
『ティール組織』をレゴシリアスプレイメソッドの文脈で読む(2)第1部第1章 変化するパラダイム
このNoteのシリーズでは、『ティール組織』を読んでレゴシリアスプレイメソッドとの関連を考察していく。
第1章では、この本において最も進化した「ティール型」組織以前の段階までの組織モデルについて紹介している。
章のタイトルには「パラダイム」という言葉が使われている。それは、これらの組織モデルが相互に異なる前提(原理といってよいのかもしれない)に基づいていて、同じ物事を見ていても、その組織の中では「正しい」解釈をしている状態となっているということである。例えば、ある人が働く中、苦しんでその場に蹲ったとしても、あるパラダイムの組織の下では「本人の甘え」が正しい理解となり、別のパラダイムの組織の下では「上司の責任」が正しい理解になるということである。
第1章では以下のパラダイムが簡単に紹介される。パラダイムがイメージしやすいように、それぞれに色がついている。
(A)受動的パラダイム(無色)
・世界と自分たちが未分離な状態で、階層もリーダーもいない。近代文明とは距離のある暮らしをする、大きくても数十人規模の小さな部族などがこれに該当する。
(B)神秘的パラダイム(マゼンタ)
・自分は世界の中心にいるが世界は神秘に満ち溢れているため、古老や巫女に従うことで安心する。古代の数百人単位の大きな部族がこれに該当する。
(C)衝動型パラダイム(レッド)
・自己と他者が存在しており、他者(世界)からの脅威に自己が晒されていると感じ、それを力で克服しようとする。強力なリーダーと多くの歩兵で分業制が確立する。奴隷制や首長制社会、ギャングやマフィアがこれに該当する。
(D)順応型パラダイム(アンバー)
・世界は因果関係から成り立つと考えており、規則から「正しい/正しくない」が語られる。将来に向けての計画とその達成のための計画を重視し、安定した組織構造を作り出す。政府機関、公立学校、宗教団体、軍隊などがこれにあたる。
(E)達成型パラダイム(オレンジ)
・世界は複雑な機械仕掛けであり、仕組みを理解し手を入れれば、より多くのことを達成できる。科学的な研究、改善、イノベーションが賞賛され、目標管理が重視され、実力主義が標榜される。先進国のグローバル企業がこれにあたる。
(F)多元型パラダイム(グリーン)
・あらゆる考え方は等しく尊重されるべきであると考えており、公平、平等、調和、コミュニティー、協力、コンセンサス、ボトムアップ・プロセスが重視される。リーダーはサーバント(執事)のように振る舞うことが期待され、メンバーは「家族」である。組織は多くの人の考えを惹きつける存在目的によって支えられる。
これにつづき、本書が第3章以降に紹介する「進化型パラダイム(ティール)」が存在する。
レゴシリアスプレイメソッドとの関連
まずレゴシリアスプレイメソッドにパラダイムというものがあるならば、どれに当てはまるかというとまずは「多元型パラダイム」であろう。あらゆる考え方を尊重しつつも、全員が納得できる一つの結論に向かって対話を進めるために非常に強力なツールであるからである。ビジョン作りなどがこれにあたるだろう。
一方で、人々が異なる考え方をしているということから、コミュニケーションのロスが生まれて、本来ならば手に入れていた成果が得られていないことを解消するという意味では、「達成型パラダイム」の組織においてレゴシリアスプレイメソッドは本当に必要とされているともいえる。また、状況の整理のために人々の知恵(感じていること)を短い時間で出してもらい、結集させていくときにも役にたつ(アイデア創出のワークショップ)。実際に、多くの企業組織でレゴシリアスプレイメソッドのワークショップが採用されている。
また、「順応型パラダイム」の典型として紹介されている学校でも、レゴシリアスプレイメソッドは広がっている。これは教育において「正しさ」が明確でない部分(それについて考えさせる時間)が増えてきていることがあるからだろう。そしてレゴのモデルを使って考えをしっかりと表明することから暫定的な「正しさ」を作り出すための話し合いと繋げていく。結果として、順応型パラダイムの「正しさ」の隙を埋める教育効果を狙っている。キャリア教育や道徳など、さまざまな条件のもとで正解が変わるような教科についてレゴシリアスプレイメソッドは魅力的に映るかもしれない。
このように考えていくと、レゴシリアスプレイメソッドが、それぞれのパラダイムが抱える問題に対して、異なるアプローチで効果を出すことができることがわかる。ファシリテーター(ワークの提案者)には、クライアントがどのような「パラダイム」に立っているかによって柔軟に対応できるようになっていることが求められるといえる。