レゴシリアスプレイメソッドで掘り起こしたいのは、普段、意識されていない経験や知識である。手を使ってモデルを作ることで出てくる経験や知識もあるが、一度に全てが出てくるとは限らない。そこで追加の問いを放つことになるが、その見極めをファシリテーターはどう判断すれば良いのだろうか。
レゴシリアスプレイではあるテーマについて各参加者がモデルを通じて自分の意見を表出する。そこには価値観や判断も含まれる。しかし、参加者はそれに従う必要はなく、その代わりテーマを参加者全員の意見から現れるホログラム的な理解を共有し、自分の行動が他者に与える影響を理解することである。
今年1年のテーマの一つはレゴシリアスプレイメソッドで「グッド・スパイラル」を作る方法の探求とワーク手順の確立ことであった。ワークに前向きな人は導けたが、後ろ向きな人(そのことに関心がない人)はうまくできなかった。改めて、原理的な部分から検討し来年ばワークをバージョンアップしたい。
印象の残り方の研究によれば、その出来事の最後の状態は、それまでの経験をかなりの程度、上塗りする。要するに「終わりよければ全てよし」である。さて、私たちはレゴシリアスプレイのプログラム設計のときにこの最後をどうやって最高の時間にするかをどれだけ考えることができているのだろうか。
レゴシリアスプレイメソッドのワークを終わった後にお酒を飲んで懇親会をする。気の置けない仲間からモデルにも出ていなかった身の上話が続々と出る。レゴシリアスプレイで自己開示が進んだ結果での話だとは思うが、その話をもう一度ワークのときのモデルに組み込んだら新しい気づきが出そうと考える。
レゴシリアスプレイメソッドは、基本的に対話のための手法で参加者同士の理解の上に立って全員が納得する結論を得ることを狙う。つまり参加者の心の成長や発達は狙っていないのだが、結果としてそれが起こったと感じる時がある。もしそこを狙うなら手法を再構成する必要があるのかもしれない。
レゴシリアスプレイメソッドを使うと、基本的にポジティブな思考が展開しやすい。想像力に翼が与えられ、勇気を持って自分の考えを披露し可能性を探求できる。一方で、慎重になるべきところが見えにくくなるので、そこに出されたアイデアの検証まで組み合わせるまで設計した方が良いケースがある。
レゴシリアスプレイメソッドを使うと参加者がそれほど積極的に言葉にしない考えや行動の背景情報や懸念点や心の中の密かな希望を表現しやすくなる。これらはコーチングのときのコーチからの効果的な問いかけのために必須の情報である。つまりレゴシリアスプレイはコーチングの効果を大きく引き上げる。
時とともに経験や情報が積み重なっていくと物事は複雑になる。細かい失敗や条件変化に対応しようと新たな仕組みを取り入れるとさらに複雑になる。レゴシリアスプレイメソッドで作るモデルは現実ほど複雑ではなく、むしろシンプルに最も大事だと考えることが表現されやすい。原点に戻るために作るのだ。
活動のレベルを高めるには創意工夫が必要だが、その積み重ねは活動の一貫性を失わせるリスクを伴う。それを防ぐために包括的かつ抽象的な表現、価値や理念が作られる。その活動が組織や集団でとなると、それらの具体的な行動への重ね合わせが人によって異なる。レゴシリアスプレイはそのブレを収める。
レゴシリアスプレイメソッドでモデルを通じて表明される考え方や会話は基本的にポジティブ思考を誘発する。レゴブロックでモデルを作るときにフローに入りやすく、その後、作ったモデルは参加者の意思により動かすことができ、修正することができ、目標や理想への可能性を描きやすいことが後押しする。
世界観の一つの軸として、出来事や物事は基本的に同一であり動かないものとみなすのか、基本的にゆるくうつろい変わりうるものとみなすのかということがある。レゴシリアスプレイメソッドは後者で、その思考の中心は「プレイ」である。それは物事の変化の幅や影響の行き着く先を想像することである。