些細な事(HANAちゃんストーリー第13話)
寒空の下、子供たちの走る姿を見に、学校へ出かけた。
今日は年に一度のマラソン大会の日だ。
今年で最後のマラソン大会。
最高学年になった私の娘はどんな走りをするのだろう。
ソワソワとワクワクの間を行ったり来たり。
校庭にピストルの音が響く。
「位置についてヨーイ、スタート」
沢山の子供たちが走り出した。
大きな塊は次第にバラバラになっていく。
「どこかな?」
必死に目線で子供たちをかき分け、娘を探す。
「いた!」
真剣な表情で私の前を通り過ぎる。
「がんばれー」
気付いて欲しいのと頑張って欲しいのとで、声援にも力が入った。
ハアハアと、苦しそうに走る娘。
後ろから来た子に抜かされた。
と思ったら、今度は抜き返した。
力を振り絞ってスピードを上げる娘。
もう少し。
もう少し。
もう少しでゴール
がんばれー
心の中で大合唱。
ゴール。
私は娘がゴールをした時、気づいた。
自分の頬が濡れている事に。
娘が必死に走る姿を見て、泣いていたのだ。
何故だろう・・・
必死で頑張っている姿を見ると、感動してしまうのは。
走る、なんてよくよく考えたら、大したことではないのに、なぜこんなにも感動してしまうのだろう。
頑張る姿は人の心を動かすという事なのかな。
些細な事でも必死になっている人の姿は、誰かの心を潤す力があるのかも。
些細な事なら、出来るかも。
私にも。
こんな些細な事を今日、娘から教わった。
おわり