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2024年11月の記事一覧

小説の執筆をライブで観る

小説の執筆をライブで観る

 今回は、以前に投稿した記事を加筆および再編集してお届けしております。長い記事なので、下の目次をご覧になり、興味のあるところからお読みください。盛りだくさんな内容になっています。

*小説の執筆をライブで観る
 小説はどのようにして書かれるのでしょう? ただし、書店や図書館に置かれている小説に話を限定します。

 作家さんが原稿用紙に向って、またはパソコンの画面に向って手と指を動かして書いているに

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言葉は「出る」、文字は「現れる」

言葉は「出る」、文字は「現れる」

「赤ちゃんのいる空間」の続きです。

 今回は個人的な語感に基づいた話をします。まず、まとめから書きます。

*まとめ 
 まず、今回のテーマである「出る」と「現れる」という言葉と文字についての私のイメージをまとめます。

「出るもの」と「現れるもの」という分け方をしますが、世界に「出るもの」と「現れるもの」の二種類のものがあるという意味ではありません。

「出る」も「現れる」も言葉です。この日本

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型を壊す、型が壊れる

型を壊す、型が壊れる

*はじめに
「ジャンルを壊す、ジャンルを崩す(言葉とイメージ・07)」の続きです。

 今回は、藤枝静男と古井由吉が自分の小説をどのように壊していったか、その小説がどのように壊れていったかについて、私の考えを述べます。

 ここで言う「壊す」と「壊れる」は悪い意味ではありません。詳しくは「ジャンルを壊す、ジャンルを崩す(言葉とイメージ・07)」をご覧願います。

 小説は散文で書くものですが、散文

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赤ちゃんのいる空間

赤ちゃんのいる空間

 先日、病院で見て感じたことと考えたことを書きます。

 子も孫もいない私にとって、総合病院は赤ちゃんを間近で目にすることができる唯一の場所でもあります。病院の待合室や総合ロビーで待機する時間はけっして楽しいものではありませんが、近くに赤ちゃんがいるとそれだけで心と体がやすらぎます。

*目と耳で追う
 私は言葉を広く取って、話し言葉(音声)と書き言葉(文字)だけでなく、視覚言語と呼ばれることもあ

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始まりと途中と終わりがないものに惹かれる

始まりと途中と終わりがないものに惹かれる

*「複製としての楽曲(複製について・01)」
*「絵画の鑑賞(複製について・02)」
*「複製でしかない小説(複製について・03)」

「複製について」という連載をしていて気づいたことがあります。オリジナルか複製にかかわらず、作品には始まりと途中と終わりがあるものと、ないものがあるようです。

 作品と言いましたが、ジャンルによって異なると言うべきかもしれません。

 また、作品の制作や執筆には時

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始まりと途中と終わりがあるもの

始まりと途中と終わりがあるもの

 今回は「始まりと途中と終わりがないものに惹かれる」の続きを書きます。

「「複製」という言葉のイメージ」の続編でもあります。

*始まりと途中と終わりがあって、たちまち消えてしまうもの
 作品と呼ばれるものの話です。

 始まりと途中と終わりがあるものには、たちまち消えてしまうものがたくさんあります。でも、それを記録したり、録音したり、録画すると、始まりと途中と終わりがあって、残っているものにな

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「似ている」を求めて(「客」小説を求めて・01)

「似ている」を求めて(「客」小説を求めて・01)

「客「である」、客「になる」、客「を演じる」(「物に立たれて」を読む・07)」の続きです。ただし、今回のこの記事は新しい連載の第一回として書きます。

 なお、「「物に立たれて」を読む」は続けます。

*前回のまとめ
 まず連載を始める切っ掛けになった前回の記事をまとめます。

*「客」小説、ゲスト・ノベル
 語り手をふくめ、主要な登場人物が「客」である小説はきわめて多いと感じます。こじつければあ

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文字を所有する、所有しない、共有する

文字を所有する、所有しない、共有する

 まず、結論と言うか、まとめから書きます。

 文字を所有する、文字を所有しない、文字を共有する――この三つは同時に起きていると私は思います。

 文字には、目の前に「見える」物、目の前に「ある」物としての側面と、情報やデータという抽象的な側面の両面があるからです。

 物は具体的な行為として所有できても、情報やデータは行為というよりも、観念や約束事として「所有としている」と「決める」しかないから

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ジャンルを壊す、ジャンルを崩す(言葉とイメージ・07)

ジャンルを壊す、ジャンルを崩す(言葉とイメージ・07)

 今回は、以下の記事の続きです。

・「こわれる・くずれる(文字とイメージ・05)」
・「壊れる、崩れる(文字とイメージ・06)」 

     *

 小説でも、詩でも、絵画でも、音楽でも、映画でも、芸でも、あるいはスポーツでも、何でもかまいません。そのジャンルを壊したり、崩すということがあるのではないでしょうか?

 これまでに、そうした「壊す」や「崩す」が起きてこなかったでしょうか? そうし

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振りをする振り、語ることで騙られてしまう

振りをする振り、語ることで騙られてしまう


Ⅰ. 引用

 引用にさいしては、蓮實重彥著『フーコー・ドゥルーズ・デリダ』(河出文庫)を使用していますが、この著作は講談社文芸文庫でも読めます。

Ⅱ. 振りをする振り、語ることで騙られてしまう
 自然界には名詞はもちろん、名詞的なものがない気がします。名詞は、事物のある一面をとらえて名付けた結果です。

 多面的で多層的で多元的で、おそらく多義的でもあるはずの事物のある一面だけをとらえて、固

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壊れていたり崩れている文は眺めているしかない(散文について・01)

壊れていたり崩れている文は眺めているしかない(散文について・01)

 今回は「ジャンルを壊す、ジャンルを崩す(言葉とイメージ・07)」の続きです。

「散文について」という連載を始めます。私は一般論やなんらかの分野の専門用語や学術語には疎いです。そんなわけで、ここでは私にとっての散文と小説について書きます。

*最初から壊れている
 文学史的なことは知りませんが、私にとって散文とは最初から壊れているものというイメージがあります。

 何をどんなふうに書いてもいい形

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あまざき葉さんの掌編が「文學界」2024年12月号に転載されました

あまざき葉さんの掌編が「文學界」2024年12月号に転載されました

 私がフォローしている、あまざき葉さんの掌編が雑誌「文學界」2024年12月号(2024/11/7発売)に転載されました。

 以下のポストの画像では、「2024年下半期同人雑誌優秀作」として「あまざき葉」という名前が見えます。

 快挙です。

 葉さん、おめでとうございます。

     *

 以下のマガジンに収められている「掌編小説 もの言う臓器」は私のいちばん好きな作品で、短いコメントを

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「やま」に「山」を当てる、「山」に「やま」を当てる(言葉の中の言葉・02)

「やま」に「山」を当てる、「山」に「やま」を当てる(言葉の中の言葉・02)

 今回は「あなたとの出会い」で見た詩を、違った視点から見てみます。

*翻訳された詩
 上田敏訳の「山のあなた」(『海潮音』より)というカール・ブッセ(上田敏はカアル・ブッセと表記しています)の詩を見てみます。

 この詩は青空文庫でも読めますが、だいぶ下のほうにあって、探しづらいかもしれません。

     *

 まず、訳詩です。

 以下は、ドイツ語の原文です。

 残念ながら私はドイツ語に

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「どこでもない空間、いつでもない時間」(「物に立たれて」を読む・08)

「どこでもない空間、いつでもない時間」(「物に立たれて」を読む・08)

*「転々とする、転がる、ころころ変わる(「物に立たれて」を読む・06)」
*「客「である」、客「になる」、客「を演じる」(「物に立たれて」を読む・07)」

 古井由吉の『仮往生伝試文』にある「物に立たれて」という章を少しずつ読んでいきます。以下は古井由吉の作品の感想文などを集めたマガジンです。

     *

 引用にさいしては、古井由吉作の『仮往生伝試文』(講談社文芸文庫)を使用します。

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