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【見えない違いを浮かび上がらせる】2つのエネルギーで体を透視するDual Energy CTとは

医療の進歩はあまり注目されないものの少しずつですが着実に進歩しています.

今回は,最近知って面白いなと感じたDual Energy CT(DECT)について紹介したいと思います.

普段,紹介している未来の医療ではなく現実になってきている最新医療になります.

それでは一緒に見ていきましょう.

Dual Energy CTとは

その名の通り2種類のエネルギーのX線を利用して撮影するCTの手法です.

すでにCTを使えば体の中を立体的に観察することができるわけですが,一体2種類のエネルギーを使うと何がうれしいのでしょうか?

レントゲンを思い浮かべてもらえば良いと思いますが,これまでの手法では体を通過するX線の影絵を見ておりコントラストのわかりにくい白黒画像でした.

DualEnergyCTも同様に白黒画像になるんですが,少しだけ異なるところがあります.それは,物質の種類によってコントラストを強調することができるのです.

例えば,これまで明瞭に見るのが難しかった薬剤(ヨード)をはっきりくっきり浮かびあがらせたり,逆に余計に出てしまうアーチファクトという線状のノイズを低減するといったことが可能になります.

要は,これまでお医者さんが見にくいな~と思っていた影絵を状況に応じてきれいに描画することができるという利点があるわけですね.

引用元

Dual Energy CTの原理

さて,なぜ2つ異なるのエネルギーのX線を使うとこのような芸当ができるのでしょうか?

これはX線の線減弱率というものが関わってきます.簡単にいえば,X線が体を通過するときにどれだけ減衰する(弱まる)かという点です.

X線は体を透過することができますが,高密度な組織や重たい元素でできた組織ほど強く減衰されます.レントゲンで骨が白く映るのも,その影響と思えばよいでしょう.つまり,X線が吸収されて減衰される程度は物質の密度と種類(組成)によって違うといえます.

ここで問題が一つあります.ある1つの方向からX線を当てた場合,密度と組成の組み合わせによっては違う組織が同じように見えてしまうという現象が起こります.

簡単に言えば,炭素などの軽元素で密度が高い組織と,カルシウムなどの重い元素で密度が低い組織があると,X線の眼鏡をかけてみたときにあまり違いがわからないという事態になります.

それでは異なる2つのエネルギーを使ったらどうなるのでしょうか?エネルギーの種類によって組織への吸収率が変化します.

組織1に対してはあまり反応が変わりませんが,組織2を構成する元素にとっては吸収率が少し下がるなんてことがエネルギーを変更することで起きます.

厳密には異なりますが,とてもざっくりといってしまえば,このエネルギー1と2で撮った画像をそれぞれ比較してやれば,その差分が組織2の特徴として現れてきます.

つまり,見たくない組織1はコントラストを下げて,観察したい組織2のコントラストを上げるということが可能になるんですね.

何の役に立つのか?

多くの人はこんな技術があって何の役に立つの?と思われるかもしれませんね.すでにCTはあって体内も意外としっかり見えてるじゃん.これ以上見たいものがあるの?と感じるはずです.

実際,医療の現場,特に心臓や血管の手術では従来のCT技術では物足りないところがありました.特に異なる組織を区別して見分ける技術が弱かったのです.

例えば心臓血管の手術中はお医者さんがカテーテルと呼ばれる細長い筒を心臓まで挿入して造影剤を吹いたり,もっと精密な血管内の画像をとるために専用のデバイスを使う必要があります.

いずれもカテーテルを挿入するために注射傷のようなものはできてしまうので,低侵襲であるものの非侵襲とは言えない方法でした.

それに対して今回紹介したDual Energy CTは,多少の被ばくはあるものの体を傷つけない方法であるのが利点です.まだ完全に代替できる方法ではないですが,かなり有望な技術の一つだなと思います.

最後に

今回はDual Energy CT(DECT)について紹介してみました.いろいろ書きましたが,実は私の本職と近い領域ということもあって,もう少し深く勉強したいなと思っています.あまり文献が見つからなかったのと多忙により今回は軽く触る程度の紹介でした.

さらに理解が深まったときには詳細な説明とかもしてみたいですね.

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