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「学習する組織」をレゴシリアスプレイメソッドで開発するワークショップ(試行版)を終えての振り返りNote

 2025年1月4日ー5日の2日間にかけて、レゴシリアスプレイメソッドを中心に「学習する組織」を作るためのワークショップを行った。

 ざっくりとではあるが、今回のワークショップのメイン設計とファシリテーションをしていて、その点から感じたことを書き出しておきたい。

 参加者は全員レゴシリアスプレイメソッドのファシリテーターであることもあり、レゴシリアスプレイメソッドと「学習する組織」の議論がどう関連するのかを私なりに整理し、話を聞いてもらいながら進めた。

 5つのディシプリンのうち、「メンタルモデル」と「チーム学習」については、レゴシリアスプレイのコアプロセスを丁寧なファシリテーションによって進めることで、チームメンバーに少しずつ浸透させることができる。ただし、1回では、なかなか行動変化しないので繰り返し行う必要がある。
 この2つのディシプリンの浸透については、参加者にも大きく賛同してもらえたと思う。そして、スキルビルディングを中心とした60分程度のセッションでも「メンタルモデル」や「チーム学習」の観点から言えば大きな意義があるということでもある。

 ワークの中で次に扱ったディシプリンは、個人のエンパワーメントである「自己マスタリー」であった。

 ここは自己理解を深めていくことがポイントとなる。「アイデンティティ」を作り、そこを踏まえ、心から一歩踏み出す勇気が出る個人の「ビジョン」を作る。実際にレゴシリアスプレイメソッドで行った時には、視覚的に両方とも表現されるため、「アイデンティティ」と「ビジョン」の一貫性はチェックしやすい。
 一方で、レゴシリアスプレイメソッドをもっても、「ビジョン」に対する本人のコミットメントがそこまで高まらない可能性も感じられた。

 その後、ビジョンに踏み出そうとするときに生まれる「抵抗要因」を作る。これは多くの場合、潜在意識にあるため、その掘り起こしは会話のみでは難しい。レゴシリアスプレイメソッドを使うことでずっとパワフルに掘り起こしができることは間違いないが、ファシリテーションの仕方や問いの投げ方について、まだまだ改善の余地はあるとも感じた。

 そして、「ビジョン」「アイデンティティ」「抵抗要因」の3つのダイナミクスを考察するために「システム思考」が重要となってくる。

 ここで考察の前に「システム思考」を理解してもらわなければならないのだが、多くの人にとって「システム思考」は馴染みがないため、その考え方を教え使えるようにしていかねばならない。

 今回はすでにレゴシリアスプレイメソッドをファシリテーションできるだけの知識と経験をもった参加者だけだったので比較的短い時間で先に進めたが、レゴシリアスプレイメソッドが初めてのメンバーに、システム思考も教えて重ねさせるというのは、集中して詰め込むには、難度が高いというように感じた。

 また、「システム思考」もただ単に説明するだけでは、すぐに使えるようにはならない。レゴシリアスプレイメソッドに基礎練習があるように、「システム思考」にもよく考え練られた基礎演習が必要なのだと感じた。その点について、今回の他の参加者によるシステム思考の導入ワークは大いに参考になった。

 本来ならば、「アイデンティティ」「ビジョン」「抵抗要因」からなる「自己マスタリー」モデルを、システム・マップに変換していくだけではなく、相互にビジョンの実現を助け合う、相互支援システムを構築する試行もしたかったが時間が足りず、今回は断念した。これについては、いずれ別の機会に試行したい。

 次に扱ったのは「共有ビジョン」である。これはレゴシリアスプレイメソッドの応用テクニックである「共有モデル」の作成と強い親和性がある。ここについては事前の設計通りにほぼ進んだ。
 ただし、本当に皆が自らオーナーシップを持って動き出すレベルのビジョンをセンゲは「学習する組織」に求めており、そのレベルに共有ビジョンを引き上げるにはファシリテーションの技術が欠かせないとも感じる。今後は、そのファシリテーションのポイントについても整備していきたい。

 次に、この「共有ビジョン」を実現するために、参加者の視野を広げて何が必要であるのか、どこに抵抗要因があるのかを探っていくことになる。

 そして、ここから参加者は「システム思考」へと再び切り替わることになるが、その切り替えがやはり簡単にはいかないようだ。特にシステムの要素を抽出するときに、モデルの中のポイントを「指標化」しなければならない。また、あらためて世界の中の特徴(自己マスタリーでいう「アイデンティティ」)や抵抗要因も掘りおこなさなければならない。

 この点、時間が押していることもあったが、モデル(その先の要素)を考えるための、良い問いかけやファシリテーションができていなかったと思う。今考えると、ファシリテーターとしての私の疲労度も高まっていたので雑になっていた。

 「システム思考」によって共有ビジョン周りの要素の認識を広げていくと、どんどん全体が複雑になっていく。
 複雑度が上がりすぎると、何がどう関係しているかが把握しにくくなるので今度は全体が把握しにくくなることがある。それを整理するために各テーブルを動き回った。これについても、参加者自身がある程度、できるような説明ができるようにしておかねばならない。

 そして、ある程度出来上がった複雑なシステムを分析し、対策を考えていく、ということになるが、その部分については全体に向けて考え方の解説をするだけでワークの時間を十分に取ることができなかったかと思う。

 また、最終アウトプットとしての「システムのモデル」は、あくまでもそこの参加者で作った組織や環境の仮説であるため、その仮説に基づいた小さなアクション、そしてその検証や振り返りに基づく参加者で作るモデルの更新が必要となる。

 その点の流れについても「学習する組織」の中で触れられているのであるが、今回のワークショップにはそこまで組み込んでいない。
 まずは、今回のワークショップを、より多くの人に分かりやすくかつ効果のある形で提供できるように、今回の反省をもとに整えていくことに力を入れていきたい。

 最後に、今回の試行会そのものの企画、場所取りや参加者募集など運営に回ってくれた人々に本当に心からのお礼を言いたいと思います。ありがとうございました。
 このレゴシリアスプレイメソッドのコミュニティは、そのような方がいるからこそ「学習するコミュニティ」になっているのだと心から思いました。

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