母の古い腕時計を時計屋さんに持ち込んだ。手巻き式のオメガで、遠い昔、母がそれを巻く仕草と音を覚えている。祖父から買ってもらった大事なその時計は、動かなくなってからだいぶ経つ。今回、時計屋さんの手によって、息を吹き返した。コチコチ音も懐かしい。母は耳が遠くなり、聞こえないらしい。