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【SF短編小説】 書庫 #毎週ショートショートnote 「書庫冷凍」
※本文410文字です。「石板」と対作品です。よろしければぜひ…
「あれが書庫だ!」
案内のジャンルークがアリシャに顔を向け前方を指差す。
250年前の巨大隕石の衝突により、隕石の冬が数年続き、街全体が冷凍庫のように氷に閉ざされた。
近年の地殻変動と気温上昇で、ある科学者の凍結していた書庫が顔を出し、彼の末裔であるアリシャが確認のためにこの地を訪れた。
扉を慎重に開ける。羊皮紙、和紙、パルプ紙、USBやHDDなどの記録メディア…そこには多種多様な記録媒体が眠っていた。
羊皮紙と和紙の一部に僅かに文字が残っていたが、ほとんどのデータは低温と水没に耐えられず、失われていた。
『ダメね…何もない…』
落胆しかけた時、ドリルで文字が彫られた石板に気づく。
『原点を忘れるな。失うことがあれば、必ず原点に立ち返る。原点は決して手放すな。ファルーク・シャンドラン』
アリシャは文字をそっと指でなぞる。
『これで十分。』
石板を抱え静かに立ち上がる。
そして振り返ることなく、彼女は書庫を後にした。
(本文410字)
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こちらの企画に参加させていただきました。楽しい企画をありがとうございます。
アリシャは私が書いているSF長編小説ユニオノヴァ戦記の登場人物ですが、アリシャの孫のヴィクトル編を展開中のため、直近では次のストーリーの冒頭に年老いた姿で出てきます。
アリシャ編は、ヴィクトル編の次に来るので、若いアリシャの登場はまだ先ですが、ちょうど凍結した書庫でエピソードが近いので、書いてみました。
よろしければこちらもお願いします。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。