読書ノーツ

高校・大学時代は山岳部。趣味は登山・読書です。 「愛(love)」がたっぷりで、面白いと思った本を投稿します。 守備範囲は文学とSF、そしてエンターテインメントです。

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マガジン

  • 「愛(love)」を感じる文学作品

    読んで、深い「愛(love)」を感じた文学作品です。

  • ヨーロッパ的な本

    私の主観なのですが、ヨーロッパ的な本を集めました。

  • 「愛(love)」を感じるSF作品

    読んで、深い「愛(love)」を感じたSF作品です。あたたまりました。

  • アメリカ的な本

    私の主観なのですが、アメリカ的な本を集めました。

  • 日本的な本

    私の主観なのですが、日本的な本を集めました。

最近の記事

ヤスミナ・カドラさんの世界を理解するために「部族の誇り」

<文学(192歩目)> ヤスミナ・カドラさんの世界を理解する道しるべになる作品2。マグレブ(アルジェリア、モロッコ、チュニジア)の文化が見えてきました。 部族の誇り (叢書〈エル・アトラス〉) ラシード・ミムニ (著), 下境真由美 (翻訳) 水声社 「192歩目」は、ラシード・ミムニさんによるマグレブ諸国、特にアルジェリアの伝承の世界。 この作品は、ヤスミナ・カドラさんの「昼が夜に負うもの (ハヤカワepi ブック・プラネット)」を読む際に、どうしても理解不足で悶々と

    • 優しさに心が満ち溢れた「千個の青」

      <SF(191歩目)> 心があたたまるSF作品で、読後感素晴らしいです!! 千個の青 チョン・ソンラン (著), 坂内拓 (イラスト), カン・バンファ (翻訳) 早川書房 「191歩目」は、チョン・ソンランさんの涙腺を突く落涙確実の作品。 ロボット騎手・コリーの目に映る世界の瑞々しさが非常に鮮烈に伝わってくる。なんか「クララとお日さま カズオ・イシグロ」を読んだ時と同じく、自然と涙が流れる。女子高生をずっと応援しつつ、廃棄直前のロボット騎手コリーの感覚に涙しました。

      • ヤスミナ・カドラさんの世界を理解するために「移民の記憶: マグレブの遺産」

        <文学(191歩目)> ヤスミナ・カドラさんの世界を理解する道しるべになる作品。戦後フランスの経済成長期を支えたマグレブ(アルジェリア、モロッコ、チュニジア)移民たちが直面した困難な現実を、作者自身の両親の世代、自身が属する次世代の三部構成で可視化しています。 移民の記憶: マグレブの遺産 (叢書〈エル・アトラス〉) ヤミナ・ベンギギ (著), 石川清子 (翻訳) 水声社 「191歩目」は、ヤミナ・ベンギギさんによるノンフィクションに近い作品。 「カブールの燕たち (ハ

        • ナウシカ設定のあたたかい作品「地球の果ての温室で」

          <SF(190歩目)> 「ダスト」と呼ばれる有害物質に半壊してしまった世界はまるでナウシカ。なんか、映像化される予感。それも美しく。 地球の果ての温室で キム・チョヨプ (著), カシワイ (イラスト), カン・バンファ (翻訳) 早川書房 「190歩目」は、キム・チョヨプさんの愛を感じる美しい物語。 物語はSF設定ですが、情緒的でもの悲しさがある。 それが、私たちの感情とすごく親和性あり。隣の国であり、心のどこかで文化を共有している感じがします。 あたたかい余韻と美

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        • ヨーロッパ的な本
          119本
        • 「愛(love)」を感じる文学作品
          192本
        • 「愛(love)」を感じるSF作品
          191本
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          108本
        • 日本的な本
          69本
        • ロシア・東欧的な本
          54本

        記事

          独裁者を目にしたら「ライオンを殺せ」

          <文学(190歩目)> 重たいことも、ちょっと笑えるように展開させていく。これは素晴らしい技です! ライオンを殺せ (フィクションのエル・ドラード) ホルヘ・イバルグエンゴイティア (著), 寺尾隆吉 (翻訳) 水声社 「190歩目」は、ホルヘ・イバルグエンゴイティアさんによる乾いた笑いの出る、独裁者物語。メキシコの感性だと思いました。 「88年に及ぶ英雄的独立戦争の末、1898年にアレパは独立国となった。独立戦争最後の生き残りで、《独立戦争の英雄少年》として名高い陸軍

          独裁者を目にしたら「ライオンを殺せ」

          やはり素晴らしい「最後のライオニ」

          <SF(189歩目)> 「最後のライオニ」は素晴らしいが、それ以外もイケている。今の韓国SFの底力を感じました。 最後のライオニ 韓国パンデミックSF小説集 キム・チョヨプ (著), デュナ (著), チョン・ソヨン (著), キム・イファン (著), ペ・ミョンフン (著), イ・ジョンサン (著), 斎藤真理子 (翻訳), 清水博之 (翻訳), 古川綾子 (翻訳) 河出書房新社 「189歩目」は、韓国パンデミックSFアンソロジー。 私は、キム・チョヨプさんの「最後のラ

          やはり素晴らしい「最後のライオニ」

          サンティアゴ巡礼のために「サンティアゴへの回り道」

          <文学(189歩目)> とても素晴らしいサンチャゴ巡礼の旅行記。目に浮かびます。 サンティアゴへの回り道 セース・ノーテボーム (著), 吉用宣二 (翻訳) 水声社 「189歩目」は、セース・ノーテボームさんによるスペイン巡礼の旅行記。 セース・ノーテボームさんは、オランダ人作家でノーベル文学賞を期待されています。以前に「これから話す物語 新潮社」を読み、注目していたノーテボームさんの紀行文。 あ~、同じところを見ていても、感じ方が異なるのだなぁと強く感じました。でも

          サンティアゴ巡礼のために「サンティアゴへの回り道」

          心温まる短篇集「となりのヨンヒさん」

          <SF(188歩目)> 心があたたまるSF作品で、私はチョン・ソヨンさんは初めてですが、SF設定でどんな社会問題も切り出せる才能を感じました。 となりのヨンヒさん チョン・ソヨン (著), 吉川 凪 (著) 集英社 「188歩目」は、チョン・ソヨンさんの短篇集で、SF体温が私たちと同じです。読んで読後感がいいです。 SF設定は、考えられている。しかし、それ以上に登場人物が奇妙な状況に迷いながら対応していくところが好感持てます。 すごく洗練された頭脳で考えられているが、そ

          心温まる短篇集「となりのヨンヒさん」

          フィリップ・K・ディックさんの『高い城の男』以上に強烈「鉤十字の夜」

          <文学(188歩目)> この作品は、フィリップ・K・ディックさんの『高い城の男』と同じく、第二次世界大戦がドイツと日本の勝利になった場合の仮想小説です。 特筆すべきは、1937年に描かれていて、ディックさんに四半世紀先行していることです。 鉤十字の夜 キャサリン・バーデキン (著), 日吉信貴 (翻訳) 水声社 「188歩目」は、キャサリン・バーデキンさんによる西暦2600年の世界。ぞくぞくするディストピア社会です。 「1984年 ジョージ・オーウェル(1949年刊行)

          フィリップ・K・ディックさんの『高い城の男』以上に強烈「鉤十字の夜」

          読みやすいが、難しいフィリップ・K・ディックさんの世界「フロリクス8から来た友人」

          <SF(187歩目)> ディックさんが感じていた50年前のディストピア社会。ちょっと怖いです。 フロリクス8から来た友人 フィリップ・K・ディック (著), 大森望 (翻訳) 早川書房 「187歩目」は、フィリップ・K・ディックさんによるディストピア社会を描いたSF作品。 ただし、ディックさんがSF作家として地位を確立されているからSFテイストで描いただけで、本質的にディックさんが感じていた行きつくところまでいった世界の恐怖を描いている。 商業的に成功させる制約の中で

          読みやすいが、難しいフィリップ・K・ディックさんの世界「フロリクス8から来た友人」

          知らなかったインド東北部の輝く才能「そして私たちの物語は世界の物語の一部となる」

          <文学(187歩目)> このアンソロジーは、インドの北東部を知らない、関心がない人でも読めて、感動できる素晴らしいアンソロジーです。 出遭えてよかったです。 そして私たちの物語は世界の物語の一部となる: インド北東部女性作家アンソロジー ウルワシ・ブタリア (編集), 中村唯 (監修) 国書刊行会 「187歩目」は、ウルワシ・ブタリアさんによるインド北東部の8州の女性作家のアンソロジー。 私にとって初めての地域の、初めて出会う才能。 素晴らしかったです。 インドの国土の

          知らなかったインド東北部の輝く才能「そして私たちの物語は世界の物語の一部となる」

          とてもいい感じのアンソロジー「宙を数える 書き下ろし宇宙SFアンソロジー」

          <SF(186歩目)> 文庫創刊60周年記念にふさわしい、いい出会いありのアンソロジー。 宙を数える 書き下ろし宇宙SFアンソロジー 高山 羽根子 (著), 酉島 伝法 (著), 理山 貞二 (著), オキシタケヒコ (著), 宮西 建礼 (著), 宮澤 伊織 (著), 東京創元社編集部 (編集) 東京創元社 「186歩目」は、東京創元社の宇宙SFアンソロジー。 オキシタケヒコ「平林君と魚の裔」 宮西建礼「もしもぼくらが生まれていたら」 酉島伝法「黙唱」 宮澤伊織「とき

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          ジョージ・ソーンダーズさんの多才さがわかる「十二月の十日」

          <文学(186歩目)> 「短くて恐ろしいフィルの時代」が面白いと思って、手に取ったら、いろいろな作風を自在に描く多才さを知りました。 十二月の十日 ジョージ・ソーンダーズ (著), 岸本佐知子 (翻訳) 河出書房新社 「186歩目」は、「短くて恐ろしいフィルの時代」のジョージ・ソーンダーズさんが非常に多才なことを知った短篇集です。 ユーモアのセンスが素晴らしい。そして、なんか自分自身を彷彿させるダメ人間のオンパレード。とても面白い。 「スパイダーヘッドからの逃走」 近

          ジョージ・ソーンダーズさんの多才さがわかる「十二月の十日」

          やっぱり引き込まれてしまった「無常の月 ザ・ベスト・オブ・ラリイ・ニーヴン」

          <SF(185歩目)> 「ノウンスペース」(ラリー・ニーヴンさんのSF設定)シリーズは、外さないですね。クジン人、パペッティア人。 無常の月 ザ・ベスト・オブ・ラリイ・ニーヴン ラリイ・ニーヴン (著), 小隅黎 (翻訳), 伊藤典夫 (翻訳) 早川書房 「185歩目」は、「リング・ワールド」のラリー・ニーヴンさんのベスト短篇集。 やはり素晴らしい。「リング・ワールド」で胸が熱くなった時を思い出した。久しぶりの「ノウンスペース」シリーズは、やはり胸が熱くなる。 「帝国

          やっぱり引き込まれてしまった「無常の月 ザ・ベスト・オブ・ラリイ・ニーヴン」

          読めてよかった「文化の脱走兵」、「理不尽ゲーム」「赤い十字」「手紙」の背景を知ることできました

          <文学(185歩目)> 「理不尽ゲーム」「赤い十字」「手紙」を読んだ時から、翻訳者の奈倉有理さんが翻訳に取り組まれる時に感じたことが知りたかった。 読めてとてもよかったです。 文化の脱走兵 奈倉 有里 (著) 講談社 「185歩目」は、翻訳者の奈倉有理さんのエッセイ。 「留学中のガリーナ先生の、「〇〇人」でないところに、その人の本質がある。」との見方。とても同意できる。 「留学中の同部屋の友人の恋人から、好きなものが同じだと顔が似てくる」との見方にも、とても同意できる

          読めてよかった「文化の脱走兵」、「理不尽ゲーム」「赤い十字」「手紙」の背景を知ることできました

          多彩な才能ってあるんですね。。。「わたしは孤独な星のように」

          <SF(184歩目)> 「美しい世界」へいざなわれました。きのこ感覚はとてもユニークです。 わたしは孤独な星のように 池澤 春菜 (著) 早川書房 「184歩目」は、日本SF作家クラブの前会長の池澤春菜さんの短篇集。 経歴から多彩な才能を感じていたが、7篇がすべて違う手法で多彩さに驚いた。 色々な作風を描ける、池澤さんならではの作品でした。 不思議な雰囲気、美しく引き込まれる。 「糸は赤い、糸は白い」 胞子の感覚が鋭い。登山の最中に出遭ったきのこにいつもこの感触を感

          多彩な才能ってあるんですね。。。「わたしは孤独な星のように」