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圧縮性流体における物理を知ること -2-

物質の三態における「液体」「気体」を総称した表現(流体)の力学的特性を見るための学問を「流体力学」と言います。流体力学は固体力学と同様に連続方程式、運動方程式、そしてエネルギー方程式を支配方程式に有します。

流体は理想形態として完全流体(理想流体)や粘性流体、圧縮性流体(逆説として非圧縮性流体)が存在します。

今回は「圧縮性流体」に関する物理を見ていくことにします。圧縮性流体は運動に伴う流体の圧縮や膨張を考慮します。

前回は有限振幅の密度波(衝撃波)を規定して、圧縮性流体の概要を示しました。今回は弱化傾向を有する衝撃波を取り上げ、さらに粘性と熱伝導性を考慮した場合の物理を見ていきます。


弱化傾向の衝撃波の支配方程式

今回は粘性と熱伝導性を考慮した場合の平面波(単軸方向の進行速度としてuを指定します)を考えます。まず、平面波を前提とした連続方程式と運動方程式は次の通りです。

$${\frac{\partial \rho}{\partial t}+u\frac{\partial \rho}{\partial x}+\rho\frac{\partial u}{\partial x}=0}$$

$${\frac{\partial u}{\partial t}+u\frac{\partial u}{\partial x}+\frac{1}{\rho}\frac{\partial p}{\partial x}=\frac{1}{\rho}\frac{\partial}{\partial x}\Big\lbrace{\big(\frac{4}{3}\mu+\chi\big)\frac{\partial u}{\partial x}}\Big\rbrace}$$

ここで、$${\chi}$$は体積粘性率、$${\mu}$$は粘性率です。

また、エントロピーSによるエネルギー方程式はラグランジュ形式の時間微分を用いて、次の通りになります。

$${T\rho\frac{DS}{Dt}=\Big(\frac{4}{3}\mu+\chi\Big)\Big(\frac{\partial u}{\partial x}\Big)^2+\frac{\partial}{\partial x}\Big(k\frac{\partial T}{\partial x}\Big)}$$

ここで、kは熱伝導率です。連続方程式と運動方程式の左辺は非線形項は衝撃波の突起を引き起こします。また、右辺の散逸項による拡散効果を含めることで、突起に起因した波の形状の崩壊を妨げることに貢献します。

これにより、最終的に弱化傾向を有する衝撃波の定常波形を作り出します。

粘性と熱伝導性を考慮した定式化

速度や密度の変動に関する非線形項が、最低次の散逸項と釣り合う場合を考えます。前述の方程式について、右辺の体積粘性率と粘性率と熱伝導率を静止状態の物性値(ゼロの添字を付けます)に置き換えることができます。

特に、エネルギー方程式は右辺の粘性散逸項は高次の微小量であるため、実質的に無視します。

$${T\frac{DS}{Dt}=\frac{k_0}{\rho_0}\frac{\partial^2 T}{\partial x^2}}$$

ここでは流体の粘性と熱伝導性を導入しており、エネルギー方程式は2次の変動までを考慮することになります。導出過程は下記の通りですが、等エントロピーを想定した上で、次のように変形します。

$${\frac{1}{\rho}\frac{\partial p}{\partial x}=\frac{a^2}{\rho}\frac{\partial \rho}{\partial x}-(\gamma-1)\frac{k_0}{\rho_0{c_p}}\frac{\partial^2 u}{\partial x^2}}$$ , $${\gamma=c_p/c_v}$$

ここで、$${\gamma}$$は等圧比熱($${c_p}$$)と等積比熱($${c_v}$$)による比(比熱比)です。

上記のエネルギー方程式の変形版を運動方程式に代入し、さらに圧力の変数を消去します。

$${\frac{\partial u}{\partial t}+u\frac{\partial u}{\partial x}+\frac{a^2}{\rho}\frac{\partial \rho}{\partial x}=\delta_0\frac{\partial^2 u}{\partial x^2}}$$

ここで、$${\delta_0}$$は静止状態(ゼロの添字を付けます)における音の拡散率です。

$${\delta=\frac{\mu}{\rho}\Big(\frac{4}{3}+\frac{\chi}{\mu}+\frac{\gamma-1}{\sigma}\Big)}$$ , $${\sigma=\frac{\mu{c_p}}{k}}$$

ここで、$${\sigma}$$は「プラントル数」と呼ばれる無次元量です。

プラントル数は、粘性率と熱伝導率のそれぞれの拡散率の比を意味しており、各境界層の厚さ(比)に直結します。

一方で、連続方程式と運動方程式は密度と進行速度に対して閉じた方程式系であることから、密度の代わりに音速(非静止状態)で表現します。

$${\frac{\partial a}{\partial t}+u\frac{\partial a}{\partial x}+\frac{a(\gamma-1)}{2}\frac{\partial u}{\partial x}=0}$$

$${\frac{\partial u}{\partial t}+u\frac{\partial u}{\partial x}+\frac{2a}{\gamma-1}\frac{\partial a}{\partial x}=\delta_0\frac{\partial^2u}{\partial x^2}}$$

なお、上記で示した音速aは静止状態を踏まえて次の通りに表現されます。

$${a=a_0({\rho}/{\rho_0})^{\frac{\gamma-1}{2}}}$$

これは散逸性を考慮した弱化傾向を有する衝撃波を表した方程式を意味します。

Burgers(バーガース)方程式

正の方向に進行する衝撃波を考えます。弱形式の有限振幅(波)を前提としていますので、衝撃波の速度変動は音速aに比べて微小値を取ります。

$${v{\equiv}u+a-a_0{\ll}a}$$

この衝撃波は全体として音速(静止状態)に近い値で正の方向に進行します。そこで、次の移動座標を導入します。

$${\xi=x-a_0{t}}$$

前述した連続方程式と運動方程式で、Riemannの不変量を適用します。

$${\frac{\partial r}{\partial t}+(u+a)\frac{\partial r}{\partial x}=\frac{\delta_0}{2}\frac{\partial^2}{\partial x^2}(r-s)}$$

$${\frac{\partial s}{\partial t}+(u-a)\frac{\partial s}{\partial x}=\frac{\delta_0}{2}\frac{\partial^2}{\partial x^2}(s-r)}$$

Riemannの不変量の詳細は次の通りです。

$${u+a=\frac{\gamma+1}{2}r+\frac{\gamma-3}{2}s}$$ , $${u-a=-\frac{\gamma-3}{2}r-\frac{\gamma+1}{2}s}$$

$${\xi}$$と$${t}$$を独立変数として書き直します。

$${\frac{\partial r}{\partial t}+v\frac{\partial r}{\partial \xi}=\frac{\delta_0}{2}\frac{\partial^2}{\partial \xi^2}(r-s)}$$

$${\frac{\partial s}{\partial t}+(v-2a)\frac{\partial s}{\partial \xi}=\frac{\delta_0}{2}\frac{\partial^2}{\partial {\xi}^2}(s-r)}$$

こうすることで、全ての物理量は$${\xi}$$と$${t}$$の関数と見做すことができます。

上記の式中では、後者の全体的な釣り合いを踏まえると、次の項はゼロと見做すことができます。

$${\frac{\partial s}{\partial \xi}=0}$$ → $${s=const.\,(=s_0)}$$

このことから、変数sは定数として扱うことになります。衝撃波の速度変数vについては、次のように置き換えられます。

$${v=\frac{\gamma+1}{2}r+\frac{\gamma-3}{2}s_0-a_0}$$

以上を踏まえて、次に示す衝撃波に関する方程式のひとつ「Burgers方程式」が得られます。

$${\frac{\partial v}{\partial t}+v\frac{\partial v}{\partial \xi}=\frac{\delta_0}{2}\frac{\partial^2 v}{\partial {\xi}^2}}$$

この方程式は衝撃波(圧縮性流体)に関する非線形性と散逸性を兼ね備えた最も簡単な形と言われています。また、乱流を調べるためのナビエ・ストークス方程式の1次モデルとして提唱されたという背景があります。

Burgers方程式の一般解を求めるにあたり、次に示す変換式を導入します。

$${v=-{\delta_0}\frac{\partial}{\partial \xi}\textrm{ln}\,\theta}$$

ここから、変数($${\theta}$$)に対する熱伝導方程式を導きます。

$${\frac{\partial \theta}{\partial t}=\frac{\delta_0}{2}\frac{\partial^2 \theta}{\partial {\xi}^2}}$$

熱伝導方程式の一般解は上記(最終結果)で示した通りです。これを先述した変換式(v)に代入することで、Burgers方程式の一般解が求まります。

おわりに

今回は圧縮性流体における弱形式かつ粘性と熱伝導性を考慮した場合について、数式としての導出過程を中心に示しました。

次回はBurgers方程式の解を踏まえて、衝撃波の具体的な振る舞いを見ていきたいと思います。

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最後まで読んで頂き、ありがとうございます。この記事があなたの人生の新たな気づきになれたら幸いです。今後とも宜しくお願いいたします♪♪
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