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HANAちゃんストーリ

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#小説

雨音(HANAちゃんストーリー第19話)

雨音(HANAちゃんストーリー第19話)

雨の音

傘の中で1人きり

響く 私だけの場所

雨の音が好きだと言っていたあなたは今何をしていますか?

映画を見たこと 水族館に行ったこと

最新刊が売り切れで 2人で探し回ったこと

私は1人 久しぶりに雨に打たれている

傘の中で響き渡る音が あなたといた日々を思い出す

雨の中 愛犬の散歩をして怒られてたこと 

靴がびしょびしょに濡れて帰りたくなくなったこと

私は1人 久しぶりに雨

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夕日に願う(HANAちゃんストーリー第18話)

夕日に願う(HANAちゃんストーリー第18話)

付き合って1カ月。

今日は彼とデパートデート。

お店をあちこち見て買い物、

その後ペットショップで子犬たちを見た。

シーズーの子犬のガラスにくっつける肉球が可愛くて、ずっと見ていた。

さすがに買う気もないのに見過ぎだよと、彼がご飯へ誘ってくれた。

フードコートでお互い好きなものを注文。

私はうどん、彼はチキンステーキ。

お腹もいっぱいになって、そのまま2人で音楽を聴いた。

それか

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今日の天気予報(HANAちゃんストーリー第17話)

今日の天気予報(HANAちゃんストーリー第17話)

テレビの中のお天気キャラクターのワンちゃんが今日の天気を教えてくれる。

「今日は北風が強くなりそうで。強風に注意してマフラー、コートをしっかり羽織りましょう」

マヌケな顔がなんだか可愛い。

夕方、会社のエントランスを出ると風でコートが飛びそうになった。

私は慌てて、コートの前をしめる。

「ゆり菜、お疲れ」

いつも待っていてくれる、恋人のヒカル。

付き合いも4年目になると、並んで歩くこ

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見えない弱さ(HANAちゃんストーリー第16話)

見えない弱さ(HANAちゃんストーリー第16話)

いつも笑顔の君は時折、泣きそうなくらい悲しい顔をしている。

彼女の周りにはいつも友達がたくさんいる。

明るく元気で、大きな声で笑う。

その声を僕は、教室の端の席でいつも聞いている。

耳で彼女の声を探し、目で彼女の姿を見つける。

彼女はいつだって笑顔だ。

と、思っていた。

周りの友達たちが騒いでいる中、ふと、窓を見つめる瞳。

三日月のように垂れ下がっていた瞳は、次第に満月へと変わって

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忘れていたのは私(HANAちゃんストーリー第10話)

忘れていたのは私(HANAちゃんストーリー第10話)

朝起きて家事をして、子供たちを送り出し、会社へ出勤。

仕事が終わり、子供たちを迎えに行き宿題の確認、夕食準備。

後片付けをして、また家事をする。

これが私のライフサイクル。

しんどい。

毎日がくたくたで、1日をこなすことで精いっぱい。

こんな毎日がいつまで続くのかな。

くたくたになった夜、やっと自分の時間が取れるとリビングでテレビをつけ寝転がった。

疲れていたのだろう。ウトウトして

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些細な事(HANAちゃんストーリー第13話)

寒空の下、子供たちの走る姿を見に、学校へ出かけた。

今日は年に一度のマラソン大会の日だ。

今年で最後のマラソン大会。

最高学年になった私の娘はどんな走りをするのだろう。

ソワソワとワクワクの間を行ったり来たり。

校庭にピストルの音が響く。

「位置についてヨーイ、スタート」

沢山の子供たちが走り出した。

大きな塊は次第にバラバラになっていく。

「どこかな?」

必死に目線で子供たち

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心の傷に気づいた時(HANAちゃんストーリー第12話)

心の傷に気づいた時(HANAちゃんストーリー第12話)

人に笑われた。

上司という人に。

何も笑う事はないのに。悔しい。

私だって一生懸命にやっている。

なのに、笑われる。

上手くいってもいかなくても笑われる。

成功や失敗なんて関係ない。

なにをしても笑われるんだ。

バカにされている。

保育園がやっていない休日にも仕事があったので、仕方なく子供を会社に連れていっていた。

事務所の端でお絵かきなどをさせて待たせていた。

その事につい

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私を受け入れるのは誰?(HANAちゃんストーリー第11話)

私を受け入れるのは誰?(HANAちゃんストーリー第11話)

今日はとても天気がいい。

雲ひとつない秋晴れ。

散歩をしていると日差しのせいか少し汗ばむ。

火照った体を冷やすように家の中に入る。

日が差さない部屋の中は、なんとなくひんやりしている。

クールダウンしている私の横に、眠そうにしっぽを振る愛犬はな。

彼女は今にも目がくっついてしまいそうだが、恒例のしっぽ振りをしてくれる。

私がどんなに遅く帰ってこようが、私がどんなに不機嫌に帰ってこよう

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公園の中の笑顔たち(HANAちゃんストーリー第9話)

公園の中の笑顔たち(HANAちゃんストーリー第9話)

公園で寝ていると、中学1年生の美雪ちゃんが声をかけてきた。

彼女とは週に2回、ここで行き会う。

私は眠い目をこすりながら返事をした。

「なふぃ~?どうしたの?」

横に座る彼女を見ると、俯いて涙ぐんでいた。

「何かあったの?」

彼女はコクンと頷き、話し始めた。

「あのね、HANAちゃん。今日、学校でテストが返されたの。たくさん勉強したのに、ひどい点数だった。塾にも通っているのにどうして

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名前を書く生活(HANAちゃんストーリー第8話)

名前を書く生活(HANAちゃんストーリー第8話)

私は43歳、今年から保育園に入園した2歳の娘と小学生の息子がいる。

もうすぐ娘を迎えに行く時間。

それまでにこの名前書きを終わりにしなくては。

寒くなってきたので冬服を用意しなくてはならない。

長Tにベスト、厚手の上着に起毛素材のズボン、タートルネックのカットソー、カーディガンなどなど。

何枚も何枚も私は彼女の名前を書いた。

大人になってから、自分の名前を書くことは減った。その分、自分

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枠の中の自分(HANAちゃんストーリー第7話)

枠の中の自分(HANAちゃんストーリー第7話)

実は苦しみの中にいるのに、それを表現できないでいる。

何故か。

僕の問題なのかな・・・

心配かけたくない。恥ずかしい。怖い。

あっているような、あっていないような。

そんな毎日を送っていた。

***

今日も仕事に追われ、最終の電車に乗り込む。

(ラッキー誰もいない。)

珍しくその車両には誰もいなかった。

いつもの癖でドア付近の端の席に座る。

(あ~今日も疲れた・・・だけど、こ

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迷子の花火大会(HANAちゃんストーリー第2話)

迷子の花火大会(HANAちゃんストーリー第2話)

毎年夏になると、田舎のおじいちゃんの家に遊びに行く。

小学2年生になった僕は、はじめて1人でおじいちゃんちに泊まることになった。

おじいちゃんちに行くこの時期は決まって、花火大会が開催される。
デパートもゲーセンも近くにないおじいちゃんちはとても退屈だった。だからと言って、都心にある自宅に帰りたいわけでもなかった。

両親は共働きで、お母さんも帰りが毎日遅かった。なので僕は、1人でコンビニ弁当

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忘れないで、犬の毛並みがサラサラな事(HANAちゃんストーリー第4話)

忘れないで、犬の毛並みがサラサラな事(HANAちゃんストーリー第4話)

ほんと、毎日仕事で忙しい。

平均睡眠時間も3時間だし、土日も自宅で仕事。ほとんど休みがない。

でも、女がバリバリ仕事をするにはこのくらいやらなきゃいけないし、遊びは「悪」だ。遊んでなんかいられない。

そんな生活が2年ほど続いたある日、どうも体の調子が悪いことに気が付いた。動悸がして息苦しいし、体はだるくて重たい。でも仕事に行ってしまえばいつの間にか治っていたりした。

更にそんな生活が1年ほ

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それから、悪(HANAちゃんストーリー第5話)

それから、悪(HANAちゃんストーリー第5話)

こんにちは、HANAです。

今回はね、中学生の女の子の愛犬をしていた時のお話。

近所に住む秋吉君と一緒に良く散歩に連れってくれたの。

2人はいつも一緒にいてとても仲良しだったの。
人間の世界では幼馴染って言うんですって。

その時の2人の会話で難しいような簡単なような、きっと大事な事のお話。

「悪を全て排除することが正義なのかな」

愛犬の散歩中、幼馴染の秋吉祐一が話し出した。

中二の私

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