『「人の器」を測るとはどういうことか』をレゴシリアスプレイメソッドの文脈で読む(3)序論
この一連のNoteでは、オットー・ラスキー氏の『「人の器」を測るとはどういうことか』を読んで、レゴシリアスプレイメソッドの文脈に照らし合わせていく。
序文に続くのが「序論」である。
序論では、本書の意義について書かれている。
その意義とは、今までのコンサルテーションにない新しいアプローチを示されたということである。
本書では、これまで3種類のコンサルテーションのモデルがあったことを指摘している。
(1)専門家モデル
専門知識を相手に渡すことで行うコンサルテーション
(2)医者・患者モデル
専門家が問題を診断し、解決策を示すコンサルテーション
(3)プロセスコンサルテーションモデル
クライアントが問題を認識し、理解し、対処できるように促す関係性をつくっていくコンサルテーション
これに対して本書では4つめのコンサルテーションのモデルを提示する。それが
(4)発達論的プロセスコンサルテーションモデル
である。
発達論的プロセスコンサルテーションモデルでは、成人以降の心の発達段階に基づいてクライアントの問題に光を当てるものである。
著者は、人間の成長は、「水平的領域」と「垂直的領域」からなり、この2つはお互いに絡んでいるものとしている。
まず、水平的領域では、学習によって新しい能力や知識を得ながら成長する。一方、垂直的領域では、社会的・感情的および認知的に不連続な段階がある。そこには発達の順番の存在もある。水平的な領域で得られた知識や能力は、発達段階により異なる意味を帯びてくる。
発達論的プロセスコンサルテーションは、垂直的領域の状態を診断することによって、行動と行動の裏に潜む問題を解明するとともにクライアントの発達段階での成長を支援するものとする。
そのための発達段階の診断方法、その結果をどう用いて対話や介入をおこなっていくのかを解説したところに、本書の最大の意義があるということである。
レゴシリアスプレイメソッドとの関連について
レゴシリアスプレイメソッドはコンサルテーションではなく、対話を促すメソッドであるが、3つのモデルのうち、「プロセスコンサルテーション」に最も近い視点をもっている。それは、問題というものはクライアントの外にあるものではなく、クライアントの思考が創り出したものであるという構築主義の考え方である。だからこそ、クライアントの思考を、潜在意識に近いレベルまで見える化させるためにレゴブロックでモデルを作らせるのである。
しかし、レゴシリアスプレイメソッドでは、発達論的な視点はいれていない。そしてメソッドでは、対話を通じて全員が自分の意見をはっきりと出したうえで、新しい知識を創出したり、参加者が気づきを得たりすることを目指す。しかし参加者の発達段階における成長を支援することは「必ずしも」狙っていない。
ここで「必ずしも」と括弧付きで表記したのは、ワークショップの設計によっては、発達を促す問いを出すことができるかもしれないからである。次回からは本格的に発達段階についての解説がはじまると思われるので、発達を促す問いを意識しながら読み進めていこうと思う。