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タイムワープは理論的に可能なの?ーー東大出身の理学博士が素朴で難しい問いを物理の言葉で語るエッセイ「ミクロコスモスより」㊵
先生:相対性理論を使えば、未来へ行くことは出来ますよね。 生徒:異なる速度で運動する時計同士はズレるというものですよね。 先生:東京からリニアモーターカーに乗れば、1010分の1秒だけ未来の大阪に遊びに行けますよ。 生徒:そういうことなのかなぁ......。 先生:もっと未来に行きたいのなら、もっと速く動けばいいだけですよ。光の速度に近づけば近づくほど、どんどん時間のずれは大きくなっていきますからね。 生徒:時間移動で需要があるのって、むしろ過去の方じゃないですかね
過小評価されているシューベルト作品から「過大評価されている楽曲」まで<前編>ーー東大出身の理学博士が素朴で難しい問いを物理の言葉で語るエッセイ「ミクロコスモスより」㊲
一ピアノ弾きとして、シューベルトのピアノ作品に対する評価の低さには常に違和感を抱いています。 よくある批判として「手の動きを考えておらず弾きにくい」「冗長で退屈」が挙げられます。 確かにシューベルトのピアノ作品は演奏効果が低い割には極めて弾きにくく、息の長い旋律を何度も繰り返す癖があります。 しかし、こういった批判は演奏効果を最優先する観点からのものであり、楽曲自体の評価としては的外れと言わざるを得ません。 シューベルトの音楽の冗長性は、その歌曲的な性質が多分に寄与し
半導体には量子力学が詰まっているーー東大出身の理学博士が素朴で難しい問いを物理の言葉で語るエッセイ「ミクロコスモスより」㊷&🌟🌟告知🌟🌟
半導体とは 誰もが電気製品を所有する時代、昨今の半導体不足は一般家庭にとっても看過できない出来事でしょう。 そもそも「半導体」という単語は二つの意味合いで用いられており、高度な演算に必要な電子回路である「半導体素子」を指す使い方が一般的ですが、本来はその半導体素子を形作っている素材のことを言います。 「半導体」はその名の通り、「導体」(電気を通す物体)と「不導体」(電気を通さない物体)の中間の性質を示すもののことを呼びます。 導体に電圧を掛けると必ずその大きさに比例した電
日付変更線をまたいでいる人の「時間」はどうなる?ーー東大出身の理学博士が素朴で難しい問いを物理の言葉で語るエッセイ「ミクロコスモスより」㊴
現在、世界の時刻は「協定世界時(UTC)」を基準に定められており、地球がほぼ24時間(これを1日と呼んでいます)で一周分自転をするため、地域ごとに適切な時差が付けられています。 さらに、地球は太陽の周りをほぼ365日(これを1年と呼んでいます)かけて一周分公転しますが、公転の中で現在どこの場所に相当するかを明確にするために「日付」の概念が使われます。 日付の原点をグリニッジ天文台に取ると、地球の反対側は時刻がちょうど半日分ずれることになります。 日付変更線の役割 さ
引き寄せの法則は科学的に実証できる?<後編>ーー東大出身の理学博士が素朴で難しい問いを物理の言葉で語るエッセイ「ミクロコスモスより」㉟
引き寄せの法則を科学的に実証できるか検証する回🌔 今回は後編です。 前編はこちらから 前回の最後 ここから後編です ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★ でも、「(必ず成り立つ)引き寄せの法則」を作ることは出来る しかし、こんな結論に帰着してしまえば、熱心な「引き寄せの法則」信者からの反感を買ってしまうこと間違いなしです※5。 そこで、なんとか「『引き寄せの法則』は正しい」という主張を成り立たせるために、工夫を試みましょう。 例えば、「引き寄せの法則」が矛
引き寄せの法則は科学的に実証できる?<前編>ーー東大出身の理学博士が素朴で難しい問いを物理の言葉で語るエッセイ「ミクロコスモスより」㉞
こちらは第8回で紹介した、「引き寄せの法則を数式であらわすと?」をもとに、引き寄せの法則を別のアプローチから前後編2回にわたって検証していきます。 引き寄せの法則 巷でかつて話題になった、「引き寄せの法則」というものがあります。 ポジティブなことを考えているとそれが現実になるといった趣旨の思想で、ポジティブシンキングを心掛けることの重要性を説く考え方です。 これを日々の心がけとして留めておくのは立派なことですが、問題は、これがあたかも科学的に実証された自然現象であるかのよ
過小評価されているシューベルト作品から「過大評価されている楽曲」まで<後編>ーー東大出身の理学博士が素朴で難しい問いを物理の言葉で語るエッセイ「ミクロコスモスより」㊳
前編はこちらから 「過大評価されている楽曲」 裏を返せば、人気のある楽曲というのはポイント3「キャッチ―なフレーズ」が必ず入っています。 人間は聞き慣れたもの、聞き馴染みのあるものに親近感を抱くため仕方がない事である一方、この濫用によって楽曲が実際の面白さに対して過大評価されてしまうという現象は否めません。 日本で知らない人はいないであろう、フレデリック・ショパンのノクターンop.9 no.2。この曲が始めから終わりまでずっとキャッチ―であるのは言うまでもありません。
ピアノが上手な人は、なぜ上手なのか。物理的に考えると?<前編>ーー東大出身の理学博士が素朴で難しい問いを物理の言葉で語るエッセイ「ミクロコスモスより」㉗
「子供に習わせたい習い事」としていつも上位に挙げられるのがピアノです。そのためか、世間には数多のピアノ教室があり、ただ楽しく弾くことを目的とした教室から、最初からプロを目指してスパルタ教育をする教室まで様々です。誰しも最初は練習によってピアノが上手になると信じてレッスンに通い始めるわけですが、そもそもピアノが上手いというのはどういうことを意味するのでしょうか? 「ピアノが上手い」と言われる人たちはたくさんいますが、「どのように上手いか」は千差万別です。例として、20世紀を代