己斐弘貴

本とことばについて、気になったことを書きます。英検1級、中検準1級、独検2級。広東語、韓国語、仏語、露語初級。アフィリエイトプログラムは利用していません。

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自己紹介

ネコのいる町に住んでいます。 本とことばについて、気になったことを書きます。 英検1級、中検準1級、独検2級。広東語、韓国語、仏語、露語初級。 本について書くときは書影を使いますが、アフィリエイト・プログラムは利用していません。 音楽はK-PopかCanto Popかメタルを聴いています。 最近は、日本語の本は主に家事をしながら朗読や読み上げを聴いています。 目を使える時間は、なるべく英語の紙の本と、その他の言語の本を読むのに充てています。 お風呂やトイレでは、

    • 文学の特権(ウィリアム・ギブスン『ニューロマンサー』)

      おもしろい比喩だ。 海外小説での人物描写は、目の色や髪の毛の色にこだわったものが多く(日本の小説ではみんなどちらも黒だから取り立てて言うことがないわけだが)、唇も性的なアピールとして描かれることはあるだろうが、「子供が描いた飛ぶ鳥の絵」に例えるというのはめずらしい。 女性の唇の性的な要素を子供っぽく抽象的なもので中和して、無機的な世界を演出しているということだろうか。 女性との思い出をノスタルジックで無垢なものとするための象徴だろうか。 具体的な女性の顔は思い浮かばな

      • 金壺眼(きんつぼがん)

        Audible を聴いていたら出てきた言葉。 あら捜しや揚げ足とりが目的ではないので作品名は伏せるが、もちろん正しくは「かなつぼまなこ」である。 単に朗読者がこの言葉をご存じなかったのだろう(オーディオブックの制作過程にプロの校正者が関与しているのかは気になるけど)。 おもしろいのは、知らない漢語を見た時に、人は音読みをしてしまいがちだ、という点だ。 なぜなら、個々の漢字の音読みを知っていれば、初めて見る熟語でも、高い確率で読めてしまうからだ。 良し悪しは別として、

        • 不可欠と可欠

          一昨日のニュースより。 「不可欠なパートナー」っていい言葉だ。だって「あなたがいないと、私だめなの」ってことだもの。言われてみたい。 逆に「可欠」って聞かない。 「可能」と「不可能」はよく聞くけど、「不可欠」ほど「可欠」は聞かない気がする。 調べてみたら「可欠アミノ酸」という言葉があって、コトバンクによると「非必須アミノ酸ともいう。食物の中に含まれていなくても欠乏症状の認められないアミノ酸」なのだそうだ。へぇー。 でもこれって「なくてもいい」ってことだ。 「可欠」

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          アルタニアンのダルタニアン(『三銃士』アレクサンドル・デュマ)

          『三銃士』の原書より。前書きを読んでいておどろいた。 ダルタニアンは d'Artagnan だったのだ。 「ダ」の d は前置詞の de だったのだ。 ダルタニアンは、南仏にある地名「アルタニアンの」という意味だったのだ。 「銃士ダルタニアン」といえば聞こえはいいが、いわば「東京もん」とか「関西人」などと言っているようなものだ。 つまり例えば「私は秋田出身の己斐です」をフランス語で言うと Je suis Kohi d'Akita. (秋田の己斐)で、人からは「ダキタ

          アルタニアンのダルタニアン(『三銃士』アレクサンドル・デュマ)

          新しい大衆小説と神経漫遊者(ウィリアム・ギブスン『ニューロマンサー』)

          読み始めてしばらくして、ふと「ニューロマンサーってネクロマンサー(死人使い、降霊術)のもじりだったのか!」と気づいた。 調べてみると、半分当たっていた。 ウィキペディアによると、あとの半分は New Romance (新しいロマンス)をもじったもの、ということらしい。この場合の「ロマンス」とは、恋愛小説というより、大衆小説のことだろう。 次に、「ニューロン(神経)」はわかるけど、「マンサー」って何さ?と思って語源を調べてみたら、ラテン語で manteía「予言、占い」の

          新しい大衆小説と神経漫遊者(ウィリアム・ギブスン『ニューロマンサー』)

          万葉集の「伊香保嶺」について調べていたら、「イカに骨はあるのか?」について書かれた記事が山ほど出てきた。みんなそんなに気になる?イカの骨。日本人 伊香保嶺よりも イカの骨。

          万葉集の「伊香保嶺」について調べていたら、「イカに骨はあるのか?」について書かれた記事が山ほど出てきた。みんなそんなに気になる?イカの骨。日本人 伊香保嶺よりも イカの骨。

          心の距離(ジェーン・オースティン『高慢と偏見』)

          人と人の心が離れていることを表す表現はいろいろある。 「心の壁」や「心の扉」といった物理的なものだったり、冷たさなど温度だったり、それこそ距離だったり。「彼までラブkm」なんてマンガもあった。以前似たようなことをロシア語のポップスについても書いた。 冒頭の引用では、英文学最高峰のひとつと目されるのこの小説の主人公エリザベスとダーシー氏の二人は、今二人が席についている机の幅と同じくらい遠くに離れている、と言っている。 当たり前と言えば当たり前だ。だって2人の間に机があるん

          心の距離(ジェーン・オースティン『高慢と偏見』)

          シューペーター、シューペーハウアー、シューペータイン

          ぺこぱの出演するCMを観ていて、「シュウペイ」という名前は、ポップだなと思った。 そこはかとなく外来語の趣もある。 例えば、全肯定自由主義経済は、オーストリアの経済学者ヨーゼフ・シューペーターが提唱した、とか言われたら、それっぽくはないだろうか。 例えば、ドイツの哲学者アルトゥール・シューペーハウアーの最期の言葉は「悪くないだろう」だった、と言われたら、それっぽくはないだろうか。 例えば、ドイツの物理学者アルバート・アインシューペータインが多様相対性理論のアイデアを思

          シューペーター、シューペーハウアー、シューペータイン

          【今日の良いことば】待たねばならない

          耳の痛い言葉である。 というか、90年代からこんなことが言われていたのか。 とか言いながら、シュメールの粘土板にも同じことが書かれていたりするのである。 というわけで、今日も即席で供するので、じゅうぶん味わって、しっかり咀嚼して、あまさず嚥下して、絨毛突起でゆっくり吸収して、すべて明日へのエネルギーに変えていていただければ、望外の喜びである。

          【今日の良いことば】待たねばならない

          驟雨。奉行。慕情。 オノマトペっぽい漢字語を集めてみた。 シュウー、ブギョー、ボジョー。 高速で飛んできた鳥がブルドックにぶつかって、もろともに池に落ちる光景が目に浮かばないだろうか。

          驟雨。奉行。慕情。 オノマトペっぽい漢字語を集めてみた。 シュウー、ブギョー、ボジョー。 高速で飛んできた鳥がブルドックにぶつかって、もろともに池に落ちる光景が目に浮かばないだろうか。

          未と末が分からない episode2 ニーモニック

          前回の記事で、「未」と「末」の違いについて調べていたら、海外の人も区別するのに困っているようで、見分け方を紹介しているサイトがあった。 いくつかあげてみるので、私と同じように困っている方は参考にしていただければ幸いである。 ①正統派。中国人による解説 末 「木」の上に長い棒を足して、「終わり」を表したもの。 未 「木」の上に短い棒を足して、これからまだ育つ余地があることを表したもの。 ② 未 △に似ている。上に向かっているので、まだ先があり、未来を表している。 末 ▽に

          未と末が分からない episode2 ニーモニック

          未と末が分からない

          一度おぼえまちがえると、一生ひびくものがある。 私は未と末の違いがわからない。 つい「月未」とか「末来」とか書いてしまう。 子どものころには「わ」と「れ」の区別が苦手だったし、「考」と「孝」が混ざって、「考」の下が「与」になってしまったりしていた。 未と末の違いが分からない事にメリットがあるとすれば、この2つは他の文字と違って、2本の横棒を同じような長さに書けばごまかしがきく点だ。私はどっちがどっちか分からなくなると、ときどきこれをやってごまかす。 ちょっと調べてみ

          未と末が分からない

          タブレット虐待

          帰宅して、いつものようにタブレットの電源ボタンを押す。 うんともすんとも言わない。 長押しするとメーカーのロゴが出るが、立ち上がらない。 安物とは言え、まだ買って半年にもならない。このままくたばられたのでは、さすがに収まりがつかない。 「寝たふりしてんじゃねーよ」とばかりに長押しを何度か繰り返していて、はたと気付いた。 もしかしてバッテリー切れでは? コンセントにつないでみると、電源は0%だった。 胃の中に何も残ってないのに、叩き起こされ、けなげにもロゴマークを

          タブレット虐待

          【読書感想文】セス・グレアム=スミス『高慢と偏見とゾンビ』(2009)

          半年くらい前にこの本をセールで買って(今見ても199円だ。もしかして定価か?)、予習として原作を5カ月くらいかけて読んだ(たぶん再読)。 原作はさすがに面白かったけど、この本は20%ほどで挫折した。 原作にときどきゾンビと武術と武器の話がでてくるだけなんだもの。原作を読んでなかったら楽しめたかもしれないが、まさか原作を先に読むべきでないパロディ本があるとは思わない。 共著者にちゃんとジェーン・オースティンの名前があるから看板に偽りはないけど、タイトルは『高慢と偏見、時々

          【読書感想文】セス・グレアム=スミス『高慢と偏見とゾンビ』(2009)

          【消えた職業】タイピスト

          タイピストって懐かしい響きだ。確かにそういう職業があったのだった。エレベーターガールとか、バスの車掌さんとか、そういう職業が成り立つ余地があったのだ。優雅だったとさえ思える。 当時のタイピストのステータスって、今でいうとプログラマーとかウェブデザイナーみたいな感じなのだろうか。 20年ほど前に読んだビジネス書には、「英語とパソコンを使えるようになる必要はない。使えるやつを使えるようにな人間になれ」なんて景気のいいことが書いてあったが、あれを書いた方はその後どうされているの

          【消えた職業】タイピスト