お題

#SF小説が好き

SF小説への愛や、好きな作品・作家を語ってください!

急上昇の記事一覧

月の巣と逆さ吊りの街~金平糖の昇る空〜(ショートストーリー)

 街が逆さ吊りになると、雨季の合図だった。  雨は〈月〉が連れて来る。みんな雨季を待ち焦がれているけれど、降り注いだ雨水は地上を覆い尽くしてしまうので、月の出が近づくと街々は一斉に移動を開始する。  巨大なレールに乗って地平線まで走り、そこから上に向かって大きな半円を描くレールにしがみ付いたまま、ちょっとずつ傾きながら空へ上っていく。街の土台はレールから離れられない。だから空の上でレールが再び水平になった時には、街は上下が百八十度回転して、逆さまに垂れ下がる格好になる。  

【短編SF小説】プラネタロイド

 例えば砂漠の砂ネズミが、荒波さか巻く大海原を想像出来ないように。  わだつみにたゆたう深海ザメに、風そよぐ大草原を想像出来ないように。    護糧閣の住人である僕たちに、空を巡る満天の星々を想像することは出来なかった。  僕がはじめて星というものの存在を知ったのは、祖母のふとした言葉からだった。  護糧閣の行政局が配給するいつものスープを温めながら、こう言ったのだ。 「昔は、スープに入れる具材が星の数ほどあったんだけどね……」 「星って何?」  尋ねたのは、隣家の娘で幼馴

南桐弥「きまぐれドーム」(「よいこのanon press award 2023」最優秀賞作品)

15歳以下を対象にしたSF作品コンテスト「よいこのanon press award 2023」の最優秀賞受賞作品である、南桐弥「きまぐれドーム」を全文掲載いたします。 ◆あらすじ ◆審査員による講評 きまぐれドーム 「あれ、また雨だ」  今日も予告なしで雨が降った。  ここ数日は夕方に時々雨が降る。  なぜ降るのか分からないが政府の気まぐれか、最近雨は降っていなかったし農民の抗議でもあったのだろうと僕は思う。今思えばこの考えを聞いてもあまりこの国のことを知らない人だと

【短編】さらば地球よ!

 それは2019年七の月のできごと。  ノストラダムスのおっさんは20年読みまちがえたらしい。  ある日、ある朝、突然に!  ぜんぶで31基の超デカい円盤が地球にやってきて、世界の主な都市の上空に陣取った。  そう、『インデペンデンス・デイ』みたいに!  かれらは上空から超ペラペラな地球のことばで話しかけてきた。 「突然ですが、降伏してください」みたいなことを。  アメリカの円盤は英語で、フランスのはフランス語、日本のは日本語で。同時刻に、同じ声で、ちがう言語のごあいさつ。

はじめまして、こんにちは。 このnoteは未訳の作品を中心に、最近読んだ中華SFをご紹介します。 どうぞ見てってください。

書き殴り(仮題)11

管理下に置かれるJ国民においても 日々の生活において日常品の買い物 ネットなど出来る環境は与えられている。 J国民の意識から不満や不安を 徐々に取り除き、このままでも 特に問題無いと感じさせ このままではいけない 変わらないといけない、と 考えることをやめさせるためだ。 個人で反抗的な態度を取り すぐに労働人間としての機能を 取り消された者もいた。  Re   アメと鞭 どちらも与えられるのを 待っているだけでは 結局は何も変わることは無い。

スタニスワフ・レムの名作『ソラリス』惑星に潜む謎:人類と異なる知性との邂逅、そして愛の行方

宇宙には、我々が到底理解できない存在がいるかもしれない。 もしその存在が、私たちが夢にも思わない形で知性を持っていたとしたら、どうやって彼らと「会話」すればいいのでしょうか? スタニスワフ・レム氏の名作『ソラリス』は、この問いを投げかけます。そして、あなたに「異なる知性」とは何かを考えさせる、圧倒的な知的体験を提供。 心理学者クリス・ケルヴィンが向かったのは、謎に満ちた惑星ソラリス。この星を覆う意思を持つ海が、彼に、そして読者に何を語りかけるのか。 SF文学の枠を超え

親子の人体実験〜2分間小説〜

その男は、子どもを持つべきではないと思っていた。 幼い頃の記憶がすっぽりと抜け落ちていたS氏には、両親との温かな思い出が一つもなかった。どこかに遊びに行った記憶も、一緒にご飯を食べた記憶も、何もなかった。だから結婚しても、子どもは要らないと決めていた。しかし妻の熱心な願いを、ついに十年目で受け入れることにした。 「パパ、こうやってグルグルってやるんでしょ?」 息子が不思議な手つきで折り紙を折っている。S氏は首を傾げた。見たことのない折り方だった。 「どこで覚えたの?」

恋愛SF『レディランサー アグライア編』6章-10

6章-10 ジュン 「あなたたちが本気で、そんなことを望んでいるとは思えない。だって、それなら、自分たちで改革すればいいでしょう?」  するとメリュジーヌは、あたしに向き直った。風が動いて、甘い香水の香りを運んでくる。思わず、くらりとするような香り。あたしは百年生きても、こんな風にはなれないだろう。 「わたしたちでは、どう訴えても、市民に信用されないからよ」 「へえ、それは自覚しているんだ」  と言ったら、メリッサが慌てた様子で両手を上げかけ、そのまま固まった。辺境

【読了】劉慈欣『白亜紀往事』

恐竜と蟻が築く太古の文明 約200PのSF超スペクタル  かつて地球の覇者であった恐竜と、高い社会性をもつ昆虫・蟻は、白亜紀時代に共生関係をつくり、高度な文明を築きあげていた。小説『白亜紀往事』は、そんなとんでもない設定で紡がれるSF超スペクタル作品です。著者は アジア人作家として初めてヒューゴー賞を受賞した中国のSF作家・劉慈欣(りゅう・じきん/リウ・ツーシン)。『白亜紀往事』が日本で出版されたのは2023年ですが、本書は中国で2004年に発行された 劉氏の初期長篇となり

私の知る、ペルシア(Persia /Farsi)に着想して描いたファンタジー作家達

今回は 私の知る、ペルシア(Persia /Farsi)に着想して描いたファンタジー作家達 としてみました。 ①田中芳樹さん(アルスラーン戦記)歴史SF作家「田中芳樹」さんによるライトノベル。 中学生の頃に『アルスラーン戦記』を読み漁っていました。『パルス王国』という架空の国の王太子として生まれ、何故か両親から憎まれた出生の謎と、純粋無垢な彼の心に感銘して未来の王政を変えることに賭けた仲間達の物語です。 漫画家、荒川弘さんによって漫画、アニメーションが誕生してより多

十月は黄昏の銀河帝国 ⑫

12.スターフック作戦  追っ手の乗ったリフトが迫る。  エレベーターシャフトの中を降下しながら、ネープはそれをどう止めるか決めた。  やはりリフト下部の、反発場発生装置を破壊するのが得策だろう。リフトを支える四本のガイドレールの間には十分な隙間がある。そこから下へ潜り込めば装置に手が届くはずだ。  ネープは上昇して来たリフトを待ち構えて、その屋根の上に立った。  次の瞬間、一条の細い光が屋根を貫通してネープの足元をかすめた。 「!」  ビーム弾ではない。  光は一度リフ

Reiwaレジスタンス 第一話『崩壊の序章』

第一話: 「崩壊の序章」 西暦2040年、日本。エネルギーの枯渇、食料難、ハイパーインフレーション、未曾有の少子化が進行し、頻発する大地震が社会をさらに混乱させていた。内戦が勃発し、国は崩壊の危機に瀕していた。さらに、日本はアメリカと中国に侵略され、分割されて植民地となっていた。そんな中、4人の若者が立ち上がる。 登場人物: タケル: 技術者。エネルギー問題を解決するための技術的知識を持つ。 アヤ: 環境活動家。持続可能な食料供給システムを構築するために奮闘する。 ケ

リカル株式会社「トータルリコール」

 フィリップ・K・ディックは史上最も優れたSF作家の一人だろう。だが視点を変えれば、LSD浸りの狂ったオカルト野郎とも言えないわけでもない。  はっきり言って、私はディックのオカルトが苦手だ。イエス・キリストどうのこうの以前に私は生粋の無神論者だし、”神秘体験”のような、科学で証明できないものは冷笑する科学至上主義者だ(なおXファイルのファンである)。  さらに言うと、「スキャナー・ダーグリー」のような、麻薬がもたらす幻覚体験についてもイマイチ。非常に現実味が強い近未来だが

【短編】『コンピュータが見る悪夢』(前編「殺人」⑦)

プロローグはこちら コンピュータが見る悪夢 (前編「殺人」⑦) 「そうか。今回もか――」  上官はまるでため息をつくかのように言葉を吐き捨てた。 「今回もってどういうことだ? なにか知ってるのか?」 「ああ」  上官が実際にため息をついたのか、回線の向こうから深い息の根の音が聞こえた。すると疲れ切った声で語り始めた。 「実は最近似たような事件が全国各地で確認されているんだ。本人の意思に関係なく、まるで神から司令を下されたかのように突然何者かに恨みを持ち始める。そ

『マザー・スノー』ママは魔法使い②

【「相手の正中線上に入ったらアカン。 つまり、真正面に入るなっちゅうことや。 これも、相手さんに緊張感を与えるさかい。斜め45度くらいの場所に居るのが望ましい。」】 私、優希が前の人生で『高橋 美幸』でいたころ。スナックのママになるまで働いていたキャバレーの先輩たちが、仕事終わりに私の住むアパートでたびたび酒盛りをしていた。 その時先輩がほろ酔い気分で話してくれた『対人スキル』が、時を超えた今、『田村 優希』である私を助けることになる。なんとも不思議なことに。 『高橋

星降紀

石田浩介について 沖縄近海、本島から約二十キロ離れた公海上で、宇宙空間から突如降ってきた惑星「June12」の調査が進められている。日本政府とアメリカ政府は調査団を編成し、文化人と軍人を合わせた五名を選出して、共同で惑星の調査に乗り出すことを決定した。 ニュースNOW DAY 石田浩介は、テレビのニュースを見ながら、一枚の書類に目を通していた。それは、日本政府からの依頼で構成された調査団についての資料だった。内容は、2027年6月12日に宇宙から降ってきた惑星「X」、別名「J

【掌編小説】Electric dreamer

Electric dreamer 深夜のゲームセンター。 突き刺すような光の中で、Reverieは自分の目を疑った。 普段はテンプレートクリエイターとして、CapCutで光の効果を追求する彼女だが、今夜見ているものは明らかに違った。 朝のコーヒーを飲み忘れ、食事も取らないまま没頭していた新しいプロジェクト。 行き詰まりを感じた彼女は、創造的なアイデアを求めて街へと繰り出していた。 冷たい夜風が頬を撫でる。 3日ぶりの外界に、鼻腔から脳まで冷たい酸素が駆け上がる。 近所のコ

A Life Made for You②

スマートゴーグルのベルが鳴り、最初の仕事が通知された。内容は単純だ。地球に出稼ぎに来た火星人を捕まえて記憶を操作し、自宅へ送り返す。それだけ。難しいことはない、簡単な仕事だ――と、言いたいところだが、俺はまだ新人のひよっこで、独り立ちするまでの間、メンターがつくらしい。 待ち合わせ場所は橋の下。エアーバイクを軽やかに操りながら現場に向かう。河川敷にバイクを停めて降りると、そこにはひとりの男が佇んでいた。涼しげな顔立ちの彼は、俺が近づくとニコリと笑い、握手を求めてきた。 「折木

シダーローズ

バック・トゥ・ザ・ニャーチャー

猫のニャーティ・キャットフライにとって、夜は探検の時間だ。闇が広がるほどに、彼の心はざわめき、未知の世界がその前に広がる。今夜もまた、飼い主であるドク・ニャウンの実験室の扉がわずかに開いていた。まるで闇の中でしか見えない星がそこに輝いているかのような、不思議な光が机の上から洩れている。ニャーティは鼻をひくひくさせ、その光に引き寄せられるように歩み寄る。シルバーのボディに青白い光がちらつくその装置は、猫の瞳に妖しく映り込んでいた。どこか別世界の匂いがする……彼はそう感じた。猫と

セメントに潜る季節*小説

気づけば 最近はtwitterでもどこでも 偽物が年中onlineに野晒し だからサクラはとっくに季語じゃない 「今年のN-1、優勝者は、、、!!、、、、今年もCMのあとで~す!」  お決まりの、長年補助司会者を務める上戸彩師匠がCM振りをし、 芸人らがおととと転倒し即死したところで、十六茶の17秒インフォマーシャルが4本連続で流れた。 約9年前の2034年、日本国内の飲料が十六茶及び関連商品に画一されたことが思い出される。  9年前といえば私は10歳で、その頃はずっと

SFショートショート 読書

「何してんの?」  トキオは公園のベンチに座るミツを見かけて声をかけた。両手で何かを持っていて、それを覗き込むように見ている。 「ああ、トキオか」  それだけ言って、ミツはまたその、妙な物体に目を戻した。二枚のタブレットを持っているのかと思ったが、その間にも、薄い四角い形状のものがいくつも重なっている。 「それ、もしかして、本、ていうやつか?」  以前、歴史の講習で見た記憶が蘇った。大昔の人々が文字や絵を記録した媒体、確かそんなものだ。 「ああ」  ミツは今度は顔も上げずにそ

『都市と都市』感想:「見えているのに『見ない』生活」を僕は送っている

もし、あなたの家のお隣さんや、道路を挟んで向かいにあるお向かいさんが「隣国」だったとしたら? そして、その「隣国」の家を見たり、その家の人と話しただけで「犯罪行為」とされるような世界だったら? 先日SF小説の『都市と都市(チャイナ・ミエヴィル)』を読み終わりました。 「べジェル」と「ウル・コーマ」という2つの架空の都市国家が舞台で起こった殺人事件を捜査するハードボイルドな小説なんですが・・・ この2つの国家は「同じ都市」に存在しているのに「お互いを見たり話したりしては

掌編小説『瑠璃色の龍』

血液はどこへ流れてゆくの。身体に乗せた文鎮に押し出されて、流れてゆくの。風はあかい海に漣を孕ませる。騒ぐ、騒げ、騒ごう、内なる風がアクセルを踏んで、黄色い産声を掲げる。 入り口はあおい母の産道で 出口もまたあおい母の産道だった 喜びも怒りも哀しみも楽しみも、同じ方角から湧き出して、それぞれのマグカップのなかに、すとん、と収まるのだ。ファミリーパックのスープみたいに、色とりどりできらきら輝いている。ビー玉がかちかち鳴って、毎日、ぶつかり合う。どんなに高価な宝石よりも、ビー玉

非日常の世界観に浸る!特殊設定ミステリーのおすすめ15選

特殊設定ミステリーが楽しめるおすすめ15選をご紹介します。タイムリープや神様、VR空間など、現実ではありえないシチュエーションを舞台にした物語は、読者を非日常の世界へと引き込みますよね。 設定の斬新さと、論理的な推理が組み合わさることで、最後まで目が離せないストーリーが展開されます。この記事では、初心者から上級者まで楽しめる、厳選された15の作品をピックアップしました。 特殊設定ミステリーの世界にどっぷりと浸かれること間違いなしですよ。 『アリス殺し』小林泰三『不思議の

ミステリーはラーメン、SFはカレー

 某所に投稿したものをこちらでも投下してみる。大本は、動画投稿サイトで動画のネタとしたもの。  食べ物や料理に作品や創作を例えると、意外と説明し易い。創作物のジャンル、ミステリーとSFについて、料理を元に考えてみた。SFの説明が無駄に長いが、以下に記す。  ラーメンは、塩、醤油、味噌、豚骨などの味の形容があるが、それらは味であって、ラーメンの本質では無い。ラーメンとは、中華麺とスープという構成を持ってラーメンとなっている。この構成こそがラーメンの本質と言っていいだろう。

【小説】日本の仔:第93話

 マイクロソフトブラックホール。本来、兵器として使うためにイーサンとエマが作り出したもので、使い方によっては究極のゴミ箱にもなるという、これまた世紀の発明品。  どういう仕組みか私にもよく解らないけど、超小型ブラックホールを何も吸い込まないように保持しておいて移動させ、ある程度の大きさ、比重の物体に衝突した瞬間に、そのシュバルツシルト半径(約10cm)内の物質を全て吸い込んで消滅するという。  静ちゃんは、これをどう使って次元の隙間を塞ぐというのかしら。 「次元の隙間という

枝元悠大「オリガミの街」(「よいこのanon press award 2023」優秀賞作品)

15歳以下を対象にしたSF作品コンテスト「よいこのanon press award 2023」の優秀賞受賞作品である、枝元悠大「オリガミの街」を全文掲載いたします。 ◆あらすじ ◆審査員による講評 オリガミの街  オリガミという物がただのパルプの寄せ集めであった時代というのは、もう二百年は昔のことになる。  その頃のオリガミというのは破れやすく、耐水性に欠け、何より動かなかった。  手元には、一枚の白くツルツルとした紙がある。軽く触るとたちまちに折りたたまれ、六角形の

【短編】『コンピュータが見る悪夢』(前編「殺人」⑤)

プロローグはこちら コンピュータが見る悪夢 (前編「殺人」⑤)  カルロス・サンチェスの携帯端末は、透明な袋に入ってデスクの上に置いてあった。端末はすでに充電されていた。さすがだ。仕事が早い。起動させるとある画像が映った。彼はニューヨークへ行ったのだろう。ウォール街に何かを睨みつける牛の銅像が表示されていた。画面をスライドさせるとすぐさまロック画面に切り替わった。やはり彼に頼もう。コードを抜いて端末を透明な袋に戻した。  会議室を抜け、廊下を奥まで進むと、「関係者以外立

【短編】『コンピュータが見る悪夢』(前編「殺人」④)

プロローグはこちら コンピュータが見る悪夢 (前編「殺人」④)  ホモシミュレーターの電源を切ると、ホログラムは天井にある薄型の投影機へと吸い込まれ、目の前には何もない真っ白な壁が現れた。ホモシュミレーターを操作している時は、情報の板で部屋は埋め尽くされるが、それ無くしてはただの空の箱だった。まるで空港やショッピングモールに備え付けられた礼拝室のようだった。  本館へと戻る途中、サムは頭の中でカルロス・サンチェスの死に行く様を思い描いていた。ハンマーで犯人に何度も頭を殴

十月は黄昏の銀河帝国 ⑪

11.三人の魔女  クナナ=キ・ラと、ヌカカ=キ・ラは、この戦闘を心底楽しんでいた。  高価な最新型完断絶シールド発生装置を手に、低重力の座礁艦内を舞うように走りながら、先導するレディ・ユリイラの行く手の障害をはらってゆく。  この特殊なシールドはあらゆる攻撃を跳ね除けるだけでなく、触れた物質を圧壊させる力も持つ、危険なものだった。盾であり、同時に強力な武器なのだ。  立ち塞がるゴンドロウワたちは、抵抗も虚しくことごとく蹂躙されていった。  双子の姉妹は、自らの破壊行為を

『ワールドブルー物語』登場人物紹介【月野 しずく】

●ワールドブルー物語をもっと気軽に逆にもっと深く楽しみたい方。 ●または、ワールドブルー物語を書くにあたっての参考資料として。 ●データベースとして、ご活用ください。 ◎月野 しずく ◎登場エピソード(登場順) 【ワールドブルー社】 【ワールドブルー社②】 #ワールドブルー物語 #ワーブルデータベース #月野しずく どうも、あおです😄 さて、そもそも『ワールドブルー物語』って何?って方は ⬇️【あなたも主役】をご覧下さい。 そして、ぜひ参加してみてください。 一緒に楽

恋愛SF『レディランサー アグライア編』7章-2

7章-2 エディ 「ここではもう、バイオロイドを使い捨てにすることは認めません。保護を必要とする人は、わたしが守ります。いかがわしい店も、取り締まります。女性が安心して暮らせる街にします」  それではもう、違法都市ではない。市民社会と同じ、普通の都市ではないか。  ほとんど、政治家の演説のようでもある。これが放送されたということは、中身について、最高幹部会は承認しているのだ。  辺境の権力者たちは、本気で、ジュンに違法都市の改革を許すというのか……!? それとも、そう

『長距離恋愛販売中』 #毎週ショートショートnote【なんとも言えな〜い編】

ボタンを押そうとしてふと固まる。 つめた〜いとあったか〜いの間に詰め込むかのように『長距離恋愛販売中』という文字があることに気づいたからだ。 押してみたい衝動に駆られたけど残念なことに特に思い当たる相手がいない… それに今は仕事の合間の5分休憩。そのボタンを押して何かが起きたとしても、楽しんでいる余裕なんてない。私は諦めていつも通りのボタンを押して水に流した。 昼休憩になり、いつもなら財布片手に近所でお弁当を買いに行くところだけど今日はすぐさまあの場所へ向かう。 今

【短編小説(SF)】降る星、らんらん 3000字

 アルファケンタウリの方向から長い距離を渡って訪れた隕石が、大気圏を突破しながら落ちていく。そしてそれは地上に到達する前に、身悶えするように一瞬だけ明るく光って、尾を引きながら地球に柔らかく衝突する。  それに合わせて小さく歌うんだ。これがあの小さな石の最後の瞬間だから。  でもその小さな石の消滅を悲しむ必要はない。  なぜならもうすぐ全てが終わってしまう。  そんな光景が頭に浮かんだ。  いえ、全てが終わってしまっても、私たちは取り残されて、ここでぼんやり見ているのかもしれ

第一章 ベガの記憶

この小説のきっかけのお話。 以前簡単にまとめた短編小説。 この小説の全貌だと思って頂ければ幸いです♡ プロローグ 物語は主人公の不安定な日常から始まります。 ある夜、いつもと異なる夢に導かれ、彼女はベガの空を眺める自分を見つけます。 そこに現れたのがウリシュナでした。 「ウリシュナ」は、星と人をつなげる巫女のような存在。 ウリシュナは、宇宙の各星々が地球の危機に警鐘を鳴らしていることを語りかけます。 「あなたの役割は、地球と宇宙の真実を伝えること」と告げられます

「Memory Shop」 最終章

暗く冷たい廊下を歩くと、奥に見慣れない扉がひっそりと佇んでいた。目の前の扉には重たい金属板が何枚も重ねられ、厳重な錠がかかっている。この部屋には、特別な事情がある者だけが収容されると聞いていたが、そこに何があるかは誰も語ろうとしなかった。 その日、私は特別に許可を得て、その扉の奥へと足を踏み入れることになった。

¥520

【短編】『コンピュータが見る悪夢』(前編「殺人」②)

コンピュータが見る悪夢  (前編「殺人」②) 「こちらフィル・ウォーカー。テンダーロインエリア付近にいる」 「そうか。よかった」 「殺人予測現場の住所と時間を教えてくれ」 「ああ。レヴィンワース通り四三四の白いアパート。三階の三〇四号の部屋でソファに座っている男が何かで殴り殺される。時間は一時十分二十三秒だ」  時刻はすでに一時五分だった。 「わかった。すぐに向かう犯人の男はどんな奴だ?」 「わからない。通信妨害専用の衣服を身につけているようだ。今のところ入手で

「物語」を創ってみたい、と思い立って頑張ってるハナシ

今取り組んでいるプロジェクトの、「物語」を書きたい。 前々から、いつか私はこのプロジェクトを振り返って、経験したことや発見したことをまとめた記録を残すだろう、とは思っていた。 でも今はまだ8ヶ月目。やっと折り返し地点を通過したところ。振り返りを書くにはまだ早い。 それにまだまだ結末が見えてないことはたくさんあるし、そもそもこのプロジェクトがどこに向かっているのかも実は未だによくわかっていなかったりする。 だから実際の振り返りや経験談じゃなく、このプロジェクトをモデルに

野村日魚子「幽体について」

◆作品紹介

【読書】珍しいSFの芥川賞作家。高山羽根子「暗闇にレンズ」

なんでもっと話題にならんのや 高山羽根子作品を3作読んだけど、もっと話題になってないとおかしくないですか? 感覚が今っぽい。 男に頼らない、小柄でインドア派だけどひとりで平気そうな女性が主人公。 設定はSFが入ってるけど、読んでいる最中は純文学というか。解釈はある程度読者にまかせられていて、面白いけどスッキリは終わらない。難解だけど押しつけがましくない。ふしぎなバランス。 「暗闇にレンズ」は特に変わってて、最初のほうはずっと、いつの時代の何の話をしているのか、本と打ち

東京装甲少女  EPISODE0 第30話   【 深淵を覗くもの 】

久留和一正ことアカハナは、寄宿舎のベッドで養生した後、秋葉原駅前の大きなオフィスビルの5Fのカンファレンスフロアに来ていた。 何故、完全に体が治らないうちに、この場に来たかと言うと秋水達の話を聞いて、いてもたってもいられなくなったからだ あの日、、、、 遠雷が轟く暗がりの部屋で、怯えるシェイルを抱き寄せていた所に部屋の扉がガチャッと開き数名がベットの近くまでやってきた。 窓を背にこちらを向き、立っている数名は、 暗がりで顔は良く見えなかったが、ある一人が、 遅れて、ラ

恋愛SF『ブルー・ギャラクシー サマラ編』3章-3

3章-3 紅泉  一族は、滅多に人員を増やさない。不老の一族が子供を誕生させ続けていけば、やがては統制がとれなくなり、分裂や抗争、ひいては自滅の危険が高くなるからだ。  貴重な闘士だったサマラおばさまが死んだからこそ、麗香姉さまも、新しい一員を誕生させようと考えたのだろう。その赤ん坊を、シレールは素直な目では見られないはずだ。 「何か、祝いの品を贈る。だから、もう構わないでくれ」  くたびれたシャツ姿のシレールは、探春を見ないままで言う。かつては、一族有数の洒落者だっ

恋愛SF『レディランサー アグライア編』6章-9

6章-9 ジュン  かなり上層でエレーベーターを降りた時、一瞬、センタービルの屋上庭園に出たのかと思ってしまった。小鳥の声がしたし、そよ風が背の高い竹林を揺らす、緑の空間だったから。  でもすぐに、数階分の高さを持つ屋内庭園だとわかった。周囲は、太い柱と透明な窓で囲まれている。窓の一部から、風を入れているようだ。  窓辺からは、繁華街の他の建物が、かなり下に見下ろせた。違法都市では、センタービルより背の高い建物はない。権力のありかを、わかりやすく示しているわけだ。  

【短編】『コンピュータが見る悪夢』(前編「殺人」①)

プロローグはこちら コンピュータが見る悪夢  (前編「殺人」①)  南部からの西部東部への人の流入が急激に増した。元々南部を拠点としていた大企業の工場地帯でも人を必要としなくなったのだ。大規模設備投資により工場の生産プロセスは全て自動化された。働く者たちは皆リストラされ、逃げ道を失って元いた西部東部へとUターンせざるを得なかった。南部での安い家賃、安い生活費も仕事がなければ意味をなさなかった。西部東部では、土地代や生活品の値段は高騰し続けているが、人口の流入が多い分仕事も

『ワールドブルー物語』登場人物紹介【ヤンス・ツェルコフ・ヨルクブルグ】

●ワールドブルー物語をもっと気軽に逆にもっと深く楽しみたい方。 ●または、ワールドブルー物語を書くにあたっての参考資料として。 ●データベースとして、ご活用ください。 ◎ヤンス・ツェルコフ・ヨルクブルグ (やんす・つぇるこふ・よるくぶるぐ) ◎登場エピソード(登場順) 【受信した不信無線】 #ワールドブルー物語 #ワーブルデータベース #ヤンスツェルコフヨルクブルグ どうも、あおです😄 さて、そもそも『ワールドブルー物語』って何?って方は ⬇️【あなたも主役】をご覧下さ

【感想】小説『コード・ブッダ 機械仏教史縁起』

この書き出しで既にワクワクが止まらないw もしもAIが悟りを開いたら? 本作を貫くのはこのSF設定 念のため書くと円城塔はSF作家ではあるがハードSFが専門ではない(と私は思っている)ので今作も別に真面目に機械仏教史を書いているわけではない。 いや、真面目に機械仏教史を書くという悪ふざけを大真面目にやっていると言うべきかw ちなみにハードSF小説をご所望なら同時期に出版された藤井太洋の新刊『マン・カインド』がオススメ こちらはリアルを追究した近未来SF まぁとにかく

【短編小説】幸せは不幸せに支えられている2/4

なんて考えながら、道を修正してしばらく歩いていた。思いの外スーツを着た人間に頻繁にすれ違った。違う。スーツを着ているのではない。よくみるとジーンズに黒いジャケットを羽織っているだけだ。その人はただそういう雰囲気というだけで「スーツの人間が大勢いる」と思ってしまった。大勢? また間違えた。たったの2,3人だけだ。それなのにその人は大勢だと思ってしまった。 さて、目的に到着した。日本で最初の博物館にようやくたどり着いた。竹橋駅からであれば徒歩3分らしかった。公式ホームページで確

人新世を知るSF傑作選『シリコンバレーのドローン海賊』感想

人新世、人類の活動が地球環境に顕著な影響を及ぼす時代のこと― 人新世という言葉はこの本で初めて見聞きしましたが、その概念はうっすらと感じていたテーマだったので、取っつきやすくて良かったです このテーマとして上がりそうな内容というと、まずは環境の保護活動などを想像していましたが、地球環境の変化から発生する災害が深刻化している話だったり、経済格差の問題を扱う話もあったりして、なにより“その中で人はどう生きるのか”という命題が、千差万別に書かれている良いアンソロジーでした しかし