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圧縮性流体における物理を知ること -3-

物質の三態における「液体」「気体」を総称した表現(流体)の力学的特性を見るための学問を「流体力学」と言います。流体力学は固体力学と同様に連続方程式、運動方程式、そしてエネルギー方程式を支配方程式に有します。

流体は理想形態として完全流体(理想流体)や粘性流体、圧縮性流体(逆説として非圧縮性流体)が存在します。

今回は「圧縮性流体」に関する物理を見ていくことにします。圧縮性流体は運動に伴う流体の圧縮や膨張を考慮します。

前回は弱化傾向を有する衝撃波について、粘性と熱伝導性を考慮した形の物理と数学に基づいた記述を確認しました。また、同条件における主要な支配方程式(Burgers方程式)を導きました。

$${\frac{\partial v}{\partial t}+v\frac{\partial v}{\partial \xi}=\frac{\delta_0}{2}\frac{\partial^2 v}{\partial {\xi}^2}}$$

今回はBurgers方程式の解を起点に、弱化傾向を有する衝撃波の具体的な振る舞いを見ていきます。


膨張波の振る舞い

Burgers方程式において、音の拡散率(静止状態)が微小の場合を考えます。

$${\frac{\partial \theta}{\partial t}=\frac{\delta_0}{2}\frac{\partial^2 \theta}{\partial {\xi}^2}}$$

上記の熱伝導方程式の一般解は次の通りです。

$${\theta(\xi,t)=\frac{1}{\sqrt{2{\pi}{\delta_0}t}}\int_{-\infty}^{\infty}\textrm{exp}\Big\lbrack{-\frac{1}{\delta_0}}\Big\lbrace{\frac{(\xi-\xi')^2}{2t}}+V(\xi')\Big\rbrace\Big\rbrack{d\xi'}}$$

ここで、被積分関数(2項目)は次の通りです。

$${V(\xi)=\int_{}^{\xi}v(\xi',0)d\xi'}$$

この関数は、次の2条件を満たす場合に極小値を取ります。

$${v(\xi,0)=0}$$ , $${{\partial v(\xi,0)}/{\partial {\xi}}>0}$$

このときの移動座標を離散値($${\xi=\eta_i}$$)として規定し、熱伝導方程式の一般解を導出します。

$${\theta(\xi,t)=\frac{1}{\sqrt{t}}\sum_{i}\frac{1}{\sqrt{V''(\eta_i)}}\textrm{exp}\Big\lbrack{-\frac{1}{\delta_0}}\Big\lbrace{\frac{(\xi-\eta_i)^2}{2t}}+V(\eta_i)\Big\rbrace\Big\rbrack}$$

ここで、$${V''(\xi)}$$は関数$${V(\xi)}$$の独立変数($${\xi}$$)による2階偏微分を意味します。

音の拡散率が微小であるとき、一般解の各項のピークは鋭くなります。また、離散化された移動座標が一意に決まるとき、当該項のピーク以外の寄与度は明確に低くなります。つまり、一般解は次のように表されます。

$${\theta(\xi,t)=\frac{1}{\sqrt{tV''(\eta_M)}}\textrm{exp}\Big\lbrack{-\frac{1}{\delta_0}}\Big\lbrace{\frac{(\xi-\eta_M)^2}{2t}}+V(\eta_M)\Big\rbrace\Big\rbrack}$$

上記を変換式vに代入することで、問題の漸近形が導かれます。

$${v(\xi,t)=-\delta_0\frac{\partial}{\partial \xi}\textrm{ln}\,\theta=\frac{\xi-\eta_M}{t}}$$

この解を独立変数($${\xi}$$)で偏微分したとき、偏微分係数は正値になるため、この衝撃波は膨張の性質を有することが分かります。

衝撃波に関する漸近解

前章における膨張波の境界点においては、両区間からの解($${\theta}$$)への寄与は等しくなります。

$${\theta(\xi,t){\approx}\frac{1}{\sqrt{tV''(\eta_i)}}\textrm{exp}\Big\lbrack{-\frac{1}{\delta_0}}\Big\lbrace{\frac{(\xi-\eta_i)^2}{2t}}+V(\eta_i)\Big\rbrace\Big\rbrack+\frac{1}{\sqrt{tV''(\eta_{i+1})}}\textrm{exp}\Big\lbrack{-\frac{1}{\delta_0}}\Big\lbrace{\frac{(\xi-\eta_{i+1})^2}{2t}}+V(\eta_{i+1})\Big\rbrace\Big\rbrack}$$

以上より、Burgers方程式の漸近解が求まります。

$${v(\xi,t)=\frac{1}{t}\Big\lbrace{\xi-\frac{1}{2}(\eta_i+\eta_{i+1})\Big\rbrace-\frac{\eta_{i+1}-\eta_i}{2t}\textrm{tanh}}\Big\lbrace{\frac{\eta_{i+1}-\eta_i}{2{\delta_0}t}(\xi-\xi_i)}\Big\rbrace}$$

この一般解は、音の拡散率(静止状態)に基づいて次の関係を満たす場合に有効です。

$${\delta_0{\to}0}$$ , $${\delta_0{t}\neq{\infty}}$$

$${\delta_0{t}{\to}0}$$を満たすとき、移動座標($${\xi_i}$$)は不連続面に相当します。

$${\delta_0{t}>0}$$の場合は、上記の一般解は連続であり、急激な速度変化を表します。

$${v(\xi,t)=\frac{1}{2}(v_l+v_r)-\frac{1}{2}(v_l-v_r)\textrm{tanh}\Big\lbrace{\frac{v_l-v_r}{2\delta_0}(\xi-\xi_i)\Big\rbrace}}$$

ここで、$${v_l}$$と$${v_r}$$は不連続面の左近傍および右近傍の伝播速度に相当します。

$${v_l=\frac{\xi_i-\eta_i}{t}}$$ , $${v_r=\frac{\xi_i-\eta_{i+1}}{t}}$$

この一般解は、滑らかな単調減少関数であり、膨張波による速度の跳びを結び付けています。

今回の一般解が示す波はx軸を正方向に進行し、波の通過と合わせて伝播速度vも増加します。

$${\frac{dv}{d\rho}=\frac{\gamma+1}{\gamma-1}\frac{da}{d\rho}=\frac{(\gamma+1)a}{2\rho}>0}$$

上記の関係から、波の通過と合わせて密度も増加します。本来の「衝撃波」とは、有限振幅を有する圧縮傾向を示す密度波のことを指します。

衝撃波の厚さを次のように定義します。前述の一般解に準えると、次の通りに表現されます。

$${d=\frac{v_l-v_r}{(\partial v/\partial \xi)_{max}}=\frac{4\delta_0}{v_l-v_r}=\frac{8\delta_0}{(\gamma+1)(u_l-u_r)}}$$

ここで、$${u_l}$$と$${u_r}$$は各対応位置における速度$${u}$$を表します。

いま、散逸性を考慮した上で、空間内に正負の衝撃波が静止状態を距てて向かい合う形で置かれている場合を考えます。

このとき、衝撃波は進行した後に衝突を引き起こしますが、両者の速度差や密度差は変わりません。一方で、位相速度は変動します。衝突前の両者の伝播速度は次の通りとします。

$${U_+=\frac{\gamma+1}{4}u_1+a_0}$$ , $${U_-=\frac{\gamma+1}{4}u_2-a_0}$$

衝突後は両者の位相速度は微減します。

$${U_+=\frac{\gamma+1}{4}u_1+\frac{3-\gamma}{2}u_2+a_0}$$ , $${U_-=\frac{\gamma+1}{4}u_2+\frac{3-\gamma}{2}u_1-a_0}$$

一方で、膨張波同士が距てて向かい合う形で置かれている場合は、衝突後の位相速度は微増します。

Burgers方程式に準えることで、衝撃波の衝突後の合成速度も導出可能です。

$${v(\xi,t)=\frac{1}{2}(v_1+v_3)-\frac{1}{2}(v_3-v_1)\textrm{tanh}\Big\lbrace{\frac{v_3-v_1}{2\delta_0}\Big(\xi-\frac{v_1+v_3}{2}t\Big)\Big\rbrace}}$$

ここで、$${v_3>v_1}$$を前提とします。合体前後の衝撃波の速度は一定の保存則が成立します。

すなわち、2つの同方向の衝撃波の衝突と合体の過程は、1次元自由粒子の非完全弾性衝突と同等ということです。これは「同方向衝撃波の衝突法則」と呼ばれ、Burgersに同じく見出されました。

おわりに

今回は圧縮性流体における弱化傾向を有する場合を前提とした、膨張波と衝撃波の物理的挙動を見ていきました。

膨張波や衝撃波の干渉に関しては、両者の物理的な強度が低い場合は単純に取り扱えますが、そうでない場合は、干渉具合が複雑化します。

次回は複数の衝撃波に関する代表的なモデリングに対して、物理挙動について深掘りします。

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最後まで読んで頂き、ありがとうございます。この記事があなたの人生の新たな気づきになれたら幸いです。今後とも宜しくお願いいたします♪♪
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