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新書の内容は理解できなくていい

新書を読んでいてぶつかる壁の1つに「何を言っているのかわからない……」「知識不足で理解できない」というものがある。

私は今年、新書を読み始めた。これまで55冊以上の新書を読んできたが、学生時代に勉強をあまりしてこなかったせいで、ちんぷんかんな新書にも遭遇した。

この記事は、今年新書を初めて読んだ私が感じた新書の面白さの一部を紹介する。ここに書ききれない新書の面白さは別の記事でいずれ書こうと思う。

新書の面白さは後から来る

新書に書かれていること全てを最初から理解しようとしなくていい。わからない部分は読み飛ばして進めばいい。いずれ、急に分かる瞬間がやってくる。

読んだ瞬間の面白さとは別に後からじわじわ面白さがやってくる。私はそう感じた。

新書は突然、点と点が繋がる

多くの新書を読んでいると、点と点が線になる瞬間がやってくる。戦後の食糧難はここにまで影響を及ぼしていたんだ!この哲学者に名前、ほかの新書でも見たぞ!ということもあれば、この著者もあの新書を読んだんだ!と仲間意識が芽生えることもある。

知識が豊富な人は、おそらく大量の線が点と点を結んでいる。

しかし、新書初心者の私はまだ線の数が少なく、よく見なければ分からないようなか細い線がなんとか点と点を結んでいる状態だ。しかも数えられる程しかない。

それでも、新書は面白いと感じる脳と心はある。

線で結ばれていない点が多ければ多いほど、この先で面白いと感じる瞬間は増えてゆく。過去の勉強不足も結果オーライかもしれない。

新書は好きなところだけ読んでもいい

新書は全て読むのが理想だが、目次を見て好きなところだけ読んでもいい。小説ではないので、どの章や項目から読んだって楽しめる。一冊読み切る自信がないのなら、気になる部分だけ読めばいい。理解できなければ飛ばせばいい。

そもそも本を読むことに慣れていない人は、全て読み切ることを目標にしなくていいと思う。

新書は何となく読む

新書は理解できるまでじっくり読もうと思わなくていい。何となく読み進めるのが新書を楽しむコツだ。

学生のころ、数学の先生に2択の質問したことがある。

  1. 基礎を完璧にしてから応用に進む

  2. とりあえず基礎から応用まで解く

どちらを選択するべきか聞いたが、答えは後者の「とりあえず基礎から応用まで解く」だった。

昔から何となく基礎、土台がしっかりしていないとその先を積み上げていくのは難しい気がしていた。

大きなピラミッドを作るには、土台が大きくなければいけない。しかし、土台を完璧にしようとするとなかなかその先へ進めない。時間には限りがあるのだから、少し歪なピラミッドだろうが先に進んだほうがいい。

新書も同じだ。全て理解してから先に進もうと思うとなかなか読み進めることができない。この世界には信じられない量の新書が存在する。同じ場所に留まっているのはもったいない。

新書を読んだ後に、要約できたり実生活に使えるような教訓を得たりするのが1番いいのかもしれない。だが、「あぁ、面白かった」「楽しかった」「読んでよかった」と思えればいいと私は思う。

少なくとも、今年初めて新書を読んだ私のような新書初心者はそれでいい。

新書は気楽に読めばいい

大人になった今、別に誰かから強制されて新書を読むわけじゃない。読書感想文を提出しなければいけないわけじゃない。難しいことを考えずに気楽に読めばいい。

これまで読んだ新書も、内容を今しゃべってみろと言われたら難しい。新書を手に取ってパラパラ見て、あぁそういえばこういう内容だった!と思う。

暗記してやろう!という気持ちで読んでいないのもあるが、新書を読めば読むほど、よほどの記憶力がなければ忘れてしまうのが普通だ。まあ、頭の片隅には残っているので、忘れたというより思い出せないだけとも言える。忘れてもいいやと気楽に読むのがいい。

新書には難易度がある

新書は初心者でも読みやすいエッセイ風のものやインタビュー形式のものから、その分野の専門家が読むような難解なものまで存在する。

当たり前だが初めて新書を読む時には難易度の低いものを選ぶべきだ。あまりに難し過ぎるとつまらないと感じてしまう。睡眠導入本になってしまう。

私は度々、タイトルに惹かれて中身もろくに見ないで新書を購入することがある。読み始めて難し過ぎると気づき、頭を抱えるのだ。

自分のレベルに合った、もしくは自分のレベルより少し上の新書を読むのがいい。ある程度、新書になれてきたら数冊に一冊ぐらいレベルの高い新書を選んでもいいと思う。

初心者におすすめの新書

最後に、今年新書を読み始めた私が、初心者におすすめする新書をいくつかのジャンルに分けて紹介する。

【食文化】

日常生活のすぐそばにある食文化についての新書。

ソース焼きそばの謎 塩崎 省吾 (著)

国内外の焼きそばを1000軒以上食べ歩いてきた著者による、ソース焼きそばの謎に迫る新書。

いつの間にか存在するソース焼きそばは、どうやって誕生したのか。どうして醤油焼きそばではないのか。多数の史料・取材によって、深掘りされていく。お腹がすくので夜中に読むのは厳禁。

焼きそばが好きな人、食べ物のルーツを知りたい人、美味しいソース焼きそばのお店を知りたい人におすすめ。

ちなみに著者の『あんかけ焼きそばの謎』もおすすめだ。

「おふくろの味」幻想~誰が郷愁の味をつくったのか 湯澤 規子 (著)

「おふくろの味」を説明しろと言われても難しい。だけど、なんとなく全員が理解できる。「おふくろの味」とは何なのか、社会や時代から紐解いていく新書。

近年話題になった「お母さん食堂」事件や、ポテサラ論争までを考察されている。

「おふくろの味ってなに?」と思った人、郷土料理に興味がある人におすすめ。

味なニッポン戦後史 澁川 祐子 (著)

基本五味(うま味、塩味、甘味、酸味、苦味)と辛味、そして第六の味覚と言われる脂肪味の7つの味から戦後を読み解く新書。

日本人の味覚は、食糧難や高度成長、バブル崩壊、格差の拡大へなどにより、常に変化してきた。味覚の変遷から戦後の日本を見ていく。

味の素論争が気になる人、味覚について知りたい人、食文化や食べることに興味がある人におすすめ。

【昆虫】

虫に関連する新書。虫が苦手でも興味深く面白い。

バッタを倒しにアフリカへ 前野ウルド浩太郎 (著)

サバクトビバッタはアフリカで数年に1度大発生し、農作物に大きな被害を与える。そんなバッタ被害を食い止めるため、単身、モーリタニアへと旅立ったバッタ博士の新書。

新書というよりエッセイ色が強く、バッタに食べられたいというユニークな著者のユーモアにより難しい研究過程も楽しめる。バッタの話だけでなく、現地の人とのトラブルも書かれていて面白い。

昆虫に興味がある人、ユーモアのある新書を読みたい人、海外生活のエッセイが好きな人におすすめ。

著者の続編「バッタを倒すぜ アフリカで」もパワーアップしていてとても面白い。

昆虫はすごい 丸山 宗利 (著)

恋愛、戦争、奴隷、共生、狩猟採集、農業、牧畜、建築など全て昆虫が先にやっている。昆虫のすごさを記した一冊。

昆虫ってこんなことまでしているのか!と驚かされる。怠惰な人間よりよっぽど真面目に丁寧に、せっせと生活している。

昆虫が好きな人、昆虫に今まで注目してこなかった人におすすめ。

特殊害虫から日本を救え 宮竹 貴久 (著)

日本の食を支えるため、”特殊害虫”の根絶事業に携わった現役昆虫学者の奮闘の記録。

ゴーヤやマンゴーが日本全国の食卓に並べるのは害虫根絶に全力を尽くし、人生をかけた人々がいたから。害虫根絶の苦悩と、根絶できて「はい、おわり」とはいかない難しさが書かれている。読むべき一冊。

日本に住むすべての人におすすめ。

【人間関係】

人間関係に悩む人は多いもの。新書を読めば少しは楽になるかもしれない。

友だち幻想 菅野 仁 (著)

複雑な人間関係の中で、必要以上に傷つかないための新書。

「みんな仲良く」「そのままの自分を受け入れてくれる人がいる」という幻想をとっぱらい、新しい人間関係の作り方を提供する。他者の考えを変えるより、自分の考えを変える方がずっと簡単。

「みんな仲良く」の言葉に苦しめられている人におすすめ。

悪口ってなんだろう 和泉悠 (著)

そもそも悪口の定義とは?批判や冗談、自虐と何が違うのだろうか。こうした問いに答えを出す新書。

この新書を読めば相手の発言について「これは悪口じゃないな」と思える。必要以上に傷つかなくてすむ。

誰かの悪口に苦しんでいる人、「悪口ってなんでだめなの?」という子供の疑問に答えられない人におすすめ。

カスハラの犯罪心理学 桐生 正幸 (著)

長年カスハラにかかわってきた犯罪心理学者が、調査実績を基にカスハラが誕生する構造を分析、さらに対策を提案した新書。

カスタマーハラスメント(カスハラ)は、コロナ禍により拍車がかかった。2022年2月には、厚生労働省から「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」が発表され、大きな社会問題となっている。

接客業をしている人、犯罪心理学に興味がある人、カスハラをしてしまった経験がある人におすすめ。

【言語】

普段使っている言葉、言語の面白さを教えてくれる新書。

言語の本質 今井 むつみ (著), 秋田 喜美 (著)

認知科学者と言語学者によって、言語の誕生と進化の謎を紐解き、ヒトの根源に迫った新書。

どうして人は言葉を持ったのか、子供はどうやって言葉を覚えるのか、オノマトペは言語か、言葉には謎が詰まっている。

言葉の不思議に興味がある人におすすめ。

ハッとする言葉の紡ぎ方 コピーライターが教える31の理論 堤 藤成 (著)

コピーライターとして数々の賞を受賞した著者が、言葉を紡ぐ楽しさを解説した新書。

著者の経験だけでなく、古今東西の名コピーを紹介し解説している。日常に溢れている名コピーを紐解くことで、新しい気づきと言葉の面白さに出会える。

コピーライターを目指す人、自分で言葉を紡ぎたい人、言葉の面白さに触れたい人におすすめ。

奇妙な四字熟語 杉岡 幸徳 (著)

世にある不可解な熟語を、多数集めて解説と例文を加えた新書。

已己巳己(いこみき)……似たもの同士
照猫画虎……猫を見ながら虎の絵を描く
変態百出……次々に姿を変える
白馬非馬……白い馬は馬ではない
梁上君子……天井の梁の上にいる立派な人
徙宅忘妻……引っ越しの時に妻を忘れる

聞いたこともない、いつ使うかもわからない熟語。よく聞く熟語でも本当の意味は違ったり起源に迫ると壮大なストーリーが隠されていたり。

不可解な熟語が好きな人、熟語の起源を知りたい人におすすめ。

新書は理解できなくても面白い

新書は難しいと感じても、とりあえず最後まで読んでほしい。

何となく読み進めてみて、いつか読み返した時に未来の自分が理解できると思えばいい。

実際、私も一通り読んだものの理解が追いつかなくて未来の自分へ託した新書がある。きっとたくさんの新書を読んだ未来の私なら理解できるはずだ。

新書の内容は理解できなくてもいい、面白いと思えればそれでいい。新書は面白いよ。本当に。

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