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#ホラー小説が好き

ホラー小説への愛や、好きな作品・作家を語ってください!

人気の記事一覧

スーパーサイヤ人友蔵

「なんか、まる子の悪口を言っている人を見てたらの~、スーパーサイヤ人が目覚めてしまったらしいのじゃよ」  どこからどう見ても友蔵じいさんにしか見えないご老人が僕の目の前に現れた。 「友蔵さんですよね?」 「いや~、わしはスーパーサイヤ人・友蔵じゃよ」 「金髪のズラをしてるだけですよね?」 「いや~、これは『毛』じゃなくて、『気』じゃよ。さわってもええよ」  ぼくは恐る恐るスーパーサイヤ人・友蔵さんの頭に触れてみた。  ちょっと静電気レベルの「気」を感じたが、これな

豆と散る|毎週ショートショートnote|【節分胎教】

ねえ、いくらなんでもその大きな声。 やめてくださる? 私の可愛いデイヴィッドがびっくりするざます。 あなたが恐ろしい声で叫ぶたび、デイヴィッドが私のお腹を蹴り飛ばすんですの。 ああ、ほら。デイヴィッドったら。 随分興奮しているわ。 父親譲りで血生臭いことを好むのね。 それにしても、見事に豆だらけ。 足の踏み場もないざます。 この床がきれいに片付くまで、私は立ち上がらないほうがよさそうね。 豆に足を取られて転んだりしたら大変だもの。 あらあら、いやだ。ちょっと。 目も

私の書庫紹介 #毎週ショートショートnote

ある人の音声配信チャンネルを聴いていた。 「今日は私の書庫を紹介しまーす 私の部屋は自分で組み立てた白い書庫が2つあります ジャンル問わず様々な本があるんです 小説、哲学、歴史、投資、旅行など、ありとあらゆる本を収めていて、気に入った本については皆さんに自信を持って紹介できると思います あと、皆さんに紹介することが憚られる本については、冷蔵庫で冷凍保存しています 一体どんな本なのかって? これを聴いている皆さんにだけにこっそり教えちゃいますが、私はある人に対する

【意味が分かると切ない話/タイトルは...】

2000年代初期、神戸。 夜の港町には、オレンジ色の街灯がぼんやりと灯っている。 静かな海面に光が揺らめき、遠くで船の汽笛が響いた。 玲奈は防波堤に腰かけ、携帯電話を開く。 小さな画面に映るのは、未送信のメール。 「お母さん、今神戸にいるよ」 そう打ち込んだまま、送ることができない。 代わりにフォルダを開き、昔のメールを読み返す。 「今度、家族みんなで旅行しようね」 「また一緒にお好み焼き食べよう」 「帰ってきたら、いっぱい話聞かせてね」 胸の奥が、ぎゅっと締め

2月の蛍 【超ショートショート】

合コンでお持ち帰りした彼女と深夜の川べりを散歩。 このあたりは街灯も少ないし、人も通らない。 「あっ、蛍! 初めて見た。綺麗~」彼女が足を止め、うっとりと景色に見入る。 ――おお、いい雰囲気!  俺はすかさず、彼女の唇を奪った。 ――よし、このままホテルに連れ込もう! あれ? でも蛍の季節は梅雨時じゃなかったっけ? と思ったが、『ま、いっか!』と彼女を蛍のたくさんいる方にいざなって、さりげなく彼女の胸に手を伸ばす。 「きゃーっ!」叫ぶ彼女に突き飛ばされ、しりもちを

【#毎週ショートショートnote】スネーク満床

「ここも受け入れ拒否か!」   救急隊員の北見は、救急車の運転席でハンドルを思い切り叩いた。   日本ではある現象が猛威をふるっていた。 噂では見た者を「キュン死」させてしまうほどの破壊力だそうだ。   いつしかメディアでは今年の干支にちなんで「スネーク現象」と名付けられ、注意を呼びかけているものの犠牲者があとを絶たない。  よって、どこの病院も満床状態。 「それにしてもこの患者を見てください。」 担架に運ばれた40代とおぼしき男性の瞳孔がピンクのハートマ

【#毎週ショートショートnote】もじもじ社

粉雪が舞うある山間部の村に男がたどり着いた。   飢餓に苦しんでいた男は食べ物を恵んでもらおうとした。   「食べ物を分け与えてくれないか?」   一軒一軒訪ねてみたが、   「えーまあーそのー」   どの家も、もじもじした歯切れの悪い返事で追い返してきた。   切羽詰まった男は、ある家の戸を強引に蹴り倒した。        それから数十年後。 3人の観光客がこの村を訪れた。   そんな観光客を物陰から2人の村人が覗いていた。 「村長、

Audibleにて背筋著ホラー「近畿地方のある場所について」感想

Audibleから99円で良いから試さないか? とお誘いを頂きました これまで三度程入会してはキャンペーン期間 終了と共に退会しています 最初の入会は佐久間宣行さんプロデュースの 「とんぼとサカナ」を聴きたくて 次は「佐藤と若林の3600」を聴きたくて 結局、好きなコンテンツがAudibleオリジナル なもんだからキャンペーン中聴き倒す運用です 一月1500円は… 分かります!書籍一冊分ですよね、お得です …ただ再生時間17時間とか、読めば3時間よ? あまり小

我が家の流行語大賞2024

 そのとき、私は声を張って世間に物申していた。 「あー! もう! 何もかも高くて困っちゃうよ! こんなに高くなったら一体何食べたらいいのさ!」  昨今の物価高を嘆いていると、夫が口を挟んできた。 「本当に、今の世の中、ふてほどだよね!」 「ん?」 《本当に》と《今の世の中》と《だよね》の意味はわかる。だがその間にいる言葉の意味がわからない。 「えっ? 何? 筆? 筆がなんだっつーの?」  差し迫ってきているが、かろうじてまだ師走。書き初めにはまだ早い。 「ええ? 知らない

【意味が分かると怖い話/タイトルは...】

記憶を消したのは誰だ? ノートをめくる手が止まった。 最終ページには、たった一行が記されている。 「記憶を消したのは誰だ?」 この文字を見つめた瞬間、胸がざわつく――まるで、これが自分自身に向けられた問いであるかのように感じた。 だが、記憶を消したのは私じゃない。 耳の奥に響く声が囁く。 「君は、思い出してはいけない」 なぜだろう。その言葉を聞いた瞬間、私は確かに思い出した。 ――病院の白い天井と、並べられた注射器のトレー ――教師が子どもたちを並ばせて言った

【#毎週ショートショートnote】山岳フリマ

「よし、もう少しで山頂だ!」 最後の力を振りしぼり、ついに剣崎たちは登頂に成功した。 「痛みに耐えてよく頑張った、感動した」 剣崎はチームメンバーにねぎらいの言葉を投げかける。 登頂に感極まり涙する者もいる中、剣崎はふとあるモノに気がついた。 そこには1mほどの小さなお堂があり、近くにあった立て札にはこう書いてあった。 「神々から山岳フリマでこの山を安く買えて良かったよ。おかげさまで腹いっぱい食えたわい。感謝カンゲキ雨嵐」 まわりが凍りついていたので気づかなかっ

小説の執筆をライブで観る

 今回は、以前に投稿した記事を加筆および再編集してお届けしております。長い記事なので、下の目次をご覧になり、興味のあるところからお読みください。盛りだくさんな内容になっています。 *小説の執筆をライブで観る  小説はどのようにして書かれるのでしょう? ただし、書店や図書館に置かれている小説に話を限定します。  作家さんが原稿用紙に向って、またはパソコンの画面に向って手と指を動かして書いているに決まっています。今のところはそのようです。これから先はわかりませんが。  作家

「近畿地方のある場所について」読了!

お立ち寄りいただきましてありがとうございます。 そして「見つけてくださってありがとうございます。」 今回は読んだ本の感想。 京都検定の勉強中は読書を後回しにしていたのですが、これから少しの間、読書の期間にしたいと思い、気になっていた本の感想も記録していきたいと思います。。 「近畿地方のある場所について」 2023年8月30日に初版発行されています。 その当時から気になっていたのですが、書評がかなり怖いという声が多数あったのでちょっと悩んでいました。。。 (ビビり?)

“噂”の怖さや“不思議”体験まで、辻村深月の原点を垣間見せる13篇『きのうの影踏み』

はじまりは映画だった 辻村深月(つじむら みづき)さんは、メフィスト賞を受賞したデビュー作『冷たい校舎の時は止まる』や、直木三十五賞に輝いた『鍵のない夢を見る』などが代表作とされます。 …みたいなことを「ウィキペディア」で調べました。 初めてその名に注目したのは同名小説を実写化した映画『ハケンアニメ!』です。 予告映像を偶然見たら、吉岡里帆と中村倫也が出ているではないですか。 「刺され、誰かの胸に」はヒロイン役の吉岡里帆が劇中で話すセリフの一つ。 私はその後しばらく

【#毎週ショートショートnote】この中にお殿様はいらっしゃるなりか?

毎朝乗っている通勤電車を待つ。 昨日は夜更けまで飲みに行って寝不足だ。 スマホ片手に駅のホームに入ってきた電車。 自分が立っているところに止まった車両を見て困惑した。 誰もいない車両だ。 何でこの車両だけ人がいないんだ? とりあえず乗ってしまおうと考え、スッと乗車した。 入った瞬間に呆然とした。 ここだけが戦国時代の館のような造りになっていて、まるでタイムスリップしたようだ。 「この中にお殿様はいらっしゃるなりか?」 見ると、キテレツ大百科に出てくるコロ助のよう

君に幸あれ 第8話『転機』

君に幸あれ 第8話『転機』 君に幸あれ第7話はこちら 『うちで働きませんか?』   初めて出会った女性からの申し出に、向前は躊躇した。仕事内容は主に電話番と、彼女の業務補助として必要な備品を揃えたり、送迎とボディガードらしい。 「何故、僕なんですか?」 向前は率直な疑問を彼女にぶつけた。 「向前さん、ご自身ではわかり辛いかも知れませんが、貴方は純粋で穢れなき人。貴方と云う存在は、そこに居るだけで邪な霊を退ける力を持っています。だからこそ電話だけでエマさんを助ける事が出来たん

地獄の道化師

地獄の道化師 霧の深い夜だった。そのサーカスは、街外れの廃墟と化した遊園地に突如として現れた。錆びついたメリーゴーラウンド、朽ち果てたジェットコースター、そして、異様なまでに鮮やかな色彩のテント。人々は、その奇妙な光景に引き寄せられるように、サーカスへと足を踏み入れた。 ピエロ、奇妙な動物たち、そして、観客を嘲笑うかのような歪んだミラーハウス。そのすべてが、異様な雰囲気を醸し出していた。ショーの最後に現れたのは、「地獄の道化師」と呼ばれる、異様なピエロだった。 彼の顔は

見た目の問題 (2057字) │ 特撮ショート

 暗闇を切り裂くように、私を乗せて運ぶ車は都心に張り巡らされた高速道路を走り抜けていく。後部座席から流れる外に目をやると、きらびやかに彩られた街の中に、今日の目的地である展示場が見えてきた。私が主演する映画の完成披露試写会が行われる特設会場だ。 「終わった後はスポンサーと会食予定ですが、長丁場です。何か軽く口にできるものを、後でお持ちしますね」  手元の光に顔を照らされたマネージャーが、少しだけこちらを見ながらそう話す。私は手をやってそれに軽く応えるだけにした。俳優の道に

黒髪のアンティクレイア

登場人物紹介 小津(おづ) 近隣の港町へ出張で訪れたセールスマン。都心に妻と娘がいるが、仕事を口実に高級ホテルに留まり、黒髪の寡婦・真帆子と関係を持つ。 真帆子(まほこ) 小津が出張先で出会う黒髪の寡婦。上品で艶やかな美しさを持ち、母とともにホテルの裏の広大な屋敷に住んでいる。 和代(かずよ) 真帆子の母。老いてなお妖艶な雰囲気を持ち、娘とは異なる冷ややかな魅力を持つ。 佳織(かおり) 小津の妻。 黒髪のアンティクレイア1  扉の向こうに佇む老婦の姿を前に、小津は

透明ウィークエンド。

週末の大戸屋。 4人テーブルに、私たち家族4人。 私の前にだけ、何もない。 … にこやかな店員さんに対して 私の顔は曇っていた。 「まだ揃ってないです」 と私が言うと、 「すみません、確認してきますね」 と曇った顔で厨房へ消えて行く店員さん。 念の為、タブレットの注文履歴を見たが たしかに私の注文は、そこにあった。 しばらくすると、 申し訳なさそうな表情の店員さんが、トンテキを持って現れ、一件落着。よかったよかった。 その後、もぐもぐとトンテキを食し デザートメ

【お知らせ】文学フリマ京都9のお品書き

19(日)の文学フリマ京都9、あと二週間となりました。 販売する本のお品書き、あらためて紹介させていただきます。 <お品書き> 『現代ホラーアンソロジー 私たちの本当に怖いもの』……500円 『春の夜に降る雨は』……500円 『水にまつわる奇譚集』……400円 『人形参り』……400円 では、少し詳しい紹介です。 『現代ホラーアンソロジー 私たちの本当に怖いもの』 「この人、ホラーを書かせたら面白いんじゃないかな……?」 と思われる文学仲間に声をかけ、怖い小説を書いて

【掌編小説】生贄

 こののどかな町の、のどかな学校の、のどかな日常は、月曜の朝、突然、そしていとも簡単に、パニックと恐怖に取って代わった。  小中一貫校の建物の一階、その端っこの、小学校一年三組の教室の、窓のところに吊るされていたてるてる坊主に混じって、首吊りにされた虎柄の猫が発見されたのだった。  第一発見者は、クラスで一番早く登校した真面目な女の子。泣きわめきながら校門の警備員に駆け寄り、見たものを伝えた。警備員は教室を確認した後、二階の職員室へ駆け上がった。すぐに先生たちが大急ぎで下りて

昨日の書き高、3000字強。あと2ヶ月で20000字以内で抑えないといけない訳ですが、やっぱりバランス悪い💦削れるだけ削ったけど、最終文節の組み立て方、句読点の見直し、微細な推敲しかやる事残ってない💦暫し主人公と共に地獄に突入します🥲

【な-47】ウタ・カタ #文学フリマ東京39

12月1日、東京ビッグサイトにて文学フリマ東京39が開催されます。 これまで9回の出店をしてきましたが、アンソロジーを一人でまとめることに限界を感じて、文学フリマ東京38を最後に一旦お休みすることにしました。――はずなのに。 間を置かずして、文学フリマ東京39で新企画始動と相成りました。 毎週ショートショートnoteでお馴染みのたらはかにさんこと田原にかさん、「幻想と怪奇」などに寄稿されている石原三日月さん、そして霜月透子の3人で企画したホラーアンソロジー! ちなみに、

忘年怪異【毎週ショートショートnote】

私たちが暮らしているこの世界には、物の怪と呼ばれる類いの者たちが紛れていることをご存知だろうか。 怪談は夏が定番だが冬に怪談を楽しんでも問題ないだろう。 ということで、我らが「ホラー怪談研究会」通称ホラ研は忘年会をしながら百物語を開催することにした。 場所はひとり暮らしをしているメンバーのアパート。 1DKでそこそこ広い。 食べ物と酒を適当に持ち寄り、足りなかったらウーバーに頼む。 宅飲みをするときはいつもこんな感じだ。 参加者は8名。 1人12~13回話すことになるが、オ

【お知らせ】文学フリマ京都9、出店します

冷え込む季節となってきましたね。 本日は年明けすぐのイベントのお知らせです。 2025年1月19日(日)、文学フリマ京都9に出店します! 開催日時:1/19(日) 11:00〜16:00開催 開催場所:京都市勧業館みやこめっせ 入場無料 文学フリマとは?→https://bunfree.net/attend/ イベント詳細→https://bunfree.net/event/kyoto09/ ブースはうー77。 文フリ会場、年々広くなって探しにくいかもしれませんが、こちら

罪を憎んで人を憎まず、でもやはり憎い

もう長いこと、一体どうして人間は罪を犯すのだろうと考えてきた。 この世界は複雑で、不可解で理不尽。 人間は愚かで弱く浅ましい。 もちろん私もそのひとりに違いなく、だからこそ思うことがある。 今日はそのようなとりとめのない話をしたい。 親ガチャ失敗の真相親の罪を償うのはいつも子供、だがしかし、必ずしもそうしなければならないわけではない。 親の罪の正体は、自分自身の弱さの顕在化だからだ。 罪を償うのではなく、自ら己の弱さを手放せるかが問われているのだ。 けれど若いころ

【短編小説(日常ホラー)】これ、返すね。 2500字

[HL:湯浅は親友だと思ってたけど、ちょっと何を言ってるかわからない……。]  大学の卒業式が終わって、卒業旅行も終わって、引っ越す人はもう引っ越しちゃって、今年もまた3月中に桜も散っちゃいそうな春の陽気にあふれている。喫茶店の窓ガラス越しに少しだけ緑がまじり始めた桜並木を眺めながら、そんなことを思った。  カランと音がして喫茶店の入口を振り返れば、湯浅が軽く手を振っていた。湯浅は大学に入って初めての、それから一番の友達。最初の英語で同じクラスで、そこからあっという間に仲良

【作品情報まとめ】芦花公園KADOKAWA全作品

2025年2月25日(火)に、佐々木事務所シリーズの最新作『無限の回廊』(角川ホラー文庫)が発売予定! 新世代のホラー界を担う異才・芦花公園さんのKADOKAWA全作品をご紹介します。 ■ 新刊情報□ 無限の回廊(角川ホラー文庫) 数々の怪異と対峙してきた佐々木るみが、自らの最大の敵に挑む――。 佐々木事務所シリーズ最新作! あらすじ 著者からのメッセージ 試し読み 書誌情報 ■ 既刊情報<佐々木事務所シリーズ> □ 異端の祝祭(角川ホラー文庫) この祝祭の

【小説】黄昏時

暗く街灯の少ない一本道を進んでいく。 薄暗いといっても陽が落ちるのは季節柄遅く、まだ仄かに明るい。何となく張り詰めた空気を感じて息を呑む。 家に帰るまでの道でここは一番苦手だ。 この道は出来るだけ使いたくない。 なんというか薄気味悪いのだ。だけど、間違いなく近道なため急いでいる時だけ使うことにしている。 障害物もない真っ直ぐな道が続いていて、道の先まで見渡せる。 道の先には国道が通っていて大きな駐車場のあるコンビニの灯りが見える。 両側は閑静な住宅街で真っ直ぐな道は死角が少な

柴怪 〜柴犬が語る怪談〜 【ホラー短編小説】

 僕の飼い主は、オカルトと柴犬を吸って生きています。  そう犬仲間に話すと、妖怪の類と勘違いされがちですが、れっきとした人間です。  ひょろりと痩せた細長い体に、長毛種の猫のようなボサボサの頭。  青白い顔に黒ぶち眼鏡をのせて、どこか気の抜けた表情をした二十七歳のオスです。  七つ下の妹のマユと一緒に、祖母から借りた古い一軒家で暮らしています。  マユ曰く、飼い主は三度の飯よりオカルトが好きなのだそうです。  UMAから都市伝説、中でも興味があるのは「心霊」。  子どもの頃か

【ブックガイド】令和に生まれた「家」ホラー小説15選

曰くつきの物件に、呪われたお屋敷――。 そんな「家」にまつわるホラー小説の中から、令和(2019年5月以降)に刊行された15作品をご紹介します。 ほのかに香る恐怖から畳み掛けるような恐怖まで、読み心地はさまざま。 あなたはどの「家」に足を踏み入れますか? 令和に生まれた「家」ホラー小説15選尾八原ジュージ『わたしと一緒にくらしましょう』(KADOKAWA単行本) この家からは、だれも出られない 織部泰助『死に髪の棲む家』(角川ホラー文庫) 死体にはひと房の髪を噛ませ

短編: 闇の中から浮かび上がる⑥

前話はこちら(↓)  武内のヤツは、この前、私に意見してから、何も言っては来なかった。当然だろう。いくら運営とはいえ、規約になんら違反していないにも関わらず、私を諭そうとしたのだから。賢者である私の言うことに耳を傾けず、バカなヤツらの声を拾おうとするからこうなるのだ。  おそらく、人気インフルエンサーである私に対して異論を吹っ掛けたことで、自壊したか袋叩きにでも遭ったのだろう。  ザマぁ見やがれ!www  You deserve it !! www  To hell w

地獄・オン・ジ・エア 【3/10】

前回【2/10】はこちら 初回【1/10】はこちら ■  あたしは勉強机の前で、銅像みたいに固まっていた。  ラジオではまだ、リノと“社長”“副社長”の二人が話している。 「ねえリノ、たぶん気のせいだと思うから、さ……ご家族の様子、ちょっと見てきたら? ……大丈夫だと思うよ?」  “社長”もそう言いながら、自信なさげた。 「で、でも……ほんとに、ほんとにあの笑い声とわけのわからない言葉……ふつうじゃないんです。どう考えてもあれ、いつものうちの家のテンションじゃないで

ショートショート:「朧夜屋捕物帳~断罪の骨董~」

【前書き】 皆様、お疲れ様です。 カナモノです。 個人的に好きなテイストのミステリーの続きを書いてみました。 少しの間でも、誰かに寄り添えることを願います。 【朧夜屋捕物帳~断罪の骨董~】 作:カナモノユウキ 《登場人物》 ・横堀秀次(よこぼり しゅうじ) ── 贋作師として名を馳せた男。 "本物を殺した罪"を東風に査定され、究極の贋作として展示品にされる。 ・東風(あゆ) ── 朧夜屋の店主。 "罪の査定人"として贋作師を追い詰め、「本物になる」という罰を与え

【掌編怪談】次男教

 和也さんには、二歳年下の弟がいる。  両親は和也さんを厳しく躾けたが、弟は甘やかし育てた。和也さんより、弟を優遇した。  いわば長男教ならぬ、次男教だ。  最たる差別は旅行だった。  両親は弟が赤子の頃から、何故か毎年、北海道と沖縄へ観光旅行に連れて行った。その間、和也さんは祖父母に預けられ除け者だった。  和也さんは虐待されていた訳ではないが、両親の愛情の隔たりが不満だった。  それは弟も同じだった。自分が兄より贔屓される事に年々、ばつの悪さを募らせていた。  中学二年生

白麗

 雪女、という妖怪をご存じだろうか。  小泉八雲で有名かもしれないが、雪山に現れて男を助けるとも殺すとも言われる、妖艶な美貌をもった女の妖怪。  僕の育った村では、雪女のことを白麗と呼んだ。  白麗は百年か二百年に一度(口伝でしか伝わっていないので、語る年寄りの記憶によってこの辺はまちまちだ)現れるとされているが、別に山に巣くっているわけではなかった。  白麗が現れるのは、村の中だった。  百年(分かりやすく百年にしておこう)に一度村に生まれてくる女の赤子の誰かが、白麗になる

おーでぃぶる (Amazon オーディオブック audible)

わたしはスマホのウィジェットにnoteがあり このようにいつも表示される ここからの投稿をなるべく心がけているのだけれど 今日は #ホラー小説が好き かぁ… ホラーゲームはとても好きなのだけれども 集中力の続かなさや、適当に見てはいけないという何か焦燥感みたいなのが掻き立てられ、不安感が強くなってしまうことから、10歳の頃の私では信じられないほど小説から遠のいてしまっていた。 そんな私に色々な人生の分岐が起きた2024 ついに オーディオブックに手を出しました。

今年読んだホラー小説(下半期編)&2024年ホラー小説ベスト5

2024年振り返り、今回はホラー小説編です。 この記事では ・読んだホラー小説振り返り【下半期編】 ・2024年の個人的ベスト5 の2パートでお送りしたいと思います。 上半期編にあたるこちらの記事もぜひご覧いただければと思います。 ホラー小説振り返り【下半期編】2024年の1年間で15冊のホラー小説を読みました。概ねサウナで。 サウナの熱さとホラーの怖さは絶妙な反作用性があってぶっちゃけめちゃくちゃハマりました。趣味として継続できそうなので来年も面白いホラー小説を探して

【ショートショート】恐怖の影

静かな村に突如として降りかかった恐怖の影。それは、一つの不可解な事件から始まった。村の外れに住む老婆が、ある晩、奇怪な声を聞いたと村人たちに語ったのだ。その声は、人間のものではなく、動物の鳴き声のようでもあり、機械的な音のようでもあった。老婆はその声に導かれるように森へと足を踏み入れたが、その後、彼女の姿を見た者はいない。 翌日、村には緊張が走った。老婆の失踪はただの行方不明事件ではないことを、皆が感じ取っていた。そして、夜が訪れるたびに、同じ奇怪な声が村のあちこちで聞こえ

寒いので機嫌が悪いため本日は休載します。

#976 読書論40|黒い家(貴志祐介)

過去に紹介した「悪の教典」、そして前回紹介した「青い炎」に引き続き、貴志祐介が1997年に発表された「黒い炎」を紹介しましょう。 メチャクチャエグイ、ホラー作品ですね。 この人の作品はとにかく人が死ぬんですけど、「もう義理の父親を殺すしかない」と主人公が考えたクライムノベルだった青い炎と、「死体を隠すなら死体の山に隠そう」とサイコパスの主人公がクラスの生徒を皆殺しにした悪の教典とは180度異なり、主人公はまともなんですが、敵がサイコパスなんですね。 故に、これまでのシリーズ

祭囃子

 雨の音にまじって祭囃子の音が聞こえる。  布団から起き上がり、窓を開けるとその先には黒々とした闇が広がるばかりだった。雨の軌跡すら飲み込む闇の中から、祭囃子は聞こえる。  腕時計を見ると、午前一時を示していた。  松や竹を描いた欄間の端っこに非常用の懐中電灯が括りつけられており、私はそれを外すと外の闇に向けてみた。頼りない、丸い光が暗闇の中に泡沫の月のように浮かび上がる。  光をどこへかざしても、鬱蒼と茂る草木を照らし出すばかりだった。ときに不意打ちのように野鳥の目に反射し

変なシリーズ:「不思議な家と僕がオバケになるまで」第三十六話

【前書き】 皆様、お疲れ様です。 カナモノさんです。 「悪魔と青年が紡ぐお話を、シリーズとして書いたら。」 三十六話です。久々なので、リハビリ回です。 少しの間でも、お楽しみ頂けていることを願います。 【不思議な家と僕がオバケになるまで】第三十六話 「ホテル・フェアモンド・ミステリーメリー⑦」 作:カナモノユウキ 《登場人物》 ・きつね 心の悪魔「アコ」と共に過ごしている青年。 ・アコ  元夜更かしの悪魔、現在は心の穴を埋める心の悪魔としてきつねに寄り添っている。

【試し読み】貴志祐介『さかさ星』冒頭特別公開!

貴志祐介さんが手掛ける待望の長編ホラー『さかさ星』(KADOKAWA単行本)が、2024年10月2日(水)ついに発売! 本記事では刊行を記念して、63ページまで大ボリューム特別公開します! 物語の冒頭をどうぞお楽しみください。 あらすじ 『さかさ星』試し読み ACT1 SCENE1  秋雨は、早朝からずっと降り続いていた。  中村亮太は、ワゴン車の窓越しに、濡ぬれそぼつ町並みを眺めた。小糠雨かと思っていると、いきなり勢いを増して驟雨へと変わる。風も吹いたり止やんだ

【小説】路地裏アルバイト①-1

歌舞伎町で飲み歩いていた。日付が変わる頃に、路地裏をうろついていた。 そんな時に、電柱にこんな貼り紙を見つけた。 実は、俺はアル中でお金に困っていた。 毎月の収入だけでなく、酒を飲むために消費者金融から借金をしていたのだ。 「アルバイトやったら、治療代くらいにはなるかな……」 そんなことが頭をよぎった。 深夜1時。俺は携帯電話から貼り紙にあった電話番号に電話を掛けた。 「深夜だから出るわけないよな……」 「もしもし?うちは24時間体制で営業しておりますが」 電話がつながった

金縛り

えっと…皆さんこんにちは!初投稿のたにしと 言うものです。 突然ですが皆さん金縛り…という現象になったことはありますか? 脳が眠っていて筋肉が硬直している… はたまた幽霊の仕業…どうやら3人に1人はその状態になったことがあるらしいです。 あ、私ですか?私も一回だけあります今回はその 時起こったことについてお話ししようと思います。 これはもう2年前の話になります。 高校2年生の夏 部活動に明け暮れた毎日で明日は 念願の休みだと期待に胸を膨らましながら僕は 眠りにつきました。

波打ち際の足跡「ショートホラー」

夏の終わり、僕は久しぶりに地元の海岸を訪れた。陽が沈むにつれ、観光客の姿はまばらになり、潮騒だけが静かに響いていた。海風に吹かれながら歩いていると、砂浜に奇妙な足跡があることに気がついた。 その足跡は、一つだけ。まるで片足の誰かが歩いたように、波打ち際へと続いている。誰のものだろうと思い、目で追っていくうちに、不思議なことに気がついた。どこにも始まりがないのだ。ただ、海から現れて砂浜を進んでいるように見えた。 不思議に思いながら足跡を辿っていくと、やがて朽ち果てた古い漁船

【掌編怪談】ピンクの大蛇(1,000字)

 石橋さんは火葬技師だ。  数年前、彼が勤める火葬場で、弱冠二十歳で自死した女性の火葬が執り行われた。家族葬で、参列者は女性の両親だけだった。  棺の中に横たわる、死に装束の女性の遺体は、肌がピンクに変色していた。  女性は練炭自殺を図ったのだ。練炭自殺などの一酸化炭素中毒死では、血中のヘモグロビンが一酸化炭素と結合して鮮紅色を呈し、肌がピンクに染まる。  共に棺に納める多数の副葬品には、蛇の抜け殻が含まれていた。故人が生前、大事に財布に入れて持ち歩いていた御守りだと、両親は

【小説】路地裏アルバイト①-4

度胸のある協力者を見つけるために、アルバイトの募集を掛けた。 それが依頼人の言い分だった。 朝5時。依頼人は黒色のセダンで竹ノ塚駅の西口にやってきた。 「おはようございます、タケウチさん」 「おはようございます」 依頼人は見た目は20代前半。身長180cmくらいの長身でやせ型。前髪センター分けの黒髪で、金色のネックレスに黒いTシャツと黒いテーパードパンツをはいていた。 「場所が解読できたみたいですね」 「あぁ。竹ノ塚の隣の西新井トンネルの近くのアパートでしょう」 「そうです