キップル

99年生まれ。SF小説と映画を楽しむ者。 伊藤計劃からSFにハマって、ヴァーリィとギブスンがお気にいり。 映画はなんでも見る。けどハリウッド多め。リドスコ、ヴィルヌーブが好き。 ゲームクリエイターの小島秀夫監督も好き。

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99年生まれ。SF小説と映画を楽しむ者。 伊藤計劃からSFにハマって、ヴァーリィとギブスンがお気にいり。 映画はなんでも見る。けどハリウッド多め。リドスコ、ヴィルヌーブが好き。 ゲームクリエイターの小島秀夫監督も好き。

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  • 映画時評2024

    2024年に劇場公開した映画のレビュー記事をまとめたものです。

  • 《書評》SF小説

    “テクノロジーが社会と個にどのような作用を及ぼすのか、そして社会はテクノロジーをどのようにかたちづくるのかというダイナミクスのもつ面白さ”

  • 主流文学

    非SF、主流文学に関する書評、感想など。

  • マンガ体験記

    洋の東西を問わず、マンガ、コミック、バンド・デシネ、なんでも読んだ感想をここに置いておきます。

  • 一号アンテナ

    最近気になったコンテンツをビームするアンテナ。周波数が合う人はぜひ受信を。

最近の記事

『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』をみる

早朝のイオンシネマで鑑賞してきました。 時間的にIMAXしか上映しておらず、望外に豪華な鑑賞に。 歴史的な一作である『ジョーカー』の続編として、監督のトッド・フィリップスと脚本家のスコット・シルバーが続投、一作目をどういうふうに更新するのか、非常にたのしみだった。 公開初週に集まった感想はやや否定的な感想が多いようで、遅れて見にいくぼくは惑わされないように、気を引きしめて座席に腰をおろした。 がしかし、満足のいく続編とは言えなかったのが正直な感想だった。 このガッカリ感

    • 『シビル・ウォー アメリカ最後の日』をみる

      おひさしぶりです。3週間ぶりくらいの更新でございます……。 最近はマクニールの『疫病と世界史』『戦争と世界史』などを読んで、世界史の勉強をしていましたとさ。 SF小説はブラッドベリの『火星年代記』とル=グィンの『世界の誕生日』が手元にあって積読本に。 ひと段落したら読みたい。 それで本題は映画です。 もう公開して何週かたってますがアレックス・ガーランド×A24の新作『シビル・ウォー アメリカ最後の日』を見てきましたので、それの話をしたいと思います。 (副題がダサいと思うの

      • 『最後にして最初の人類』を読む

        この本が書かれたのは1930年のことで、今からすると94年も前の小説になるようです。 第一次世界大戦が終わって、ナチスが台頭し始める、間くらいの時代ですね。 小説のなかでも触れていますが、アメリカの勢いも目覚ましい時代だった。 小説の内容は驚嘆すべきもので、われわれのことである「第一期人類」から進化した「第十八期人類」までの20億年の未来史が描かれる。 ここまで壮大な話は、ステープルドン自身による『スターメイカー』以外にはないのでは? 『三体』にしても、一人類の話ということ

        • 『エイリアン:ロムルス』をみる

          エイリアンシリーズの最新作は、良くいえば集大成的作品でウェルメイドなSFホラー。悪くいえば、過去作の良いとこどりで、シリーズに何もつけ足さない作品だ。 監督のフェデ・アルバレスが考えたのは、ずばり過去作のオマージュで原点回帰。 原点回帰というと聞こえはいいですが、それは後退ともとられかねないものだ。 ストーリーは、地球から遠く離れた惑星で、奴隷労働をさせられている炭鉱労働者の若者たちが別の惑星に脱走しようとして、エイリアンが襲ったあとの宇宙ステーションにやってくるが、例の

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        記事

          『百年の孤独』を読む

          文庫化で話題の『百年の孤独』読んできました。 ラテンアメリカの文学がベストセラーに踊りでるというのは、なかなか興味深い現象ですね。 でも本当のところ、この本はマジックリアリズムという文学的手法の実験性が評価されている小説でもあると思うけど、ラテンアメリカの読者からは、抱腹絶倒、愉快千万でどこかノスタルジーを刺激する、娯楽小説として受け入れられたのだという。本質は痛快な娯楽小説なのです。というより古典的なのでしょう。 少なくとも実験的で、難解な印象はありません。 読書のネック

          『百年の孤独』を読む

          鶴田謙二をよむ

          鶴田謙二先生のマンガは『おもいでエマノン』のコミカライズがもっとも有名でしょうか。 イラストレーターとしても活躍していて、SF小説の表紙を多く手がけていますから、SF好きのあいだで認知度が高い作家ですね。 急遽『Spirit of Wander』の新装版が発売されることを知り、このタイミングで、鶴田謙二作品をこのさい一気に読もうと決意し、あわてて新作旧作、まとめて買った。 今日はマンガをざっと紹介したり、感想したり。 Spirit of Wander『Spirit of

          鶴田謙二をよむ

          【映画時評】箱男

          ぼくがメタルギアソリッドのファンなので、『箱男』といえばスネークだ。 敵兵から身をかくすために、ダンボールをかぶってやりすごす特殊工作員の姿は、シュールでまぬけっぽく、象徴的で、絵面のインパクトがとにかく笑える。 そしてこれはすべて安部公房の小説からきているものだった。 本作は安部公房の原作のなかでも、わりかし実験的な小説になると思う。少なくとも『砂の女』よりむずかしい。 むずかしいというか、終盤でだれが主人公なのか視点人物がわからなくなってしまうので読んでいて混乱する。

          【映画時評】箱男

          『鈴木敏夫とジブリ展』かれの本棚のはなし

          この企画展、いちおう“ジブリ展”ではあるけど、ジブリの原画とかが展示されているような展覧会ではありません。 宮崎駿や高畑勲といったアニメ界の巨匠をプロデュースしたジブリの右腕、鈴木敏夫の企画展なのです。 ぼくの印象は『庵野秀明展』の感じに近かった。 その人の制作物を展示するのではなく、その人が影響を受けたもの、好きなものを並べて、人物像に迫ろうというコンセプトです。 しかし庵野監督と違って鈴木敏夫は、思春期に触れたコンテンツが特撮やアニメではなく、文学や映画だった。 だから

          『鈴木敏夫とジブリ展』かれの本棚のはなし

          『ブルーピリオド』『空気の底』『ソイレントグリーン』の話

          今週見たやつの感想です。 実写版『ブルーピリオド』原作は山口つばさ先生によるアフタヌーンで連載中のマンガ作品。 ブルーピリオドとは、ピカソの『青の時代』のこと。 まだ何者でもない高校生の男の子が、アートに出会い、東京藝術大学の受験を決意する話。マンガは受験後もストーリーが続く。 マンガの実写化としては悪くないほうで、妙なコスプレ感はない。強いていうなら龍二くんの存在がぎりぎりのラインか。 脚本も、逸脱はなく原作の要素をうまく省略したり、組み合わせたりしたものだ。 映画につ

          『ブルーピリオド』『空気の底』『ソイレントグリーン』の話

          マンガ体験記『藤子・F・不二雄SF短編コンプリート・ワークス』

          F先生の提唱するSF(すこしふしぎ)は、ルーツをたどれば、ロバート・シェクリィやフレドリック・ブラウンといった欧米作家によるショートショートの作風にもとめられるのでしょう。 SF短編を読みはじめる前のぼくの印象は、短いページで奇想天外なアイデアを紹介するような、そんなマンガを想像していた。 しかしその思いとは裏腹に、アイデアを超えて、人間の本質をつく巧みな展開に目をみはった。いくつかの短編は、信じられないほどよくできていると思う。 すべての作品を紹介すると膨大なものになっ

          マンガ体験記『藤子・F・不二雄SF短編コンプリート・ワークス』

          【映画時評】インサイド・ヘッド2

          思えばヨロコビ以外の感情はだいたいすべて、ネガティブな感情だ。 イカリ、カナシミ、ビビリ(恐怖)、ムカムカ(嫌悪感)。 思春期をむかえたライリーのもとにはさらに、シンパイとイイナー(羨望)ダリィ(アンニュイ)ハズカシが大挙して押しよせ、リーダーであるヨロコビを追放して、ライリーを操縦しはじめる。 ストーリーは、さまざまな記憶のボールからめばえた撚り糸があわさって、ライリーの人格を形成している「ジブンラシサの花」をつみとられ、“記憶のはずれ”に捨てられてしまったのを、ヨロコ

          【映画時評】インサイド・ヘッド2

          『フォールアウト』そのほか映画とマンガの話

          今週観測したコンテンツの記録。 完全版 殻都市の夢外殻都市と呼ばれる、階層都市を舞台にしたオムニバスSFマンガ。 警察官のバディふたりがメインの登場人物で、さまざまな事件に出くわすというもの。 作者は『ぼくらの』『なるたる』、そしてエヴァ破の冒頭に出てくる使徒をデザインした方、鬼頭莫宏。 連載はマンガ・エロティクス・エフで2003年から2005年にわたって掲載されたもので、本書はその完全版。 旧版の全7話にくわえ、書き下ろしの新エピソードが追加。 エロティクス・エフ連載

          『フォールアウト』そのほか映画とマンガの話

          五年ぶりの『ヒストリエ』と映画『フェラーリ』

          今週は『ヒストリエ』と映画『フェラーリ』の週。 最後に来週にみたい映画のセルフ予告。 100分de復習『千の顔を持つ英雄』NHK100de名著で『千の顔をもつ英雄』が取りあげられてたので、第3回まで見てみました。4回は来週月曜。 どんな内容の本かというと、古今東西の神話を比較研究し、その中から共通のプロットを抜き出してまとめたというもので、神話のメタファーを解読して隠された意味を明らかにするという内容のもの。 ゲストの講師は神話学の専門家ではなく経営コンサルタントで、本

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          BRUTUSのSF特集、注目の本と映画

          ふだんは本と映画の感想を書いている本note。 そのなかには分量的に記事にするには今ひとつだなと思うものがあり、発表を見送った記事が多々ある。 ですがヨイ映画、ヨイ本は拡散して、ウイルスのように他人を感染させたいと思うのが、オタクの有り様というもの。 なので今回まとめて、自分がいま注目している本と映画、そのほかの話題を一斉に放出したいと思います。 BRUTUS「夏は、SF特集」雑誌BRUTUSによるSF特集。表紙は「ドラえもん」 なんの素材なのか名前がわかりませんが、ツ

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          マンガ体験記『龍子』エルド吉水

          最近ビビッときたマンガがあったので、みんなにも読んでもらいたく記事で共有。 〈出版事情〉フランスから日本へエルド吉水の『龍子』は、2010年に作者が自費出版したマンガで、その後2016年にフランスで出版、さらに逆輸入という形でリイド社のトーチWebが掲載、2023年、日本で出版が果たされたというやや特殊な漫画。 フランスからの逆輸入という形では、ジャンプ+の『リヴァイアサン』、ヤンマガの『虎鶫』など、AC メディア社の「キューン」なんか個人的に存在があって、東京に出版社が

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          書評『砂漠の救世主』『砂丘の子供たち』新訳版

          ヴィルヌーブ版の『デューン PART2』を無事、劇場鑑賞した私は、冷めやらぬ熱気のまま、映画の続きであるフランク・ハーバートの原作小説『砂漠の救世主』と『砂丘の子供たち』の新訳版を手に取ったのであった。 ハルコンネン家とシャッダム4世の陰謀を打倒し、新たに皇帝となったポール。 映画はそこで幕を閉じるが、原作ではさらにポールのその後が描かれる。 ハーバートはデューンシリーズを『砂丘の子供たち』までの三部作で一区切りとしており、もともと三部まで書かれる物語だったのだ。 映画が消

          書評『砂漠の救世主』『砂丘の子供たち』新訳版