オートファジーで手に入れる究極の健康長寿 ⑧ 「スイッチ」抜粋 ジェームズ・W クレメント著
第7章
クルミと穀物飼育の牛
これまで見てきたように、精製糖質と動物性タンパク質を過剰に摂取すると、mTORが常にオンになり、代謝のスイッチが「成長モード」に入りっぱなしになり、細胞内の浄化機構であるオートファジーがオフのままになってしまう。
mTORを活性化する精製糖質や動物性タンパク質(チーズバーガーやピザ、ミートソースのパスタ、ステーキ、ポテトなど)の摂取量を減らしながら必要なカロリー摂取量を保つには、高脂肪食が有効だ。
【全部が日本人に合うとは限らない。現代栄養学はもともと寒いドイツが原点で白人用だ】。
高脂肪食というと、不健康で脂っこい食べ物、大食いの人を思い浮かべるかも知れない。だが脂肪は私たちの祖先の貴重なエネルギー源であり、健康なレベルの体脂肪は祖先にとってエネルギーの巨大倉庫のようなものだった。脂肪は筋肉組織や脳、細胞膜など、人体の基本的な構成要素だ。しかし、私たちは脂肪過多の人が増えていることも痛いほどよく知っている。
1980年代から90年代では「脂肪分ゼロ」が食品の宣伝によく使われた。ところが、脂肪を摂らないライフスタイルが意図したのとは逆の効果(その分、精製された小麦粉や砂糖が摂取された)が生じ、余分な脂肪が組織の奥深くや重要な臓器にたまることによって、糖尿病や肥満が増加したのは、多くの人にとって予想外だった。
この臓器につく脂肪は-内臓脂肪が最悪なのは、老化した脂肪細胞が大問題を引き起こすからだ。脂肪細胞が老化すると、細胞分裂は止まるが死は拒絶する。老化した脂肪細胞は炎症を誘発するシグナルを発し、免疫系が動き出す。そのため、老化した脂肪細胞が大量にあると、全身性炎症が慢性化する恐れがある。
炎症誘発シグナルは、臓器の機能を狂わせ、幹細胞の働きを休止させてしまう。幹細胞はどんな細胞にも分化できる「赤ん坊」のような前駆細胞(その細胞に変わる前の段階の細胞)である。幹細胞が休眠状態に入ると、病に冒された組織や臓器の再生・修復のために幹細胞を使えなくなってしまう。
炎症が慢性化すると、免疫系の働きが過剰になり、関節リウマチや多発性硬化症、炎症性腸疾患、全身性エリテマトーデスなどの自己免疫疾患につながることもある。この章では脂肪に焦点を当て、良い脂肪と悪い脂肪の違いを詳しく説明する。
端的に言えば、食事から良質な脂肪をバランスよく摂取すれば、オートファジーを効果的に活性化できるようになる。
脂肪の基礎
まず基本からはじめよう。脂質が人間の健康にとって不可欠だと言われるとき、それは大抵脂肪酸のことを指している。脂肪酸は、植物や動物、微生物の体内に存在する重要な化学物質で、人間の場合、血圧と炎症を抑制し、血液凝固を防ぐ働きを助けている。また、脂肪酸は、細胞の発達と健康な細胞膜の形成を助け、動物の体内での腫瘍形成を抑制し、例えば、乳癌細胞の成長を妨げる。
脂肪酸はグリセロールと結合してトリグリセリド(中性脂肪)になり、最も代表的な脂肪酸はオレイン酸で、オリーブオイル、パーム油、ピーナッツ油、ひまわり種子油などの植物油に豊富に含まれる。体脂肪の約46%はそれらから作られる。
また、脂肪酸は、必須脂肪酸とそれ以外に分類できる。必須脂肪酸はその名の通り、生存に欠かせないが体内で合成できない脂肪酸で、食事から摂取しなければならない。オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸は、必須脂肪酸の2大カテゴリーだ。
私たちが食事に含まれる脂質に語る時、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、トランス脂肪酸の3種類を指していることが多い。飽和脂肪酸は、常温では固定であり、動物の肉や、ミルク、チーズ、バター、クリームなどの乳製品、ココナッツ油やパーム油、ナッツなどの植物性食品に含まれており、血中総コレステロール値とLDLコレステロール(悪玉)値を上昇させる。
そのため、心血管系疾患や2型糖尿病の遺伝的素因がある人が飽和脂肪酸を摂り過ぎると、これらの病気の発症リスクが高まる。
飽和脂肪酸も身体に必要な存在であり、実際、細胞膜の50%は飽和脂肪酸で出来ており、肺や心臓、骨、肝臓、免疫系などの組織にも使われている。内分泌系も、インシュリンなどのホルモンをつくる必要性を伝える際に、飽和脂肪酸を用いている。飽和脂肪酸は、空腹感や満腹感を脳に伝える働きもしている。
トランス脂肪酸は、飽和脂肪酸と似た働きをする人工合成脂肪でトウモロコシ油や大豆油など野菜由来の油を、水素添加(成分表には「水素添加油」や「部分水素添加油」)と呼ばれる手法で固定化したものである。アメリカ食品医薬品局(FDA)の新方針のおかげで、トランス脂肪酸は加工食品から姿を消しつつある。
依然としてスナック菓子(クラッカー、ポテトチップス)や市販の焼き菓子(マフィン、クッキー、ケーキ)、ショートニング、ファーストフードの揚げ物など、多くの加工食品に含まれている。トランス脂肪酸は非常に有害であり、健康上のメリットはほとんどない。
【日本の厚生労働省は業者寄りで(いつもか)、日本では使用量が少ないという理由で有害だと知っていても規制は無し。商品を買う時は、「トランス脂肪酸」「ショートニング・マーガリン」など記載されていたら買わない】。
【安いパンはバターの代わりにショートニングやマーガリンを使用している。また、砂糖の記事で高果糖(ブドウ糖)コーン・シロップも出てきたが、異化精糖などの商品は避ける。全部が全部ではないが私の地域では「成城石井」や「OKスーパー」などは比較的良品を販売している】。
不飽和脂肪酸は常温では液体で、多くの野菜やナッツ、油に含まれている。これは一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸に分類できる。研究によれば、一価不飽和脂肪酸が豊富な食品は、血中コレステロール値を改善させる。また、インシュリン値と血糖値にも、明らかにプラスの影響を与える。この二つの値は、体重増加と糖尿病発症リスクをコントロールするための優れた指標だ。
一価不飽和脂肪酸は、オリーブオイルやキャノーラオイル、アボカド(とそれに由来する油)などの含まれている。多価不飽和脂肪酸は、主に植物由来の食品・油、魚由来の油(サケ、ニシン、オヒョウ、海藻など)に含まれている。
この脂肪酸を豊富に含む食品を摂取すると血中コレステロール値が改善し、2型糖尿病の発症リスクが低下することが研究で分かっている。多価不飽和脂肪酸の一種でとりわけ健康効果が高いのが、オメガ3脂肪酸である。
【オメガ3脂肪酸はもう20年以上前から摂っているが、魚油に落ち着いた。アマニ油、フラックスシード、クリル油(オキアミ)、など購入したことがあるけど、サプリで簡単に飲めるのは魚油。宣伝はしないが i-Herb というアメリカの会社がお勧め。速い、送料が日本並みの安さです】。
オメガ3脂肪酸の中でも特に重要なのは、DHAとEPAだ。健康面の効果からDHAの方がEPAより注目されているが、私たちには両方が欠かせない。DHAは哺乳動物の脳の主な構成成分で、脳内に最も豊富に存在するオメガ3脂肪酸である。
そのため、DHAは脳の働きを強化し、認知機能低下や認知症のリスクを減らす効果があるとよく謳われる。DHAはニューロンの細胞膜の主要な成分だが、体内で非効率なため、DHAが豊富な魚や卵から摂取する必要がある
DHAが脳や認知機能に影響を与えるメカニズムは、徐々に明らかにされ始めている。例えば、脳に外傷があるげっ歯類にDHAサプリメントを摂取させると、海馬のBDNF(脳由来神経栄養因子、脳の成長を促すホルモン)レベルが上昇し、認知機能が高まることが分かっている。
DHAレベルと脳容量の相関を示す研究も多い。研究では、DHAレベルが高い人ほど脳が大きくなり、特に脳の記憶中枢である海馬が大きくなったことが分かった。つまり、加齢に伴う脳の萎縮を防ぎたいなら、DHAを多く摂取することが有効な方法のひとつになる。
DHAは脳の可塑性を促進することで脳の認知能力を向上させると考えられている。脳の可塑性とは、脳のシナプス間の伝達経路を変えたり、神経回路を再構築したりする脳の能力のことだ。
脳の可塑性が高まるとシナプス間の接続が強化され、情報伝達がスムーズになる。グルコース利用とミトコンドリアの働きも促進され、それによって、酸化ストレスが低下するので、代謝にも良い効果をもたらす。これらの効果は全て、間欠的断食、カロリー制限、タンパク質循環などの条件が整っていれば、オートファジーの起動を助ける。
【高齢者にとって一番怖いのは、認知症、アルツハイマー病になることだと思う。オメガ3脂肪酸はどれか一つ選ぶなら、このオメガ3(DHA/EPA)になる。また、運動もかなり役に立つらしい。詳細は「脳を鍛えるには運動しかない」ジョン・J. レイティ著 横浜市立の図書館にあります。大きな自治体の図書館にはあるでしょう】。
ここで極めて重要なことを説明しよう。なぜDHAが脳に有益で、認知機能を向上させるのか。それは、食事に含まれている豊富なDHAが、細胞膜(特に脳のニューロンを包む膜)の形成に不可欠な成分となるからだ。
DHAが不足していると、細胞はオメガ6脂肪酸などの他の分子を膜の成分に取り込もうとする。だが、これらの分子は順応できず、細胞内に入力される電気刺激の伝達を妨げる。また、代用した場合、Gタンパク質と呼ばれる構造に影響が及ぶ可能性がある。
Gタンパク質は細胞膜の内側にあり、脳細胞間の情報伝達に重要な役割を果たす。Gタンパク質は、脳の内側にある分子が外側にある分子とコミュニケーションをとるのを助けてくれる。
もう一つのオメガ3脂肪酸であるEPAは、炎症の重要な調節因子で、特に脳細胞の炎症を抑えるのに重要と考えられている。うつ病やADHD、脳損傷などの脳関連疾患に関する研究の多くで、EPAはDHAよりも優れていることが示されている。
コレステロールはワックス上の柔らかい物質で、すべての細胞に作る能力がある。意外にもHDLとLDLの2種類のコレステロールは、異なるコレステロールではない。
これは、コレステロールと結合するリボタンパク質の密度の違いを表すものであり、コレステロールを運ぶための2種類の船としてそれぞれ役割を果たしている。
人間が生きるためには、LDLとHDLのどちらも必要だが、そのバランスが崩れる場合がある。HDL値が低いと心疾患の発症リスクが低下し、LDL値が高すぎると動脈硬化や血栓のリスクが高まる。
コレステロールは細胞の内外で様々な化学変化を起こすことが出来る。例えば、脂質を消化し、脂溶性のビタミンの吸収を促すために胆嚢から放出される胆嚢酸塩はコレステロールで出来ている。
私たちはコレステロール値が低いことのメリットをよく耳にする。しかし、低過ぎると、脂質を消化する能力だけでなく、コレステロールが部分的に管理している身体の電解質バランスも損なわれてしまう可能性がある。
コレステロールは脳の機能と発達を支えている。脳の重さは体重の2%ほどだが、体内の総コレステロールの25%を占めている。脳の重量の5分の1がコレステロールだ。脳にこれ程コレステロールが多いのは、脳内でコレステロールをいかに利用できるかで、新しいシナプスを成長させられるかどうかが決まるからではないかと考えられている。コレステロールは脳細胞の膜を繋ぎ合わせ、結合したシナプス間を伝達信号が伝わりやすくする。
脳内のコレステロールは、強力な抗酸化物質としても働き、脳をフリーラジカルによる損傷から保護する。体内にコレステロールが無ければ、エストロゲンやアンドロゲンなどのステロイドホルモンや、非常に重要な脂溶性抗酸化物質であるビタミンDを生成することも出来ない。
なぜなら、コレステロールはこれらのホルモンの材料(前駆体分子)になるからだ。
脂質を積極的に摂取すべき大きな理由は、身体の様々な部分に、材料や機能が提供されることに加えて、必須脂溶性ビタミン(A,D,E,Kなど)の吸収や活用が促されることだ。
脂溶性ビタミンは水には溶けず、吸収のためには周りに脂肪があることが欠かせない。ビタミンKが不足すると、血を凝固させる能力が低下し、自然出血を起こすことがある。
ビタミンAが不足すると、失明や感染症にかかるリスクが高くなる。ビタミンDが不足すると、うつ病、神経変性疾患、様々な自己免疫疾患などにかかりやすくなり、心臓疾患(特に高血圧や心臓肥大)のリスクを高めるおそれがある。
米国人の食事は加工食品が多いため、ただでさえビタミンが不足しがちだ。その状態で脂質の摂取を減らしてしまうと、ビタミン欠乏症になるリスクが更に高まってしまう。
脂質のパラドックス
野生動物と家畜では、脂肪に大きな違いがあることだ。野生動物の脂肪は、家畜に比べて飽和脂肪酸の割合が低く、一価不飽和脂肪酸(オリーブオイルなどに含まれる脂肪酸)の割合が高い。
脂肪1gに含まれる多価不飽和脂肪酸の割合も。家畜の5倍以上ある。また、野生動物の脂肪には、かなりの量(約4%)のオメガ3脂肪酸(EPA)が含まれている。
一方、家畜の牛肉(例えば米農務省認定の牛肉)には、この重要な栄養素がほとんど含まれていない。大量生産される牛肉のおおもとである肉牛は、穀物や大豆、トウモロコシ、栄養補助飼料などを粉末などに加工した濃厚飼料を与えられ、更に、成長ホルモンや抗生物質が投与されることも多い。
濃厚飼料によって牛肉に含まれる栄養素は変化し、自然の環境で放牧され牧草だけを食べて育った牛肉よりも1g当たりのカロリーが増え、良質な脂質の割合も下がる。
オメガ3脂肪酸は、HDLコレステロールを増やし、中性脂肪を低下させる。また、血液をさらさらにする抗凝固作用でも知られている。心不全に繋がる不整脈から心臓を守るとも考えられている。
また、「天然のアスピリン」のように作用し、アテローム性動脈硬化症、糖尿病や肥満、関節炎、認知症などを引き起こす炎症プロセスのブレーキをかける。
旧石器時代の頃、人間の食べ物に含まれるオメガ6とオメガ3の比率は約2対1から1対1だった。だが、現在は約20対1であり、加工食品を避けていても、魚をあまり食べず、オメガ3が豊富な魚油のサプリメントを摂っていなければ、おそらく10対1程度と考えられる。
最近の研究では、オメガ6を含む食品を摂取すると空腹感が高まり、オメガ3を含む食品を摂取すると空腹感が弱まることが示されている。パレオダイエットは、オメガ6とオメガ3のバランス改善に役立つ。加工食品や植物由来のの食用油、マヨネーズ、ナッツ類などを減らし、低GIの炭水化物の摂取量を増やすことで、炎症を誘発するこの悪い油(オメガ6)の摂取量を大幅に減らせるからだ。
肉や肉の脂を食べるのは良いことだと考える人もいるかも知れないが、その動物が何を食べて育ったかによって、成分に大きな違いがあることに注意すべきだ。
【この最後の文章は非常に重要である。肉もほとんどが配合飼料で自然な放し飼いの動物からの肉はほとんど出回っていない。また、肉だけでなく、魚-高級魚も養殖である。マグロは「畜養」という呼び方をするが、エサは人間がやるので養殖と変わらない。地中海沿岸の国からの輸出品であれば天然ではない。天然本マグロは既に夢。それに大きな魚の筋肉を食べているのでこれは肉を食べているのと変わらないと代替医療の先生は言う。丸ごと食べられる魚を食べよう。「一物全体」と言う】。
【買い物をする時は、特に魚は値段のラベルのところの天然か養殖を見てから買う。ブリやサケやタイなど。鮭はアラスカかロシア産の紅サケのみ。チリは海外国際事業団の協力でチリ沖にサケ養殖地域を作り、日本にほとんどの漁獲を輸出している。南半球にはサケは生息していなかったので成功と言っていいだろう。しかし、天然ものとの違いを認識しよう】。
【かって北海道産の鹿肉をネットで購入していた時期がある。赤身肉で悪くはないし高くもない。海外ではジビエと言い秋から冬に解禁される野生肉。しかし、野生なので匂いが強い。特に低気圧が来ている時は料理した鹿肉の匂いが家の中にこもるのが問題であった。また、この種の肉はBBQ風に調理して脂を落とすのも賢明だ。カレーなどにすると脂が全てカレーのルーに残る。まあオメガ3を捨てずにとるなら目的を果たせるが、、、。時々は食べるのは良いと思うし、今はシカは害獣になるほど繁殖してしまっている】。
【鶏肉などもそこのスーパーで販売している最高級のランクのブランド肉を朝か夕方の割引で販売する時に買いに行くのも一手。私は食べるなら今では鶏かラム肉が主体。ラムは牧草飼育であるので今も昔も同じ肉、でも高い。オーストラリアの牛肉は牧草飼育であるが日本向けには穀物飼育で育てている。消費者の好みがそうだから仕方ない。アメリカなどでは牧草飼育は高級肉になる】。
【オメガ3とオメガ6の話はこの後も長く続いているがカットします。ご理解したことと思いますが、まとめると、魚を食べる機会がない人はオメガ3脂肪酸のサプリメントを摂る(フィッシュオイル、魚油、DHA/EPA という名前になっている)。今出回っている肉は飼料が昔と違うので栄養価が違う。また生産様式が密集した場所のため、家畜が病気にならないように飼料に抗生物質や早く成長させるために成長ホルモンを入れている。肉の中に残留されているかどうかは不明。私は基本的には20年以上前にゆるいヴェジタリアンになったが、日本での外食では選択の枠が殆ど無いのが問題。魚介類を食べるペスコとかペスコタリアンなら、皆日本人はそうだったので問題ない】。
【でも今では肉も食べます。好んでは食べませんが、なるべく和食中心の野菜料理。これは日本食では得意で問題なく色々なメニュがある。玄米は外食では100%アウト。家で食べるしかない。最後にココナッツオイルは東南アジアではどこでも入手可能で、またそのジュースは健康的な飲み物として日常的に消費されている。飽和脂肪酸だからと恐がる必要はない。また、最近は心臓病関係は植物油が犯人ではと言う研究があり、バターをマーガリンに変えたのは何のためだった?植物油は一般に酸化が早い。製造過程でさえ酸化傾向になっている。これから揚げ物はラード、調理油は沸騰温度(加熱で煙が出て来る温度)が高いグレープシードオイルの時代になるかも知れない】。
【ここで休憩の間に一言。この本の著者クレメント氏は間違いではないが、古人類学や考古学の定説となっている「狩りをする人類」。この種の学問は化石が一番の資料で、その次が現代に生きる狩猟採集民を観察、或いはサルやチンパンジーなどの猿科の動物の観察が土台になっている学問。発掘された骨や化石の鑑定でいつの時代のものかを決めるわけであるが、人類が「狩りをする」ようになった時代は約40万年前の話】。
【人類の歴史は400万年前ぐらいからの骨の化石が発見されている。その頃から40万年前までの間は「狩られていた」時代だと言う。大型動物を狩るのは武器や火をコントロールする時代になってから「ハンター」になった。それまでは肉食獣に「ハンティド」(HUNTED)されていた時代の方が長いと言う】。
【パレオ・ダイエットやケトジェニック・ダイエットとか、あたかも人類を動物の王者のように扱っているが、実際には死肉や小さな動物を食べていたが、時折、果物や植物、木の実や昆虫。それも殆どの食物は女性が持ち帰っていたという本が現れました。この本の主題に直接は関係ありませんが、
「ヒトは食べられて進化した」人類史の常識をくつがえす衝撃の進化論 ドナ・ハート、ロバート・W・サスマン著(横浜市立図書館にあります)】。非常に面白いです】。
地中海ダイエットの健康的な脂質
地中海沿岸国の人々の食事は同じではない。この地域で最も病気になる人が少なく、平均寿命が長いのは、ギリシャだ。ギリシャの伝統的な食事は(欧米の食文化の影響を受ける以前の1960年頃の食事)に関する大規模研究によれば、人々が多く摂取しているのは果物や野菜(特に天然もの)、ナッツ、穀物(高GIのパスタより低GIのサワードウブレッドが主)、オリーブオイルとオリーブ、山羊乳、山羊チーズ(牛乳は少ない)、魚(肉類は少ない)である。ワインは他の地中海諸国よりも摂取量が少ない。
クレタ島の住民の食事パターンの分析によれば、食事はオメガ3とオメガ6のバランスが取れていて、セレンやグルタチオン、豊富な食物繊維、抗酸化物質、ビタミンE,C,など、疾病予防に効果的な成分が多く含まれている。その一部は乳癌を含む癌にかかるリスクの低下と関連することが示されている。
本書が推奨する「地中海式ダイエット」は伝統的なギリシャの食事のことを指し、オートファジーの力と病気にならない力を活用するために最適な食事法だ。
【先祖が歴史的に食べてきた食事が基本と言われる。「地産地消と旬」、マクロビオテックなどで言われること。たまにはいいと思われるが、例えば熱帯地方の果物を日本で食するのは、(特に冬など寒い季節)良くないと言われる。暑い国の果物は甘くカリウムが多い。これは身体を冷やす効果がある。日本の果物はりんごなどカリウムが少ない。日本人は先祖が歴史的に食べてきた食事が適しているが、世界中どこでも「欧米の食事」の影響を受けている。マクガバン・レポートにあるように、和食が健康に良いと言われるが、本来は元禄時代以前の和食だ。白米になる前の和食。一歩譲ってもぺスコヴェジタリアンだった日本人の食事を摂れば良いのだろう】。
地中海式ダイエットのメリットについては、
①55歳から80歳までの人々の心臓病や脳卒中の発症リスクが、研究では30%低下。
②脳健康にも良い。脳の容積の維持に注目を浴びた。脳は加齢とともに萎縮する傾向がある。だから若い時と同じようにその容積と機能を維持できれば大きな価値がある。平均で10mlも脳の容積に違いが出た。
③糖尿病にも良い影響。2型糖尿病の発症を予防し、血糖コントロールを改善し、心血管疾患のリスクを低下させる。
デメリットはオメガ3とオメガ6の適正な比率は1対2か1対1と言われているが、グリーンランドのイヌイット(エスキモー)の研究では、脳卒中がオメガ3過剰だと高くなる。日本の農村と漁村の人々での比較では、漁村の方が脳卒中の発症リスクは農村より低かった。
【現代の食生活から逃れることは出来ない。どんなに健康的な食生活をしようとしても社会のシステムがそのようになっているので殆ど無理。だからこのオメガ3の摂り過ぎに敢えて注意する必要はない。黙っていてもオメガ6の摂り過ぎになってしまっている。これが体内で慢性的な炎症を起こし病気の要因になっていると言われる】。
【この本では過剰摂取を避けるため、オリーブオイルを摂る方法を勧めている。オリーブオイルは一価不飽和脂肪酸だが他の油に比べて抗酸化物質が非常に豊富だ。スクワレンと言呼ばれる強力な抗酸化物質が魚油の大量摂取により増えた酸化生成物を取り除いてくれる。或いはビタミンEの摂取もこの問題の回避に役立つ】。【オメガ3が多い訳ではない】。
食べ物から摂らないならサプリメントでEPA・DHAを規定量を摂れば過剰になることはない。オメガ3脂肪酸含有の食品
①濃い緑色の葉もの野菜
②冷たい海などにいる脂質の多い天然漁(サケ、サバなど)
③牧草飼育(グラス・フェッド)の肉
④卵(平飼い)【放し飼いか少なくても、小さな身動きも出来ないケージに入れられた状態ではない鶏からの卵】
⑤麻の実(ヘンプシード)
⑥アマニ
⑦チアシード
⑧アボカドオイル
以上です。