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『ティール組織』をレゴシリアスプレイメソッドの文脈で読む(7)第2部第3章 自主経営/プロセス

 このNoteのシリーズでは、『ティール組織』を読んでレゴシリアスプレイメソッドとの関連を考察していく。

 本章では、前章に引き続き、進化型組織になるための、3つの突破口の一つである「自主経営」について、進化型組織以外のパラダイムに立つ人たちが抱きやすい疑問に関して集中的に書かれている。

(1)より大きな影響が出る重要な意思決定をどうやって進めるのか。
 組織内の誰もが重要な決定をすることができるが、事前に関係する人と専門家から助言を受けなければならない。ただし、その助言は参考であって最終的には自分で決めて良い。全体に責任をもって行動しようとすれば十分な助言を聞いて回るので最終的に決定はうまくいく。

(2)会社の存続が危うい状況が生まれたらどうするのか。
 助言プロセスは一時停止することになるが、会社の代表者を選び急遽対応する決定が及ぶ範囲と期間を明示する。またその期間後も権力を握るようだと感じられる人には代表権を渡さない。

(3)予算利用も自由を与えたら無駄な支出が増え資金不足になるのでは。
 各人が必要だと思うものを購入するのでトップダウンで購入し配布するよりも無駄が生じにくい。資金についての状況も含め、あらゆる経営情報を全員に公開するので不足する前に調整が働く。

(4)意見が対立したらどう収めるのか。
 普段からコンフリクトに対処するための対話の訓練をしておく。その上で対立が起こったら、まず対立する二人で話し合う。それで解決しなければ両者が信頼する同僚を調停者に指名してサポートしてもらう。それでもうまくいかねば人を広げ委員会を立ち上げ話を聞いてもらう。

(5)各自が仕事を決めるのであれば、相互に仕事をどのように知るのか。
 各自が自分の職務記述書を作成し、個人的なミッション・ステートメントと他の人への約束を文書化して公開するなどを通じて行う。そして自分と共に働いている人たちと密に打ち合わせを行う。役割は常に進化し変わってくるので、誰かが必要だと感じたらミーティングを提案し、問題を明らかにし、お互いの役割を再度決め直す。ある提案への反対意見などもしっかりと聞き出し統合を目指す。

 ※2025年2月1日修正加筆。本書では、進化型組織は職務記述書を持たないことを強調していることに気づき修正した。Note執筆当初は個人的なミッション・ステートメントでも同じだと軽く考えていたが、著者のいう「個人的なミッション・ステートメント」は、個人が自発的に作成するもので、それに対し「職務記述書」は組織が本人不在のところで決め、組織が権限を裏付けに従わせるという点が決定的に異なる。進化型組織の特徴に大きく関わる点である。

(6)給与はどう決めるのか。
 各自が同僚たちを前にして自己評価のプレゼンテーションと質疑応答を行い、実績を明確にした上で配分(基本給)を決める。その結果、多くの進化型組織では固定の基本給と会社全体の報奨金というスタイルになっている。会社の業績が上がった場合、固定給の底上げを優先的にする原則を持っている進化型組織が多い。

(7)問題ある人を解雇をすることはできるのか。
 進化型組織では、人々は解雇される前に自ら辞めていく。「ここは自分のいる場所ではないかもしれない」と自然と考えるからである。なので会社側からの解雇は極めて稀である。

 このようにして見てみると、進化型組織の構築のポイントのひとつはメンバー間での徹底した情報公開と共有、そして粘り強く対話に向かうことであるように思われる。

レゴシリアスプレイメソッドとの関連

 進化型組織をつくっていくために必要となる徹底した情報公開と共有のうちでも、組織が置かれている状況と各人の役割の認識と共有が基盤となると考えてよいだろう。
 これに対話の感覚を得るために、レゴシリアスプレイメソッドを使ったテーブルに状況全体を表現していくワークは有益だと思われる。各自の職務記述書も大事であるが、記述書同士が相互にどのようにつながっているのか、それ以外の考慮すべき事項は何かまで各人が考えていくとなると、レゴブロックでそれが表現されている方が共有の程度は高まるであろう。
 また、一度認識した状況も組織活動をしていくにつれ、どんどん変わっていく。つまり、認識の修正が進化型組織の活動では繰り返し必要となってくる。その修正も、レゴブロックであれば比較的容易である。
 理想を言えば、下のイメージのように、大きなテーブルの上に組織の状況を表現しておき(各自の職務記述書がこれに紐づく)、職場の中でいつでも確認できるように展示しておくと良いだろう。そして、必要に応じて皆で追加のワークショップを行い、テーブル上の状況表現を進化させていくということである。
 このようなレゴシリアスプレイメソッドを活用した取り組みは、進化型組織をより一層安定させる効果があるのではないかと期待できる。

テーブルに広がった組織(中央緑のプレート)と周囲の状況のイメージ

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