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#新書が好き

新書への愛や、好きな作品・作家を語ってください!

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『ハリー・ポッター』を読んでたら京都大学を卒業した

 『ハリー・ポッター』との出会いは2001年の12月、祖父母の住む三重県の映画館でのことだった。当時、第1作の『ハリー・ポッターと賢者の石』が公開されたばかりで、話題作だからと家族でなんとなく選んで観たんじゃないかと思う。初めて観たときの感想はそんなに覚えていない。鑑賞後にパンフレットとハーマイオニーの杖の形のボールペンを買ってもらった。グッズなるものに興味がない僕にしては珍しい行動なので、きっと映画がすごく面白かったのだろう。  後日、本屋に行ったときに母が「これあの映画の

スープの中の動的平衡

私の憧れの職業のひとつは、カフェのマスターだ。 サイフォンでコポコポとコーヒーをいれ、お客さんと他愛もない話をして過ごすのだ。 そして、お客さんがいないときはエンジの分厚い本、ミヒャエル・エンデの『はてしない物語』をめくりながらコーヒーを飲む。そうしたら、本の中に入っちゃったりするかも知れない。 なんて、現実の世界に疲れると、そんなことを想像する。 始めるのは簡単だけど、継続するのが難しいと、以前出会ったカフェのマスターは、カフェをオープンした経緯を語りながら、そんなことを

「効果10倍の〈教える〉技術」「最高のプレゼンテーション」(2007年読書記録)

1冊目(「2007年読書記録」について)の紹介はこちら。 効果10倍の〈教える〉技術 最高のプレゼンテーション 上の本の文中に下の本の宣伝があり、2冊とも買ってしまうの図😅 当時、新入社員研修では座学が続き、新入社員が退屈に感じてきた頃のコマが担当だった(今時はグループディスカッションが多いから、そんなことはないと思う)。 先月まで学生さんだった方々に「会社とは? 経営とは?」を話しても、興味を持って聞いてもらえるはずはなく、説明だけでは睡魔を誘う。 どうやれば新入

「好き」を言語化する技術【推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない】

ヤバい、面白い、考えさせられる…… 感想を伝える時にこれらの言葉をついつい使っていませんか? 残念ながら私もその1人です。 私は普段、『読書大学』というnoteやXで本の紹介や感想を記事にしたり、呟いたりしています。 ですが、文章を書く時に、言葉が浮かんでこなかったり、つまずいたり、悩むことは日常茶飯事です。 よくよく考えれば当然のことで、私はライティングのプロでもなければ、書評家でもありません。 読書感想文は小学生や中学生の時に書かされていましたが、重要な「書き方」その

「読書する人だけがたどり着ける場所」 齋藤 孝

「「読書」は体験なのです。」 「読書する人だけがたどり着ける場所」 齋藤 孝 町の本屋が閉店している 本を読む人が減っている そんなニュースやネット記事をよく見ます。 僕が学生の頃にはいたるところに本屋があったので、実感として小さな町の本屋が減っている印象は受けますが、それに比して本を読む人は減っているのだろうか? 大型書店に行くと、本を求めて来られている人がたくさんいます。 棚から本をつかみ、パラパラと頁を捲り、真剣な表情で本との出会いを楽しんでいる、そんな風に

珍しく書評を書いてみる──『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』

こちらの本を読了したので、珍しくマジメな書評記事を書いてみます。 まず第一印象。 もうタイトル(と帯)からして、現代社会に直球ストレートを仕掛けるような書籍だと感じました。 一方で私はいま「働いていて、本も読んでいる」わけですが、じゃあ何でそれができているのか、というとよく分からなく、その答えを知る意味もあって読み始めました。 概要本書は標題の疑問に対し、日本人の「読書史×労働史」という組み合わせを明治時代まで遡って解き明かそうとするものです。 映画『花束みたいな恋を

ブルーバックスに3冊ある『鉄道の科学』

講談社の科学新書「ブルーバックス」には、『鉄道の科学』と題した本が3冊存在します。今回は、その3冊をそれぞれ紹介します。 身近な交通機関である「鉄道」を通して「科学」にふれる話として、お楽しみいただけたら幸いです。 ■ 3冊ある『鉄道の科学』今回紹介するのは、以下の3冊です。 ① 丸山弘志著『鉄道の科学ー旅が楽しくなる本ー』1980年発行 ② 宮本昌幸著『図解 鉄道の科学ー安全・快適・高速・省エネ運転のしくみー』2006年発行 ③ 川辺謙一著『最新図解 鉄道の科学ー

モンハンNow:ファミマ店員 /水泳:fitbit / スキのお礼:新書

終盤に近づいている(と個人的には思っている)モンハンNow。 ファミマと『モンスターハンターNow』がコラボキャンペーンを開催中。買い物をしてコラボクエストに参加した。 コンビニのフライドチキン今まで、コンビニのフライドチキンを食べたことがないことに気が付いた。 何事も経験は大事😊 良い機会なのでファミチキとスパイシーチキンを家族と試食。 「なるほど〜」な感じ。一つ食べただけで満腹感。 『モンハンNow』コラボクエスト ファミチキを買うと「ファミペイ」にスタンプがた

「ラーメン食べにいかない?」が口説き文句になるワケは? 韓国の知られざるラーメン文化――短期連載#2「ドラマで読む韓国」金光英実

「太陽を抱く月」「雲が描いた月明かり」「ミセン」……数々の韓国ドラマ作品で字幕翻訳を手掛けてきた金光英実さん。そのキャリアとソウル在住30年の経験をもとに執筆した新刊『ドラマで読む韓国』は、現代韓国の文化や社会を知るのにうってつけの一冊です。9月10日予定の刊行に先立ち、内容の一部を抜粋してお届けします。 #1から読む方はこちらです。 韓国はインスタントラーメン大国! 韓国のドラマや映画で、登場人物がラーメンをすするシーンを見たことがある人は多いだろう。ラーメンは韓国人にと

親しき仲には……遠慮なし!? 日本とはまるで異なる、韓国の人間関係――短期連載#3「ドラマで読む韓国」金光英実

「太陽を抱く月」「雲が描いた月明かり」「ミセン」……数々の韓国ドラマ作品で字幕翻訳を手掛けてきた金光英実さん。そのキャリアとソウル在住30年の経験をもとに執筆した新刊『ドラマで読む韓国』は、現代韓国の文化や社会を知るのにうってつけの一冊です。9月10日予定の刊行に先立ち、内容の一部を抜粋してお届けします。 #1から読む方はこちらです。 「ウリ」を重んじる文化 韓国人は共同体意識が強い。周りに中国や日本などの強大国が存在していたため、強い連帯意識が必要だったのだろう。また、家

「インテリジェンス 武器なき戦争」(2007年読書記録)

1冊目(「2007年読書記録」について)の紹介はこちら。 インテリジェンス 武器なき戦争二人の共著を2006年に読んでいたことは、記憶の中から抜けていた。 「イスラエル戦争の嘘」にも書いたが2024年現在、戦争が好きで仕方がないように見える国の責任者たちは、諜報機関出身。 イスラエルの首相はSayeret Matkal(サイェレット・マトカル:戦場情報収集部隊)所属、ロシアの大統領がKGBの対外情報部員だったことは有名。 元インテリジェンスの二人が、終わるあてのない軍事

遊牧民に”転生”してみたら|相馬拓也

地平線の先までずっと続くモンゴルの大草原。そこに生きる”悠々自適”な遊牧民。大自然に囲まれた彼らの暮らしを想像して、一度は憧れたことがある人もいるかもしれません。しかし、彼らの暮らしは本当に”悠々自適”なものなのでしょうか。一度で150kmにもおよぶ遊牧、マイナス40℃を下回る極寒の冬、家畜という懐事情をあけすけにした生活——。光文社新書9月新刊『遊牧民、はじめました。』では、そんな遊牧暮らしのリアルを、彼の地で長年フィールドワークを続けてきた研究者の相馬拓也さんが赤裸々に綴

【読書コラム】だからわたしは働いているとき本が読めなかったのか! - 『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』三宅香帆(著)

 各所で話題になりまくっている『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』を読んだ。  こんなにも共感できるタイトルの新書に出会ったのは久々だし、これがベストセラーになっているということはみんなそうだったのかと驚いたし、なにより、この本自体が最高に面白かった。  20代、わたしは大学生の頃からエンタメ系の仕事を始めたのだけど、たしかに本が読めなくなっていた。映画館に行けなくなっていた。ゲームができなくなっていた。  脚本を書いたり、演出をしたりするから、新しい知識をインプッ

図書館に行くと、必ず【新書】のコーナーを見てしまいます。 借りた本の一部↓

韓国人が好きでたまらない「代理満足」とは? 韓ドラに復讐劇が多い本当の理由――短期連載#4「ドラマで読む韓国」金光英実

「太陽を抱く月」「雲が描いた月明かり」「ミセン」……数々の韓国ドラマ作品で字幕翻訳を手掛けてきた金光英実さん。そのキャリアとソウル在住30年の経験をもとに執筆した新刊『ドラマで読む韓国』は、現代韓国の文化や社会を知るのにうってつけの一冊です。9月10日予定の刊行に先立ち、内容の一部を抜粋してお届けします。 #1から読む方はこちらです。 韓国ドラマは復讐劇ばかり? 韓国ドラマには犯罪を描いた作品が多いが、群を抜いて人気があるのは復讐ドラマだ。  前科者の青年が仲間と飲食業界で

「やめること」からはじめなさい 千田琢哉

「自分で「がんばっている」とか「努力している」と感じた時点で、それは好きなことではないからさっさとやめてしまうことだ。」 「やめること」からはじめなさい 千田琢哉 がんばっているけど、報われない。 そう思っている人が多いのではないでしょうか? ひょっとして、そう思い当たるあなたは、何かを「いっぱい、いっぱい」抱え込んでいるのではないですか? 千田琢哉さんは、このように語ります。 ~しなければならない という呪縛に囚われてはいませんか? 「勉強なんてしなくても生

職場のトイレの扉にもたれて絶望したあの日を思い出す 『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』三宅香帆 著

発売1週間で10万部突破と爆売れしている話題の新書『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』をようやく手に入れて読むことができた。(書店でも売り切れになっていたので注文して、ようやく届いたのです!) 『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』 三宅香帆 著書評家の三宅 香帆さんの新書。 「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」という問いに、日本の明治時代からの労働史と読書史を読み解きながら、答えを見つけていく本だった。読書に限らず、趣味や自分の好きなことを楽しめないほどに働い

2024年8月に読了した本の紹介

2024年8月が終わりました。 子どもの夏休みがある月で、プライベートは充実しつつも忙しかったです。 ただ、帰省中は読書がほとんど進まなかったですね。 今月読了したのは以下の2冊です。 それぞれ簡単に書評を書いていきます。 なお私の読書に関するポリシーが分かる記事をいくつか置いておきます。 どれか一つだけでも、読んでいただけると嬉しいです。 それでは今月もよろしくお願いします。 『物語思考』私がnoteで記事をよく拝見している、アル株式会社の代表取締役、古川健介(けん

それでも、人間の心を信じる①/「倫理資本主義の時代」(マルクス・ガブリエル著)

前回、途中なのに感想文を書いてしまった「倫理資本主義の時代」を最後まで読みました。 そうしたら、感想がまた長くなってしまいました。 そのため、回数を分けます。 いろいろ議論を呼びそうな内容な気がしたけど、書いてあることは、興味をそそられた。 ただ、マルクス・ガブリエルさん(以下、敬称略で「ガブリエル」)がこの本で書いていることが正しいのかどうかは、結局、わからなかった。 というか、この本を読んで、盲目的にガブリエルが正しいと思ってしまうのは、ある意味で一番この本が言おうとし

小説家になって億を稼ごう(松岡圭祐)

小説家になる気はまったくないのです。 「じゃあなんでこの本を読んだのよ?」とつっ込まれそうですが、つい先日、この著者が書いた小説を読みまして。 関連書籍を検索していたら同書がヒットしたため、つい手に取った次第。 小説家の書くものなので、少しエッセイっぽい内容も入っているのかと思ったのですが、完全に違いまして、作家(小説家)になるための実用書でした。 と書かれていましたが、単に「書き方」だけでなく編集者との付き合い方、税金や経費について、売れた後の身の処し方等まで、作家

しっぽ博士がしっぽ学をはじめたワケ|東島沙弥佳

多くの動物にあって、ヒトにはないしっぽ。遠い遠い祖先にはしっぽが生えていましたが、どのようにしてヒトはしっぽを失ったのでしょうか。はたまた、人は長い歴史の中でたくさんのしっぽを描いてきました。そんなしっぽに人はどんな思いを馳せてきたのでしょうか。「しっぽ」が分かれば、「ひと」が分かる——。光文社新書の8月新刊『しっぽ学』では、しっぽ博士である東島沙弥佳さんが私たちを魅惑のしっぽワールドへと誘います。本記事では刊行を記念して、第1章から一部を抜粋してご紹介。しっぽ博士がしっぽ学

新書の内容は理解できなくていい

新書を読んでいてぶつかる壁の1つに「何を言っているのかわからない……」「知識不足で理解できない」というものがある。 私は今年、新書を読み始めた。これまで55冊以上の新書を読んできたが、学生時代に勉強をあまりしてこなかったせいで、ちんぷんかんな新書にも遭遇した。 この記事は、今年新書を初めて読んだ私が感じた新書の面白さの一部を紹介する。ここに書ききれない新書の面白さは別の記事でいずれ書こうと思う。 新書の面白さは後から来る新書に書かれていること全てを最初から理解しようとし

「書店ゼロ」自治体は27% 沖縄・長野・奈良は過半に / 日経新聞 / 書店の未来は?

先日、こんな記事を書いた。 そこに頂いたコメント 最近もディープな書店巡りをされている。 タカミハルカさんのような方が多ければ、書店の未来も明るいが… コメントを読んで数日前の日経記事を思い出した。 古書店に限らず、書店そのものが減少している。 上のコメントにも書いたが、出版社から取次を通して送られてきた本をそのまま並べて販売するだけの書店は、早晩レコード(CD)ショップと同じ道を辿るのではないか?   「レコードと本は別物でしょう?」と思われるかもしれないが、20

東畑開人『聞く技術 聞いてもらう技術 』読了。 「「聞けない」と「聞いてもらえない」の悪循環を、「聞く」と「聞いてもらう」の循環へ。」 誰にも話を聞いてもらえないのがつらい時は、人の話に耳を傾けるのは難しいが、まずは「聞く」と「聞いてもらう」を回すことから始めてみようと思う。

ない日記「はとバス火星ツアー」

 商店街の福引で二等が当たったので、はとバスで火星に行ってきた。一等がオーブンとしても使える電子レンジで、しかも脂がいい感じに落ちてヘルシーなやつだったから、どうせならそっちが当たって欲しかった。とはいえ、ないものねだりをしていても仕方がない。平日の朝から火星にくり出してみた。  はとバスって東京都をぐるぐる回ってるもんだと思っていたので、火星が守備範囲に含まれるのは意外だった。どうやら僕と同じ疑問を抱く人は多いらしく、バスガイドのお姉さんが解説してくれたのだが、火星は行政区

【読書コラム】綱吉について調べていたら、ケンペル夫妻の昼ドラどろどろエピソードが出てきて、韓国ドラマみたいでめちゃくちゃ面白かったよ - 『ケンペルと徳川綱吉: ドイツ人医師と将軍との交流』B・M・ボダルト=ベイリー(著), 中直一(訳)

 最近、仕事の関係で徳川綱吉について調べている。  自分が戌年だったから、生類憐れみの令で犬に優しくするよう法律で定めたせいで、社会がおかしくなったと民衆の不満は爆発。犬公方と蔑称で呼ばれるなど、愚かな為政者というイメージが広がっている綱吉。  しかし、実際、生類憐れみの令の真意は違うところにあったと言われている。なんでも、犬に優しくすることだけが目的だったわけではなく、赤ん坊や病人、ひどい扱いをされている動物など、弱い立場に置かれた命を例外なく救うことを目指していたらし

ない日記「元後輩っぽい犬」

 台風の夜、外の様子が気になって家から出ると、玄関の前にびちょびちょの犬が横たわっていた。暑くなったタオルケットを腹から蹴飛ばした後のような寝姿だった。我が家はペット禁止のアパートなのでどこからか迷い込んできたのだろう。そっとドアを閉めた。  うまかっちゃん博多からし高菜風味を油そば風にして食べた。湯切った麺に胡麻油をかけてスープの粉末を半分かけた料理だ。粉末が半分でも塩っぱかったので次は三分の一にしようと誓った。袋麺で油そばを作ると麺のちぢれが互いに絡み合い、乾きかけの茹で

【わたしの“最高傑作”n(ote)】企画参加:いまの最高到達点は!?(ギヤ2)

Uさんが、新たな高みへと、note界のnoterさんを誘う企画を開催しています! みなさんの現時点での最高傑作(一語一技)はこちら↓ 読み応えのある記事が登録されておりますので、noteの世界を、お散歩がてら、立ち寄ってみては如何でしょうか(^^♪ さて、前回の(ギヤ1) 【関連記事】 からのバージョンアップ版!?ですwww 今回は、 「やってみた」 ドヴォルザーク: 交響曲第9番「新世界より」第4楽章 いや 「ひとりでできるもん」 ショスタコーヴィチ:

「推し」の代わりに差し入れや寄付も! 韓国の最新「推し活」事情――短期連載#1「ドラマで読む韓国」金光英実

「太陽を抱く月」「雲が描いた月明かり」「ミセン」……数々の韓国ドラマ作品で字幕翻訳を手掛けてきた金光英実さん。そのキャリアとソウル在住30年の経験をもとに執筆した新刊『ドラマで読む韓国』は、現代韓国の文化や社会を知るのにうってつけの一冊です。9月10日予定の刊行に先立ち、内容の一部を抜粋してお届けします。 ファン文化をつくる「マスター」の存在 自分の好きなアイドルやアーティスト、俳優などを「推し」と言う。私の周りには、韓国人アーティストや俳優を応援する「推し活」に熱心な友人

「intermission ⑬」瀬田貞二氏の『行きて帰りし物語』

ここにあげた記事は、2006年12月に記録していた文章に加筆したものです。     “瀬田貞二さん”・・・おそらくあまりご存じない方の方が多いかもしれませんね。 たくさんの児童書の創作や翻訳で功績を残し1979年に惜しまれながら亡くなられましたが、この方はとてもシャイで控えめで講演とか講座を行うなどということを滅多になさらなかったそうです。   そんな瀬田さんが亡くなられる約1年前、もしかしたら“その時”を感じられたのか、珍しく最初で最後の講座「児童図書館講座」を都立日比谷図

「何の役にも立たない知識」が役に立つ、その瞬間が好きだ

これは、ある友人から久しぶりにきたLINEです。 その友人と私は過去、お互いに切磋琢磨してスキルを磨いていた時期があって、一緒に簿記3級の試験を受験したこともあります。 彼は資格や副業、スキルアップといった自己研鑽に余念がなく、ここ最近も精力的に活動しているようでした。 「いやー、特になんもしてない!」 と私は返します。 正確には「学び」はあったのですが、 そのとき私は、「カラスの生態」について学んでいたのです。 (もちろんそれは、言いませんでした) 今回は私がそ

『やわらかい文法』ご恵贈御礼

著者の定延利之さんから頂きました。 目次は版元ドットコムにあります。 著者の定延氏の研究を知る者なら分かるが、「文法」と言ってもたとえば「雨のようだ」と「雨らしい」の違いとかではなく、そういったことも含みながら、「それでね」で「ね」の声は下がらないことや、「あの人って話、長くない?」とこっそり聞かれたとき、「だよね」とか「よね」とは返せるけど、「だ」とは返せないことなど、言われてみるとたしかにとなる例がたくさん挙げられている。 説明のキーワードも「発話の権利」や「非流暢

先生の著書

先日、1冊の本を読み終えた。著者は大学時代の担任である。 大学に担任? 他の大学にもいるのだろうか? 私の大学には担任の先生がいた。「クラス」とか「担任」とかは、高校までだと思っていたから驚いた。先生は三十代半ばで、就職したてのようだった。大学はお年寄りの教授ばかりだと思っていたので、担任の先生の若さも意外だった。 担任のお仕事 担任の先生自身、大学生の担任の先生というポジションにとまどっているように見えた。1週間に1回、クラスの時間がある。まるで高校のように。何をす

竹内一郎「人は見た目が9割」読書感想文

突き付けられる題名。 「ですよねぇ」としかいいようない。 読むまでもない。 本当にそのとおり。 いや、9割はちがう。 人は見た目が9割9分。 今までどれほど、見た目で忸怩たる思いに陥ったことか。 男性からは、警戒の目を向けられる。 チンピラみたいな下品なヤツからはカラまれる。 こっちは上品なのに。 女性は走って逃げる。 そのあたりは露骨だ。 例えば、夜の帰り道などで、人通りもなくて、ふと気がつけば少し前を女性が歩いている。 こっちは右に曲がろうとしていると、向こ

ない日記「五山の残り火でマシュマロを焼く」

 十五夜も近づいたので五山の残り火でマシュマロを焼きに京都へ行ってきた。  毎年八月十六日に京都では五山送り火が行われる。五つの山でかがり火を焚き、お精霊(しょらい)さんと呼ばれる死者の霊をあの世へ送り届ける行事だ。大が二つ、妙、法の文字と、鳥居、船の形が次々に浮かび上がる。京都の人々は家から出て送り火を眺め、盆を終わらせる。  僕が住んでいた京都大学熊野寮は五山送り火を見るのに絶好のスポットだ。京都は景観条例によって四階建てより高い建物が基本的に禁止されている。そのため四階

【新書が好き】禅と日本文化

1.前書き 「学び」とは、あくなき探究のプロセスです。 単なる知識の習得でなく、新しい知識を生み出す「発見と創造」こそ、本質なのだと考えられます。 そこで、2024年6月から100日間連続で、生きた知識の学びについて考えるために、古い知識観(知識のドネルケバブ・モデル)を脱却し、自ら学ぶ力を呼び起こすために、新書を学びの玄関ホールと位置づけて、活用してみたいと思います。 2.新書はこんな本です 新書とは、新書判の本のことであり、縦約17cm・横約11cmです。

高学歴ってどうなのよ

 芸人がテレビに出続けるためにキャラは必須だ。芸人は一瞬画面に映っただけで視聴者に強い印象を与え、覚えてもらわなければならない。そのためにテレビが編集によって派手に脚色できるペルソナを差し出す必要があるのだ。  とはいえ、キャラと向き合うのは大変辛い作業である。僕のように自分に色々な才能があって多面的な魅力を持ちたいと願う人間にとっては特にそうだ。なぜならキャラとはその人を構成する様々な要素から1つだけ輝くものを取り出して、その1つで全身を覆ってしまうと完成するものだからだ。

パレスチナ問題と電波少年【読書感想文】中川浩一『ガザ 日本人外交官が見たイスラエルとパレスチナ』

Audible。 この争いの背景を知るよい勉強になった。 「洗脳の最前線」という言葉が、この問題の難しさを象徴している。 一方、調べればわかるような事実の記述も多く、現場で体験した外交官ならではのエピソードをもっともっと知りたかった。 とはいえ、日本の国益を第一とする公人には限界があるのかもしれない。 その分、最後の強いひとことには、その葛藤がにじみ出ているようで、おもわず背筋が伸びた。 87点。 ところで昔『進め!電波少年』で、松本明子さんがPLOのアラファト

『バチェロレッテ』は営業力の勝負だった

 『バチェロレッテ』がこんなにも面白いとは思わなかった。  『バチェロレッテ』(正確には『バチェロレッテ・ジャパン』)とは、美人で社会的地位も確立した女性の元に、イケメンで仕事も超順調な男たちが集まり、女性の心を射止める為にデートをしながらバトルを繰り広げる恋愛リアリティ番組だ。  この説明を読んだ段階で「なんだよそれ」と興味を失ったそこのあなた。めちゃくちゃ気持ちがわかるので僕と友達になっていただきたい。僕だって以前は見てもいない番組に対して失礼なほどに文句が思い浮かんでい

哲学はどこにたどりついたのか、哲学を勉強するとはどういうことなのか——大好評シリーズ『哲学史入門』完結!

哲学研究の第一人者が集結し、西洋哲学史の大きな見取り図を示すシリーズの第3弾『哲学史入門Ⅲ 現象学・分析哲学から現代思想まで』が大好評発売中です。著者に谷徹さん、飯田隆さん、清家竜介さん、宮﨑裕助さん、國分功一郎さんをむかえ、20世紀の現代哲学として、現象学、分析哲学、フランクフルト学派を中心とした社会哲学、フランス現代思想を扱います。 刊行を記念し、斎藤哲也さんによる「はじめに」の全文、そして國分功一郎さんがカントの『純粋理性批判』を引きながら哲学史を学ぶ意義について語る終

『安楽死が合法の国で起こっていること』児玉真美(ちくま新書)母のこと祖母のこと【読書感想文】#42

児玉真美『安楽死が合法の国で起こっていること』を読む。ちくま新書1759。 しばらく前に読みおえていたが、良い本で、ちゃんと書きたいとおもっているうち、日が過ぎてしまった。 良かった本ほどそう云うことになりがちで、けっきょくは内容を忘れてしまって、いい加減なことになる。 まとめようなんておもわないほうがうまくいくのかもしれない、人生も本の感想も。 僕の母はよく、日本でも安楽死が合法化されてほしい、と云っている。 曰く、老いさらばえて他人の世話になりたくない、だとか、

またKindle Unlimitedに登録したので、ダウンロードした積読を紹介する①

昨日、Kindle Unlimited に登録しました。 Kindle Unlimited(以下、KU)とは、Amazonの提供する「書籍のサブスク」です。 月額の利用料を支払うことで、200万冊以上の本が読み放題。いや200万てすごいな。 KUは、私にとっては「最高のサブスク」です。 普段から乱読するタイプなので、 という手順で有効活用しています。 今回で4度目の登録。 読まれたページ数に応じて出版社や著者に印税が入る仕組みになっているのも嬉しくて、負い目を感じ

【コラム】「親の遺体と暮らすのは年金を不正に受給するためだ」社会は本当にそう思っているのだろうか?

こんにちは はるのさわです。 ご覧いただきありがとうございます。 はじめに 引きこもりが問題になってからずいぶん経つように感じます。母親が亡くなってもお葬式をあげることもなく、共に過ごしている大きくなった子どもがいます。 彼らはどうして家に引きこもっているのでしょうか。 どうして母親の遺体と共に過ごしているのでしょうか? 親の愛が足りなかったからですか。 ではどうやったら愛が伝わりますか。 どうすれば愛したことになりますか。 基本的信頼は人間に希望を与えます。 そ

¥333

なぜ本を読んだ方がいいのか?

私もなるべく本は読むようにしていて、読書家と言われるほどではないですけど、平均すると月に4~5冊程度でしょうか。 最近はビジネス書が多いですけど、小説も好きで時々読んでいます。 やはり本の中にはその人の考えが詰まっていて、自分が知らなかったようなことや思いもしないアイデアが詰まっている。 そこから自分の仕事に転用することもよくあります。 ■ネットでよくないですか?特にビジネスで成功されている方の書籍には「本を読んだ方がいい」ということは、共通して誰もが言っています。

鉄道会社VS地方自治体 を読んで

この本は、 株主に最大の利益をもたらしたい鉄道事業者と 鉄道に公共の福祉のような役割を求める 地方自治体の攻防や これからの鉄道の姿に関する内容。 ■赤字路線の存廃論議  JRでは特に、営業係数の悪い路線を 抽出しその地元とこれからの地元の交通の 在り方の検討をしたいと会議の場を 設けようとした。  すでに、鉄道の役割がほぼ終焉を 迎えた地域もある。 ■鉄道廃止が地域衰退をもたらすわけでない  地域の盛衰は、そこに産業があるか どうかがカギで鉄道が通っているかどうか

【読書コラム】「非モテ」って言うけど、そもそもモテるやつなんて、クラスに一人いるかいないかなんだぞ! - 『「非モテ」からはじめる男性学』西井開(著)

 いつからだろう。「非モテ」を自認する男性が増えてきたのは。ネット上でも目にするし、リアルで若い男の子が自虐的に言っている姿をしばしば見かける。  すっかり市民権を得ている言葉らしいが、ずっと、わたしは「非モテ」という言葉に違和感を抱いてきた。  というのも、モテるって本来、特殊な状況のはずだから。そもそも、モテるやつなんて、クラスに一人いるかいないかだったではないか。つまり、「非モテ」って普通の人なんじゃないの?  芸能人じゃない人が「俺は非芸能人だから」と卑屈になっ

またKindle Unlimitedに登録したので、ダウンロードした積読を紹介する④

Kindle Unlimited (以下、KU)に登録しました。 登録して最初にダウンロードした書籍(=積読)を紹介するシリーズです。 第一回はコチラ。 今回はラストの第四回です。 それではよろしくお願いします。 16.『くらしのための料理学』 17.『はじめての利他学』 18.『人はどう死ぬのか』 19.『数学に感動する頭をつくる』

金持ちなら無免許で事故を起こしても許される国

 「本当は優しい人」という物言いがどうも苦手だ。これを言われてしまうと、「君がそう言うならきっと優しい人なんだね」と一旦納得し、口から飛び出しかけてた矛を納めるしかなくなる。だって「優しい人」のことを悪く言いたくないし、人を表面的な印象で判断する想像力の乏しい人間だと思われたくないから。  でもさ、「本当は」ってなんだよ。少なくともこちらが見た限りではムカつく奴か、失礼な奴か、怖い奴か、横暴な奴か、その他なにかしらの悪感情を想起させるような奴だったのは間違いないはずだ。そんな

【新書が好き】日本の思想

1.前書き 「学び」とは、あくなき探究のプロセスです。 単なる知識の習得でなく、新しい知識を生み出す「発見と創造」こそ、本質なのだと考えられます。 そこで、2024年6月から100日間連続で、生きた知識の学びについて考えるために、古い知識観(知識のドネルケバブ・モデル)を脱却し、自ら学ぶ力を呼び起こすために、新書を学びの玄関ホールと位置づけて、活用してみたいと思います。 2.新書はこんな本です 新書とは、新書判の本のことであり、縦約17cm・横約11cmです。

ない日記「明治時代のBOOKOFF」

 夏があまりにも早く来たので、電車を乗り継いで明治時代に行ってきた。お目当てはBOOKOFF。Instagramでどこぞの誰かが写真をあげていて、本好きの食指が動いてしまった。  毎度のことながら、真田岬駅の乗り換えが面倒で、空港かと思うくらい動く歩道に乗った。もしくはディズニーランドに向かうのに東京駅で京葉線に乗り換えるくらい。ディズニーランドに行くなら夢見心地でボーッと踏板に乗っていればいいが、この日は目的地がBOOKOFFなので、勢いで旅に出たことに早くも少し後悔した。