真宙

おやすみなさい。 次に目を覚ます時は、もう何も覚えていませんようニイ! 🌟短編小説・エッセイの執筆/映画・美術館・小説・舞台の感想共有

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最近の記事

【短編小説】幸せは不幸せに支えられている2/4

なんて考えながら、道を修正してしばらく歩いていた。思いの外スーツを着た人間に頻繁にすれ違った。違う。スーツを着ているのではない。よくみるとジーンズに黒いジャケットを羽織っているだけだ。その人はただそういう雰囲気というだけで「スーツの人間が大勢いる」と思ってしまった。大勢? また間違えた。たったの2,3人だけだ。それなのにその人は大勢だと思ってしまった。 さて、目的に到着した。日本で最初の博物館にようやくたどり着いた。竹橋駅からであれば徒歩3分らしかった。公式ホームページで確

    • 短編小説 幸せは不幸に支えられている1/4

      幸せは不幸せに支えられている。 そうした不安定さをどうしても受け入れられない時がある。その人はそう思わざるを得なかった。幸せな瞬間。頭の中でイメージを膨らませてみる。 暖かな暖炉の前で揺れる炎を見つめる瞬間 爽やかなビーチで風に吹かれる瞬間 そうだろうか。本当に? そんな抽象的なものではないのかもしれない。だが、もしそれが幸せだとして、それが幸せに思えるのはなぜだろう。そこでやはり初めの考えに辿り着く。 答えは単純だ。 そうではない瞬間があるからだ。 その人はそんなことを

      • 【短編小説】dreaming for an angel②

        いつから目の前のご飯のご飯の味がしなくなったのだろう。 るり子は天井を見つめる。るり子は内向的な性格ではあるけれど、外交的な性格を演じるのは得意であった。そしてそれをうまく演じている自分も好きだった。映画も『ミーンガール』や『クルーレス』、『キューティーブロンド』あたりをよく見るし、そういう素直な感情に従って、喧嘩もするけどそれと引き換えに深い絆のある女の子が大好きだった。だけど、無理をしているなと自覚することも度々あった。 ーーー私は私と友達になりたいーーー それは

        • 【エッセイ】写真に惹かれる理由

          鮮明でない写真を見つめている時、何か癒しや落ち着きを感じて、苦しい夜をどうにか乗り越えることができた。 そう、こういう時のために写真はあって欲しいと思っていたんだった。 鮮明でない写真、ぼやけて対象物がよく見えない写真、それらが一番意味を持つのは夜中だと思う。 ぼやけてきた視界とは対照的に鮮明になる思考を抱えながら、夜を過ごす時、 はっきりしたものだけが全てではないと背中をさすられる気がする。 夜中のための音楽がある。 夜中のための詩集がある。 だから、夜中のための写真

          【短編小説】dreaming for an angel①

          「おやすみ」 天使はそういって扉を閉じた。 (もう目を瞑ってしまいなさい。再びあなたが目を覚ます時、あなたは何も覚えていないのだから。) るり子は天使と共に呟きながら、祈りに近い願いを胸にベッドに横たわっていた。頭の中では「月光」が流れている。幼い頃にクラシック・バレエを習っていた名残で、バレエ音楽には多少の馴染みがあった。 「あの頃に戻れたらな」そんなふうに考えたが、すぐにその考えは打ち消す。 過去を悔やむことは嫌いなのだ。るり子には、そう思えるだけのプライドがあった

          【短編小説】dreaming for an angel①

          【エッセイ】引き返しの法則

          こんばんは。 唐突ですが、私はあまり推しとか作らなくて誰かアーティストとかを好き!と思っても、好きになりすぎるのが怖くて嫌いなところを探してしまような性格です。 でもそれは多分アーティストを対等な存在に捉えたい傲慢さと、私自身がもし推される側だとして、誰かに推されるという行為に嫌悪感を覚えるだろう、そしてきっと自分が好きだと思う人もそういうスタンスに違いないという勝手な推察によるものだと思います。 さて、なぜ急にそんな話を始めたかといえば、最近2年前に少し気になる…と思

          【エッセイ】引き返しの法則

          【短編小説】カルーアミルクをください

          「カルーアミルクをください」 少し気だるげな様子のその人は言った。 続けてはにかんだ顔で、 「店に入ってくるなり飲むお酒じゃないですよね。」 とも言った。 僕がその様子を見守っていると彼女は続ける。 「どうしても喉が渇いて、カルーアミルクが飲みたくなったんです。」 そして言い訳をするかのように間髪を入れずに話し続ける。 「私心が強くないんです。」 「それなのに、心が強い人が働くような会社で働いていて。それが幸せだと思っていました。いえ、今もそう思っているんです。

          【短編小説】カルーアミルクをください

          前提

          私の頭は常にお喋りで、それはずっと隠したい癖なのですが、いや待て、これは隠すべきではないかも知れない、と感じた今日この頃。1人でも2人でも自分のお喋りの証人がいる方が人生は面白いかも知れない。 そういう前提共有です。 短編小説書いたり、エッセイ書いたり、カテゴライズされないものを書いたり、とにかく「書くこと」をし続けたいです。