マガジンのカバー画像

SF、読書のよろこびマガジン

161
大人になってからSFの楽しみを知った人の記録。本が好き、ゲーム興味ないかたはここで。
運営しているクリエイター

#読書感想文

「君のクイズ」…「マジカル頭脳パワー」…「国民クイズ」の問題のはなし

「君のクイズ」…「マジカル頭脳パワー」…「国民クイズ」の問題のはなし

小川哲「君のクイズ」を読みながら、
あれ、俺「国民クイズ」に続いてクイズ番組の話を連続で読んでる!
と気付いた。これを読んで「クイズノック」さんを知るぐらいクイズに興味ない人がそんなことある?

小川哲作品の中では薄く、スカッと読めるミステリー。

クイズ番組の最後の一問を、問題を読み上げる直前に答えて1000万円を獲得した相手は、ヤラセなのか相手なりの理論があったのか。追求するうちに、人生とクイ

もっとみる
【読書記録】坂口恭平「継続するコツ」から岡本太郎の味がした

【読書記録】坂口恭平「継続するコツ」から岡本太郎の味がした

前回の記事が「死」「あきらめ」がテーマだったけど、対比したように同じタイミングで読んだ「生」と「執着」の本です。

躁鬱を患う著者が、軽い躁状態を保って走り抜けていって、後には風がふわっと残るだけ…みたいな読書体験。

これは…、仕事もやりたいことも見つからなくて精神的に閉じこもって参っていたとき、図書館で岡本太郎や中島らもや高野秀行を読んだ、あの感じ!

自分の世界の外にいる人たちが、スコーンと

もっとみる
【読書記録】「平成くん、さようなら」(ネタバレ)

【読書記録】「平成くん、さようなら」(ネタバレ)

古市憲寿「平成くん、さようなら」読みました。
こういう話だったんかい!
世代による価値観のギャップとか、これからのの生き方とか、そういう話じゃなくて、パラレルワールドSF?

一発で好きになった。
もしも日本が安楽死を認める国だったら…という「歴史IfものSF」だった。
小説やゲームでよく「もしもドイツがアメリカを統治していたら」を見るけど、こっちの方がずっと肌でわかる。

死が身近な世界で、いか

もっとみる
ヤラセ番組の汚名をすすげ!クレイジージャーニーVS「酒を主食とする人々」

ヤラセ番組の汚名をすすげ!クレイジージャーニーVS「酒を主食とする人々」

高野秀行「酒を主食とする人々」を読みました。
この人の本は全部いい。
「面白い」と「人生観変わるほど面白い」と「ある意味おもしろい」の3種類しかないので、全部買ってもいい。

今作ではテレビ番組「クレイジージャーニー」のスタッフとともに、エチオピアの「酒飲み民族」を探す。
子どもも妊婦も、酒ばかり飲んでいるのに健康的にすごしているという、特殊なのに今どきネットの情報が全く出てこない民だ。

旅の目

もっとみる
【マンガ】永田カビ「これはゆがんだ食レポです」

【マンガ】永田カビ「これはゆがんだ食レポです」

オビにもある通り「過食嘔吐と付き合い続けて」生きている永田カビさんのグルメ漫画。

「付き合っている」がポイント。
「戦っている」ではない。

20代末に拒食症から一転して過食になり、現在は治療もカウンセリングも一旦通り越し、24時間飲酒からの入院&一生禁酒とかも通り越し、過食嘔吐しつつも生活していけるようになっているそうだ。

昔の作品は、一回脳に過食のスイッチが入ってしまうと、インスタントラー

もっとみる
元旦にカラマーゾフの兄弟・読破

元旦にカラマーゾフの兄弟・読破

カラマーゾフの兄弟5巻が元旦に届いた!
年賀状が一通も届かなくて、これ一冊がポストに入っていた。
5巻はエピローグと、ほとんどが解説だったので、本文は…全部読んだ!

ハタチまでマンガしか読んだことなかった僕が、

ドストエフスキー、カラマーゾフの兄弟全5巻、読了!

「罪と罰」は下巻に入ったところで止まったから、初めてドスエフ読めた。

他の翻訳では無理だった。亀山訳だから読めた。
あと、しおり

もっとみる
アメリカの価値観 VS アジアの神秘「世界しあわせ紀行」

アメリカの価値観 VS アジアの神秘「世界しあわせ紀行」

久しぶりのテレビで「外国人の日本褒め」を浴びて気持ち悪かったけど、これを読んだら治った。
世界の人の大半は、外国人の評価がなくても、なにが誇りでなにが欠点か自分で決めるし、そもそも他人を気にしない。

これは、日本にも住んでいた鉄火巻き好きのアメリカ人記者が、「しあわせ」とされている国をめぐり、しあわせ迷路に迷い込む一冊だ。

読むだけでふつうに驚けるし、実際に旅行する100分の1かもしれないけど

もっとみる
ファンタジー小説への苦手意識が減った

ファンタジー小説への苦手意識が減った

ほぼ初めての筒井作品だったけど、あまりに文章が落ち着いてて心地よくて、過酷な場面でもずっと幸せだった。
「超能力を持つ人々が出てくるSFファンタジー」を読んでいる感覚はなくて、旅行記を読んでいるみたいだった。

主人公はラゴスという青年。
「スカシウマ」に乗って南を目指している。この世界の人々は心を読んだり超能力を使ったりできるようだが、科学技術は発達していない。

最初の話に出てくる能力は「転移

もっとみる
【読書】珍しいSFの芥川賞作家。高山羽根子「暗闇にレンズ」

【読書】珍しいSFの芥川賞作家。高山羽根子「暗闇にレンズ」

なんでもっと話題にならんのや

高山羽根子作品を3作読んだけど、もっと話題になってないとおかしくないですか?

感覚が今っぽい。
男に頼らない、小柄でインドア派だけどひとりで平気そうな女性が主人公。

設定はSFが入ってるけど、読んでいる最中は純文学というか。解釈はある程度読者にまかせられていて、面白いけどスッキリは終わらない。難解だけど押しつけがましくない。ふしぎなバランス。

「暗闇にレンズ」

もっとみる
【読書】人生は痛いものだとしつこくしつこくしつこくしつこくしつこくしつこく

【読書】人生は痛いものだとしつこくしつこくしつこくしつこくしつこくしつこく

しつこくしつこくしつこくしつこく語りかける、花村萬月の「ハイドロサルファイト・コンク」を読んだぞ!
「なんでこの作品への賛否で世間は荒れ狂っていないんだ!」と思いながら読んだ。

血液のがんになった作者の体験をもとにした、フィクションと一応銘打った、ノンフィクションに見える小説。
もともとの血液に放射線をあびせて殺し、ほかの人の血液を輸血して入れ替える治療で、血液型が変わり、顔かたちが変わり、爪が

もっとみる
龍が如く外伝とワンピースの前に、原点の「宝島」の宝は何だったのか読んでみた

龍が如く外伝とワンピースの前に、原点の「宝島」の宝は何だったのか読んでみた

ワンピースが終盤だったり、龍が如く外伝のテーマが海賊だったりするじゃないですか。
この手の話は「伝説の宝とはいったい何なんだ!?」ってナゾが重要だけど、そもそも最初の「海賊の宝の地図もの」の宝箱には何が入っていたのか。

原点を知りたくてスティーブンスン「宝島」を読んだ。同作者の「ジキルとハイド」は読めなかったけど、訳も新しくて少年の心で読めた。

原点じゃなかった。
この本以前にも海賊伝説は山ほ

もっとみる
【読書】台北プライベートアイ2(ネタバレなし)

【読書】台北プライベートアイ2(ネタバレなし)

前作は風呂で読んだから紙がしけちゃったけど、今回は夏なので湯船の影響を受けない。
かわりにマウントレーニアのコーヒーをトートバッグに入れて、フタしてるから大丈夫だろう、って忘れててしっかりシミになっていた。

なんで毎回半月で好きな本をボロボロにできるんだ!

台湾のミステリー「DV8 台北プライベートアイ2」
読みづらい。進まない。わき道にそれる。
登場人物がやたらと多く、主人公は本筋と関係ある

もっとみる
【読書記録】ヴァージニア・ウルフ「灯台へ」

【読書記録】ヴァージニア・ウルフ「灯台へ」

文学を学んでいないから、ちゃんとした文章の書き方も、おさえておくべき古典も知らない。

ブックオフでそれっぽいオーラを出してたら「さては古典やな」というのが僕の文学に対する姿勢です。
だから英文学で重要な、ヴァージニア・ウルフという方も全く存じ上げず…。
すごく良かった。
今思えば、ドストエフスキーを読んでたときは無理してた。通好みとされてる音楽や味付けを、わかったフリじゃなくて、
「あ!これ好き

もっとみる
【読書記録】パンとタバコをひたすら切り詰める25年

【読書記録】パンとタバコをひたすら切り詰める25年

「イワン・デニーソヴィチの一日」を読んた。表紙が好きという理由だけで選んだけど、予備知識なく期待もせず読めて幸運だった。

収容所の男がひたすら労働して、パンを節約している。
一口ごとに小さく味わって、隠して後でお粥の器をぬぐって食べる用に服に隠してとっておく。

仲間にタバコを分けて欲しくてずっと隣でタイミングをうかがってたり、極寒の中でまともな防寒対策もなく延々とレンガをつんだり、わずかな暖房

もっとみる