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『「人の器」を測るとはどういうことか』をレゴシリアスプレイメソッドの文脈で読む(2)序文

 この一連のNoteでは、オットー・ラスキー氏の『「人の器」を測るとはどういうことか』を読んで、レゴシリアスプレイメソッドの文脈に照らし合わせていく。

 序文では、この本の全体を貫く基本コンセプトが示されている。それをさらに簡単に以下にまとめておく。

(1)本書の目的は、プロセス・コンサルテーション(クライアントの思考プロセスに対するコンサルテーション)に基づいて人間の心を支援するプロフェッショナルのための理論を提示することにある。

(2)心は複数のお互いに関連しあった領域において発達する

(3)本書では「社会的・感情的領域」「認知的領域」「行動的領域」の3つを区分して進める。

(4)「社会的・感情的領域」は「私は何をすべきなのか、そしてそれは誰のためにすべきなのか?」という質問に関連し、「価値」に関わることである。

(5)「認知的領域」は「私は何ができるのか、そして私の選択肢は何なのか?」という質問に関連し、「思考」に関わることである。

(6)認知的領域の発達を把握するために、「弁証法思考」と呼ばれる聴く技術があるとその精度が高まる。その弁証法思考では、現実世界(リアリティ)を「プロセス」、「文脈」、「関係性」、「変容」という4つの側面から構成されているものとして理解する。

(7)「行動的領域」において、人間の行動は「(主観的に感じられる)欲求」と「(心の中の葛藤や外部環境からの心理的な)圧力」の2つの要素に基づく。

(8)「圧力」は心の中で構築され立ち現れるもので、幻影・幻想にすぎないことを知っておく必要がある。

(9)自己変容のためには、自分がどの発達段階にいるのか知るための評価測定手法が重要である。

(10)他者に対して本書の内容を使って評価測定ができるようになるためには、自分自身に対して評価測定できるようになっている必要がある。

レゴシリアスプレイメソッドとの関連について

 まず重要なのが(1)についてである。基本的にコンサルテーションはクライアントの問題を明らかにし、解決策を提示するものである。ここでいうプロセス・コンサルテーションは、クライアントの思考に焦点を当てる(そこに問題を見出し解決策を提示する)。
 これに対して、レゴシリアスプレイメソッドは、解決を提案するための手法ではない。レゴシリアスプレイメソッドは対話のためのメソッドであり、原則として、その問題に対する答えは出さず、ファシリテーターは、参加者(としてのクライアント)に気づきをもたらす状況や対話の創出に専念する
 その点において、本書を読むときに最終的な解決への導き方に注意する必要があるだろう。

 (3)の「社会的・感情的領域」「認知的領域」「行動的領域」という3つの領域はレゴシリアスプレイメソッドにおいても射程に入れている領域である。レゴシリアスプレイメソッドでは、モデルを通じて、自分がどのような価値をもち、それに基づいてどう思考し、行動に至ったかをストーリーとして語ることが少なくない。これは3つの領域を跨いでいることになる。ファシリテーターの問いの投げ方次第では、参加者はその領域の一部のみモデルで表現し、全体を語らないこともあるが、追加の問いで3つまで広げることは十分にできる。

 また(6)に関して、レゴブロックで作ったモデルを使って話してもらうことで、モデルの作り手の思考の中での、プロセス、文脈、関係性、変容の側面を追いやすくなる。特に対立や葛藤などを抜け出すための思考を支援しやすい(私は同じ発想でレゴシリアスプレイメソッドを使ってU理論の利用を容易にするワークを開発した)。その先には(8)のような心理的な圧力が幻想であると気づくことも含まれている。

 興味のある人は以下のマガジンのNote記事を参照してほしい。

 (9)〜(10)の評価測定については、本書のこの段階ではレゴシリアスプレイメソッドとの関連を明確に述べることはできない。ただ、他者に何かしようとする人が、まず自分自身に対して同じことができてこそ、他の人を支援できるということについては非常に通じるところがある。レゴシリアスプレイメソッドでも自分自身について使い、そのプロセスで自分自身に気づきをもたらすことができることができて、他の人にも同じように支援できると思うのである。

 この本を読む前から私は自分に向けて以下のような取り組みをしている。


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