キミーの素人小説。

労働者であり、素人ファンタジー小説家。

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小説『マザー・スノー』プロローグ

もしも貴女が、既婚者でも彼氏持ちでもなく、年も若く、子どもが出来るような行為すらしていないにも関わらず、ある日突然自分より年上の男に「お母さん。」と言われたとしたら。 どう思う?  恐らく「ぶん殴ってやりたい」の一択だろう。 しかし、その男はシクシク泣いているのだ。 私に縋り付くかのように。 欠落した自身の何かを埋めようとするかの如く、真っ直ぐな目でこちらを見つめてくるのだ。 その瞳には一切の情欲の色がない。 私より2つ3つ年上に見えるその男の瞳の中には、萎縮し

    • 詩『あかつき』

      私は宇宙の真っ暗闇の中、放り出された。 たくさんの人たちの期待が私に伸し掛かっていたのに、うまく軌道に乗れなかった。 私は『あかつき』。 ただただ独り、淋しく宇宙をさまよい、流れる。 「こんなはずじゃなかった。」 そう何度つぶやいただろうか。 私があなたから目を背け、あなたを退けたあの日。 私は恐ろしかったのだ。 私は私の罪が恐ろしかった。 主要エンジンが破損してもなお、傷ついたままの機体で、時に私は太陽に身を焦がされた。 しかし、あなたの手は常に、私の機体

      • 『マザー・スノー』ママは魔法使い①

        【「相手の目を見たらアカン。 相手に緊張感を与えて、無意識に臨戦態勢にさせてしまうねん。 だから、相手の『下まぶた』を見なさい。」】 私、優希はそれからというもの、虎之介(未来で私と無理やり結婚しようとするはずだったクソ野郎)の被害者のうち、とりわけ被害を受けた10名の男女に会いに行った。 彼らは皆、私が22歳で生きる現代の人たちである。だからわざわざタイムスリップをしなくとも、会いに行くことが出来た。 しかし、それは特殊な状況下だ。 私は『幽体離脱』をしており、ご

        • 『マザー・スノー』汝、記憶とともによみがえれ。

          「ボスにとっては、 まるで『一日は千年のようであり、千年は一日のようである。』」 宇宙人アデルは、宇宙船の窓から遥か遠くに瞬く銀河のネオンを眺めつつ、そうつぶやいた。 「それは、えらい難儀な時間感覚で生きてはるヒトなんやなぁ。」 ふたりで作った料理『UFO焼き』の目玉焼きの部分を箸で突きながら、てきとうなことを言う私をアデルは『ハハハ。』と笑う。 「前の人生の君はね?たくさんの人たちの母親だったんだよ。」 「それって、大家族スペシャルに出てくるような、朝から晩まで洗

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        小説『マザー・スノー』プロローグ

          『マザー・スノー』優希にしか成しえないのだ。

          私の目の前で、大の大人の男が泣いている。それはもう、立ち上がったら天井に頭が突き刺さるんじゃないかな、と思うくらいの、若い大男だ。多分うちのバイト先の店長よりデカい。 先ほどまで私は、アデルという名の宇宙人と共に行動していた。 彼は私の未来を知っており、そして未来で私が生むはずだった『龍』という名の、この大男のことを、それはもう、よくよく知っていた。 この宇宙人は自身の所属を『アークエンジェルスの隊員』と説明しており、所謂彼はこの大男『龍』の守護霊的存在であったようだ。

          『マザー・スノー』優希にしか成しえないのだ。

          自己満足で書き続けているファンタジー素人小説が、ようやくプロローグのシーンに追いつきました。本当の自分を隠したまま若くして死ぬ運命を変えるため、主人公の優希は未来を知る宇宙人アデルと宇宙船に乗ります。もう自分が生むことのないその息子と、タイムスリップした未来で初めて出会うシーン。

          自己満足で書き続けているファンタジー素人小説が、ようやくプロローグのシーンに追いつきました。本当の自分を隠したまま若くして死ぬ運命を変えるため、主人公の優希は未来を知る宇宙人アデルと宇宙船に乗ります。もう自分が生むことのないその息子と、タイムスリップした未来で初めて出会うシーン。

          『マザー・スノー』龍の涙。

          『ドシーーーーーーーン!!!!』190センチ近い、筋肉質な男が尻餅をついたのだ。 ブタゴリラが先ほど投げ倒された時も、もののけ姫の乙事主が獅子神に命を吸われて倒れ込んだような音を上げのだが、それを上回る程の爆振音を出し、築30年のアパートが僅かに揺れた。 若くして人生の酸いも甘いも、嚙み分けている龍ではあったのだが、オカルトや心霊現象という類いなんかには、実はめっぽう弱い。恐る恐る、という言葉には似合わないデッカイ図体で、彼は奥の部屋の方に視線を向ける。 (・・・なんか

          『マザー・スノー』龍の涙。

          『マザー・スノー』歴史が変わる瞬間。

          かれこれ30分以上はこうして、泡を吹いたブタゴリラを尻目に煙草を吸っている龍。 換気扇の音がやたらとうるさく響いた。 あれだけ大騒ぎして参上したこいつが、急に『物言わぬ豚』になったのだ。 ひょっとしたら異変を察知したご近所さんたちが、警察に通報しているのかも知れない。 別に警察に突き出されても構わない、と龍は思った。 1DKのアパートには、2年前に引っ越してきた。事故物件かと疑うほどに賃料が安いからだ。 築数は30年の4階建て。風呂トイレは一緒のユニットバス。 奥の

          『マザー・スノー』歴史が変わる瞬間。

          『マザー・スノー』龍の記憶~消えかかりの未来にて~③

          (・・・な~んで今日は、こんなに昔のことを思い出すんだろうなぁ・・・。あぁ、そっか。) 24歳になった優希の息子、龍はこの時、一人暮らししている1DKのアパートの台所前に座り込んで、煙草を吸っていた。 白と水色のタイルが敷き詰められたコンロ台に、アルミ製の流し台。 アデルの宇宙船にあった台所と、それは全く同じものだった。 龍がふと、目線を向けた玄関前。何者かが仰向けに転がって、泡を吹いて気絶しているようだ。 その者はまるで『具を詰めすぎたイカ飯』みたいな体系をしており

          『マザー・スノー』龍の記憶~消えかかりの未来にて~③

          『マザー・スノー』龍の記憶~消えかかりの未来にて~②(病み回注意)

          俺は、おそらく痛みに鈍い。自分の表面に膜が張ったような感覚が、幼い頃から常にある。 自分の身に起こっていることでも、どこか他人事のように捉えていた。 そう捉えていないと、多分身が持たなかったのかもしれない。真剣に自分の痛みと向き合って生きていたら、今まで生きていられなかったんだと思う。 家自体は裕福だったから、パソコンもスマホも買ってもらえて、インターネットも接続できた。 だから、ネットで調べたらいくらでも出てきた。自分みたいな境遇の人間は、割とこの世に存在するのだと

          『マザー・スノー』龍の記憶~消えかかりの未来にて~②(病み回注意)

          『マザー・スノー』龍の記憶~消えかかりの未来にて~①

          俺の名は、龍。ブタゴリラ・・・俺の父親は、自分の名前の『虎之介』にちなんで『之介』を付け加えたが、俺の名は『龍』。 だって、母子手帳に『この子の名前は、龍です。』って、書いてあったから。だから、俺の名は『龍』。 大体『虎之介』『龍之介』って、あの父親とも思いたくもない奴と、妙なセット感出されて、正直、キモイ。無理。 俺の母親は、出産してすぐに死んだ。 ブタゴリラは俺の母親のことを、「あいつは甘やかされて育った、弱っちい一人っ子だった。だから、ちょっとのことですぐ死んだ

          『マザー・スノー』龍の記憶~消えかかりの未来にて~①

          『マザー・スノー』お台所と、ゆうふぉう焼き③

          「なんじゃ、そら。絶妙におもろないなぁ。」 そんなことを言いながらも、優希は声を出して笑った。こういう下らない駄洒落のようなものは、彼女の好物だ。 5枚のスライスベーコンを綺麗に重ねなおし、それを1センチ角の正方形に切ってゆく。 「切れたよ。」「おっ。早いね。じゃあフライパンに入れて~。」 優希はちょっと慎重にまな板を持ち上げて、包丁を使ってベーコンをフライパンに流しいれた。フライパンの中がキャベツのグリーンと、にんじんのオレンジ、ベーコンのピンクでカラフルに彩られて

          『マザー・スノー』お台所と、ゆうふぉう焼き③

          『マザー・スノー』お台所と、ゆうふぉう焼き②

          ザクザクザク・・・ざくざくざくざく・・・ザクザクザク 不慣れな手つきでにんじんを炒めながら優希は、こなれた手つきでキャベツを細切りにしていくアデルの手元を、左目の端っこでチラチラ見ている。 「おし。キャベツはオッケー。そっちに入れるよ~!」 アデルはまな板を持ち上げて、その上にある切り終えたキャベツたちを、ザザーッと器用に包丁を使いながらフライパンの中に投入した。 キャベツの水分に反応したフライパンの油が、にぎやかに爆ぜる。 「わっ!」 油が跳ねるような気がしたの

          『マザー・スノー』お台所と、ゆうふぉう焼き②

          『マザー・スノー』お台所と、ゆうふぉう焼き①

          ホグワーツの卒業生も真っ青な変身魔法で、無色透明なガラステーブルを一瞬のうちに『キッチン』に変えてしまったアデル。 しかし『キッチン』と呼ぶより、それは『台所』と呼ぶに相応しい、どこか古めかしい感じの佇まいだった。 台所のコンロ台には白と水色のタイルが敷き詰められており、ひとくちコンロが置かれている。コンロ台の余ったスペースには、コーン缶の空き缶に菜箸やオタマ、フライ返しが刺さっている。 流し台はアルミ製で、熱いお湯を流すと『ベコッ』と音を立てて凹むタイプのものだ。

          『マザー・スノー』お台所と、ゆうふぉう焼き①

          『マザー・スノー』ゆるやかな時間の中で。

          「あおちゃうか?」 それが優希の生まれて初めて放った言葉であった。 「青ではないのか?」という意味なのか、はたまた「アホなのではないか?」という意味なのかは、未だに謎が残る。 何かにつけて友人の前で見栄を張ってしまう両親に向かって、生後9ヶ月の優希は漫然とそう口に出したのだ。 彼女の母親いわく優希は「『お母さんといっしょ』より、関西出身の芸人が出ているお笑い番組の方を好んで見る子だった。」とのこと。 だから幼少期の頃は、人前でも自然と関西弁で話していた優希。 しか

          『マザー・スノー』ゆるやかな時間の中で。

          暑すぎて8月はずっと液状化しておりました。9月は固体化を維持し、続きを書けるように頑張ります。

          暑すぎて8月はずっと液状化しておりました。9月は固体化を維持し、続きを書けるように頑張ります。