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絶対音感あるってことは音楽できるんですか?

絶対音感を持つ人であれば、周囲にいる音楽やってない人から一度は言われたことがあるかもしれない。趣味程度で音楽に触れる立場から、タイトルの内容について真面目に考えてみた。


絶対音感にまつわる疑似相関

「音楽できる」という結論そのものは正しい可能性が高いけれど、命題としては正しくないんじゃないの?という違和感を持っている。

いわゆる「疑似相関」ではないだろうか。

擬似相関(ぎじそうかん、: Spurious relationship, Spurious correlation)は、2つの事象に因果関係がないのに、見えない要因(潜伏変数)によって因果関係があるかのように推測されること。

https://ja.wikipedia.org/wiki/疑似相関

この例で言う「見えない要因」としては、幼少期に音楽の英才教育を受けたことが挙げられるだろう。すなわち:

①幼少期に音楽の英才教育を受ける
②絶対音感を持っている
③音楽の能力を持っている

因果関係が言えそうなのは「①⇒②」と「①⇒③」だけで、逆が真とは限らない。たまたま②と③に相関があったとしても因果ではない。そんな土台の危うい話を自分に当てはめられることに、モヤっとするのかもしれない。

wikipediaで疑似相関の例に挙げられるのは「②アイスクリームが売れる」と「③水難事故が増える」のかという話。この例だと「①猛暑」が両方の要因となっている。
こういった構造を無視して「事故が増えてはいけないので、アイスクリームを禁止しよう」なんて話になったら、ちょっと待てよと思うだろう。


絶対音感は凄いのか?

絶対音感を持っている人は「凄いですね」と言われる。絶対音感は凄いのか?についても疑問がある。

耳から聴いた音を楽器で再現したい状況において、確かに、音階が分かる能力があれば有利となる。BGMを口ずさめるように、音階を意識せずアウトプットできる作音楽器だと関係ないかもしれない。

では、絶対音感がなければ音階がとれないのか?で言うと、そんなことはない。

音階を特定したい状況では、手元に適当な楽器があって既知の音階を鳴らせられるだろう。あとは、相対音感(後天的に獲得可)を駆使しても音階が特定できる。そうでないと、高校生デビューしたバンドマンが耳コピできないことになってしまう。

音階をとる文脈で、絶対音感は既知の音階を鳴らすひと手間が省略できる程度の恩恵と言える。希少性で言えば凄いかもしれないけれど、実用的には替えの利く能力に思える。

絶対・相対かはさて置き、音感を持っていて、それが洗練されていることが凄いのではなかろうか。「音感」の話と「絶対音感」の話が、混同されているんじゃないかと感じていた。

(追記)ガチ勢の方が似たようなテーマについて書いておられた。音大の入試など限られた状況では絶対音感が有利という話や、相対音感ならではの利点があるという話は新鮮だった。


机をバシッと叩いて「何の音?」というやつ

絶対音感を持っているという話題になると「本当なの?」で確かめようとする人が決まって仕掛けてくる、机をバシッと叩いて「何の音?」と質問してくるやつ。もっとも、答えたとして正しいのかどうやって確かめるんだろう。

ここまで書いた私は、幼い頃にピアノを習っていてユルく絶対音感を持っているけれど、細く長くバンドや打ち込みを続けている程度なので、もはや「音楽ができる」と言っていいのかも分からない。机バシッと叩いた音階は当てられない。

謎の余興はやりがち

長い単音が鳴っていれば音階が当てられるけれど、低い音や短い音になるほど周波数空間上で隣の音階と被るので、どの音階がピークなのか言い当てるのが難しくなる。←これは信号処理のフーリエ変換を履修した知見。

机バシ音も、訓練すれば既知の音と比べることで相対音感でも当てられる筈ではある。でも、あんまり「その訓練をした」という話は聞かないので、そもそも有用性はないんだろう。


ずっと思っていたけれど、日常会話の中では「いちいち細かいこと言うなよ」と思われそうなことを整理してみた。「音楽できないけど絶対音感を持っている」という人が生きやすくなればいいなと思う。

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