公園の中の笑顔たち(HANAちゃんストーリー第9話)
公園で寝ていると、中学1年生の美雪ちゃんが声をかけてきた。
彼女とは週に2回、ここで行き会う。
私は眠い目をこすりながら返事をした。
「なふぃ~?どうしたの?」
横に座る彼女を見ると、俯いて涙ぐんでいた。
「何かあったの?」
彼女はコクンと頷き、話し始めた。
「あのね、HANAちゃん。今日、学校でテストが返されたの。たくさん勉強したのに、ひどい点数だった。塾にも通っているのにどうしてできないんだろう。お母さんには凄い怒られるし、塾の先生にも、こんなに教えて出来な子は初めてだって言われるし、もう最悪。なんで私ばっかりこんな目に合うんだろう。みんなが羨ましい」
そう言って、足で砂を蹴飛ばした。
私は体を起こし、美雪ちゃんのお膝に乗って、丸く寝ころんだ。
美雪ちゃんの膝は小さいけど、とっても暖かくて気持ちが良かった。
ウトウトしながら私はこう言ったの。
「美雪ちゃんだけじゃないよ。みんなそうだよ。今、滑り台を滑っている樹くんはお母さんとお父さんがいつもケンカするって悩んでる。ブランコを漕いでるアスカちゃんは給食を食べるのが遅くて、お腹一杯に食べれない事に悩んでる。砂場でトンネルを作っている翔和くんは弟が産まれて、自分だけ仲間はずれにされてると悩んでいる。」
美雪ちゃんの顔を見ると公園で遊んでいる皆をしっかりと見ていた。
更に私は続けた。
「ね?みんな、悩んでないようで悩んでるのよ。嫌な事いっぱいあるのよ。
でも、ここに来たらみんな、笑顔で遊んでいるの。
いいのよ。笑って。嫌な事は忘れていいの。ここへ来たら笑っていいの。心配いらない。みんな、おんなじよ。」
美雪ちゃんは小さな声で「うん」とだけ言い、私の背中を撫でてくれた。
優しく
優しく・・・
終わり