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【読書】台北プライベートアイ2(ネタバレなし)

前作は風呂で読んだから紙がしけちゃったけど、今回は夏なので湯船の影響を受けない。
かわりにマウントレーニアのコーヒーをトートバッグに入れて、フタしてるから大丈夫だろう、って忘れててしっかりシミになっていた。

なんで毎回半月で好きな本をボロボロにできるんだ!

台湾のミステリー「DV8 台北プライベートアイ2」
読みづらい。進まない。わき道にそれる。
登場人物がやたらと多く、主人公は本筋と関係あるようなないような話を語りつづける。
だけど、そこがいい!

スタイリッシュに凝ったトリックをくりだすベストセラーミステリーと違って、すごく雑味がある。前作がヒットして、短編集でお茶をにごすこともできるのに、10年も愚直に粘り強く、サービス精神をたっぷり練り込んで書いてある。
「名作」ではなくて、「欠点もあるけど忘れられない旧い友人」のような存在だ。


1992年。台湾の女性がよく加入する相互扶助グループでもめごとが起こり、殺人に発展した。
偶然かくれんぼをしていて現場に居合わせた少女が、大人になった今、そのときかばってくれた「お兄ちゃん」は誰だったのか、真相を思い出して過去のトラウマと向き合うために捜索を依頼する。

依頼されたのが、勢いで探偵名乗っちゃったような理屈っぽい中年男・ウーチェン。
ウーチェンが元刑事や関係者に取材するうちに、記録と真実にズレがあることに気づく。

人も事件も多いけど、幕の内弁当みたいに無理やり一冊に詰めて、それを「サービスしといたよ!」って感じで出してくる。
本自体が、「若いんだからもっと食べなさい」と料理を出してくるおばちゃんみたいだ。
日本人にとって、さらに厄介さを増す要因が、親しい人には「阿〇〇」と呼び方が変わること。「~ちゃん」みたいな感じに。
誰が誰なのか、人物紹介ページを行ったり来たりするはめになる。
台湾の街を地図片手に歩いてるようだ。
あるいは、ノートに自作マップ作ってたファミコンの3Dダンジョンみたい。


もうひとつ、この小説が忘れがたい理由を考えてみたけど、主人公が独特。
一言で「クールキャラ」とか「ワイルド」とか説明できない。作者自身の経歴を元にした、実在感のある人。

だけど、事件はフィクションぽい。
複雑な連続殺人の捜査で、伏線があって、見落とした部分を明らかにしないといけない。

フィクションぽいややこしい事件には、ホームズとか、コナン君とか、古畑任三郎とか、フィクションぽい探偵が対決しそうなのに、
生身のおじさんにフィクションの連続殺人がぶつかってきた感じ。

そして「こいつはもう引き下がれねえな」って、だんだん損得抜きで本気になっていく。
なぜ事件を解決したいのか、理由付けは探偵ものでは重要だけど、若い依頼人の女性への下心じゃないのが読みやすい。
しいていえば主人公も、依頼人の女性もパニック障害持ちで、その「縁」みたいなものでつながっている。

曲がりくねった台湾の路地を歩いて、思考もデジタルも友人も総動員して、なんとか事件を片づけて、厄介な荷物をおろして自由になれて気持ちよかった。
1作目のほうが文庫だし人間関係はわかりやすくて読みやすいかな。
2作目からでもいけるし、突然自分の読んでる本の話したり独特の味は2作目のほうがあるかも。






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南ミツヒロ
読んでくれてありがとうございます。 これを書いている2020年6月13日の南光裕からお礼を言います。

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