蒼桐大紀
noteで公開した小説が入っています。
整理用。単体記事をまとめたものです。
『放課後のプレアデス』の視聴当時(2020年5月~7月)の感想補足解説記事を格納するために作成したマガジンです。
このマガジンは、『放課後のプレアデス』感想補足解説というタイトルそのままの記事を格納するために作成しました。というのも、全12話の感想ツイートだけでも結構な分量があり、これに補足と解説を加えると一つの記事が長くなってしまうので、分冊形式を取ることにしたのです。 Twitterであたかもいま放送されているアニメの感想を書いているかのようにツイートしていたのは、リアルタイム視聴感を得るためでした。 2015年春に放映されたアニメを2020年春~初夏に観ながら、感想ツイート
夜の街には雨の気配が濃厚に残っていた。むわっとする大気をかき分けるようにして、駅前の陸橋の一角にある花壇の前に立った。Tシャツに制服のスカート。この格好は意外と誤魔化しが利くとわかってから、お定まりの格好になっていた。 帰宅ラッシュを少し外した時間。月が明るくなり始めた時間。アコースティックギターを抱え、いくつか音をつま弾いた。足元に置いたギターケースには「リクエストやります」の紙が貼ってある。今日はそういう気分だった。 通行人はそこそこいたが、誰も注意を留めることなく
今日も上手く話せなかった。 奈緒美は暗い気持ちを抱えて、学校が終わると近くの海岸に立ち寄った。 海へ続く道は、通学路から少し外れたところにあった。椰子の木が生い茂る小道を抜けた先には、砂浜が広がっている。 父親の転勤で引っ越した南の島は、公用語が英語だった。日本人学校の生徒達も当たり前に英語で話す。奈緒美が転校前に覚えた申し訳程度の英語ではおよびもつかない。自己紹介のときの恥ずかしさを思い出したくなくて、誰かに話しかけるのが怖くなっていた。 人のいない海はよかった。
BFCオープンマイクに投稿しました。 ※BFC=ブンゲイファイトクラブ はじめに オープンマイクに投稿していなかったことを思い出したのと、2000字くらいのスパンで書き殴りたい気分だったので書いてみました。 文庫ページーメーカーで詰められる一杯の版を選択したので、UDフォントにしたほうがいいかな、と思いつつ雰囲気重視で源暎こぶり明朝を選択。 274/蒼桐大紀/ワンナイト・クロスオーバー・セッション 本文テキスト(1206文字) 帰宅ラッシュ時間を狙って、タ
小説家・作詞家。 SF、青春、百合、現代ドラマなど色々な小説を書きます。だいぶご無沙汰ですが作詞もやります。 たまに濁点の位置を間違われますが、正しい読み方は「あおぎり たいき」です。 連絡先 ご依頼などご相談は下記のメールアドレスへご連絡ください。 aogiri.shisiki*gmail.com(*→@) SNS X:@AOGILI Bluesky:@aogiri-taiki.bsky.social Instagram:@aogiri.taiki 投稿サイト
これはなに? 古賀コン5に応募した『雨上がりの青は日々是好日(未完)』の完成原稿です。執筆時間約1時間27分。 本文 即興創作のアプローチに一時間以内に書き切る〝ワンライ〟と呼ばれるものがある。私達が私立北崎高校文芸同好会に入ったとき、部長の冬菜先輩——静居冬菜先輩は名字で呼ばれるのを異様に嫌がる——から最初に出された課題がこれで、執筆の筋力を鍛えるのにうってつけなので、それから私達は言われなくてもときどきやっている。 放課後の部室に、電子的なアラームの音が鳴り響
はじめに この記事は私・蒼桐大紀が古賀コン5参加作品を全作読んで、一言ずつ感想(と言うよりその時思ったこと)を書いてみたものです。 発端は古賀コン5エントリー受付直後にX(旧Twitter)でポストした感想なので、すでにポストした感想は基本そのままです。その点はご容赦ください。 ・注意点1:その時の気分で書いているため、常体と敬体が入り混じっています。 ・注意点2:作品から想起したことを書いているため、作品とは直接関係ない話題に飛んでいることがあります。 リストの
古賀コン5に未完成原稿で参加しました。 え、未完成原稿? それってありなの? ありなんです。 募集要項にもちゃんと書いてあります。 それより大切なのは「1時間で書き上げた文章、優勝したら1万円」という賞のコンセプトであると思います。 この1時間の解釈は筆者にゆだねられており、いわゆる「俺1時間」で良いため構想をカウントしなかったり、プロット作成時間を除外したりして、「本文執筆(ひとによっては推敲含む)1時間なので1時間で書き上げました」としても問題ないわけで
即興創作のアプローチに一時間以内に書き切る〝ワンライ〟と呼ばれるものがある。私達が私立北崎高校文芸同好会に入ったとき、部長の冬菜先輩——静居冬菜先輩は名字で呼ばれるのを異様に嫌がる——から最初に出された課題がこれで、執筆の筋力を鍛えるのにうってつけなので、それから私達は言われなくてもときどきやっている。 放課後の部室に、電子的なアラームの音が鳴り響いた。 「タイムアップ」 「あ、あ、アディショナルタイム」 「時間過ぎたらアンタッチャブル」 「ですよねー」 私がそう言うと
はじめに 古賀コン4の作品を一通り読みました。その中でも個人的に印象に残った作品について、一言ずつ感想を書いてみました。「いや、それ一言じゃないだろ」という感想もあるかもしれませんが、それゆえの〝偏向的〟一言感想集です。 基本方針として、ポジティブな感想を書くことを心がけました。古賀コンのコンセプトは文化祭なので、いかに楽しめたかを述べることにしています。ファイトは別の機会に……ということでお願いします。 感想や評を書くのがあまり得意ではないので——というか苦手なので
これはなに? なにを書いても言い訳がましくなる。 古賀コン4に応募した『ラブレターの裏側に』は、冒頭部分約470字が抜けた状態で投稿していた。未練がましくもその旨をぼやいたところ、反応を頂いたので抜けた部分を補完したファイルも公開することにした次第。 いっそ直して出そうかと思ったけれど、そのままである。 本文 浅倉詩乃は「書き続けるために大切なことは常に忘れ続けることだ」と言った。過去にとらわれないこと。結果を引きずらないこと。前だけを向いて進むこと。光のあるほ
「青葉」 放課後。中庭で寝転がっていると、いつの間にか詩乃がかたわらに立っていた。縁にレースのついた真っ黒な日傘の作る陰が私にちょっとかかっている。 「はい、冷やした方が良いよ」 詩乃が差し出してきたのは、冷えたミネラルウォーターのペットボトルだった。その視線が私の左頬に注がれているのがわかる。 「もしかして。見てた?」 ペットボトルを受け取りつつ、そう問い掛けた。 さっきまでの光景が脳裏に浮かぶ。甲高い怒声を上げる女子、振り上げられる手と頬を張られて体勢を崩した自分
和泉香菜に日曜日はあって無いようなものだった。勤め人ではないので定休日が存在しないこともあるけれど、「この日はお休み」と決めて休もうとする日に限ってなんらかの連絡が入る。連絡に対応すると頭が休日モードから切り替わってなにかしら仕事をしてしまい、その日は休日にならない。 ダメだ、これではダメだ。 あるとき香菜は誰に言うとでもなくそう思い。完璧な日曜日を作ってみることにした。 完璧な日曜日。 人脈でもって生き抜いているような人生なので、当然根回しは済ませた上で、個人的な
顧みる/省みるのが下手くそだと思う。私はどちらかと言えばあれこれ考えすぎる質で、考えすぎるゆえに決断を鈍らせてしまったり詮無いことで懊悩してしまったりすることが多い。特に過去についてのこと、後悔が多い。そのくせ過去に対する反省や内省を文章化するのが下手くそで——苦手と言うよりは下手で——そのことを自覚して以来は日記やこうした備忘録をなかなか書くことができないでいる。 とはいえ、下手だの苦手だのと言って避けているといつになっても改善されないし、なによりいまBFC5(ブンゲイ
終わった作品(落選作)についてあれこれ書くのもいかがなものか、と思ったのですが、未来の自分のために少しまとめておくことにしました。 サクラクロニクルさんから詳細な感想を頂きました。ありがとうございます。 返信がX(Twitter)ではもはや追いつかないので、noteに自分の復習も含めて記事を書くことにしました。 ほぼ私信なのですが、『面影は消えない』の核心に触れるため、興味を持たれた奇特な方はお読みください。 サクラクロニクルさんがご自身のイグBFC4の作品と
インターホンが鳴った瞬間、楊春水は脳裏にひらめくものがあった。予感。読みさしの本に栞を挟み込み、寄りかかっていたベッドの上に放る。体を起こすついでにテーブルからスマートフォンを取り上げ、スウェットパーカーのポケットに突っ込んだ。 流し見た時刻は、二十時十九分。通知はない。 一瞬だけ考えてヘアゴムを手首から外し、髪を簡単に左右でまとめながら部屋を三歩でまたいで、キッチン手前の壁面にあるインターホンの受話器を取った。 「ハイ」 日本に留学して二年と少し、まだちょっとしたと