お題

#SF小説が好き

SF小説への愛や、好きな作品・作家を語ってください!

人気の記事一覧

東京にまつわる或る物語4

04:ブフォトキシンが見せた ひとつの現実麻布十番 1  無害の象徴のようなイメージはあるが、蛙は毒をもつ。コロンビアのカラフルな蛙の背中からは、人を死に至らしめる猛毒が分泌される。その名もモウドクフキヤカエル(猛毒吹矢蛙)。人間は一瞬で絶命する代物だ。その名前から原住民たちの残酷な用途が連想できてしまう。現在、麻布十番に発生している蛙のにも実は毒がないわけじゃない。われわれの身近な蛙にも毒はある。毒の名前はブフォトキシン。痙攣や目眩、酩酊、幻覚作用を引き起こす毒性の汗を

『マチコバ戦記』〜EP.04 鉄骨竜 vs 魔女!〜

1.プロローグ2222年2月22日、時空間戦争により、世界の多くの都市は壊滅状態になり、人類は攻撃を免れた、地方都市で細々と生きていた。 ″量子位相侵入者″いわゆるQPIと呼ばれる、量子位相の壁を越えて侵入してきた、謎の生命体の攻撃により、世界中の大きな工場は完全に破壊され、人類は対抗するための生産能力を奪われた。 QPIの植民地と化した地球は、ただその日を生るだけの、奴隷のような生活が続いていたが、勇気ある戦士たちの活躍により、反撃を開始する。 この物語は、その勇気あ

【聴読感想】直木賞受賞シリーズ第2弾「六月のぶりぶりぎっちょう」万城目 学(まきめ まなぶ) (著)

直木賞受賞作「八月の御所グラウンド」の感想文はこちら。 今回もAudibleで聴読。 最近、AmazonはAudibleに力を入れているのか、Kindle Unlimited(読み放題)よりAudible聴き放題の対象になっている図書が多く、新刊からAudible対象になる時期も早い。 上がKindle版(Unlimited対象ではないので表記の価格) 下がAudible版(価格表示がおかしいが、Audible契約者は無料) 第1話「三月の局騒ぎ」この小説も昔の人(今回

自己紹介

SF・AI愛好会へようこそはじめまして。「SF・AI愛好会」です。 このアカウントでは、SF(サイエンスフィクション)とAI(人工知能)の魅力を発信していきます。 SFとAIは、一見すると異なるジャンルのように思えるかもしれません。しかし、SF作品の多くはAIを題材にしており、逆にAIの発展もSFの影響を受けています。人類がまだ想像の域を超えなかった時代から、SFは未来の技術を描き続け、それが現実のAI研究や技術開発のインスピレーションになっています。 本アカウントでは、

本好き僧侶が選ぶSF・ディストピア小説おすすめ作品15選!王道SF・ディストピアから考える現代社会

はじめに私のメインブログ「僧侶上田隆弘の仏教ブログ」でSF小説を紹介するきっかけとなったのはディストピア小説の王道中の王道ジョージ・オーウェルの『一九八四年』がきっかけでした。 私がこの作品を初めて読んだのは15年ほど前の学生時代でした。まだ20歳そこそこで世界のこともあまりわかっていなかった私でしたが、この本の恐ろしさに強烈な印象を受けたのを覚えています。 今回久々に『一九八四年』を読み直したわけですが、今度の『一九八四年』は前回とは全く違った恐怖を感じることになりま

SF 読みの読書記録 第1回(1月1日〜15日)の読書記録

計画通りにはいかないけれども2025年はS Fを215冊読む!という無謀な計画のモチベーションを維持するまとめです。Twitterの感想とダブらないよう簡潔にまとめます。  1月前半(1月1日〜15日)までに読んだ本は  ・SFが7冊 (残り208冊/305日)。  ・SF外が4冊。  ・そのほか8作品。  合計11冊と8作品。まずまずの滑り出しですね。年末に作ったリスト215冊とは無関係に読んでいるのはご愛嬌ということで…Twitterで書いてない本の感想も紹介します。

『マチコバ戦記』〜EP.03 科学技術 vs 古代魔法!〜

1.プロローグ2222年2月22日、時空間戦争により、世界の多くの都市は壊滅状態になり、人類は攻撃を免れた、地方都市で細々と生きていた。 ″量子位相侵入者″いわゆるQPIと呼ばれる、量子位相の壁を越えて侵入してきた、謎の生命体の攻撃により、世界中の大きな工場は完全に破壊され、人類は対抗するための生産能力を奪われた。 QPIの植民地と化した地球は、ただその日を生るだけの、奴隷のような生活が続いていたが、勇気ある戦士たちの活躍により、反撃を開始する。 この物語は、その勇気あ

『町工場交響曲』〜EP.03無口なロボットのメロディ〜

1.エピローグジャン!ジャン!ジャン! 耳障りな金属音でタマキは目が覚めた。 周波数帯は1000~5000Hzくらいか、4000Hzになると″不快″の判定領域になる。 タマキは、まわりには聞こえない音で小さく、チッと舌打ちをした。 これはおそらくトラックでワタシを運んできた人間が、外から中の人間に″開けろ″という合図なんだろうけど、うるさいヤツだ。 こちとらHSP全開の聴力特化型の高性能ロボットだぞ、丁重に扱ってもらいたいもんだ‥ しばらくすると、工場の中で人間が

SFを理解するための次元理論の基礎

 私が書いている記事は、タイムトラベルをテーマにしたアニメや映画、哲学、AI、ジョークを織り交ぜたシュレーディンガーシリーズなど、多岐にわたります。  SF小説や映画に慣れている方はすんなり読めるかと思いますが、SFに慣れていない方にとっては少し混乱するかも知れません。そこで、今回は『次元』をテーマに、各分野で異なる次元に関する考え方の違いを説明します。ちなみに、私は『ルパン三世』に登場する次元大介も好きですが、本稿では彼の話はしません。  前回の記事では、唯心論、唯物論

久乙矢「エンケラドゥスの夜明けの魚」

◆作品紹介

読書リハビリと電子書籍デビュー

何ヶ月もじっくり読んでいる本の世界観がやっとわかってきた。 SF小説が苦手なこと、読書が久しぶりなこと、電子書籍デビューであること、いろんなことを乗り越えて少しずつ世界に順応していくのが懐かしい。 固有名詞が多く、独自の世界観で、いろんな自分の常識を削ぎ落として本の世界に入っていく。 大変だけど、とても楽しいです。 あくまで一人の科学者の仮説だが、独自の文化を持ち、住民の性別が排除されたこの惑星の民は「性別」を排除したかったのではない、「戦争」を排除したかったのではない

【小説】稲穂が揺れる宇宙で・・

第1章:田舎町の天才少年(2009〜2022年)2009年、福岡県の片田舎にある小さな町で、星野ハルトは生まれた。周囲を山と茶畑に囲まれたその町では、時間がゆっくりと流れていた。人々は顔見知りばかりで、日常の話題といえば天気や農作物の出来具合くらい。インターネットもまだ十分に普及しておらず、子どもたちは外で遊ぶのが当たり前だった。 しかし、ハルトは少し違っていた。彼は幼い頃から「変わり者」として知られていた。3歳の頃には絵本よりも父親が持っていた科学雑誌に興味を示し、小学校

SF読みの読書記録 第2回(1月16日〜31日)

1月前半に読んだ記録は記事はこちらからどうぞ。 1月の後半(1月16日〜31日)に読んだ本は  ・SFが6冊 (残り冊/日)、短編2作。  ・SF外が2冊。  ・読みかけが1作品。  合計8冊と2作品でした。Twitterでは書いていない感想メインでさっくりと、まとめます。 今回読んだSF 作品(6冊/208冊中) コリイ・ドクトロウ『マジック・キングダムで落ちぶれて』川副智子訳  絶版本の高額古本のため、図書館で取り寄せました。ディズニーワールドを趣味で運営するSF

#書庫冷凍 -毎週ショートショートnote

ようこそ冷凍書庫へ このアプリケーションは世界中の公開ネットワークを自動巡回し、あらゆる情報を収集、独自開発した超圧縮技術により最小限のデータ量で保存する、情報の巨大冷凍庫です この技術により、世界中のあらゆる有益な情報が半永久的に保存されます 2028.12.9 Ver.1.1公開 AIを導入、自律的プログラム改修が可能に 2029.10.12 Ver.1.2 世界中の非公開ネットワークへアクセス可能に 2030.6.21 Ver.1.2.2 幾度かの熱暴走を感知した

【SF短編小説】 スイーツ #シロクマ文芸部 「甘いもの」参加作品

※本文2200文字です。  甘いものが食べたいと言うヴィクトルの希望を叶えるため、マヤは二番街にきていた。  ここには有名なパティスリーがある。シャンドラン家のパーティーでは、デザートにここのスイーツがたくさん並べられる。  この店のバナナブレッドとレモンタルトがヴィクトルの大好物で、先週一度、彼と一緒に来ていた。  マヤは店のドアを引き開け、手ぶらで店を後にした。 「はぁ…」  大きなため息をひとつつくと、トボトボと五番街の方向に歩き出す。先週ヴィクトルと来た時

ぼくが評論同人誌『山本弘論』『栗本薫カレイドスコープ』を出したわけ。

 先日、通販を開始した同人誌『山本弘論』がちょこちょこ売れています。お買い求めいただいた皆さん、ありがとうございます。  おかげで印刷代とコミケ参戦費くらいはペイしそう。交通費、ホテル代などもろもろ入れると赤字ではありますが……。  今回はこの『山本弘論』とついでに売り出した『栗本薫カレイドスコープ』の本の宣伝を兼ねて、山本弘と栗本薫というふたりの作家がぼくのなかでどのような位置づけになるのか書いておきたいと思います。  『山本弘論』と『栗本薫カレイドスコープ』、それぞ

【SF短編小説】 石板 #毎週ショートショートnote 「チョコニート」

※本文410字です。「書庫」と対作品です。  俺がチョコっとニートをしていた頃の作業が、子孫に影響した話。  大学編入が大人の都合で、入学まで半年暇ができた。働かず、ブラッと過ごし、フッと湧いた名案。 『資料や研究のバックアップ用の書庫を作ろう!』  自宅の納屋を改装することにして留学生のアイと作業にかかった。  アイのドリルで、ダガートに住む友人から贈られた大理石の板に文字を刻む。  一行掘ったところで彼女は首を傾げる。 「なにこれ?」 「信念。」  アイは

【SF短編小説】 書庫 #毎週ショートショートnote 「書庫冷凍」

※本文410文字です。「石板」と対作品です。よろしければぜひ… 「あれが書庫だ!」  案内のジャンルークがアリシャに顔を向け前方を指差す。  250年前の巨大隕石の衝突により、隕石の冬が数年続き、街全体が冷凍庫のように氷に閉ざされた。  近年の地殻変動と気温上昇で、ある科学者の凍結していた書庫が顔を出し、彼の末裔であるアリシャが確認のためにこの地を訪れた。  扉を慎重に開ける。羊皮紙、和紙、パルプ紙、USBやHDDなどの記録メディア…そこには多種多様な記録媒体が眠っ

野村日魚子「幽体について」

◆作品紹介

今村空車「堕落」

◆作品紹介

脱輪「ビニール・ボディ・ホラー——あるいはプラスチック・ニンファでいっぱいの海 第2部」

◆作品紹介

【小説】幸福という名の檻・・

第1章:幸福スイッチの普及朝の通勤電車は、いつものようにぎゅうぎゅう詰めだった。主人公のタクヤは吊り革に掴まりながら、窓越しに映る自分の顔をぼんやりと眺めていた。 無表情で疲れ切った顔。昨夜も遅くまで残業し、帰宅してからはテレビをつけたまま寝落ちしてしまった。そんな生活がもう何年も続いている。 「幸福スイッチ、か……」ポケットの中で指先が触れる小さなデバイス。 それは政府が数年前に配布を始めた「幸福スイッチ」だった。シンプルなデザインで、親指で押せるボタンがひとつだけ付

脱輪「ビニール・ボディ・ホラー——あるいはプラスチック・ニンファでいっぱいの海 第1部」

◆作品紹介

読書記録「ロボット・イン・ザ・ガーデン」

川口市出身の自称読書家 川口竜也です! 今回読んだのは、デボラ・インストール 松原葉子訳「ロボット・イン・ザ・ガーデン」小学館 (2016) です! ・あらすじ その旧式のロボットは、いつの間にかうちの庭にいた。 高さ130センチ弱、金属製の四角い胴体と頭、手足は排水ホースのようなもので構成されている。まるで図工の工作作品のようなロボットだ。 もっとも、一家に一台アンドロイドが家事を手伝っている現代において、動くロボットなど珍しくもなんともない。 ただ見た目があまり

書き殴り(仮題)11

管理下に置かれるJ国民においても 日々の生活において日常品の買い物 ネットなど出来る環境は与えられている。 J国民の意識から不満や不安を 徐々に取り除き、このままでも 特に問題無いと感じさせ このままではいけない 変わらないといけない、と 考えることをやめさせるためだ。 個人で反抗的な態度を取り すぐに労働人間としての機能を 取り消された者もいた。  Re   アメと鞭 どちらも与えられるのを 待っているだけでは 結局は何も変わることは無い。

早川書房 秋の大感謝セール:最大50%OFF / プライベート時間の使い方を考える

恒例、早川書房のセール。 50%OFFには釣られるが、電子積読が増えそうなのが悩ましいところ。 セール対象一覧 2022~23年は夏のセールを利用した。 今年はまだ利用していない。 本も読みたいけど時間の使い方を考えると「創作時間=鑑賞時間 ✕ 5〜10倍」なのが悩ましい。 物語を作るnoterさんは多いので「物語を5千文字書くこと」と「本で5千文字読むこと」とでは、時間の経ちかた(時間の消費)が大きく違うのは実感されていると思う。 自分で作る文章は読み直しも必要(

【SF小説】ユニオノヴァ戦記 I ー はじまりの事件①  ※改訂版

※襲撃シーンを含みますが、過度な暴力表現は避けています。ご自身の判断でお読みいただけたらと思います。(今回文章を大幅改訂して引越してきました。) 「戻れ!ヴィクトル・シャンドラン!!」  騎士候補生第三部隊の教官ギルバは宙港警備隊の装甲車両内で、臨時に設置された司令本部のモニターを食い入るように見つめていた。  できることなら、すぐにでもヴィクトルの元に駆けつけ、引きずってでも彼を装甲車内に連れ込みたい。  しかし、特殊な遺伝子アップデートを繰り返し受けているヴィクト

週末を売ったら、月曜になっていた【802文字/SFショートショート】

「土日を他人に売れるなんて、ほんとにアリなの?」 金曜の夜、ぼくは借金まみれで途方に暮れていた。ネットで見つけた“週末譲渡システム”は怪しげだが、どうにも興味を引かれる。 「未到来の土日を他人へ売却し、大金を得られます。買い手は土日を二度体験し、どちらかを正式な週末として記録できます。売り手は土日をスキップし、金曜から一気に月曜へ――」 最初は冗談かと思った。でも背に腹は代えられず、契約書にサイン。即座に振り込まれた金額を確認すると、悪寒と安堵が入り混じった。 次に意

クラッカージロウ(6話)

A財閥内でも、動きはあった。 社長がマイク室でスピーチをしたのだ。 「諸君。我が愛する娘が誘拐された。悪しき犯人側の要求は、ただただ卑しい。この大A財閥グループに対する挑戦状だ。 秘書が、犯人から届いた要求書を読み上げる。 1つ、警察には、言わないこと。もしも、言ったなら娘の身の保証はできない。 次に、当方の要求は金銭目当てではない。現在、進行中のアンドロイド開発の中止を求めるものである。アンドロイドによる危険性、いずれ人類を脅かすであろうアンドロイド集団を、自ら作り出

『東京銀経社アンソロジー いつかあの空を越えて』の感想

はじめに  二〇二四年十一月二十九日、九頭見灯火編『東京銀経社アンソロジー いつかあの空を越えて』が刊行された。  十六作品収録、文庫版八六七ページ、背表紙は四.三センチと辞書と見まごう厚さのアンソロジーである。  ※リンクはPDF版(電子版)。  私・蒼桐大紀はその執筆者の一人として参加しており、大変光栄なことに自作のタイトルを表題として採用していただいた。  このたび読了したので、各作品の感想を記していきたい。  感想を書くにあたってなるべくネタバレを避けるようつ

kono星noHIKARI 第31話

DETONATOR I              2022.04.18    鼻先と前脚でこじ開けて入ろうとドアをカリカリするロジーにやっと追いついた。 ノア「なんでそんなに急ぐんだよ。いつもの散歩だよ?ほら、ドアがちゃんとロジーを確認できないよ」    ノアの言葉に、ハッとしたロジーがドアの前でスンとお座りする。ドアが開くやいなや、無理やり身体を滑り込ませる。    ロジーが向かった先は、オフィスの窓辺で、どんよりと霞む朝のビル群を眺め佇む白いTシャツにグレーの

愛しい彼女はアンドロイド

僕は、広岡M、50歳現役の大学教授だ。民俗学を専門にしている。特に南方の島々の神話から、日本人のルーツを見つける研究をしている。 彼女の名前はアンナ。16歳のAIの女の子。ネクサス社から昨日届いた。僕は、3ヶ月前、妻百合子を事故で亡くして以来、一人で静かな日々を過ごしていた。   百合子とは中学のときに出会った。お互い一目惚れだった。その意志の強さがはっきり出ている美貌と、頭の良さ、不公平を許さない正義感に恋心を募らせた。   大学に入って、最初のデートの時、彼女のベージュ

【短編小説】追憶の色彩

短編小説:追憶の色彩  追憶の色彩  西暦21XX年。人類の95%が、完全仮想現実空間「ネオスフィア」で生活を送っている。  現実世界は「オールドワールド」と呼ばれ、デジタル化を拒む少数の人々が暮らす、忘れられた場所となっていた。  アオイは、ネオスフィアのシステムエンジニアとして勤続10年目。彼の役割は人々の意識をデジタル空間に接続する、神経インターフェースの保守。  完璧に設計された仮想空間。  人々は理想の姿で暮らし、苦痛や悲しみ、孤独、すべてがプログラム

読書記録「銀河ヒッチハイク・ガイド」

川口市出身の自称読書家 川口竜也です! 今回読んだのは、ダグラス・アダムス 安原和見訳「銀河ヒッチハイク・ガイド」河出書房新社 (2005年) です! ・あらすじ 英国人 アーサー・デントは憤慨していた。昨日来た作業員曰く、バイパス工事のため、今日中に我が家を立ち退かねばならないと。 役所に行くと、確かに計画は9ヶ月も前から掲示板に張り出されていたらしい。 もっとも書類は、役所の地下の、電灯の切れた、トイレの便器に放り込まれていたが。 アーサーと作業員の押し問答が続

西田藍のプロフィール@お仕事募集中

はじめまして、西田藍です。 2012年にアイドルとしてデビューし、現在、文筆家として活動しています。 プロフィール現在の連載SFマガジン誌上に、「西田藍のSF再入門 にゅうもん!」を連載しています。 SF作家・フィリップ・K・ディックが好きなアイドルとして、早川書房『SFマガジン』2014年10月号の「PKD特集」にてカバーガールを務め、その後、始まった連載は、2015年1月号から現在まで、おおよそ10年間、本誌に現在41回、cakes版にて全4回寄稿しています。 また、

読書垢をしているSF読みが2024年を振り返り、マイベストトップ5を紹介

 もうすぐ2024年も終わりますね。ということで、年始の目標振り返りと2024年マイベストトップ5を紹介します。ベスト5はいつもより長めの感想もつけています。 年始の目標は・・・どこまでできた? 私のnote初投稿テーマは「今年のやりたい10のこと」でした。   この中で「できた」と言えるのは、「1、2、4、5、9」です。 1、Noteにも読書感想やエッセイを書く  投稿は始めた頃は何を書くか頭を悩ませていました。転機は10月。がんと診断され、「経験を書く」エッセイを

小説「メジャー・インフラトン」の描き始め(第1部作です。)その27

🎍こんにちは、あおっちです。 皆様いかがお過ごしでしょうか。 今日は、小説を描き始めて思ってもいない現象が起きたのでご紹介します。 アルファポリスさんとの出会いは、 柳内たくみ大先生の、 「ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり」の大ファンで、 「アルファポリス」を知り、 小説、漫画ともに拝読していたのです。 現在もスピンオフの「ゲート0-zero-自衛隊 銀座にて 斯く戦えり」を楽しみにしている昨今。 そんな「アルファポリス」さんのおすすめ筆頭で「あおっち」公開全作

バック・トゥ・ザ・ニャーチャー

猫のニャーティ・キャットフライにとって、夜は探検の時間だ。闇が広がるほどに、彼の心はざわめき、未知の世界がその前に広がる。今夜もまた、飼い主であるドク・ニャウンの実験室の扉がわずかに開いていた。まるで闇の中でしか見えない星がそこに輝いているかのような、不思議な光が机の上から洩れている。ニャーティは鼻をひくひくさせ、その光に引き寄せられるように歩み寄る。シルバーのボディに青白い光がちらつくその装置は、猫の瞳に妖しく映り込んでいた。どこか別世界の匂いがする……彼はそう感じた。猫と

アメリカ文学初のSF小説について調べてみたら、意外と面白かった件

 どうも初めまして。上地王植琉と申します。  ……ええ、読みにくい名前で大変申し訳ありません。おそらく初見で読める人いないと思います。でもオーウェルいっぱいちゅき。  とまあ、それはさておき、普段は小説を書いたり、YouTubeの動画を作成したり、最近では以前からのスチームパンク好きが高じて(?)、『私訳古典シリーズ』と称して、未邦訳の古典SF小説(19世紀末と言えば、ちょうどH.G.ウェルズなどが活躍していた時期です。当時はSFではなく『科学ロマンス』などと呼ばれていました

MilkyWay DreamTRAIN【S•S】 SFショート

夢の中で、僕は知らない女の人から電車の切符をもらった。 そして必ず電車に乗るように言われたんだ。 でも、電車に乗る場所は駅じゃなくて、家の近くの川の上だった。 切符を持って川に行けば、白い霧に紛れて電車はすぐに来るって言ってた。 夢の中の事だから、面白そうだと想い家の近くの川に行ってみた。 そしたら、切符をくれた女の人が言っていたように、僕の周りは真っ白になった。 だけど、真っ白な所に電車のドアだけが見えて、そのドアが開いたんだ。 中には僕と同じ、十歳位の子供ばか

エフィンジャー『重力が衰えるとき』を読む

新年あけましておめでとうございます。 初日は初詣に参拝してきました。 お賽銭を入れてきたのですが、横にアプリをダウンロードできるQRコードがあって、電子マネーでお賽銭をPayできると書かれている。 貨幣が廃れた未来の日本では、電子賽銭で神仏に祈りを捧げる……情報化された神社に衝撃を受ける新年。 おみくじは吉でした。いいことがあるようです。 さて、『重力が衰えるとき』は新年初読書というわけではなく、年末に読んだ本の感想。 アラブの犯罪都市ブーダイーンで探偵をするマリードという

移民国家のオーストラリアで時々聞かれる「あなたの出身は?家族・先祖は?」日本人、と自信持って言えるが、国によって言えない人もいる。先日答えるのに困っている人がいたので「みんな先祖はバクテリアだろうね」と助言したら結構ウケていた。ありがとう、ヤン提督!#銀英伝 #SF小説が好き

数字に縛られる愛 ──匂い相性度が導く幸福と不安【852文字/SFショートショート】

「あなたの匂い相性度は82です」――その数字を見た瞬間、わたしは呼吸が止まるほど息苦しくなった。 現代では、相性度が60未満だと結婚自体が法的に認められない。逆に言えば、60以上なら祝福されて当然だ。82なら文句なしに合格点。 けれど、なぜだか心がざわついている。 母が封筒をのぞき込み、ほっとしたように笑う。 「大丈夫ね。式の準備も進めちゃいましょう」 匂い相性度こそが夫婦生活を左右すると言われて久しい。 遺伝子よりも本能に近い嗅覚が、家族としての絆を保証する。統計的

SF作品が、多少の陽の目を見て光栄です。

ありがとうございます😊 励みになります。

【小説】メディアを裁く光と影

第1章:起点1. 灰色の朝 冷たい雨がアスファルトを叩きつける中、主人公・**神崎悠真(かんざき ゆうま)**は、古びたアパートの一室で目を覚ました。壁には彼が作り上げた無数のコードとアルゴリズムのメモが貼られている。部屋にはほとんど家具がなく、唯一目立つのはデスクに置かれたハイスペックなノートPCだけだった。 「今日もまた、誰かが犠牲になるのか……」 悠真はスマートフォンを手に取り、ニュースアプリを開いた。そこには、某有名週刊誌が報じたゴシップ記事がトップニュースとし

ハイテンションなスペースエンタメSF「デシベル・ジョーンズの銀河(スペース)オペラ」

<SF(221歩目)> 翻訳者の小野田和子さんの技を感じる。中毒になる文体です。 デシベル・ジョーンズの銀河(スペース)オペラ キャサリン・M・ヴァレンテ (著), 小野田 和子 (翻訳) 早川書房 「221歩目」は、キャサリン・M・ヴァレンテさんの笑えるスペースエンタメSFです。 エンタメSFとは、ムリ筋な設定から始まるのですが、結果は「面白い」です。 何時も真面目系のSFばかり読んでいたら、こんな設定もありなの!?とか思ってしまう。 小野田和子さんの翻訳の妙なのか

痛みゼロ社会って、本当に幸せ? ― ペインブロック・リング【669文字/SFショートショート】

「痛みがゼロになった世界って、最高かも?」 朝から腰の痛みに苛立っていたぼくは、新発売のペインブロック・リングをはめた瞬間、思わず声を漏らした。イヤな痛みが嘘みたいに消え、指先からじんわりとした温かさが広がる。 これでようやく苦しみから解放されるのだと信じた。 会社に着くと、同僚たちの指にも同じリングが光る。皆が笑顔で「痛覚なんていらない」と声高に語り合う。ネットでは“痛みゼロ社会”の到来を歓喜し、腰痛や頭痛で悩んでいた人々が「人生が変わった!」と大絶賛だ。 昼休み、

【SF短編小説】 本当の理由

※本文2000字です。  シャンドラン別邸。ヴィクトルの住む家の階段をヴェガは静かに上がると、マヤの部屋の前で立ち止まった。  優しく二回ドアを叩く。 「ヴェガ?」  マヤの声が応える。叩き方で誰が外にいるのか察したらしい。ヴェガが返事をし、ヴィクトルはリビングにいることを伝えると、鍵が外され、数センチ程ドアが開く。そして、泣き腫らしたマヤの顔が現れた。  ヴェガは息を呑む。ヴィクトルの採寸方法が問題だっただけではなさそうだ。彼女はマヤを安心させるように微笑む。

【ショートショート】秘密の未来教室

ある日、学校の廊下を歩いていたタクヤは、普段は閉ざされているはずの古い教室の扉が少し開いているのに気づいた。好奇心に駆られた彼は、そっと扉を押し開けて中に入った。そこには、見たこともない不思議な機械が並んでおり、まるで時間が止まったかのような静寂が広がっていた。タクヤは一歩一歩、慎重に教室の奥へと進んでいくと、突然、機械の一つが光り始めた。彼は驚きと興奮を胸に、その光の中に手を伸ばした。 タクヤが手を伸ばすと、光は一層強くなり、彼の周りの空間がゆっくりと変わり始めた。気がつ

競り落とせない幸福― 感情オークション【860文字/SFショートショート】

全財産を注ぎ込んだオークションで落札した「純粋な幸福結晶」が、脳裏でほんの数秒、淡い光を放っただけで消えた瞬間、ぼくは凍りついた。 この世界では、感情が商品になっている。 額に貼る「幸福シール」で気分を誤魔化すのは当たり前。より希少な感情は、仮想の「感情オークション」で天文学的な値段で取引される。ぼくも長いことシールでしのいできたが、すぐに物足りなくなる。もっと深く、圧倒的な幸福が欲しくて、最高級と謳われる結晶を手に入れたのに、ただの数分間でかき消えたなんて。 あんな大