白さに到達している傑作です。 スペインのトレド。孤児になった貧しい美女、トリスターナは、裕福な貴族ドン・ロペの元に引き取られます。   保護者となるか、小間使い

混沌が溢れるエネルギー -傑作映画『フルスタリョフ、車を!』の面白さ

    【木曜日は映画の日】     時代が揺れ動く時、騒乱の中からとんでもないパワーを持つ作品が生まれたりします。   ロシアの監督アレクセイ・ゲルマンが1998年に発表した映画『フルスタリョフ、車を!』は、映画史上まれにみるレベルの混沌の中を突き進み、しかも面白くて目が離せない、凄まじいエネルギーの傑作です。 スターリン時代末期の1953年冬。モスクワの大病院の院長、ユーリー・クレンスキーは、陰謀に巻き込まれてその地位を失い、逃亡を図ります。   。。。というのが、表面

きらびやかな夢のつづれ織り -シュトロハイムの映画の美しさについて

    【木曜日は映画の日】     映画は夢であり、夢とは悪夢であればある程、凄絶な美を見せるものです。   20世紀のサイレント映画初期に活躍したエーリヒ・フォン・シュトロハイムの映画は、そんな悪夢が今見ても強烈に炸裂する異様な作品群です。その経歴や作品の末路も含めて、映画史上の伝説と呼ぶにふさわしい映画監督でもあります。 エーリヒ・フォン・シュトロハイムは、1885年、オーストリアのウィーン生まれ。帽子職人の父親の家庭の生まれであり、1909年に渡米した時に、「フォン

宙づりのサスペンスを生きるために -傑作映画『石の微笑』の魅惑

    【木曜日は映画の日】     サスペンス映画の面白さとは、ショック効果による驚きと違い、どこか居心地の悪い、灰色の時間を体感し続けることにあるでしょう。   ヌーヴェル・ヴァーグの巨匠、クロード・シャブロルによる2004年のフランス映画『石の微笑』は、そんなサスペンスを正攻法に形成しながら、少し変わった、ねっとりとした「やばい」感触も味わえる、特異な美しさの傑作です。 フランスの地方の配管会社に真面目に勤務する25歳の青年フィリップは、美容師の母のデート相手だった実

西田敏行『時の旅人』✖︎『ドラえもん のび太の日本誕生』

♪誰かが座ってた 一万年前も おまえと同じように 白い浜辺に... ♪雨が降っていた 二千年前も 誰かが濡れていた わたしのように... (抜粋) 唄: 西田敏行 作詞: 武田鉄矢 作曲: 堀内孝雄 1989年3月1日リリース 1985年春公開の『ドラえもん のび太の宇宙小戦争(リトルスターウォーズ)』と主題歌・武田鉄矢の『少年期』も、こども心の宇宙に深く響き渡って、今なお心の片隅で煌めいているし、1984年春公開の『魔界大冒険』も、藤子不二雄ランドの魔界に、どっぷり引き摺

闇をさまよう冒険 -傑作映画『バリー・リンドン』の魅力

  【木曜日は映画の日】     私は、18世紀から19世紀にかけての、冒険小説的なものが自分のツボにはまるタイプだったりします。小説黄金期のスタンダール『パルムの僧院』しかり、トルストイ『戦争と平和』しかり、20世紀の作品ですが、ロマン・ロラン『ジャン・クリストフ』や、ヘルマン・ヘッセの諸作も含めて。   物語の面白さと、冒険によって世界に触れる空気感のバランスが、私の中でその時代のものがぴったりはまるのです(勿論、どの時代のものが合うかは、個人差があるでしょう)。   『

呪文は至る場所に現れる ―傑作映画『マブゼ博士の遺言』を巡る随想

    【木曜日は映画の日】     「悪役」というものは、憎まれつつも愛されているところがあります。   良い作品には良い悪役がないと、というように、ドラマを作るには欠かせない要素と言えるのでしょう。   しかし、巨匠フリッツ・ラングによる1933年のドイツ映画『マブゼ博士の遺言(別邦題:怪人マブゼ博士)』は、そうした悪役にとどまらない、悪の在りよう、そしてそれを伝播させる呪いのようなものについて考えさせられる傑作映画です。 腕利きの警部ローマンのデスクに、元部下のホフマ

人生の日食に触れる -名作映画『太陽はひとりぼっち』の美しさ

   【木曜日は映画の日】     イタリアのミケランジェロ・アントニオーニの映画は、「愛の不毛」という惹句をよく使われ、憂鬱な表情をした女性たちが、盛り上がらないひたすら憂鬱で不毛な会話を繰り広げる、と言われがちです。   それはまあ、間違ってはいない。しかし、私は彼の映画が大好きで、観る度に元気を貰えます。そこには、決して不毛ではない、落ち着いて、時にはリリカルである、モノクロの澄んだ空気感があるからです。   彼のミューズであったモニカ・ヴィッティと、先日亡くなった美男

バカこくでねぇ!映画「あヽ野麦峠」

閲覧ありがとうございます。 今日は映画「あヽ野麦峠」を観たコレアレを書いておこうと思ます。 「あヽ野麦峠」は、名前は、とても有名ですから 知ってましたが、観たことはありませんでした。 たまたま、映画チャンネルを流していたら、 始まって、母親は、後ろから、ガン見体制に入っていましたが、わたしは、寝っ転がり、(耳かきしょうかなぁ)とか、チラ見チラ見していましたが、冒頭の部分から、「これは!正座して観なければ!」と、すぐに、起き上がりました。 ストーリーをちょっと書いておきま

時のミニチュアが描く夢 -名作映画『ドノバン珊瑚礁』の美しさ

    【木曜日は映画の日】     小説でも詩でも、音楽でも、様々な異なる要素が混じることは、作品を豊かにします。それは映画も例外ではありません。   西部劇の巨匠ジョン・フォードが1963年に製作した『ドノバン珊瑚礁』は、南海の小島で様々な要素が交錯して描かれる、朗らかな人間ドラマであり、決して悲劇でなくても深みを感じさせる名作になっています。 アメリカ退役軍人のギルフーリーは、南洋のハレアカロア島に行くために船で働いていましたが、騙されていたことに気づき、泳いで脱出。

時計じかけのオレンジ(A Clockwork Orange)

【505文字】 見出し画像: シネマカフェ 『時計じかけのオレンジ』作品情報より引用 好きな映画の一つに、キューブリックの時計じかけのオレンジがある。 アンソニー・バージェスが1962年に発表した小説を1971年に映画化したものだ。 20歳の頃にレンタルで初めて見て、その後DVDを買って何度も見たり、BGM代わりに流したりした。 暴力、性的描写、クラシック、◯人、雨に唄えば、ベートーヴェンが強烈に印象に残る。 老人はホームレスとなり、主人公アレックス達に暴行を受け、廃

ひとりっぷ。フランク・ロイド・ライトの名建築を見に行く。

世界遺産検定1級のみずたまです。 今日は池袋から歩いて5分。 フランク・ロイド・ライト設計の自由学園明日館にやって来ました💕 数ある世界遺産の中でも、アメリカの世界遺産フランク・ロイド・ライトの20世紀の建築が好きです。 アメリカにはさすがに見に行けないけれど、なんとかしてフランク・ロイド・ライトを見たいなあ、とずっと思っていました。 何か方法はないものかと検索した結果、あった、あった! 東京にもー! 嬉しい🥰💕 私は建築を学んだわけでもなんでもないのですが、何故か

【映画】元気がないときに見たい映画―オススメ5選―

このブログの運営者 こんにちは、Emuです。 当記事をご覧くださり、ありがとうございます! 皆さんも、落ち込んだりすることありますよね。そんな時、どうしてますか?私は映画を見て気分を上げることがあります。今回は、元気がないときに見ると、悲しい気分が吹っ飛ぶ映画5選をご紹介します。 お知らせ本編の前に少しだけ宣伝させてください! 私、ついに有料note公開することになりました!近日公開する予定です。テーマは、「noteでガジェットブログを運営した結果」です。実績の公開や

都市を迷宮に塗りかえる -フイヤードの映画の魅力

    【木曜日は映画の日】     どんなジャンルでも、その出来初めの頃の作品には、爛熟期にはない、勢いと初々しい魅力があるものです。   1895年にリュミエール兄弟がカフェで上映して始まった映画において、1910年代とは、まだ草創期。撮影所や、人気のあるスターはいたものの、後年の規模や洗練とは比べ物にならない素朴な規模のものでした。   フランスの映画監督フイヤードは『ファントマ』、『ヴァンピール(吸血ギャング団)』等、その後廃れてしまった「連続映画」シリーズの代表作で

時の流れに手で触れる -映画『コッポラの胡蝶の夢』の美しさ

    【木曜日は映画の日】     映画の魅力の一つに、「時」を自由に切り貼りできることがあります。勿論、文学や音楽でもその「時」は感じられるけど、目の前でイメージが変化していくことは、何よりも「時」を強く感じさせます。   フランシス・フォード・コッポラの2007年の映画『コッポラの胡蝶の夢』は、そんな時の感触を見事に捉えた傑作です。 1938年ルーマニアの首都、ブカレスト。年老いた言語学者ドミニクは、自分の言語学体系を完成させられず、昔愛した恋人も忘れられない、後悔と

静寂の中で自己と向き合う -映画『ラブレス』の美しさ

    【木曜日は映画の日】        私にとって優れた作品とは、ある特定の状況を描いて、それがどこでも通じる普遍性を持っていることのように思えます。その普遍性は、私たちの鏡となって、自分自身をも映してくれる。   ロシアの映画監督アンドレイ・ズビャギンツェフが2017年に製作した映画『ラブレス』は、そんな普遍性に達した傑作です。   モスクワ郊外の、高級アパートに住む一家。一流IT企業に勤めるボリスとジェーニャは互いに愛人を作り、離婚に合意しています。 新しい生活の

「世界に目撃され得る」という晒され話

 映画『花束みたいな恋をした』脚本・坂元裕二(初の映画オリジナル脚本)/主演・菅田将暉&有村架純 ~劇場で鑑賞しておらず、作品としても事実上の”ノーマーク”だったこともあり、先日、この【地上波テレビ初放送】をなんとなく録画し、時間をみて視聴📺  いくつものシンパシー(当方も意外と若いマインド?^^;)を覚え、note記事にならないかなぁ…と模索🤔 ⇒今回と次回と、2つの話題を展開したいと思います📖    タイトルから予想される通り、基本的にラブストーリーです。その鑑賞感

直近観た62本の超主観的映画ランキング!

2023年ごろから映画レビューはインスタで記録しています。 それまではFilmarksでつけていたのですが、途中で面倒になってしまっておりました(;^ω^) インスタのように、少し手間があっても拘れた方が、自分は長続きします🤓 ということで、気づけば記録をし始めて2年弱経っておりましたので、ここ最近観た62本の映画を、超個人的なランキング形式でご紹介しちゃいます!自分で言うのもなんですが、こういう記事って案外助かりますよね~w あと、もともとは「ネタバレは避けるもの!」と

カップルで音楽を楽しむ”シェア”のデザイン

 映画『花束みたいな恋をした』脚本・坂元裕二(初の映画オリジナル脚本)/主演・菅田将暉&有村架純 ~劇場で鑑賞しておらず、作品としても事実上の”ノーマーク”だったこともあり、先日、この【地上波テレビ初放送】をなんとなく録画し、時間をみて視聴📺  いくつものシンパシー(当方も意外と若いマインド?^^;)を覚え、note記事にならないかなぁ…と模索🤔 ⇒前回と次回と、2つの話題を展開したいと思います📖 《前回の注目題材についてはコチラ👇》    映画作品本編の冒頭でのシー

IU Concert : The Winning ライブビューイングレビュー vol.1

IUちゃんを好きになって、IUちゃんのファンになって、もう14年も経つ。 前回のIUちゃんのコンサート「The Golden Hour」もライブビューイングを観に行ったけれど、当時それを集大成だと思った。これまで色んなIUちゃんのライブを見てきたけれど、(2013年~2019年ごろは特にIUちゃんのライブDVDを日本で入手することがとても難しくて、当時日本よりもっとIUちゃん人気が高かった中国に住んでる友達にわざわざお願いして送ってもらったりしていたのに、日本の映画館で見ら

神秘に浸る -タルコフスキーの映画を巡る随想

    【木曜日は映画の日】   私が好きな映画の中でも、タルコフスキーは、様々な意味で、今日もアクチュアルな映画監督です。今日は彼の映画と生涯について少し語ってみたいと思います。 アンドレイ・タルコフスキーは、1932年生まれ。父親のアルセニーは高名な詩人で、アンドレイの作品にも彼の詩が出てきます。   1954年に国立映画大学に入学。スターリン死去の翌年であり、検閲も緩和され、アメリカ文化をはじめとする西側の芸術や映画を吸収しています。   1962年、初の長編映画

映画感想|グッド•ウィル•ハンティング

昨日の夜はグッド・ウィル・ハンティングという映画を観ました🎬 モウモウ馬券投資さんがコメントでおすすめしてくれて、タイトルは知っていたけど見たことのない映画でした。 観ることができて本当に良かったと思える作品で感謝しかありません! 簡単にあらすじを説明すると、天才的な頭脳を持つウィルが自分の可能性や過去の傷、人とのつながりについて向き合う話です。 正直途中で涙が止まらなくなるシーンがいくつもあったけど、ウィルがセラピストのショーンと出会って少しずつ心を開いていく姿はすごく

じたばたせずに浮いてればいい ― Netflix映画『ちひろさん』

最近ふわふわと自分が浮いてしまっている感覚があった。でもまあそんな時期もあるよなあ、とそれを受け入れて浮いていた。 そんなぼんやりした日々のなかで、ふと思い出した。なんかこういう感じの台詞があった気がする、リリーフランキーさんが渋い声で「じっとしてれば浮くから大丈夫」的なことを言ってる映画があった気がする! と急に思い出して、ひさしぶりにNetflix映画の『ちひろさん』を観返した。 なんかこの作品って、本当に好きだなあ、としみじみ思った。なにも起こらないのに胸がしめつけ

忍たま映画を観る前に入れておくといい知識をまとめてみた

Twitter(頑なにTwitter呼び)で忍たま映画のことをぎゃーぎゃー騒いでたらフォロワーがざわざわし始めてくれた。嬉しい…。興味を持ってくれて、本当にありがとうございます。 2024年12月20日公開! 劇場版忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師 このnoteは、今回の映画を観るにあたってキャラクターが多くて不安、勢力関係が分からないなど、四半世紀ぶりに忍たまに触れる人に向けた、忍たまの世界を解説した記事です。 公式も説明動画作ってた! 一応言っとくと、試写会

ミルク(2008)

マイノリティーでもあきらめない! 希望を求めて突き進んだミルクの光と影の人生 1970年代、アメリカで初めて同性愛者を公表して、公職についた政治家ハーヴィー・ミルク。その勇気と希望に満ちた行動の軌跡と非業の死を、『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』の名匠ガス・ヴァン・サント監督が映画化しました。 本作でミルクを演じたショーン・ペンが『ミスティック・リバー』に続き、2度目のアカデミー賞主演男優賞に輝きました。 ミルクは3度落選した後、1977年、4度目の出馬でようやく

夢の川を超えて -映画『近松物語』の魅力

    ※木曜日の映画の投稿の代替です。     芸術的とは何か、というと色々定義はあると思いますが、作品に描かれている以上の何かを感じられるか、という点もあると思っています。   溝口健二の1954年の映画『近松物語』は、優れたドラマであり、そんないい意味での芸術的な香気に溢れた名作です。 ※2024年11月現在アマプラ会員無料 京都経師屋(障子やふすまを作る職人)の手代、茂兵衛は、主人の妻の「おさん」から、兄がお金に困っていることを相談されます。ふとした行き違いや欲望

DUNE 砂の惑星 PART2(2024)

映画のパワーがみなぎる壮絶な宇宙戦争 複雑な内面を抱えたヒーローにも注目 2部作として製作された、砂の惑星デューン(DUNE)の支配をめぐる宇宙戦争を描いた壮大なSFアクション超大作の後編です。 2021年に公開された前編『DUNE/デューン 砂の惑星』は、SF叙事詩として名高いフランク・ハーバードによる原作の前半部分を描いたもので、重厚かつ複雑な物語の世界観を余すところなく紹介し、後編への期待を高めて幕を閉じました。 本作では、邪悪なハルコンネン家の陰謀により、全滅し

未来はまだ白紙だから…

川口市出身の自称読書家 川口竜也です! 今日から金曜ロードショーは、3週連続で「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズを放映するそうだ。 しかも金曜ロードショー特別吹き替えとして、マーティ・マクフライを宮野真守さん、ドク・ブラウンを山寺宏一さんが担当する。 なんてこった。こいつはヘビーだ。 普段テレビがなくても問題ない生活を送っているが、今日に限っては見たかったなぁ。 もっとも、DVDがあるから、映画自体はいつでも観れる。だけど新吹替版も気になる。 それくらい、

アイアン・ジャイアント(1999)

アニー賞9部門独占受賞という離れ業をやってのけた 2次元アニメーションで描かれた20世紀最後のロボットアニメ ソ連が世界初の人工衛星スプートニク号を打ち上げた1957年。その成功は米ソ冷戦に拍車をかけ、社会的には暗い影を落とす結果になりましたが、一方で今日の科学技術の発展への扉を開けた革新的な出来事に、少年たちの未来へ馳せる夢や憧れは否が応でも膨れ上がりました。 そして、未来への希望を象徴し、世界中の少年たちの心を捉えたのが圧倒的な強さとパワーを持ったロボットでした。

2025年の持ちものリストを取りまとめ中

このnoteでも時々触れているが、 個人サイト・「或るミニマリストの思考回廊」を 近頃は少しずついじっている。 過去の記事は“アーカイブス“として再アップし、 ブログの再開に向けて、いくつか記事を準備している 今はそんな段階である。 アーカイブスを読み返してみると、 これまた先日投稿していたように 例えば“タスク管理“のこととか、数回投稿していた。 ただ、中でも多いのが、ミニマリストであるが故か、 モノに関することが多い。 持ち物のリスト、財布のこと、鞄のこと、ガジェット

夢を信じてみる気にさせてくれる映画 〜 「グレイスランド」

ロックの歴史を紐解くと、それは、黒人の持ち込んだリズム感覚と白人の感性が合致したときに生まれたというのが通説となっています。 その両者を合致させた存在が、エルビス・プレスリーだったわけです。 エルビスというのは、もうロックの象徴というよりもアメリカの何たるかの象徴といえる存在にまでなってしまっています。 自由の国アメリカ 夢のある国アメリカ アメリカンドリーム そういうものの代名詞にまでなっている気がします。 この映画に出てくる男は、おそらく、かつては夢を追いか

判で押したような生活って、あまり良くない意味で使われているけど

これは今年、2025年に限った話ではないけれど。 「50のやることリスト」なんて作り始めて、しばらく経つ。 そして振り返るたびに、出来なかったことに目が行く。 まあ、出来たこともあるにはあるので、 悪い方にばかり考えないようにはしないと、とも思う。 とはいえ、やることリストとは言いつつも、 一方では「やりたいことリスト」的な側面もあって。 やりたいなあと思っているなら、なぜ出来ないのか?と、 ネガティブ一辺倒ではなく、素直に考えた上で、 どうしたら出来るのか?を、自身を追い

Happy Birthday to the Famous Book!ジェイン・オースティン「高慢と偏見」の出版記念日。

ジェーン・オースティン「高慢と偏見」は、今日からちょうど212年前の1813年1月28日にロンドンの書店で発売されました! 作品には、匿名で「分別と多感」の作者とだけ簡単に記されて出版された。 今では世界中にファンを持つ有名な作家ジェイン・オースティンですが、この作品が生まれてから出版までの道のりは、かなり長い。 「高慢と偏見」は、1796年10月ジェインが21歳の時「第一印象/First Impression」として書き始め、翌年1797年8月に完成した。父のジョージ

ブラザーフッド(2004)

今では懐かしい韓流四天王の2人の貴重な共演 戦場で引き裂かれた兄弟の絆を描く感動作   サスペンスアクション『シュリ』('99年)で韓国映画の実力をアジアに知らしめたカン・ジェギュ監督が、本作では祖国の悲劇、朝鮮戦争について伝えました。 2004年の公開当時の日本は韓流ブーム真っただ中、勢いのある韓国映画らしい力強く激しい映像の中に、痛々しいまでに互いを思いやる兄弟が放り込まれました。 韓流四天王と呼ばれ、絶大な人気を誇ったチャン・ドンゴンとウォンビンが兄弟役を演じていま

「2」の方が面白い映画

ほとんどの映画は、続編が初作を上回ることはありません。 何だったら、失敗に終わることもしばしば。 だって、「1」が面白かったり、ヒットしたりしたから続編が公開されるわけで、鑑賞者の期待値も上がりきってる。でも、インパクトは初作よりは薄い。だからなかなかハードルを越えられないんです。 だから、多くの続編の評価は、 「1でやめときゃよかったのに…」ってなることが多いんです。 しかし、時にあるんですよ。「1」を上回るような続編作品、つまり「2」が。 今回の記事ではそんな

アラビアンナイト 三千年の願い(2022)

孤独な女性と魔人とのファンタジックな愛の物語 エキゾチックで幻想的なアラビアの世界は必見 イスラムの説話集『アラビアンナイト』で語られる物語の一つ、『アラジンと魔法のランプ』をモチーフにした摩訶不思議な〈おとぎ話〉が繰り広げられます。 旧約聖書にあるソロモン王とシバの女王の物語を皮切りに、愛欲や支配欲にまみえたアラビアの“闇”の世界がイマジネーション溢れる映像で描かれます。 煙のように変幻自在に姿を変える魔人や、猥雑でエキゾチックなアラビアの光景など、CGを駆使したマジ

映画「イコライザー」のセリフから正義とは何か考える

1.イコライザーとは  映画「イコライザー」は、名俳優、デンゼル・ワシントン主演のアクション・スリラー映画です。  イコライザーという映画は、主人公のロバート・マッコールが、悪を成敗する作品で、わかりやすく言うならば、アメリカ版「必殺仕事人」のような作品です。  しかし、イコライザーという作品は、ただのアクション映画ではなく、哲学的な雰囲気が漂う、品のある作品です。  今回は、イコライザーの第3作目である「イコライザー THE FINAL」において、正義について考えさせられ

洗練された微笑みで -映画『レディ・イヴ』の楽しさ

  【木曜日は映画の日】     コメディにおいて、ギャグと洗練のバランスはなかなか難しいものです。大笑いできるものは下品になりがちではあるし、すました態度のままだと、笑えるかどうか微妙になったりします。   プレストン・スタージェスが1941年に監督したハリウッド映画『レディ・イヴ』はそんなギャグと豪奢な上品さが同居した名作です。 エール・ビールを扱う大会社の御曹子、チャールズ・パイクは、蛇や探検を愛する初心な変わり者。一年に渡るアマゾンでの調査を終え、豪華客船で帰国する

フェイブルマンズ(2022)

映画監督への夢を支えたほろ苦い経験 スピルバーグの創作の秘密を紐解く自伝的映画 SFファンタジー『E.T.』、戦争ドラマ『シンドラーのリスト』、娯楽アクション『ジュラシック・パーク』など、さまざまなジャンルで数々の名作を生み出したスティーブン・スピルバーグ監督は、まさに映画の神の申し子といっても過言ではないでしょう。 そんなスピルバーグが映画監督の夢を叶えるまでの成長期の体験を綴った自伝的映画を製作しました。少年時代から8ミリカメラで家族の記録や、友人たちと映画を撮影して

【映画】どうすればよかったか?

みなさん、こんにちは、おはようございます、こんばんは。 Foodamental代表の吉田と申します。 食×メンタルヘルスの事業に挑戦しています。 本来ならば、弊社サービスのKINTSUGIについて綴る予定でしたが、今回は最近見た映画について綴ります。自分のために言語化しておきたく綴らせていただきます。 はじめに先日、横浜の映画館”ジャックアンドベティ”でドキュメンタリー映画”どうすればよかったか?”を観ました。 ここは2024年の”孤独のグルメ”年末スペシャルでも舞台として

映画で学ぶ『資本論』:初心者でもわかる経済学の基礎

現代社会は、富の集中や格差の拡大といった深刻な問題を抱えています。 最近鑑賞した映画『パラサイト 半地下の家族』は、こうした現代社会の矛盾を鮮烈に描き出した作品です。 以前のブログでも書きましたが、この映画を見て私は、カール・マルクスの『資本論』を思い出しました。 本記事は、19世紀に書かれた『資本論』が示した世界が、21世紀の私たちに未だに関係していることを3つの映画を通じて考えたいと思います。 なお、こちらの記事を読む前に、以下を読んでいただくと理解が深まると思い

¥200

近年のアカデミー賞映画をイッキ見したら涙腺が取れた (映画マイベスト5も)

野球、育児、起業ネタばかり書いている僕のnoteですが、映画について書いてみようと思います。 なぜ急に映画をイッキ見したか? これまでの人生でそんなに映画にハマることが無かったんですが・・・ 少し前、空いた時間でふと思い立ち、「万引き家族」をネットレンタルで見ました。 めっちゃおもろいやん!!! 素直にそう思いました。 すると、僕の脳細胞は、万引き家族を観たのと同じ感動を探し求めるようになり、それからちょくちょく空いた時間に映画を観るようになりました。 気づけば、ここ最

再生

シェイクスピア喜劇「ヴェニスの商人」を締めくくる悲しみの歌

英国ルネサンス期の不世出の劇詩人ウィリアム・シェイクスピアはわたしの生涯に最も大きな影響を与えた大作家のひとり。 日本人はシェイクスピアを古くから愛してきました。明治時代には沙比阿(しゃぴあ)という漢字表記の名前で本格的に作品が伝えられるようになり、1880年代に言論一致運動で有名な坪内逍遥が全作品の和訳を開始します。逍遥はシェイクスピアに対して尊敬を込めて沙翁(さおう)と呼びました。 逍遥のおかげでシェイクスピアは欧州最大の大作家として知られるようになりましたが、英語は日本語とは全く違ったリズムをもつ言語なので日本人にはとても難しく、あまりの名声のわりにはシェイクスピアの英語を読まれる日本の方が数少ないことは残念です。 わたしは無人島への一冊として、英語のシェイクスピアのどれかを携えてゆきたいと思うほどにシェイクスピアが大好きです。聖書よりもシェイクスピアです。 シェイクスピアの何がいいと言えば、それは弱強五歩格という詩文で書かれたリズム感の素晴らしさ。 「弱強・弱強・弱強・弱強・弱強」という規則正しいリズム。音楽でいえばアップビート。To be or not to be, that is the question。これも弱強五歩格。 音読してこれほどに気持ちのいい英語はあり得ません。日本語で言えば五七五七七のような音の快楽です。世界言語の英語で作品を書く作家は山ほどいますが、誰もシェイクスピアの詩文の凄さには及ばないのです。 英語で音読しないとシェイクスピアの良さはきっと半分も理解できません。 シェイクスピア劇は何度も映画化されていますが、ゴッドファーザーのマイケル・コルレオーネ役で有名なアル・パチーノがユダヤ商人シャイロックを演じた2005年の「ヴェニスの商人」は21世紀のシェイクスピア映画の最高傑作かもしれません。 映画「ヴェニスの商人」はシャイロックの悲劇として再解釈されたビタースウィートな古典映画。まだ見られたことがないといわれる方は是非ご鑑賞ください。日本語字幕ならばシェイクスピア英語も難しくはありません(笑)。吹き替えではなくて英語の音を聞いてみてください。 劇中第五幕ではハッピーエンドの歌が歌われますが、映画の最後、「月明かり」の歌は悲しい短調の歌として登場します。ヴォーン=ウィリアムズなどの作曲家は明るく美しい天上の歌として大団円をうたい上げるのに、この映画の歌はあまりに寂しげです。Jocelyn Pook(ジョスリン・プック 1960-)の作曲。 How sweet the moonlight sleeps upon this bank!  なんて素敵なんだ、月明かりが土手の上でまどろむとは  Here will we sit, and let the sounds of music  僕らも座ろう、音楽が僕らを包み込む  Creep in our ears: soft stillness and the night 柔らかな静謐、  Become the touches of sweet harmony. 夜は甘い響きにぴったりだ🎵 シャイロックを打ちのめしたアントーニオたちには喜びの歌だけれども、不当な人種差別から虐げられて全てを失ったシャイロックには不条理な人生の哀歌。 アンドレアス・ショルのカウンターテナーの歌声は聴く者をルネサンス時代の水の都へといざないます。 誰の視点から見るかで世界は180度全く違ったものに見えるのです。 「綺麗は汚い、汚いは綺麗」の世界。シェイクスピア劇を鑑賞する醍醐味です。

山に登ること、それは、偉大なる自然への畏れと敬いだろうか ~ 「ヒマラヤ 運命の山」(ドイツ映画)

「ヒマラヤ 運命の山」という映画を見た。 おどろいたのは、映像のリアルさ。 おそらく現地の山のところで撮影したんでしょうけど、なだれが起きる様子もリアルだし、寒くてこごえそうな吹雪のシーンもリアル。 8千メートル級の、山登りが、生半可なものではないことがうかがえる。 こういう山に登っていく人の心境ってどんなものなのだろうか。 ビバーグといっても、十分なスペースがあるわけでもなく。植村直己は、腰掛けて、体を断崖にゆわえて、足を中に浮かせて一晩を過ごしたというし。 こうい

劇場版、仮面ライダーアギト PROJECT G4 の魅力

1.はじめに  今回は、仮面ライダー30周年記念作品であり、平成仮面ライダーシリーズ初の劇場版作品でもある「仮面ライダーアギト PROJECT G4」の魅力や見どころについて簡単に書いていきたいと思います。  この映画は、私が人生で初めて映画館で見た作品で、非常に思い入れのある作品なので、しっかりと魅力をお伝えできればと思います。 2.仮面ライダーアギト PROJECT G4 の魅力  まず、この作品は、開始早々、孤児で超能力実験を行う超能力研究所がアンノウンに襲われると