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バック・トゥ・ザ・ニャーチャー

猫のニャーティ・キャットフライにとって、夜は探検の時間だ。闇が広がるほどに、彼の心はざわめき、未知の世界がその前に広がる。今夜もまた、飼い主であるドク・ニャウンの実験室の扉がわずかに開いていた。まるで闇の中でしか見えない星がそこに輝いているかのような、不思議な光が机の上から洩れている。ニャーティは鼻をひくひくさせ、その光に引き寄せられるように歩み寄る。シルバーのボディに青白い光がちらつくその装置は、猫の瞳に妖しく映り込んでいた。どこか別世界の匂いがする……彼はそう感じた。猫という生き物にとって、未知の匂いこそが誘い水。好奇心を押さえきれず、ニャーティは肉球をぴたりと装置の表面にあてた。

瞬間、装置は静かな唸り声をあげ、周囲の空気が一変した。ふわりと浮かび上がる感覚、まるで重力が消え、闇の中へ吸い込まれていくようだ。目を開けると、そこは懐かしい匂いの漂う庭。だが、彼の知らないはずの風景が広がっていた。ニャーティは頭をひねる。「まさか、自分が時空を超えてしまったのかニャ?」

彼の前方、遠くからかすかに聞こえてくる飼い主の若い声。「明日は新しい実験を試してみよう」。どうやらニャーティは過去にタイムスリップしてしまったらしい。

ニャーティは過去の飼い主に気づかれないよう、そっと影に隠れた。しかし、その時ふと気づく。お腹が空いていることに。タイムトラベルのエネルギー源である「煮干し」が必要だ。だが、過去の煮干しは未来に戻るためのエネルギーとして使えないとしたら、どうすればいいのか。

「困ったニャ……」と呟きながらも、彼は家の中を探索し始めた。台所には確かに煮干しのストックがある。だが、それを消費してしまうと未来に影響が出るかもしれない。さらに、過去の自分——まだ出会っていない「小ニャーティ」が現れる可能性もある。

その時、ニャーティは妙案を思いつく。過去の飼い主に匿名のメッセージを残すことだ。彼は紙とペンを探し、「煮干しを隠しておくと良いことが起きるニャ」と不格好な字で書き残した。それを飼い主の机の上にそっと置く。

翌朝、飼い主はそのメッセージを見つけ、不思議に思いながらも煮干しを別の場所に隠した。その結果、小ニャーティが煮干しを見つけることはなかった。

時間が経ち、ニャーティは未来と過去を行き来しながら、煮干しの管理と飼い主との出会いを調整していた。しかし、装置のエネルギーが底をつき、過去に取り残される危機に陥る。

「これが運命なのかニャ……」と諦めかけたその時、過去の飼い主が新たな装置の試作品を完成させる。ニャーティはそれを使って未来に戻れるかもしれないと考え、飼い主の元へ向かう。

しかし、飼い主に近づいた瞬間、彼はニャーティに気づき、優しく抱き上げた。「君はどこから来たんだい?」と。その瞬間、ニャーティは理解した。自分が過去の飼い主と出会うことで、未来の絆が生まれるのだと。

飼い主はニャーティを家に迎え入れ、二人の生活が始まる。ニャーティは心の中で「これで良かったのかもしれないニャ」と呟く。

しかし、物語はここで終わらない。実はニャーティが未来に戻った時、家にはもう一匹の猫がいた。それは過去の自分、つまり小ニャーティだった。驚くニャーティに飼い主は微笑んで言った。「新しい家族が増えたんだよ。君たち、仲良くするんだよ」。

全てはニャーティ自身が作り出したタイムパラドックスだったのだ。未来と過去が交錯し、新たな絆が生まれた。ニャーティは二匹の自分と飼い主との生活がこれからどうなるのか、胸を躍らせながら思い描いた。


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